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    Satsuki

    短い話を書きます。
    @Satsuki_MDG

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    Satsuki

    DOODLE◎レトユリ。遅刻クリスマス2021.12.26
    聖なる夜に「あっ! ねえ、見て!」
     かまってほしがり屋のエリーが声を上げたので、僕は仕方なく振り返った。鬼ごっこの途中なのに、エリーはいつだってそうなんだ。一番小さくて、足が遅いし、女の子だからしょうがないんだけど、でも時々僕らはうんざりしてしまう時がある。司祭様はいつだってみんな仲良くしなさい、って言うけれど、男の子は男の子だけで遊びたい時だってあるのに。
    「なんだよエリー、そういうの、ダメだよ!」
    「そうだよ、するいよ!」
    「ちがうもん、あそこに何か置いてあるの!」
     エリーが一生懸命そう叫ぶので、僕らは立ち止まってエリーが指さす方を見た。ちょうど、庭から外へ出る門のところだ。あそこは、たまに赤ん坊が捨てられていたり、他の教会からの荷物が届いていたり、村の人たちからの野菜や差し入れが置いてあったりする場所だ。こんなに寒いのに、赤ん坊がいたら大変だ。けれど、僕は新しい子が来るのは嫌だなあ、なんて考えてしまう。だって、小さい子は誰かが面倒を見てやらなくちゃならないし、その子の分までご飯を用意するってなると、自分の分が減ってしまう。それに、……小さい子の方が、新しい家族のところに引き取って貰えることが多いから。
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    Satsuki

    REHABILI◎リハビリレトユリ。支援s妄想。
    銀の指輪に愛を込めて「こっちか……いやうん、やっぱりこっちかな」
     ユーリスは煌々と蝋燭の火が照らす卓上で、小さな石を摘まみ上げると明かりにかざして見た。
    「台座は、こんな感じのシンプルな細工にしてもらいたい」
    「大きさはいかが致しましょう」
     そう、そこが肝心だ。職人の言葉に、ユーリスは細工の構想が書き付けられた紙と、あらかじめ用意しておいたガントレット取り出した。
    「これの左手の薬指に合わせてくれ」
     言って、もう一度、卓上で一番美しい翡翠を慎重に手のひらに乗せてみる。
    「うん、やっぱりこれだ。こいつで頼む」
     ユーリスの言葉に、職人は「すぐに取り掛かりましょう」と頷いた。

     戦争が終結して、ベレト率いる軍隊は無事、ガルグ=マク修道院へと凱旋した。集結していたベレトのかつての教え子たちも、ぽつりぽつりと自分の今後の身の振り方を決め、行動を始めようとしている。各々、平和になったこの国での新しい生活が始まるのだ。これからの人生を共にする相手を見つけ、平凡な幸福を手にする者もいれば、戦争によって大切なものを失い、新たな決意や目的を胸にこの地を離れようとしている者もいた。
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