過去一の売上だった一夜!その10 バンが目を覚ましたあとは、酒場の客を巻き込んで大変賑やかな宴会となった。店主が国王というのは公然の秘密であるが、そこにベンウィックのバン王夫妻がお忍びの客として来ているのだから盛り上がらない訳が無い。なんと言ってもここにいる大方の客にとって、伝説の最強の騎士団・《七つの大罪》の二人と酒を飲んでいるという事実がすでに酒の肴であり、自慢できる出来事だ。
それにしてもよくまぁ内装まで再現したもんだ♬
ある種のノスタルジーに浸りつつエレインを膝に乗せたバンがエールを楽しんでいると、店主として忙しく働くメリオダスがカウンターの中から声をかけてきた。
「バン、厨房入ってくれ!」
「ハァ 何でだよ♪」
「久々に専属コックが来てるんだから、働かせるのは当然だろ」
その会話を聞いていた客たちは思わず真顔になった。そして滲み出るある種の期待。その顔にはこう書いてある。「まさかここでまともなメシがでてくるのか」、と。この酒場には一応フードメニューはあるが頼む者はまずいない。かろうじて注文されるものといえば、皿に盛れば提供できるナッツや干し肉だ。それすら味が怪しい時がある。
そんなものではない、まともな飯が食えるかもしれない……?
だが当のコックはまったく乗り気でないようだ。しかし、そこに救世主が現れた。
「あっ、私も少しお腹すいたなァ」
エレインである。バンはたちまち立ち上がり、カウンターを飛び越え厨房に入った。ふんわり飛んで、エレインもバンの側に着く。
「しゃーねぇついでだ、何でも注文しやがれ♪」
どっ、と店内が湧く。メニューに記載されているものの、誰も頼むことがなかった品が次々注文される。
メリオダスは密かにエレインにウィンクを送り、バンの見えないところでニンマリ笑った。
つづく!