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    #イルアズ

    iluaz.

    16natuki_mirm

    DONE8/27の悪学で無配にしたもの。うぶうぶなさとあすが遊園地デートするお話。
    「Paradise on sea!」の、佐藤くん視点のサイドストーリーです。
    Paradise~の裏話的なお話なので、どちらから読んでも大丈夫なようにはなっていますが、Paradise~から読んで頂く想定で書いています。
    きみのいろをさがす デートである。
     やっとこぎ着けた、念願の、紛れもないデートである。
     編集者と作家としてだけの関係でしか無かった入間と有栖が、プライベートでも食事に行くようになったのはしばらく前のことだ。それから、仕事の取引相手と行くには随分とムードのある飲食店で、酒を交えた食事を重ねているのだから、これはもうほぼ、付き合っていると言っていい筈だ。
     明確に言葉にしたわけでは無いけれど、中高生ではあるまいし、社会人になってわざわざ「付き合ってください!」もないだろう――と、「編集者」と呼ばれる人種の中で過ごしている入間は考えている。
     はじめこそ、売れっ子作家と新人編集者という立場上、有栖のことは、ちょっと怖い、なんて思っていた入間だったが、あっという間にその、キツい言葉の裏に隠れた――もとい、全く隠し切れていない――本心とか、ふとした瞬間に見せる幼さの残る笑顔とか、仕事に妥協をしない姿勢とか、それから、ちょっとだけ、美味しいものをたくさん食べさせてくれるところとか、に夢中になった。夕方頃に校正用の試し刷りを持って行ったときなんか、分かりやすくそわそわと何かを期待するように落ち着かないそぶりを見せて、仕事が片付いた後食事に誘えば嬉しそうに承諾してくれる――口先では、仕方ないから付き合ってやる、なんて言うけれど、本心と裏腹のことを言うとき、必ず話し始めの一言を言い淀む、本人は気付いていないらしい癖に、入間はちゃんと気付いている――ところなんか、たまらなく可愛い。
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    16natuki_mirm

    DONE2023年6月3日に開催されたイルアズオンリーイベントで配布した無料配布「Happy Birthday From You」(前半)および、その続編となる11日開催のWebアフター用のネップリ「世界でひとつの」をおまとめ便で。
    イベント終了したのでパスワード解除しました。
    【イルアズ】Happy Birthday From You/世界でひとつの 降魔の儀なんて、そうそう毎年やるものでもない。
     手間も費用も掛かるし、まあ、身も蓋もなく言ってしまえば「贈り物を持ってこい」という企画である。嫌なら参加しないのが悪魔という生き物なので、人生に一度なら、記念だし、と集まってくれるだろうが、二度三度と重なれば誰も来なくなるだろう。それが魔界標準である。
     アリスもご多分に漏れず、そう考えていた。だから。
    「私の降魔の儀は去年行ったではないですか」
     今年はやりませんよ、と当たり前のように入間に告げた。
     ら。
    「………………エッ?!」
     嘘でしょ、という顔をされた。
     アリスの脳裏に、去年の今頃の記憶が過る。入間に、降魔の儀は幼少の頃に済ませたから、もうやりませんよと告げたら、全く同じ顔をされたのだ。それでアリスは大慌てで降魔の儀の手配をして、それはそれは盛大な儀式を行った。入間のそれよりは一回り小規模に、けれど、クラスメイト全員を招待して、開場もかなりの格の所を借りた。そしてその結果、集まってくれたクラスメイト達に散々揶揄われたのだ、「イルマくんの期待に応える為だけに、こんな盛大な儀式をしたのか」と。
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    kinoko1923

    SPUR ME大人になったイルアズが、特になんの縛りもなく人間界に観光に行く話です。
    最初だけちょっとしんみりしちゃうんですけど、次回からは軽率に美味しいもの食べたり遊んだりして欲しいな〜と思っています。
    大人になったイルアズが人間界で食べ歩く話(牛丼)冷え冷えとしたアスファルトの道を行く。
    コンクリート製の整然とした街並みは、自由な曲線を描く魔界の建物と違って、ひどく無機質に見えた。
    生まれた世界を眺めておきたい、と思ったのは本当だけれど、隣を歩んでくれる恋人がーーアズくんがいなかったら、すぐにとって返してしまったかもしれない。

    ふわ、と鼻先に香りが届いた。
    玉ねぎと、牛肉。甘辛く煮られたそれの、あたたかで、胃をぎゅうっと握るような香りだ。
    思わず足を止めると、アズくんが身を屈めて、僕の顔を覗き込む。無彩色の街を背景に、認識阻害グラス越しの紅はきらきらと眩い。大丈夫、アズくんがいれば、僕は大丈夫。
    「……あのね、僕。あまり町に行かないようにしてたんだ」
    知らない人について行かないようにって言い含められていたのは、今思うと、僕のためじゃなくて、警察や良識ある大人に見咎められないようにってことだったのかもしれないけれど。
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