Recent Search

    音羽もか

    @otoha_moka

    書いたものとか描いたものを古いものから最近のものまで色々まとめてます。ジャンルは雑多になりますが、タグ分けをある程度細かくしているつもりなので、それで探していだければ。
    感想とか何かあれば是非こちらにお願いします!(返信はTwitterでさせていただきます。)→https://odaibako.net/u/otoha_moka

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 37

    音羽もか

    DONE姉視点での彰冬。少し未来の話。姉が弟をからかったり見守ったりしてる。要素は彰冬だけですが捏造は全方位。
    しあわせ色は何色か「高校卒業したら出ていく、とか言ってた割にはなかなか出ていかないのね」
    「は?」
    大学から帰ったら、弟が家にいた。リビングのソファで何やらスマホをいじっている。それが、物件検索アプリであることを、私は知っていた。

    弟――彰人は、高校三年生の秋頃にはもう進路を決めていた。当時浪人生だった私とは真反対かもしれない。てっきり、相棒と同じ大学に行くとか言い出すんじゃないかと思っていたけれど、「オレには無理」とのことだった。冬弥くんの進路は知らないけれど、彰人がこんなにあっさり諦めるようなところなのだから、きっとすごく頭のいい大学なのだろう。
    彰人の進路は専門学校だった。中学の頃に始めた音楽活動に全てをかけている彰人は、はじめはフリーターでもやりながら活動を続けるつもりだったらしい。けれど、彼の相棒――冬弥くんの説得と、それからバイト先の店長の説得で、スタイリストの専門学校に進路を決めた。冬弥くんからは、彰人の気持ちはわかるが今の音楽活動の為に未来の音楽活動が危ぶまれかねない進路は褒められたものではない、と言われたらしい。全く、しっかりものの相棒がいてくれてよかった。それすら、最初は「本気でスタイリスト目指すやつが集まるところに、ファッションが好きだから程度の感覚で行けるか」と言っていたらしいが、そこはバイト先の店長が「じゃあうちで正社員として雇いたいから」と提示してくれたそうだ。この頑固男のためにあれこれと手を尽くしてくれる人達には感謝しかない。
    11767

    音羽もか

    DONE中三のころのある夜の彰冬。ユニスト前なのでちょっと不穏。ちょっとだけ姉の出番もある。
    秋は長雨中学三年生、秋口。
    秋の長雨、という言葉もあるように、その日は一日どんよりとした空気が空一面を覆っていて、しまいには予報通りの雨が降り出していた。
    その日はそんな天気だったこともあり、彰人は日が落ちるまでには冬弥との練習を終え、しっかりと家に帰り、明日のイベントに備えて休もうとしていた……はずだった。そんな平穏は姉の一声で簡単に潰されてしまったわけだが。
    今、彰人の手に握られているのは傘と、それからケーキの入りの箱が入ったビニール袋だ。ご丁寧な二重包装は自分でやったもの。正確には、ビニール袋のメインは紙パックのジュースだ。要するに、姉によるいつもの理不尽だった。
    一年ほど前に大きな衝突を起こして以来、すっかり父の存在を蛇蝎のごとく嫌うようになってしまった姉は、父と鉢合わせる可能性を尽く避けるし、彰人も無用な衝突で八つ当たりされるのは自分なので避けさせていた。結果として、玄関までに必ず通るいずれかの場所に父がいる時、姉は部屋から出ようとしない。けれど、その代わりにとばかりに、欲しいものがあるときには弟をまるで召使いのように扱うのだ。
    10588