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    bintatyan

    @bintatyan

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    bintatyan

    DOODLE事後の土井利(なまめかしくはないです、初夜後)
    美しいものすべて――利吉くん。きみがはじめて私をお兄ちゃん、と呼んだ日のことを、夢に見る夜があるよ
    半助が言うと、利吉は『いきなり何の話です』と言いたげな表情で見返してきた。
    静寂が耳に痛いほど、虫の音すらもなくただ窓から射し込む月の光だけがけざやかだ。濡れたようなつやつやとした双眸を覗き込むと、あの日の花畑が見える。半助の運命が変わった日。
    「後悔していますか」
    「ん?」
    「私とこうなったこと」
    もう今や寂れた、ほとんど客のないような木賃宿で半助は初めて利吉を抱いた。一応の管理をしている老婆は体のあちこちを悪くしていて、また別の粗末な、他にほとんど人もいないような長屋で寝起きしているという。元は今よりよほど賑やかな村だったものが、ここから少し足を伸ばした先により商売に都合のいい立地である宿場町ができたことで急速に廃れた。ほとんど人は残っていないのを、それでも残った何人かが守って暮らしているのだった。そういう、人目につかないところであることが肝要だったからあえて選んだ場所だ。人込みに紛れることも考えたが、利吉の容姿は秀でていて、注目されやすい。今日この日、彼をそういう目で見る不埒者は己だけでいいと思った。ばかみたいな話だ。
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    bintatyan

    DOODLE恋人になる滝安
    据え膳「薄々ね、そうかな、と思っていたんですけど」
    ぽつりと、小さな声で安原がこぼすのを、滝川はある種の感動を持って聞いていた。
    普段は堂々と、明瞭とした話し方をする彼が、視線を逸らして暗がりでもわかるくらいに首まで真っ赤にしている。そうさせたのが己の言動によるものであること思うと、自分の顔にまで血が上ってくる。出会った頃はあれほど可愛げのないこまっしゃくれた少年だったというのに。
    「やっぱり、僕が二十歳になるの、待ってたんですよね?あなたって結構律儀というか真面目というか……うん、まあ、知ってましたけど」
    ずいぶんと寒さも和らぎ、桜の蕾も膨らんできた3月の半ばの夜。2人きりの帰り道である。


    来月には二十歳ですよ僕、と2月の初めにいつもの事務所で笑っていた安原に時間が経つのは早いもんだねえとぼやいた滝川に、彼は「いいえ全然。すごーく遅い」と笑っていた。その日、麻衣とナルとリンは調査に出かけていて、他のいつものメンバーは不在だった。事務のバイトとして安原だけが留守番をしていたので、心霊について勉強中の彼からの質問に答えたり、たわいのない無駄話をしていた。その流れでの、もうすぐ二十歳、という発言だった。
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