お祝いは何度でも「どうしたんですか、それ」
帰宅した尾形の手には紙袋があった。リビングテーブルに乗せられたそれの中を覗くと、黒い箱が入っていた。
「出しても?」
「いいぞ」
袋から出した箱には四つ丸い穴が空いている。箱の中には何かの瓶が入っているようだ。箱を開けると小瓶が八つ入っていて、一本ずつ取り出しながら「数字?」と夏太郎は呟く。ラベルに描かれているのは〇~二、七~十一の数字だった。ラベルの裏側を見ると日本酒と書かれている。
「どうしたんですか?」
「もらった」
「ふーん?」
ネクタイを緩めながら尾形は夏太郎の頭を撫でる。
「一日、残業しただろ。あの日お前の誕生日だって知った部署のヤツが」
「ええー? 仕事なんだから仕方ないじゃないですか」
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