傷だらけの霧氷花「あぁ、もうどこまで行っちゃったんですか………」
険しい山道。
獣道すらない森は、昼の明るい時間だというのに陽の光が葉の隙間から微かに漏れる程度。
そんな中、先に走って行った人を見つけるのは至難のわざで。
まだ、彼の声が大きくて叫びに似た威圧感のある声が、森の木々の中を反響しながら聞こえてくる。
こちらはこの前から研究と請け負った仕事ばかりで、久々のレイシフト故に足取りもいつものようにはいかなくて。
根詰めていた分、彼が一緒にレイシフト出来なかったことに苦言を呈していた訳では無いが、ようやくと嬉しそうに満面の笑みを溢したことをつい思い出した。
でも、出発ギリギリまで締め切りのあった仕事をしたのは失敗だったとこの後に後悔することになるのだが。
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