ア耕小話アーサーが帰還した。
その一報は地下施設で日夜研究に明け暮れる耕平の元に矢のごとく届いた。情報漏洩を防止するため電波の入らない特殊な構造。一見して周りをコンクリート壁が見渡す限り続くその部屋に息を切らしながら他の研究員が慌ただしく入って来た時は再びの襲来かと身構えたがどうにも違ったようで。
「生死不明だったミクロマンが生還し、今コチラに向かっている」
と、興奮気味に語る自分よりも年嵩らしい彼は歓喜に震えていた。早く上に上がって来いとそれだけ告げて走り去っていく後ろ姿を見送りながら耕平は静かに傍にあったイスに腰を下ろした。
「……なんだ、」
凪いだ水面のように耕平は穏やかだ。先程の発言からして巨石を投げ入れられて通常なら波風なんてレベルでは無い程に荒波が己の心を支配していたはず。それどころか初めから水なんて無かったかのように耕平の内側は空に近かった。
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