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    ひわ@turoporfali

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    #F蘭ワンドロ お題:天狼院シリウス。🤍💜カップリング色出てます。🤍視点。

    tete-a-tete そのひととはよく会っているのだと思う。たとえば学校の行き帰りや、教室移動のときや、風呂からの帰りにでも。
     でも誰にも言ったことはない。会ったのを覚えているのは向こうだけだから。
    「本当に思い出せないのかい?」
     胸元の紐がクロスしている不思議な白い服を着て、その肌の色とのコントラストがきれいだな、と思うけど、ただぼうっと見ているだけで、何もできない。
     そのひとは、僕の名前を呼ぶけれど、僕にはどうしても聞き取れない。僕が決まり悪げに視線をちらつかせると、そのひとの青い瞳が怒りを含んできて、炎って青いほど温度が高いんだっけ、とかそういうことを思い出す。こんなくだらないことは簡単に思い出せるのに、僕はこのひとの名前すら知らない。
     そのひとは優しさを装って、きみに怒ってるわけじゃないよ、と言うけれど、僕はどうしてもそれを信じられない。僕はとてもひどいことをしたはずで、忘れていられるから、このひとと顔を合わせていられるはずだから。思い出したくない。思い出してしまえば、きっと、このひとは僕に会いにきてくれない。思い出せないから、ちょうどいい。
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    ❤❤❤❤🙏🙏🙏🙏💕💕
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    ひわ@turoporfali

    DONE #F蘭ワンドロ お題:虹/rainbow。
    虹を食べる 一軒家の後片付けはなかなか骨が折れる。押入れの中から貰い物のタオルはごっそり出てくるし、昭和生まれのおばあちゃんは悪気はないけど、賞味期限にルーズすぎて怖い。もう、いなくなってしまったけど。可愛がってくれたおばあちゃんに最後のお別れができた。
     仕事がうまくいかなくて、電車を見て、ふらっと誘い込まれるように気を失って、なぜか飛行機に乗っていた。いろいろなものから逃げたかったのかな。
    「千佳ちゃん、あと少しでお昼だから、そうめんとトウモロコシ茹でてくるねー」
    「あー、ありがとうございます」
     一緒に片付けをしていたおばさんは、お昼の用意をしに、近所の自分の家に戻るらしい。
     出前もコンビニも遠いここでは「お構いなく」ということもできない。何か作れたらよかったな、と台所に行き水屋を漁る。おかきやチョコレートの袋の奥に、ゼリー菓子があるのを見つけた。まるで虹みたい、そう思っておばあちゃんに言ったら、来るたびにいつも出されるようになった。思いつきで言ってみただけで、特別好きというわけでもなかった。でも目に鮮やかできれい。そのとき気づいた。このゼリー菓子がここにあるってことは、おばあちゃんが、わたしがまた来ると思ってたから買ってたんだ。
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