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    hiromu_mix

    ちょっと使ってみようと思います。
    短めの文章はこっちに投げます。

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    DOODLEファ切で、10.雨よ、やまないで
    「唇に触れた ワイシャツ 濡れた髪」

    両片思いっぽい二人。
    傘の下には太陽が夕暮れの空が突如増えてきた雲で覆われ、暗くなったと思ったら激しく降り出した雨に、ファットガムは空を見上げて一つ舌打ちをする。
    やっと着なれてきたワイシャツが途端に鬱陶しくなって、ネクタイに指をひっかけ緩めながら、ファットガムは近くのカフェに逃げ込んだ。どこにでもあるチェーンのカフェは、ファットガムと同じように雨から逃れようと入って来た客も多くほとんどの席を埋めてしまっていたが、低脂肪の姿なのでどうにか取れた端っこの、窓際のカウンター席を確保して、ファットガムは一つ息を吐く。雨に当たった時間は僅かだ問うのに、濡れた髪からぽたぽたと雨のしずくが落ちた。
    「ついてへんわぁ」
    水と一緒に差し出された暖かなおしぼりで、雨でぬれた顔を拭けばすっきりする。こんなのオッサン臭いと思うが、まあもうオッサンに片足突っ込んでるので今更か。明日もこの姿で居なければいけないので、アイスコーヒーだけ頼んでファットガムは、激しく雨が打ち付ける窓をぼうっと見つめた。スマートフォンを見れば、着信が一件。その名前に唇が緩む。
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    DOODLEオル相で、4.予期せぬ出来事
    「唇が触れた 至近距離 書類」
    してみないと分かりませんばさばさと、相澤のデスクから書類が落ちていく。
    オールマイトは慌ててしゃがみ込むと、それを拾い上げた。頬が熱い。どくどくどくと心臓が全力疾走の後みたいに早くて、血液が大急ぎで巡っていくもんだから、身体中熱が籠ったみたいになっているのに頭だけは血が抜けてくらくらした。拾った書類は手の中に集めたが、それをまたデスクに戻すために顔を上げるのが気まずくて、オールマイトはしゃがみ込んだまま俯いて、じっと、手の中の書類を見つめる。

    多分。
    唇が触れた。

    頼まれた書類を途中まで作ったものの、フォーマットがこれで合っていたか不安になって、プリントアウトしたそれを持ってオールマイトは相澤のデスクまでやって来た。相澤はパソコンの上を高速で滑る手を止め、オールマイトのほうに身体を向けて、書類を受け取り。これで合っているが、でもここの書式がちがいますねどこかからコピーしました?と聞くので、どれどれとオールマイトは背を屈め。書類を覗き込むように顔を近付けたときに、顔をこちらに向けた相澤と、ひどく近くで目が合った。あと3センチの至近距離に相澤の顔がある。どうしてか、その距離をゼロにしたくなってさらに近付いた。相澤は逃げないで、それを受けとめた。そして、触れ合わせたのは。
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    DOODLEファ切で18.奪われた心
    「ディープキス 夜空 ルームキー」
    ※ヴィランパロです
    見えるのは夜の色最上階に向かう高速エレベーターの、目まぐるしくカウントしていく数字を切島は、睨みつけながら軽い浮遊感を味わう。手の中にはルームキーが一つ。突然、切島のヒーロー事務所に送りつけられたそれは、封筒には少し癖の字で宛名と。中にはこのルームキーと、ホテルの住所、誰にも言わないで来るようにと書かれたメモ。いたずらだろうと捨て置くにはこのルームキーはこの辺りでは一番の高級ホテルの最上階のものだったし、メモに『ファットガム』と走り書きされたサインを、切島は知っていた。
    だから来た。誰にも、言っていない。これが罠だとは思いつつも、誰かに告げたことで他の誰かを巻き込むのは避けたかった。
    柔らかなメロディーと共にドアが開く。切島は一歩、外側に踏み出した。夜の海みたいな濃紺の絨毯は、まだだれも踏んだことがないみたいになめらかで。そこを恐る恐る歩きながら、この階にたったひとつの部屋を目指した。本来であれば控えているはずのコンシェルジュたちには、切島が来るのと入れ替わりで階下に降りてもらっている。彼らは、この部屋を取った人間がどんな人かなんて知らない。たとえそれが、彼らにとってはとても紳士的な男だたとしても。
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    DOODLEファ切で、7.甘い夜明け
    「寝息 おはようのキス 枕」
    うたた寝と狸寝入りふ、と意識が浮上する。
    気を失うように寝ていたようで、片手に飲みかけのペットボトルを握りしめていた。多分時間にしては30分程度だろう。寝る前に朝日が出てきたなと思った空は、だいぶ白々としていて、背中側に窓のあるファットガムのデスクの上をぼんやりと明るくしていた。
    ペットボトルを置き、ガシガシと頭を掻く。最近、徹夜がきつくなってきた。今日みたいに二日も続くとさすがに身体にこたえる。この二日ですっかり身体は低脂肪になってしまった。
    ふわ、と漏れた欠伸をかみ殺して、とにかくカフェインで誤魔化すかと立ち上がれば、やはりこちらもすうすうと寝息を立てて、組んだ腕を枕にして切島が自分のデスクで寝ていた。ファットガムが寝てしまったのでつられたのだろう。着替える暇もなかったので、寒そうなヒーロースーツのまま。これはちょっとあかんやろ、とファットガムは手近なところを見回してみても、ちょうどよく身体に掛けられるものなどなく。仕方なく、自分の私服のパーカーを手に取った。まあ、ええか。若干の下心が自分に存在するせいで、こういう行為にあざとさを感じてしまう。いや、違うからな、他になかったから仕方ないんや、と頭の中で言い訳。
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    DOODLE罰符で、お題は「パンツと靴下になる環くん」

    しないと出られない部屋系。
    若干ふぁたま風味。ファ→環、みたいな感じかな。
    変化したのは俺の方ぱち、と目を開けたら、天喰の顔がやたら近くにあったので思わずファットガムは飛びのいた。
    「うえ!?」
    「あ、良かった、起きた」
    慌てる自分とは違い、ホッとした様子で天喰はそう言うと、なかなか起きないので心配しましたよ、と呟いて肩を竦める。なかなか起きない。つまりは自分は寝ていたということだが、然し寝る前の記憶が曖昧だ。確かヴィランを追いかけていたような気がするのだが、まさか捕物の真っ最中に寝落ちるほど寝不足ではないはずで。身体を起こしてよくよく周りを見つめ、ファットガムはぽかんと口を開けた。
    「なんや、ここ」
    真っ白い壁が四方を覆う。窓も扉もない空間だ。天井も床も同じ材質で作られているようで、それぞれの境界線がぼやけて見えるほどに真っ白だ。光源がどこなのか分からないが室内はやたら明るい。そもそも壁自体が発光しているのかもしれない。まぶしさに目を細め、ファットガムは起き上がると立って周りを見渡した。それほど広くはなく、4畳半くらいか。天井は、ファットガムが腕を伸ばすと簡単に届いてしまう高さだ。
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    DONEアイスクリームパレット:ラムレーズン(淡い思い出 / 異物 / 背伸びをする)
    あの日、大人になりたかったから部屋に備え付けの戸棚の引き出しを開けると、救急セットや常備薬に混ざって、奥の方。それだけぽつんと異物みたいに、封を切った煙草の箱がコロンと置いてあって、俺は、こんなとこにあったんだなと苦笑した。以前は鞄の奥底に仕舞い込んでいたが、うっかり見つかったらヤバいかも、とさすがに持ち歩かなくなった。それを持っていてもいい年になった今、懐かしい気持ちで俺はそれを見つめ、手に取った。中身はすっかり湿気って、きっともう吸えないだろうけど。
    買ったのは18歳の終わり。勇気を出して封を切ったのは19歳の時。煙草を吸うという行為は、それまでいわゆる悪いことをしようと思ったことのなかった俺に、後ろめたい、という感情を思い知らせた。誰にも見つからないように。部屋のベランダで隠れるように身を潜めて深夜、そっと火をつけた。ファットガムが吸うのを見てると、簡単に付く火がなかなかつかなくて――吸わないと付かないということを知ったのはそれからだいぶ後だった――何度も100円ライターを擦って、やっと煙が緩く経ち上ったときにはホッとした。けど、一気に吸い込んで咽て、俺の煙草デビューは三口吸って終わり。口の中に広がる味が苦くて、胸のあたりがむかむかして、最悪な気分。それに、吸ったらもしかして自分も少しは大人になれんじゃねえかなって期待もむなしく、吸ったところで俺は何も変わらなかった。いくら背伸びしたところでファットガムみたいに、なれるわけもなかった。同じ銘柄の煙草の香りのおかげで、ほんの少し、纏う匂いが彼と同じになっただけで。
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    DONEアイスクリームパレット:ダブル✨
    パイナップル🍍(完全無欠 / とける / 熱帯夜)
    マンゴー(甘い囁き / バカンス / 火照る)
    ウチの彼氏が最高すぎる沖縄までファットガムと二人、チームアップに来て、無事に任務完了。
    ここまで来て、仕事だけして帰るなんて勿体ねえけどまあ仕方ねえかって思いつつ。沖縄にもこんなホテルあんだなって意外に思ったシンプルなビジネスホテルの、そんな窓からでも見えるきらきらと朝日を跳ね返して輝く、コバルトブルーの海を切島は少しばかり恨めしく睨んだ。初めて来たっていうのに一度も海に入ることもなく。体験したのは、想像していた以上の暑さと太陽の近さと、熱帯夜だけで。
    部屋で荷物をまとめてロビーまで降りれば、すっかり脂肪を使い果たしたファットガムがちょうど、隣のエレベーターから出てきたのでそのまま合流。黄色に、真っ赤なハイビスカスが付いたやけに派手なアロハシャツは、多分最初から持ってきたものではないはずで。いつのまに買ったんだろとぼんやり、切島が見上げていれば、ファットガムは手慣れた様子でチェックアウトを済ませていた。終わったでと言いながら切島の分まで荷物を持ち上げたので、慌てて持ちますと言えば、ええねん、とファットガムは笑って。そして、てっきり空港まで直通のリムジンバスを待つのかと思いきや、ホテル前のロータリーを逆方向に向かって歩いて行くので、切島は慌ててその背を追いかけた。
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