その日は月が丸い日だった久しぶりに獲物に会わない夜だった。
せっかく修理してもらった銃も試す相手がいなければ冷たい鉄の塊だ、いつもより重いまま帰るのは退屈にさえ思えたが、下手に付きまとわれるよりはいい。
ビルの屋上の端を歩きながら、明かりの消えない街は相変わらずどこかからなにかしら聞こえる。
それなのに。
「どこにでもいるはずなのに、案外いねーんだよなぁ。どいつもこいつも」
冷える夜だ、狙った獲物も冬眠しているのかもしれない。それとももう先に狩られてしまったか。狩人のようなドロもいると聞いたことがあるが、正直どんな狩りをするのか見てみたい。映画でよくあるどこかの民族生まれか?
この街は、画面の向こうの映画と何ら変わりがない。人はすぐ死ぬ、そこら辺で銃声が聴こえる、薬の売買も強盗も暴力も、破壊もなにもかもこの街ではある。普通とやらが自分にはわからないが、映画の中で映画みたい、という台詞は正直矛盾しすぎていて面白かった。そしたらここだって映画の世界だ。
1960