みたらし団子とケーキと独歩「むむむ……」
俺っちの最愛の人は、なんだか難しい顔をしてみたらし団子を咀嚼している。名の知れた有名店のものらしいから、不味いことが理由ではないと思うのだが。
串に刺さっていた団子の2つから、とろりとした蜜が独歩の手へと滴り落ちた。指先を汚すそれを舐めとるが、独歩がなぜそんなにも悩んでいるのかのヒントは得られない。なぜならば、俺っちが【フォーク】だからだ。人口の数パーセントしかいない【フォーク】は、同じく人口の数パーセントしかいない【ケーキ】の体液にしか味覚が反応しない。砂糖と醤油を煮詰めて作った粘り気は、俺っちにとって無味無臭だ。液体ノリを舐めているのと何ら変わりない。
「どしたん?」
俺が声をかけると、どこか遠くを睨みつけていた瞳がこちらへ向けられた。途端に、夕暮れの海を模したようなそれがへにょりと悲しそうな形に歪められる。
2300