命がやどる「ぬぅ」
「どうしました、そんなにむくれて」
「じめじめが鬱陶しい」
「そりゃあ、部屋干ししてますから」
梅雨になると鯉登さんはご機嫌斜めになる。そのせいで何かに当たるといったことはないが、拗ねた子供のように面白くなさそうな顔をしがちだ。湿気で髪がまとまらなくなるとのこと。俺からすればいつもの変わりないように見えるが、本人にしか分からない拘りがあるのだろう。この時期は手鏡をよく見ている気がする。
さらに、今年は洗濯を部屋干しすることが多く余計に不快指数が上がったようだ。生憎と洗濯機の乾燥機能の調子が良くない。
「全部クリーニングなり、コインランドリーに持って行けばいいだろう」
「うちで洗濯できるのに勿体ないでしょうに。除湿機もあるんですから、当てておけば数時間で乾きますよ」
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