君の顔が見れない多分、俺は君に溺れてる。
いつ、どちらから仕掛けて始まった関係だったか。今やもうその初めての記憶も、輪郭がおぼろげになるほどに繰り返し、ファットガムは切島とベッドを共にしてる。
『今日、夕飯、一緒にどうですか?』
その一言が合図で、仕事終わりに事務所から二人、並んで帰る。一緒にすることは、夕飯だけではないことをお互いに予感していながら、居酒屋で食べる飯の最後の一口まではどこか駆け引きするみたいに、視線はどこか誘うような色で揺れるのに言葉にしたりはしなくて。一歩、居酒屋を出たときにどことなく、そんな雰囲気に絡めとられ、ふらふらと誘蛾灯に寄っていく愚かな虫のようにホテルや互いの自宅へと誘い込まれ、行為に及ぶ。
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