狭山くん
TRAINING2022-06-18/今日のデイリー空閑汐♂は空閑の独白回みたいになってしまった。ちょっと不穏なのは多分手癖……手癖で不穏にするな。空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:18 落とさないようしっかりと抱き上げた男の肢体はずっしりと重い。平均から見れば長身であるとはいえ、自身よりも小柄で細く――時折どこに内臓が入っているのかと疑うこともあるような薄い汐見の身体ではあるが、その服の下にしなやかな筋肉を纏っている事を空閑は知っている。
帰省土産の交換と称して集まっていた友人たちもそれぞれの部屋へと戻っていく時間ような時間になっても、空閑にぴったりとくっ付いて寝息を立てる汐見が目を覚ます様子はなく、揺すっても叩いてもすやすやと深い眠りに落ちたままで。眠りに落ちる前に呟くように告げられた「お前が居ないと、眠れもしない」という言葉だけが、空閑の耳でずっと反響し続けていた。
空閑に抱きかかえられながらも器用に眠り続ける汐見の身体をようやくベッドに横たえさせながら、空閑は汐見のあどけない寝顔を見つめる。普段は仏頂面を晒し、神経質そうな印象を周囲へと与える細面が表情筋も緩まっているのか眠っている時には少年のようにも見えて。
983帰省土産の交換と称して集まっていた友人たちもそれぞれの部屋へと戻っていく時間ような時間になっても、空閑にぴったりとくっ付いて寝息を立てる汐見が目を覚ます様子はなく、揺すっても叩いてもすやすやと深い眠りに落ちたままで。眠りに落ちる前に呟くように告げられた「お前が居ないと、眠れもしない」という言葉だけが、空閑の耳でずっと反響し続けていた。
空閑に抱きかかえられながらも器用に眠り続ける汐見の身体をようやくベッドに横たえさせながら、空閑は汐見のあどけない寝顔を見つめる。普段は仏頂面を晒し、神経質そうな印象を周囲へと与える細面が表情筋も緩まっているのか眠っている時には少年のようにも見えて。
だまぞう
DONEどぽちによる5日間かけてお祝いするひふみんハピバ企画〜
会話だけですがR18気味なのでワンクッション
直接的な画はありません。
OKな方のみどうぞ〜
5日間企画…
できるのかい
できないのかい
どっちなんだいー!
できるー!
はず。 3
狭山くん
TRAINING2022-06-17/クソ重男2人連れに高師くんを添えて。道民、道外の人間に地元土産菓子振る舞うの好きでしょ(クソデカ主語)空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:17「お、良いとこに来たな」
冬季休暇に伴う寮の閉鎖によって帰省を余儀なくされた高師は、閉鎖期間終了日に合わせてこの雪に閉ざされた北の大地へと舞い戻ってきた。それは、高師へと声を掛けた男達も同様だったのだろう。まだ学生の姿も少ない寮の談話室の一角を占領していた四人の男――フェルマーと篠原そして空閑と汐見。その中で高師へと声を投げたのは篠原であった。
「お前らはドイツだったんじゃないのか」
フェルマーの実家に世話になる、と寮を出た筈の篠原は高師に頷いて「どうせお前も寮が開いたらすぐ帰ってくるだろ、ヴィンがそのタイミングで戻らない訳なくない?」と笑みを含んだ言葉を返す。
「ドイツまで行くんだったら、休暇ギリギリまで向こうにいるものだと思ってただけだ」
2318冬季休暇に伴う寮の閉鎖によって帰省を余儀なくされた高師は、閉鎖期間終了日に合わせてこの雪に閉ざされた北の大地へと舞い戻ってきた。それは、高師へと声を掛けた男達も同様だったのだろう。まだ学生の姿も少ない寮の談話室の一角を占領していた四人の男――フェルマーと篠原そして空閑と汐見。その中で高師へと声を投げたのは篠原であった。
「お前らはドイツだったんじゃないのか」
フェルマーの実家に世話になる、と寮を出た筈の篠原は高師に頷いて「どうせお前も寮が開いたらすぐ帰ってくるだろ、ヴィンがそのタイミングで戻らない訳なくない?」と笑みを含んだ言葉を返す。
「ドイツまで行くんだったら、休暇ギリギリまで向こうにいるものだと思ってただけだ」
狭山くん
TRAINING2022-06-16/今日の空閑汐♂はひとり寝汐見♂の話。この4日いちゃつかせるぞ!って言った割に切なめの仕上がりじゃん……明日いちゃつかせる為に今日はしっとりさせとくんだ……空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:16 暗い部屋の中で、ごろんと寝返りを打つ。苦もなく寝返りを打てるベッドの上で、汐見は一人小さく息を吐き出した。
学校は冬季休暇、それに伴って寮も休暇開始の数日後には閉鎖すると寮から追い出された汐見は、数日前には学校からは特急で一本――高速鉄道の恩恵により車であれば五時間近い道のりを一時間程度にまで縮め、生まれ育った地元へと戻ってきていた。
最初の数日間は、前回は宇宙港に併設された空港から帰省したという空閑が汐見について特急へと乗り込み観光を兼ねて遊び歩いた。汐見もその間実家に寄ることもなく、空閑と同じホテルで眠っていた。普段寝ているものよりも広いベッドが一つあるダブルルームで、普段のようにぴったりとくっ付いて。
1345学校は冬季休暇、それに伴って寮も休暇開始の数日後には閉鎖すると寮から追い出された汐見は、数日前には学校からは特急で一本――高速鉄道の恩恵により車であれば五時間近い道のりを一時間程度にまで縮め、生まれ育った地元へと戻ってきていた。
最初の数日間は、前回は宇宙港に併設された空港から帰省したという空閑が汐見について特急へと乗り込み観光を兼ねて遊び歩いた。汐見もその間実家に寄ることもなく、空閑と同じホテルで眠っていた。普段寝ているものよりも広いベッドが一つあるダブルルームで、普段のようにぴったりとくっ付いて。
狭山くん
TRAINING2022-06-15/季節感があんまりにも無さすぎる空閑汐♂デイリー冬のデート回。汐見の地元は狭山くんの地元でもあるんですが地元イルミネーションが100年先も続いてたらいいね(忘れがち近未来設定)空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:15 光のアーチを潜りながら、白く固められた地面を踏み締める。ほう、と感嘆のため息を吐いた空閑の隣で、汐見は既に見慣れているとでもいうようにいつも通りの仏頂面を晒していた。
「すごいね、綺麗だ」
「お前の地元にだって、これより凄いのあるんじゃないのか?」
「まぁ、至る所にあるんだとは思うけどさ、あんまり興味なかったから」
二度目の冬季休暇を迎え、数ヶ月前に友人同士でありクラスメイトであり部活の同期であり寮のルームメイトでもある空閑と汐見の関係に恋人というラベリングが為された事をいい事に地元に帰るという汐見に着いて彼の地元までやってきた空閑は、今年で百数十回目になるというイルミネーションの下を歩いていた。
そこでは古くからある旧式の電灯で形どられる鈴蘭やライラックの電飾から最新式の電飾を使った光のアートまで、様々な輝きが市街地を貫く緑地である筈の雪が積もる公園を彩り観光客や地元の人々を楽しませている。
1823「すごいね、綺麗だ」
「お前の地元にだって、これより凄いのあるんじゃないのか?」
「まぁ、至る所にあるんだとは思うけどさ、あんまり興味なかったから」
二度目の冬季休暇を迎え、数ヶ月前に友人同士でありクラスメイトであり部活の同期であり寮のルームメイトでもある空閑と汐見の関係に恋人というラベリングが為された事をいい事に地元に帰るという汐見に着いて彼の地元までやってきた空閑は、今年で百数十回目になるというイルミネーションの下を歩いていた。
そこでは古くからある旧式の電灯で形どられる鈴蘭やライラックの電飾から最新式の電飾を使った光のアートまで、様々な輝きが市街地を貫く緑地である筈の雪が積もる公園を彩り観光客や地元の人々を楽しませている。
狭山くん
TRAINING2022-06-14/空閑汐♂デイリー、今日は篠原と空閑の話。汐見はあの後抱き潰された模様。空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:14 日曜の昼下がり、広々とした寮の談話室に現れたのは篠原が呼び出した人物ではなかった。
「や、おはよ」
「もうおはようの時間じゃないだろ。空閑」
ジャージ姿で自身の端末を弄っていた篠原は、空閑の声に視線を向けながら溜息をひとつ。そこに立っていたのは十数時間前には恥も外聞もなく泣き喚いていたなんて忘れましたという顔をしてニコニコと笑みを浮かべる男である。
「俺は汐見を呼んだ筈なんだけどな」
昨夜の釣り銭を渡す為に呼び出した相手が空閑に変わった理由に見当が付かない程鈍くはないが、面倒臭い男二人に巻き込まれた篠原としてはそれでも文句の一つくらいは言いたくなるものだ。
「昨日アマネが出した分は俺が返したし、そうなると釣り銭の所有者は俺になるんだから間違いじゃないよ」
1370「や、おはよ」
「もうおはようの時間じゃないだろ。空閑」
ジャージ姿で自身の端末を弄っていた篠原は、空閑の声に視線を向けながら溜息をひとつ。そこに立っていたのは十数時間前には恥も外聞もなく泣き喚いていたなんて忘れましたという顔をしてニコニコと笑みを浮かべる男である。
「俺は汐見を呼んだ筈なんだけどな」
昨夜の釣り銭を渡す為に呼び出した相手が空閑に変わった理由に見当が付かない程鈍くはないが、面倒臭い男二人に巻き込まれた篠原としてはそれでも文句の一つくらいは言いたくなるものだ。
「昨日アマネが出した分は俺が返したし、そうなると釣り銭の所有者は俺になるんだから間違いじゃないよ」
狭山くん
TRAINING2022-06-12/本日のデイリーは後半へ続いたお前らさっさとくっ付け騒動。800字とは以下略。3日間に渡った告白編が書けて拙者満足でござる。
空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:12 どうしたもんか。
汐見はフェルマーから送られたメッセージを見つけてから数えて数度目になるその言葉を胸の内でだけ呟いて。涙に濡れた空閑の瞳と残る三人の男たちからの視線、合わせて八の瞳を向けられて居心地の悪さに少しだけ眉を寄せる。
「……アマネ」
所在なさげに小さく漏らされた空閑の声は、この一年半殆どの時間を共に過ごしていたというのにはじめて聞くかのような弱々しいもので。どこか赦しを乞うかのような色を帯びたその声に、汐見はこの場所に足を踏み入れてから二度目になる溜息を吐き出した。
「……おい、浩介」
「ん?」
ジーンズの尻ポケットに差し込んでいた財布を手に篠原へと言葉を掛けた汐見へ、彼はどうしたと言わんばかりに首を傾げて見せる。
2538汐見はフェルマーから送られたメッセージを見つけてから数えて数度目になるその言葉を胸の内でだけ呟いて。涙に濡れた空閑の瞳と残る三人の男たちからの視線、合わせて八の瞳を向けられて居心地の悪さに少しだけ眉を寄せる。
「……アマネ」
所在なさげに小さく漏らされた空閑の声は、この一年半殆どの時間を共に過ごしていたというのにはじめて聞くかのような弱々しいもので。どこか赦しを乞うかのような色を帯びたその声に、汐見はこの場所に足を踏み入れてから二度目になる溜息を吐き出した。
「……おい、浩介」
「ん?」
ジーンズの尻ポケットに差し込んでいた財布を手に篠原へと言葉を掛けた汐見へ、彼はどうしたと言わんばかりに首を傾げて見せる。
はるもん🌸
MOURNING怒らせたい魏嬰とビビる思追【藍思追の心配】魏無羨が弟子数人に集まれと言ったくせに、本人が遅刻する時がある。
そんな時、静室にいる魏無羨を呼ぶのはいつも藍思追の役目となっていた。『魏先輩、迎えにきました』と声を出そうとしたその時だ。
「ああ、悪かった藍湛!もうしない、しないったら許せ!」
「いつも口ばかり。全く反省がない」
今日もやっている、と藍思追は片手で顔を覆った。
「ほらほらそんなに怒るな、藍思追がそこまで来てるんだ。今日の所はひとまず許してくれ、頼むよ」
気配だけで自分の居場所を察知したのかと藍思追は驚く。
****
弟子達が待つ場所へと魏無羨を連れていく際、今度は何を含光君にしでかしたのかを聞いてみた。
すると、魏無羨はいつものようにヘラリと笑って「大人の秘密だ」と言ってごまかすのだ。藍思追はそこまで大人の事情に詳しくはなかった。
992そんな時、静室にいる魏無羨を呼ぶのはいつも藍思追の役目となっていた。『魏先輩、迎えにきました』と声を出そうとしたその時だ。
「ああ、悪かった藍湛!もうしない、しないったら許せ!」
「いつも口ばかり。全く反省がない」
今日もやっている、と藍思追は片手で顔を覆った。
「ほらほらそんなに怒るな、藍思追がそこまで来てるんだ。今日の所はひとまず許してくれ、頼むよ」
気配だけで自分の居場所を察知したのかと藍思追は驚く。
****
弟子達が待つ場所へと魏無羨を連れていく際、今度は何を含光君にしでかしたのかを聞いてみた。
すると、魏無羨はいつものようにヘラリと笑って「大人の秘密だ」と言ってごまかすのだ。藍思追はそこまで大人の事情に詳しくはなかった。
狭山くん
TRAINING2022-06-11/前日からの続きみたいな感じではありますが、前日読まなくてもまぁって感じでもある。文字数など考えるな。後半へ続く!(キートン山田声で)空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:11「アマネが足りない……絶対避けられてる……ッ!」
眼前のテーブルにそんな叫び声と共に突っ伏せる空閑の姿へ憐憫を孕んだ視線を向けるのは隣に座る篠原で。
「汐見だって忙しいんだろう、クラスも部活も部屋も同じなら避けようもないんじゃないか?」
眉を寄せながらも不思議そうに首を傾げる高師に「うんまぁ、これは避けられてるよねぇ」とやんわりとした語調ながらもはっきりとそう口にしたフェルマーは、突っ伏せたままの空閑の頭部へと視線を向けて言葉を重ねる。
「で、今度はアマネに何したのさ」
「全然身に覚えが無いんだよ。ここ一週間くらい、部活が終わってから消灯までどこかに行っちゃうし、どうしたのって訊いたら補習だって言うし……主席のアマネが補習だったらそんなんクラス全員補習でしょう!?」
2179眼前のテーブルにそんな叫び声と共に突っ伏せる空閑の姿へ憐憫を孕んだ視線を向けるのは隣に座る篠原で。
「汐見だって忙しいんだろう、クラスも部活も部屋も同じなら避けようもないんじゃないか?」
眉を寄せながらも不思議そうに首を傾げる高師に「うんまぁ、これは避けられてるよねぇ」とやんわりとした語調ながらもはっきりとそう口にしたフェルマーは、突っ伏せたままの空閑の頭部へと視線を向けて言葉を重ねる。
「で、今度はアマネに何したのさ」
「全然身に覚えが無いんだよ。ここ一週間くらい、部活が終わってから消灯までどこかに行っちゃうし、どうしたのって訊いたら補習だって言うし……主席のアマネが補習だったらそんなんクラス全員補習でしょう!?」
狭山くん
TRAINING2022-06-10/空閑汐♂デイリー、遂に2000字超えてて800字チャレンジとは……?ってなってます。しかも空閑が出て来ない汐見独白回である。篠原は空気を読む男だよ!
空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:10 時折足を向けるその場所で篠原の視界に現れたのは、汐見の姿であった。
「珍しいな、こんな所で」
「お前こそ」
心底珍しいものを見るような視線を汐見に向ければ、汐見は鬱陶しそうに片手をひらりと振りながらも篠原へと言葉を返す。汐見が珍しい訳ではない、部活で飽きる程に顔を合わせているから。珍しかったのは、彼が一人で大学部に併設された図書館に居る事だった。
高等部と大学部――そして学生と教員たちの宿舎や食堂だのコンビニだのが併設された広大な敷地からなるひとつの町のようなこの場所で、高等部の生徒が大学部の図書館に揃うのは珍しい事だった。課題をこなす為の文献をあたるのであれば高等部でも事足りる。
篠原は大学部に在籍する学生との逢瀬の為に時折この場所を訪れていたが、篠原が入学してから一年半を過ぎた今までの間、汐見を含めた高等部の生徒と出会うという事はなかったのだ。
2324「珍しいな、こんな所で」
「お前こそ」
心底珍しいものを見るような視線を汐見に向ければ、汐見は鬱陶しそうに片手をひらりと振りながらも篠原へと言葉を返す。汐見が珍しい訳ではない、部活で飽きる程に顔を合わせているから。珍しかったのは、彼が一人で大学部に併設された図書館に居る事だった。
高等部と大学部――そして学生と教員たちの宿舎や食堂だのコンビニだのが併設された広大な敷地からなるひとつの町のようなこの場所で、高等部の生徒が大学部の図書館に揃うのは珍しい事だった。課題をこなす為の文献をあたるのであれば高等部でも事足りる。
篠原は大学部に在籍する学生との逢瀬の為に時折この場所を訪れていたが、篠原が入学してから一年半を過ぎた今までの間、汐見を含めた高等部の生徒と出会うという事はなかったのだ。
狭山くん
TRAINING2022-06-09/デイリー空閑汐♂に高師くん初登場。空閑汐♂に巻き込まれる高師くん、一匹狼気取ってる暇もなくツッコミ役に回るしかなくなってて笑ってる。空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:09 人間というのは、こんなにも綺麗な弧を描いて飛ぶものなのか。高師駿馬はその光景を見ながら、ぼんやりとそんな事を考えていた。
「アイツ、また汐見怒らせたな」
夏休みに入っても、全寮制のこの学校から帰らない人間は多少は存在している。高師しかり、隣でボソリと言葉を漏らしていた篠原しかり。そして彼らの目の前で模擬試合を行なっていた筈の汐見と空閑もまた、帰省をせず学校に残った生徒であった。
「……あれ、本当に汐見なのか?」
「汐見じゃなかったら誰なんだよ」
思わず防具で覆われ表情が見えない二人の男達が自分の認識と相違ないか確認してしまう高師に、篠原は苦笑混じりで相違ないと口にする。高師が知る汐見は長身の部類に入るだろう高師自身とあまり変わらない身長ではあるが、今宙を飛んだ空閑よりは背が低く、体格にしても空閑よりは薄い体つきをしていた筈だ。
1477「アイツ、また汐見怒らせたな」
夏休みに入っても、全寮制のこの学校から帰らない人間は多少は存在している。高師しかり、隣でボソリと言葉を漏らしていた篠原しかり。そして彼らの目の前で模擬試合を行なっていた筈の汐見と空閑もまた、帰省をせず学校に残った生徒であった。
「……あれ、本当に汐見なのか?」
「汐見じゃなかったら誰なんだよ」
思わず防具で覆われ表情が見えない二人の男達が自分の認識と相違ないか確認してしまう高師に、篠原は苦笑混じりで相違ないと口にする。高師が知る汐見は長身の部類に入るだろう高師自身とあまり変わらない身長ではあるが、今宙を飛んだ空閑よりは背が低く、体格にしても空閑よりは薄い体つきをしていた筈だ。
狭山くん
TRAINING2022-06-08/今日のデイリー空閑汐♂はおっぱじめてないのでギリギリセーフだと思ってる。文字数は800字って何だっけみたいになってた。いつもの事。空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:08 シングルサイズの二段ベッド下段、それがこの学校で汐見へと与えられた寝床である。一応プライベートを保つという名目なのだろう、上段に打ち付けられたカーテンレールには重そうな布地で作られたカーテンがぶら下げられていた。そのカーテンは幾度かその役目を果たしていたが、すぐに使われることはなくなっていた。
汐見がこの学校に入学してから一年以上を経た今日も、ベッドの周囲を覆うカーテンは使われていない。
「……暑苦しい」
不服そうに漏らされた汐見の声に、彼を背後から抱きすくめる空閑は小さく笑い声を漏らす。
「でも、アマネ俺とくっついてるの好きじゃん」
汐見の首筋に鼻先を埋めながらそう口にする空閑は、彼の項へ唇を落とし小さく吸い付いて。しかしその行為はどこか性の予感とは別の所にあって、汐見は空閑の好きなようにさせていた。
1273汐見がこの学校に入学してから一年以上を経た今日も、ベッドの周囲を覆うカーテンは使われていない。
「……暑苦しい」
不服そうに漏らされた汐見の声に、彼を背後から抱きすくめる空閑は小さく笑い声を漏らす。
「でも、アマネ俺とくっついてるの好きじゃん」
汐見の首筋に鼻先を埋めながらそう口にする空閑は、彼の項へ唇を落とし小さく吸い付いて。しかしその行為はどこか性の予感とは別の所にあって、汐見は空閑の好きなようにさせていた。
狭山くん
TRAINING2022-06-07/空閑汐♂デイリー、距離感バグ警察ササハラくん頑張れの巻。汐見はマジで痕付けられてる事に気付いてないし、その後に空閑に鉄拳制裁食らわせてる。空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:07 放課後の武道場に併設されている更衣室で並び立ち制服を脱いでいた篠原は、隣に立つ空閑の背中に走る幾筋もの朱い痕を目にしていた。
――お盛んな事で。
背中の爪痕を付けられた側も、おそらく付けた側であるだろうもう一人の男もそんな情事の痕など気にも止めずに制服を脱ぎ剣道着を纏っていく。経験者である汐見は元より高校入学を機に剣道を始めた空閑も手慣れたように袴の紐をキュッと結ぶ様を横目に、篠原も同じように紺袴の紐をきっちりと結んで。
そうして更衣室を連れ立って出て行こうとした所で、汐見の纏う剣道着の隙間に見えた朱に目を剥いた。
「待て待て待て待て汐見! 出るな!!」
思わずそんな叫び声と共に汐見を押しとどめようと身体ごと彼へぶつかって行った篠原は、びくともしない汐見に受け止められる。ひょろりとした長身の汐見は、体当たりでもすればよろめいてしまいそうな線の細さを持った男であるが――しっかりとした体幹としっかりと付けられた実用的な筋肉で、自身よりも体格のいい空閑ですら稽古中に体当たりで飛ばすような人間だという事は篠原もこの半年以上経った関係の中で知っていた。
842――お盛んな事で。
背中の爪痕を付けられた側も、おそらく付けた側であるだろうもう一人の男もそんな情事の痕など気にも止めずに制服を脱ぎ剣道着を纏っていく。経験者である汐見は元より高校入学を機に剣道を始めた空閑も手慣れたように袴の紐をキュッと結ぶ様を横目に、篠原も同じように紺袴の紐をきっちりと結んで。
そうして更衣室を連れ立って出て行こうとした所で、汐見の纏う剣道着の隙間に見えた朱に目を剥いた。
「待て待て待て待て汐見! 出るな!!」
思わずそんな叫び声と共に汐見を押しとどめようと身体ごと彼へぶつかって行った篠原は、びくともしない汐見に受け止められる。ひょろりとした長身の汐見は、体当たりでもすればよろめいてしまいそうな線の細さを持った男であるが――しっかりとした体幹としっかりと付けられた実用的な筋肉で、自身よりも体格のいい空閑ですら稽古中に体当たりで飛ばすような人間だという事は篠原もこの半年以上経った関係の中で知っていた。
狭山くん
TRAINING2022-06-05/今日のデイリー空閑汐♂はササハラとヴィンから見た空閑汐♂である。この時点で空閑汐♂お互い恋愛感情については無自覚。
距離感バク警察ササハラくんは頑張ってって感じ。
空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:05「アマネ! 今日部活休みになったから、浩介くんとヴィンくんが宇宙港行かないかって」
廊下に立つ篠原浩介は呼びに行った相手が居る教室から聞こえてきたその言葉を耳にして、少しの違和感に首を傾げた。隣に立つヴィンツェンツ・S・フェルマーはそんな篠原の仕草と、聴こえて来た言葉にどこか楽しそうな笑い声を小さく漏らす。
「ねぇ、コースケ。ヒロミがアマネの事呼び捨てにしてるよ」
「え? あぁ、違和感そこか。何かアイツら無駄に距離近いよな……」
汐見と空閑の二人とは所属するコースが異なる篠原とフェルマーは、篠原が彼らと同じ部活であると言う所からよく顔を合わせていた。フェルマー曰く「コースは違うけど一年で浮いてるもの同士仲良くなる余地めちゃくちゃあるよね」と言う関係性で。
1706廊下に立つ篠原浩介は呼びに行った相手が居る教室から聞こえてきたその言葉を耳にして、少しの違和感に首を傾げた。隣に立つヴィンツェンツ・S・フェルマーはそんな篠原の仕草と、聴こえて来た言葉にどこか楽しそうな笑い声を小さく漏らす。
「ねぇ、コースケ。ヒロミがアマネの事呼び捨てにしてるよ」
「え? あぁ、違和感そこか。何かアイツら無駄に距離近いよな……」
汐見と空閑の二人とは所属するコースが異なる篠原とフェルマーは、篠原が彼らと同じ部活であると言う所からよく顔を合わせていた。フェルマー曰く「コースは違うけど一年で浮いてるもの同士仲良くなる余地めちゃくちゃあるよね」と言う関係性で。
kaitolanma
DOODLE何度も連投してることになってた!すみません💦最近ハマってるゲームのイワノフとドミニコ描いてみた。今時あまり見かけない筋肉多めのデザインなのがたまらん…😏
ロシア系ボクサーにイタリア殺し屋が受けるとか美味い🍽声もたまらんのよ、実はぼくてきとろはん笑 3
穂山野
DONE【マッキャリ】2019.2 かべうちに置いたもの。診断メーカーのお題「どうしてこんなにも」
どうしてこんなにもなにをしていても気にはなるのだから仕方がない、という諦観をキャリバーには抱く。
ボラーもヴィットも気にはなるのだが、それぞれ「大丈夫だな」というところに帰着するので余程深刻でない限りはそっとしておく。
それが適度な距離感だと思う。それぞれ大人であるのだし。
この身体年齢に見合うような記憶も記録も私たちは持っている。
ツツジ台に降りてきた私たちが裕太や六花、内海と関わる中で得たものは「自分でも自分が思うようにならない」ことや「自分で答えが出せないこと」があるということだった。
今まではそういったことはなかったのだ。
人であることを学習して記憶していく過程で「気にしなくていい」ということができなくなった。
初めてのことだ。
725ボラーもヴィットも気にはなるのだが、それぞれ「大丈夫だな」というところに帰着するので余程深刻でない限りはそっとしておく。
それが適度な距離感だと思う。それぞれ大人であるのだし。
この身体年齢に見合うような記憶も記録も私たちは持っている。
ツツジ台に降りてきた私たちが裕太や六花、内海と関わる中で得たものは「自分でも自分が思うようにならない」ことや「自分で答えが出せないこと」があるということだった。
今まではそういったことはなかったのだ。
人であることを学習して記憶していく過程で「気にしなくていい」ということができなくなった。
初めてのことだ。
狭山くん
TRAINING2022-06-03/800字チャレンジって言って800字で収まった試しがない……デイリー空閑汐♂3日目。空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:03 入学式から数週間、空閑は目の前にある背中を飽きもせず眺めていた。あからさまに入学時の成績順と分かる席順で、空閑は最後列窓際という特等席を手にしていた。その前に座るのは、次席入学だという汐見である。
――相変わらず、姿勢がいいなぁ。
しゃんと伸ばされた背筋は、他を寄せ付けないような近付き難い空気をも纏っていたが空閑にはそれすらも関係ない。
入学式前、新入生の入寮が開始した途端に寮生活を始めた空閑と汐見は他のクラスメイト達よりも少しだけ寮内の先輩達や別クラスに居る同期数人との交流を持っていた上――無事汐見が所属する剣道部に入部を果たした空閑は、大体の時間を汐見と共に行動していたからか彼の態度が単なる人付き合いの下手さから来るものである事を知ったのだ。
1157――相変わらず、姿勢がいいなぁ。
しゃんと伸ばされた背筋は、他を寄せ付けないような近付き難い空気をも纏っていたが空閑にはそれすらも関係ない。
入学式前、新入生の入寮が開始した途端に寮生活を始めた空閑と汐見は他のクラスメイト達よりも少しだけ寮内の先輩達や別クラスに居る同期数人との交流を持っていた上――無事汐見が所属する剣道部に入部を果たした空閑は、大体の時間を汐見と共に行動していたからか彼の態度が単なる人付き合いの下手さから来るものである事を知ったのだ。
狭山くん
TRAINING2022-06-02/昨日からはじめた800字チャレンジ、2日目にして500字オーバーは誤差で……いいのか……?剣道部書くの楽しいでござる。空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:02 道場の片隅に詰まれた畳が、激しい音を立てる。その音に、汐見の手は思わず額へと伸ばされた。
「俺、お前の面だけは絶対に受けたくないんだが?」
「えぇ? 良いセン行ってると思ったんだけどなぁ」
分かりやすく途方に暮れたように額に手を当てながら、溜息混じりで告げられた汐見の言葉に空閑は心外だとでも言うように首を傾げる。そんな空閑の言葉に「ポジティブシンキング野郎かよ」と呆れ返った声色で返した汐見は空閑の隣で手にした竹刀を畳に向かって構えて見せる。
トントンと位置を確認するように幾度か剣先で畳を捉えた汐見は、その竹刀を振りかぶる。一閃。空気を切る音に次いで、竹刀が畳を叩く軽やかな音が響いた。
「こうだ。お前のは、こう」
1332「俺、お前の面だけは絶対に受けたくないんだが?」
「えぇ? 良いセン行ってると思ったんだけどなぁ」
分かりやすく途方に暮れたように額に手を当てながら、溜息混じりで告げられた汐見の言葉に空閑は心外だとでも言うように首を傾げる。そんな空閑の言葉に「ポジティブシンキング野郎かよ」と呆れ返った声色で返した汐見は空閑の隣で手にした竹刀を畳に向かって構えて見せる。
トントンと位置を確認するように幾度か剣先で畳を捉えた汐見は、その竹刀を振りかぶる。一閃。空気を切る音に次いで、竹刀が畳を叩く軽やかな音が響いた。
「こうだ。お前のは、こう」
穂山野
DONE【マッキャリ】+【新世紀中学生】2019.2 診断メーカーのお題などで書いたSS6本をまとめたもの
色彩キャリバーんちさあ、猫が家主って感じだったぜ、とボラーがアイスミルクティーにガムシロップを入れながら話す。
ふーん、とさして興味のなさそうにとりあえず相槌だけ打つヴィットの声。
「お前もうちょっとなんかあんだろ」ボラーはそうやっていつもヴィットの相槌に同じ言葉を返す。
「マックス、もう一個ガムシロ」と手を伸ばすボラーに自分のアイスコーヒーについてきたガムシロップを渡す。
「どんな部屋だった」
その質問にチラリと視線だけを投げ、
「まあ、おおかた想像通りって感じ。猫のものはキチンとしててさ、新しくてキレイにしてんだけど他はなんもねえ感じの」
寝るためのベッド。
食べるための食器。
ガランとしたキッチンは必要最小限ですらない。
9359ふーん、とさして興味のなさそうにとりあえず相槌だけ打つヴィットの声。
「お前もうちょっとなんかあんだろ」ボラーはそうやっていつもヴィットの相槌に同じ言葉を返す。
「マックス、もう一個ガムシロ」と手を伸ばすボラーに自分のアイスコーヒーについてきたガムシロップを渡す。
「どんな部屋だった」
その質問にチラリと視線だけを投げ、
「まあ、おおかた想像通りって感じ。猫のものはキチンとしててさ、新しくてキレイにしてんだけど他はなんもねえ感じの」
寝るためのベッド。
食べるための食器。
ガランとしたキッチンは必要最小限ですらない。
狭山くん
TRAINING2022-06-01/空閑汐♂で800字を量産したいフェアをはじめます。800字と言いながら900字超えました。前後200字は誤差が合言葉(酷い)空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:01「あぁ、同室か」
ボストンバッグ一つ肩に下げ、その部屋に足を踏み入れた空閑の目の前に座った――より詳しく言えば、部屋を二分するように中央に置かれたベッドの下段に腰掛け文庫本を開いていた青年が、その手の本をパタンと閉じながら入り口に立ったままの空閑へと声を投げる。
「確か、空閑だったか」
「うん、クガヒロミ。ええと、汐見くんだったよね」
淡々と言葉を紡ぐ青年へ頷いた空閑は、入り口に貼られた名札を思い返しながら問いかける。その言葉に頷いた青年――汐見は「シオミアマネ」とその名を名乗った。
「入寮開始は昨日だっけど、入学式までは日があるよね? 昨日から来てたの?」
窓際のデスクがすっかり汐見の私物に囲まれてる様を見ながら、空閑は自身が先に送っていた段ボール数箱が積まれたその上にボストンバッグを載せ汐見へと問いかける。
944ボストンバッグ一つ肩に下げ、その部屋に足を踏み入れた空閑の目の前に座った――より詳しく言えば、部屋を二分するように中央に置かれたベッドの下段に腰掛け文庫本を開いていた青年が、その手の本をパタンと閉じながら入り口に立ったままの空閑へと声を投げる。
「確か、空閑だったか」
「うん、クガヒロミ。ええと、汐見くんだったよね」
淡々と言葉を紡ぐ青年へ頷いた空閑は、入り口に貼られた名札を思い返しながら問いかける。その言葉に頷いた青年――汐見は「シオミアマネ」とその名を名乗った。
「入寮開始は昨日だっけど、入学式までは日があるよね? 昨日から来てたの?」
窓際のデスクがすっかり汐見の私物に囲まれてる様を見ながら、空閑は自身が先に送っていた段ボール数箱が積まれたその上にボストンバッグを載せ汐見へと問いかける。
穂山野
DONE2015.2.17 金荒ワンドロ「吠える」吠える「うちの裏藪からよぉ、なんか聞こえんじゃ…」と三人で夕飯食べていると待宮が言う。
待宮の家は三人の中では一番山に近く、坂の上にある。
その裏の藪から何か鳴き声が聞こえたという。
待宮と俺はそれがなんの生き物かとしばらく話していた。
猿じゃないかとか、猿はあんな風に鳴かんじゃろと待宮が猿の真似をして、それがあまりに下らなくて二人で笑っていると、その光景を不思議そうに見ていた荒北が
「猿ってさァ、そんなよく見る?」
と聞く。
待宮と俺は顔を見合わせる。
「お前はほんと、都会の子じゃな」と待宮が鼻で笑う。
その横で頷いている俺を見た荒北が裏切られたような顔をしてこちらを見た。
「猿、見たことないのか」と聞くと
「猿は動物園で見るもんだろォ?」と言う。
1416待宮の家は三人の中では一番山に近く、坂の上にある。
その裏の藪から何か鳴き声が聞こえたという。
待宮と俺はそれがなんの生き物かとしばらく話していた。
猿じゃないかとか、猿はあんな風に鳴かんじゃろと待宮が猿の真似をして、それがあまりに下らなくて二人で笑っていると、その光景を不思議そうに見ていた荒北が
「猿ってさァ、そんなよく見る?」
と聞く。
待宮と俺は顔を見合わせる。
「お前はほんと、都会の子じゃな」と待宮が鼻で笑う。
その横で頷いている俺を見た荒北が裏切られたような顔をしてこちらを見た。
「猿、見たことないのか」と聞くと
「猿は動物園で見るもんだろォ?」と言う。
穂山野
DONE2015.2.5 フォロワーさんのイラストから文章を起こす企画まるやまさん(@hayao_world)のイラストから書いたもの
来訪「そちらに伺ってもいいですか」という電話があったのは一週間前だった。
自分の部屋は広い訳ではないので、三人で来る、と言われた時は少し考えた。折り返すから、と言って電話を切り、なんとなく不機嫌そうな荒北を見る。
遊びに来たいそうだ、と告げる。
ふーんと返事をした荒北に「小野田も来るぞ」と言うと顔を上げ
「それはいいんだけどさァ、あのエリートチャンと赤頭も来んだろ?」
嫌いなのか、と聞くと「いや、あっちのが好きじゃないと思うんだヨネ」と言った。
自分たちはもうチームメイトであり、過去の諸々も差し出せば腹に納めることが出来る位には話をした。他にもたくさんのことを共有しているし信頼している。でもあいつらは違うだろ、というのが荒北の意見だった。
1512自分の部屋は広い訳ではないので、三人で来る、と言われた時は少し考えた。折り返すから、と言って電話を切り、なんとなく不機嫌そうな荒北を見る。
遊びに来たいそうだ、と告げる。
ふーんと返事をした荒北に「小野田も来るぞ」と言うと顔を上げ
「それはいいんだけどさァ、あのエリートチャンと赤頭も来んだろ?」
嫌いなのか、と聞くと「いや、あっちのが好きじゃないと思うんだヨネ」と言った。
自分たちはもうチームメイトであり、過去の諸々も差し出せば腹に納めることが出来る位には話をした。他にもたくさんのことを共有しているし信頼している。でもあいつらは違うだろ、というのが荒北の意見だった。
穂山野
DONE金荒ワンライ 2016.10.17「星空」星空初めて買った車は中古で、昔、憧れていた人が乗っていた車に似ていた。
それを選んだとき俺の中にあったのはほんの僅かな感傷だったが、荒北は違った。内装、エンジンの状態、塗装なんかをよく確認し、走行距離を見ながら店員としばらく話していた。その店員は最後の最後まで買うのは荒北だと思っていたくらい熱心だった。
あとでなぜそこまで熱心にと聞いたその答えは「え、ただ好きだから」というそれだけの理由だった。今思えば俺は、静岡の小さな中古車店に感傷とかそういうものは置いてきてしまったのだ。
「あれでいいんじゃナイ」と車を指差した荒北は、それから何年もその車で一緒にあちらこちらを走った。
「眠くなったら車で寝ればいい」と言った荒北とはなにもない田舎のパーキングエリアの端で並んで寝転がった。お世辞にも広くないから、もうちょっと詰めろとかそっちが肘を引けとか最初は揉めた。
1170それを選んだとき俺の中にあったのはほんの僅かな感傷だったが、荒北は違った。内装、エンジンの状態、塗装なんかをよく確認し、走行距離を見ながら店員としばらく話していた。その店員は最後の最後まで買うのは荒北だと思っていたくらい熱心だった。
あとでなぜそこまで熱心にと聞いたその答えは「え、ただ好きだから」というそれだけの理由だった。今思えば俺は、静岡の小さな中古車店に感傷とかそういうものは置いてきてしまったのだ。
「あれでいいんじゃナイ」と車を指差した荒北は、それから何年もその車で一緒にあちらこちらを走った。
「眠くなったら車で寝ればいい」と言った荒北とはなにもない田舎のパーキングエリアの端で並んで寝転がった。お世辞にも広くないから、もうちょっと詰めろとかそっちが肘を引けとか最初は揉めた。
穂山野
DONE2017.12.1 金城真護誕生日に書いたもの夜が明けるころあの古びた温室は薬学部のもので、校舎から少し離れているから普段はあんまり人を見かけない。
オレが金城に教えたんだ。
部の先輩ですごく猫が好きな人がいる。
こっそり構内の猫スポットを共有してる。
なぜこっそりなのかと言えば、先輩は顔立ちが怖い。オレはこういう性格だから、学部とか部でも猫の話で盛り上がってたりするときなんかには混ざらない。
先輩のリュックにはキーホルダーが付けてある。小さいやつだし普段は見えないようにポケットに突っ込まれてるけどあれは猫だと気付いた。だから小声で「先輩、もしかして、ね」まで言ったら「やっぱり荒北もか」と笑った。笑っても先輩の顔立ちは怖い。
けど先輩とオレは細々と独り『猫道』を極めてきたみたいなところがあって気が合った。
1806オレが金城に教えたんだ。
部の先輩ですごく猫が好きな人がいる。
こっそり構内の猫スポットを共有してる。
なぜこっそりなのかと言えば、先輩は顔立ちが怖い。オレはこういう性格だから、学部とか部でも猫の話で盛り上がってたりするときなんかには混ざらない。
先輩のリュックにはキーホルダーが付けてある。小さいやつだし普段は見えないようにポケットに突っ込まれてるけどあれは猫だと気付いた。だから小声で「先輩、もしかして、ね」まで言ったら「やっぱり荒北もか」と笑った。笑っても先輩の顔立ちは怖い。
けど先輩とオレは細々と独り『猫道』を極めてきたみたいなところがあって気が合った。
穂山野
DONE2018年に発行された「金荒コタツアンソロジーKOTATSU」に寄稿したものです。二人の設定には多くの捏造、幻覚を含みます。
2022.6.1 ポイピクへ移動
コタツ渋滞は二十キロだとラジオの交通情報が告げる。
二人で全力のため息を吐き、もうぬるくなってしまった缶コーヒー、かたや寒いと怒りながら飲むのはいつも冷えたベプシである荒北がペットボトルのキャップを捻る。
次のパーキングエリアまであとどれくらいかかるか目算が立たない。
この三連休に車を借りて出かけたのは南房総を鶏の形に例えたとしたら頭部をぐるりと百キロ走るレース。
幸い天候に恵まれ、平坦の長く続くコースを思いっきり走ることができ「また来年出よう」とフニッシュしてすぐ二人で話したくらい気持ちがよかった。
泊まった民宿は海のすぐそばにあった。民宿の主人が船を操舵し、釣り客を乗せ海釣りに出るいわゆる釣宿で、宿泊者はいつもほとんどが釣り客なので10代の自分たちが自転車を持ち込んで宿泊したことは民宿を経営する夫妻には珍しかったらしい。
5092二人で全力のため息を吐き、もうぬるくなってしまった缶コーヒー、かたや寒いと怒りながら飲むのはいつも冷えたベプシである荒北がペットボトルのキャップを捻る。
次のパーキングエリアまであとどれくらいかかるか目算が立たない。
この三連休に車を借りて出かけたのは南房総を鶏の形に例えたとしたら頭部をぐるりと百キロ走るレース。
幸い天候に恵まれ、平坦の長く続くコースを思いっきり走ることができ「また来年出よう」とフニッシュしてすぐ二人で話したくらい気持ちがよかった。
泊まった民宿は海のすぐそばにあった。民宿の主人が船を操舵し、釣り客を乗せ海釣りに出るいわゆる釣宿で、宿泊者はいつもほとんどが釣り客なので10代の自分たちが自転車を持ち込んで宿泊したことは民宿を経営する夫妻には珍しかったらしい。
穂山野
DONE2016年に発行された「金荒年齢操作アンソロ:未来予想図1712」に寄稿したものです。設定やキャラクターには多くの捏造、幻覚を含みます。
2022.6.1 ポイピクへ移動
朱い夏今年の夏は特に暑い。
毎年そう思う気がするけど、今年は絶対史上最高に暑い。
それを毎日確認する地下鉄のホームに電車が滑り込んでくる。
朝の通勤電車に慣れることは別に嬉しいことでもなんでもない。
でも、こうやって朝晩通っていればいつの間にか体も勝手に線路のカーブを憶えて勝手に左右の足に力を入れ、ぎゅうぎゅうと押されて身動きできないまま目を閉じれば短い夢を見ることもある。
今朝は目を閉じると富士山が目の裏に映った。
朝、支度をするときテレビを点けるのは時間を確認するためだから音は切ってある。
だからなぜ、画面に富士山が映ってたのかわからないけど、支度の手を止めて何十秒かその映像をぼうっと突っ立ったまま見ていた。
俺は静岡を離れて横浜に戻って五年になる。
8546毎年そう思う気がするけど、今年は絶対史上最高に暑い。
それを毎日確認する地下鉄のホームに電車が滑り込んでくる。
朝の通勤電車に慣れることは別に嬉しいことでもなんでもない。
でも、こうやって朝晩通っていればいつの間にか体も勝手に線路のカーブを憶えて勝手に左右の足に力を入れ、ぎゅうぎゅうと押されて身動きできないまま目を閉じれば短い夢を見ることもある。
今朝は目を閉じると富士山が目の裏に映った。
朝、支度をするときテレビを点けるのは時間を確認するためだから音は切ってある。
だからなぜ、画面に富士山が映ってたのかわからないけど、支度の手を止めて何十秒かその映像をぼうっと突っ立ったまま見ていた。
俺は静岡を離れて横浜に戻って五年になる。
穂山野
DONE2015.11.10 金荒ワンドロ「毛布」毛布荒北が今、包まっている毛布はもう随分長いこと使っているような風合いだった。
うちにも、荒北の家にも静岡に越してきた時に買った新しい毛布があるのだが。
春先は一緒に過ごしても泊まっていくことは滅多になかった。
梅雨の時期が始まった頃にぽつりぽつり帰らない日ができて、客用の布団で寝るようになったけれど、もうその頃には毎日が湿気の粒で覆われたみたいな天気が続いた。
その頃にはうちにある一部のものは荒北のものになっていたし、それが当たり前になっていた。
荒北がここにいることも。それが当たり前のように。
夏の暑さを越えて秋の爽涼を感じる頃になると荒北が自宅から一枚の毛布を持ってきた。
その毛布のタグには『荒北』と小さく書いてあって、ところどころ毛羽立っていた。
1504うちにも、荒北の家にも静岡に越してきた時に買った新しい毛布があるのだが。
春先は一緒に過ごしても泊まっていくことは滅多になかった。
梅雨の時期が始まった頃にぽつりぽつり帰らない日ができて、客用の布団で寝るようになったけれど、もうその頃には毎日が湿気の粒で覆われたみたいな天気が続いた。
その頃にはうちにある一部のものは荒北のものになっていたし、それが当たり前になっていた。
荒北がここにいることも。それが当たり前のように。
夏の暑さを越えて秋の爽涼を感じる頃になると荒北が自宅から一枚の毛布を持ってきた。
その毛布のタグには『荒北』と小さく書いてあって、ところどころ毛羽立っていた。
穂山野
DONE静岡の洋南大学に通う金城と荒北と待宮の夏休みに過ごす一日の話です。広島弁は相変わらずふんわりした感じです。土地、家族、関係性、免許の有無などはファンフィクションです。
初出:2015.09.18 Pixiv
2022.6.1 ポイピクへ移動
向日葵インターホンは壊れてだいぶ経つ。
不動産屋にはにゃぁゆぅたような気がするけど、なかなか合わん予定を擦り合わせとるうちにどうでもようなってそのまま。
うちに来る奴はあまりいないんじゃ。金城か荒北か。あとは部の先輩がたまに。げにたまに。
じゃけぇ今、ドアをガンガン叩いとるんはたぶん荒北で「いンだろォ」の巻き舌はチンピラのようでなんてゆうかこう、ご近所にぶち印象が悪い、ワシの。
慌ててドアを開けると予想通り荒北で、ワシの格好を見て「なんか着ろよ」と呆れたように言う。
「なんじゃワレ、いきなり来てそれか」
荒北はレンタカー会社の記された鍵を見せ「出かけんぞ」と言った。
隙を見て黙ってドアを閉めようとしたんじゃ。が、きしゃっと荒北の足でドアは押さえられとる。
6371不動産屋にはにゃぁゆぅたような気がするけど、なかなか合わん予定を擦り合わせとるうちにどうでもようなってそのまま。
うちに来る奴はあまりいないんじゃ。金城か荒北か。あとは部の先輩がたまに。げにたまに。
じゃけぇ今、ドアをガンガン叩いとるんはたぶん荒北で「いンだろォ」の巻き舌はチンピラのようでなんてゆうかこう、ご近所にぶち印象が悪い、ワシの。
慌ててドアを開けると予想通り荒北で、ワシの格好を見て「なんか着ろよ」と呆れたように言う。
「なんじゃワレ、いきなり来てそれか」
荒北はレンタカー会社の記された鍵を見せ「出かけんぞ」と言った。
隙を見て黙ってドアを閉めようとしたんじゃ。が、きしゃっと荒北の足でドアは押さえられとる。
穂山野
DONEバレンタインデーの日の話2016年の金狼2で発行した本「静止」の中に収めたものの再録です。
2022.6.1 ポイピクへ移動
Chocolate今朝から金城の隣を歩くと視線が痛い。
よくあることだけど今日は特に。
二月十四日、バレンタインデー。
一緒に歩いてると金城が呼び止められる。もう何度目だったか。途中で数えんのやめたからわかんねえ。
一生懸命話しかけてくる子に悪いから、俺はちょっと先でスマホ弄ったりして待つ。
金城に渡されるのは、趣向をこらしラッピングされたチョコレートで、好意を伝えるためのもの。『私はあなたが好きです』と。
明早は今日、レースあるらしくて新開が「寒い」と言う短いメッセージと写真を送ってきた。一緒に写っている福ちゃんは、相変わらず天気なんかどうでもいいみたいだった。肝心の場所が書いてないのが新開らしい。二人とも今はどこかで冷たい風の中、思いっきり走ってんだろうな。そう思いながら空を見上げる。
3305よくあることだけど今日は特に。
二月十四日、バレンタインデー。
一緒に歩いてると金城が呼び止められる。もう何度目だったか。途中で数えんのやめたからわかんねえ。
一生懸命話しかけてくる子に悪いから、俺はちょっと先でスマホ弄ったりして待つ。
金城に渡されるのは、趣向をこらしラッピングされたチョコレートで、好意を伝えるためのもの。『私はあなたが好きです』と。
明早は今日、レースあるらしくて新開が「寒い」と言う短いメッセージと写真を送ってきた。一緒に写っている福ちゃんは、相変わらず天気なんかどうでもいいみたいだった。肝心の場所が書いてないのが新開らしい。二人とも今はどこかで冷たい風の中、思いっきり走ってんだろうな。そう思いながら空を見上げる。
穂山野
DONE関東に大雪の予報が発令され金城と荒北が二人で過ごす雪の日の話です。2016年の金狼2で発行した本の再録。
頒布時お手に取っていただいた皆様には心より感謝しております。本当にありがとうございました。
静止この二日間、急に冷え込んだせいか古いアパートの給湯器は調子が悪かった。
俺はなかなかお湯にならない給湯器と格闘しながら洗い物を片づけていた。
着ぶくれして背を丸めている荒北がテレビを眺めつつ「明日雪だってさァ」とげんなりした声で言うのが聞こえた。
狭いベッドは大きな男二人にはさすがに不便で、布団を取ったとか取られたとか、寝相が悪いだとか秋までは揉めることも何度かあった。
千葉から両親が様子を見に来ることはなかったし、ベッドを処分したところでなんということもない。
布団を二枚並べて敷いたほうが揉めごとが減るんじゃないかって何度か話した。
けれど二人とも、布団を上げたり下げたり几帳面に毎日できるはずもなく、それでなくても狭い部屋がまた狭くなるんじゃないか、という結論に達し、そのうちに一緒に過ごす初めての冬がきた。
9591俺はなかなかお湯にならない給湯器と格闘しながら洗い物を片づけていた。
着ぶくれして背を丸めている荒北がテレビを眺めつつ「明日雪だってさァ」とげんなりした声で言うのが聞こえた。
狭いベッドは大きな男二人にはさすがに不便で、布団を取ったとか取られたとか、寝相が悪いだとか秋までは揉めることも何度かあった。
千葉から両親が様子を見に来ることはなかったし、ベッドを処分したところでなんということもない。
布団を二枚並べて敷いたほうが揉めごとが減るんじゃないかって何度か話した。
けれど二人とも、布団を上げたり下げたり几帳面に毎日できるはずもなく、それでなくても狭い部屋がまた狭くなるんじゃないか、という結論に達し、そのうちに一緒に過ごす初めての冬がきた。
穂山野
DONE付き合っている二人(金城と荒北)が荒北の実家に行き、静岡へ帰る日の話です。スパコミ新刊でした「透過」の中に収めたものです。
家族構成、地理に関すること、それぞれの過去、関係性などはファンフィクションです。
初出:2015.05 イベント頒布本「透過」
2022.6.22 ポイピクへ移動
甘い棘荒北家の小さな庭は冬の花が咲いている。
色とりどりに並べられたプランターに寄せ植えられている花や植物は小さな森のようだ。絵を描くことが好きだったというお母さんは丁寧に小さな森を作り、色のない季節を自分の色で染める。
見たこともない鮮やかな緑に手を伸ばすと、指先にちくりと痛みが走った。
葉に隠れてよく見えなかった茎には小さな棘が所々に付いていた。刺したのは小さな棘だった。
手折られるのを厭がるようだなと、自分の指先に血が滲むのを見ていると「なぁにやってんだよ」と荒北が呆れたように言う。
気が付かなかった、そういうと「これ、小さい棘あんだヨ」と俺も昔これの棘刺した、とその鮮やかな緑を見て言う。だけどこれ、キレイな色の花咲くんだぜ、と花の名前などほとんど知らない荒北家の息子は言う。
6251色とりどりに並べられたプランターに寄せ植えられている花や植物は小さな森のようだ。絵を描くことが好きだったというお母さんは丁寧に小さな森を作り、色のない季節を自分の色で染める。
見たこともない鮮やかな緑に手を伸ばすと、指先にちくりと痛みが走った。
葉に隠れてよく見えなかった茎には小さな棘が所々に付いていた。刺したのは小さな棘だった。
手折られるのを厭がるようだなと、自分の指先に血が滲むのを見ていると「なぁにやってんだよ」と荒北が呆れたように言う。
気が付かなかった、そういうと「これ、小さい棘あんだヨ」と俺も昔これの棘刺した、とその鮮やかな緑を見て言う。だけどこれ、キレイな色の花咲くんだぜ、と花の名前などほとんど知らない荒北家の息子は言う。
穂山野
DONE付き合っている二人という設定です。荒北が帰省する時に金城が一緒に荒北家に行く話。その二日目の話です。時間軸的にはまだ年末です。
荒北、金城の家族像、住んでいる地理、過去などは妄想であり捏造です。
初出:2015.01.07 Pixiv
2015.5.21タイトルを「帰省二日目」から「傷痕」に改め、内容をスパコミで出した新刊の内容に変更。
2022.6.1 ポイピクへ移動
傷痕目を覚ますとアキチャンは金城の隣で寝ていた。
理不尽、という言葉が脳裏を過る。
楽しんでいる様子だった金城も、そりゃさすがに気疲れするだろ、と思わずにはいられない熟睡っぷりだった。
金城は普段、大体先に起きている。中に何か精密機械みたいなのが入ってるんじゃねえの?と入学当時は思っていた。
子どもの頃から早朝集まって試合に行く、とかそういうことを繰り返していた結果、俺は意図的な遅刻以外はしない。
だから高校時代も、集合時間にはまだ人があまりいない頃に着いていた。
だけど、大学に入ってから金城より先に着いたことはなかった。
欠伸しながら部室へ行くともう金城がいて、何か書いてたり、読んでたり。静かな奴だった。
こいつ霞食ってそうだなって。最初の印象はそんな感じ。
6165理不尽、という言葉が脳裏を過る。
楽しんでいる様子だった金城も、そりゃさすがに気疲れするだろ、と思わずにはいられない熟睡っぷりだった。
金城は普段、大体先に起きている。中に何か精密機械みたいなのが入ってるんじゃねえの?と入学当時は思っていた。
子どもの頃から早朝集まって試合に行く、とかそういうことを繰り返していた結果、俺は意図的な遅刻以外はしない。
だから高校時代も、集合時間にはまだ人があまりいない頃に着いていた。
だけど、大学に入ってから金城より先に着いたことはなかった。
欠伸しながら部室へ行くともう金城がいて、何か書いてたり、読んでたり。静かな奴だった。
こいつ霞食ってそうだなって。最初の印象はそんな感じ。
穂山野
DONE付き合っている金城と荒北という設定の話。年末の帰省の話から金城の過去を紐解くという妄想話です。
金城、荒北、待宮の家族構成、過去、現在については完全に妄想・捏造です。
初出:2014.12.23 Pixiv
2015.5.21 本文をスパコミで出した本の内容に変更。
2022.6.1 ポイピクへ移動
大丈夫うなされて飛び起きしばし呆然とした後、肺の奥のほうから深い息を吐く金城を見るのは何度目だろう。
そんなに神経質ではない自分が目を覚ますような、ヒリヒリとしたニオイのようなものが伝わってくる。
月末に入って、金城の実家から電話がかかってくることが増えた頃から始まった。
自分の知らない金城真護という人間が、どういうふうに生きていたのかよく知らない。自分のことはあまり話さないから。
大体、人に説明できることなんて自分の中で整理がついていることしかない。
言葉になる時は整理がついた時だ。
声をかけたいといつも思う。
だけど、俺を起こさなかったことを確認して安堵し、そっとベッドを抜け出す金城の様子を見ていると、見られたくない姿だったのかと思う。
4657そんなに神経質ではない自分が目を覚ますような、ヒリヒリとしたニオイのようなものが伝わってくる。
月末に入って、金城の実家から電話がかかってくることが増えた頃から始まった。
自分の知らない金城真護という人間が、どういうふうに生きていたのかよく知らない。自分のことはあまり話さないから。
大体、人に説明できることなんて自分の中で整理がついていることしかない。
言葉になる時は整理がついた時だ。
声をかけたいといつも思う。
だけど、俺を起こさなかったことを確認して安堵し、そっとベッドを抜け出す金城の様子を見ていると、見られたくない姿だったのかと思う。
穂山野
DONE荒北が帰省する時に金城が一緒に荒北家に行く話。荒北、金城の家族像、住んでいる地理、過去など完全な妄想であり捏造です。
初出:2014.12.15 Pixiv
2015.5.21 本文をスパコミで出した新刊の内容に変更。
2022.5.31 ポイピクに移動
帰省新横浜駅から程近い所に荒北家はあった。
閑静な住宅街の中にもうすっかり風景として馴染んでいた。
前の道路は通学路らしく、ランドセルを背負った小学生が賑やかに歩いていく。
荒北の小学生時代のような男児を見かけて思わず口元が緩む。
それに目敏く気付いた荒北が「ンだヨ、金城」と肘で脇腹を小突いた。
大学で顔を会わせ、同じ自転車競技部に籍を置いた俺と、荒北、待宮の節約を主とした三人での夕飯は、春先から続いていてすでに日常化しつつある。
持ち回りで家に行き、準備して、食べて、片付ける。
その後はレポートを書いたり、春先から秋まではレースの中継を見ることもあるし、待宮は野球の中継を見たがって荒北と揉める。贔屓のチームが違うらしい。野球には疎いのでよくわからない。
7624閑静な住宅街の中にもうすっかり風景として馴染んでいた。
前の道路は通学路らしく、ランドセルを背負った小学生が賑やかに歩いていく。
荒北の小学生時代のような男児を見かけて思わず口元が緩む。
それに目敏く気付いた荒北が「ンだヨ、金城」と肘で脇腹を小突いた。
大学で顔を会わせ、同じ自転車競技部に籍を置いた俺と、荒北、待宮の節約を主とした三人での夕飯は、春先から続いていてすでに日常化しつつある。
持ち回りで家に行き、準備して、食べて、片付ける。
その後はレポートを書いたり、春先から秋まではレースの中継を見ることもあるし、待宮は野球の中継を見たがって荒北と揉める。贔屓のチームが違うらしい。野球には疎いのでよくわからない。