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    赤い糸

    NaO40352687

    DONE忘羨ワンドロワンライ
    お題: 『赤い糸』
    所要時間:1時間25分
    注意事項: 座学以前
    忘羨ワンドロワンライ【赤い糸】 世家によって多少の違いはあるが、仙師は十二歳頃から結丹しはじめ、十五で座学を修め、十八で剣術を修めて一人前となる。二十歳を過ぎると結丹する者は稀だ。姑蘇藍氏のように幼くして門弟となり本格的な修練を始めることが普通であるという世家もあれば、ある程度成長するまでは通いで修練し、結丹してから門弟として迎えるような小世家もある。ひとたび門弟となるとその世家に一生を捧げるのが当たり前の世家もあるが、雲夢江氏のように門弟の出入りがある世家も多い。
     雲夢江氏の門弟が流動的なのは、蓮花塢が水路を中心とした交易の要所であることが大きい。雲夢江氏は、門弟以外に武術を必要とする市井の民にも剣術や弓術を学ぶ機会を与えている。彼らの多くは水路沿いの街の民であり、男女の別なく水路の安全と街の安全のために武術を修めにくるのだ。その中にはごく少数だが修練によって思いがけず遅い結丹を迎える者も居る。彼らは市井の民と仙師の分け隔てなく武術を教えてくれる雲夢江氏に愛着と忠誠とを持っている。水路を伝って頻繁に街と蓮花塢を行き来する中で、世の不穏な気配や他の世家の情報を知ると、それを蓮花塢へと直ぐに伝えてくれるのだ。そんな日常の中で、門弟が民と縁を結んで蓮花塢を去り、結丹した民が妻を娶って蓮花塢の辺りに住み着き門弟となる。このようにして蓮花塢の門弟は流動する。全て人の縁によるものだ。
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    えのきたけ

    DONE2021/9/25 ワンドロお題「赤い糸」
    2022/7/21 加筆修正
    14×29

    運命の赤い糸とは、本来『赤縄』と呼ばれていました。指ではなく、互いの足に結ばれるものだったそうです。冥界の神にこの縄を結ばれると、必ず運命の相手となってしまう。恋に落ちてしまったことを、このある種呪いのようなもののせいにしてしまえば楽になれるのでは? と少年はひとり思うのでした。
    無色透明の赤「赤い糸って、目に見えないのにどうして赤いと分かるんでしょうか」
     あかい、いと?
     霊幻は思わず、傾けた急須を落としそうになった。なみなみと注がれてしまったお茶の入った湯呑を丁寧にお盆にうつしながら、その言葉の意味を反芻してみた。今までの会話の流れが何だったのか思い出す必要があるほど、それはあまりに唐突な発言だったからだ。
     ええと、たぶん、天気の話をしていたような気がする。それか、今日の宿題の話とか。たしか、その程度のことではなかったか。
    「不思議じゃないですか、可視化されていないものを形容して」
     律から文脈に応じた返事はない。霊幻は、あかいいと、から思考が動かない。最近流行りのなにかか、昔流行ったホラーテイストのなにかか、それとももしかして、いわゆるの"運命の赤い糸"の話をしているのか。ひとり、掴めないでいる。イメージも、相槌も、糸口も。
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