一番と星 今でもあの子のことを思い出す。僕の絵を褒めてくれて、自分の絵の素晴らしさには全く気づいていなかった、あの子のことを。
いつまでも友達ではいられなかったから、余計に気ががりなのかもしれない。僕とあの子は、報われない愛情をただ一人のひとに向けているところが似ていた。結局、僕は自分と似通ったものしか理解できないのかもしれない。
あのとき、僕は自分の仕事が失敗に終わったことを認めざるを得なかったのだ。そう思うしかなかった。
母親についた悪い虫だと思っていたものが、そうではないのかもしれないなんて考えもしなかった。
僕は一番が好きだから、あの子に一番は渡さない。
お母様が大好きで、一番に絵を見て欲しい気持ちは、僕だけが持っていく。二度と口をきくことがなくなって、お母様のことが嫌いになっても、あの子の心が楽になるなら、きっとそのほうが正しいに決まっている。あの子がどんなにお母様を好きだったのか、知っていたのはもう僕しかいない。