炎と香草の出会い「手を貸そう」
突然現れた影は、ユーリスの目の前にいた男を銀色の剣で一閃すると、無造作に片手を突き出した。掌から光が迸り、周囲にいた兵士たちが文字通り吹き飛ぶ。魔法だ。振るおうとしていた自分の剣を止めて、ユーリスは真っ黒い悪魔のような男がちらりとこちらを振り返る冷たい眼差しを見た。それも一瞬のことだった。まるでユーリスのことになど興味はない、とでも言いたげに、悪魔のような男はそれきり何の一言もなく走り去っていってしまった。
「お頭!」
部下の声にハッとする。また敵の増援が来たのだ。雄たけびと血の匂い。ユーリスは行儀悪くひとつ舌打ちをすると、剣を握り直した。
あの男には見覚えがあった。もちろん噂も耳にしていた。
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