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    トンボ

    ヤギみち

    MOURNING薬不ss/本丸で始まる恋
    むか〜しむかし打っていたもの。書きかけなので尻切れとんぼ・まだ恋が始まってない。
    いつかちゃんと諸々足して完成できたらいいねえ…(遠い目)
    本丸で始まる恋「俺だけ直ってもさ……」
    「何言ってるんですか、一番の重傷は貴方ですよ」
     不動がこぼした言葉に、傍にいた物吉がクスクスと笑う。物吉やほかの面々も多少汚れはあるものの軽傷で、血には塗れているが敵の血だ。いたってニコニコと楽しげにしている。
     独り言を拾われて返す言葉に詰まる不動を見る物吉の視線は、出陣前よりも心なし暖かい。それが分かってしまうから、気まずさから不動は無意識に手を握る。手の腹と指の間に他人の肩が収まった。
     長谷部の衣服をつかんでしまっていた。
    「——」
     しまった。重傷を負ったからと背負われているだけでも気まずいのに。長谷部から物言いがあるのではと、不動は知らず息を詰めた。
     過去に同じ主人に所有されたもの同士といっても、かの人へ向ける情の種類には大きな差異がある。不動が色濃い後悔を刻んだあの日あの場所へ、ともに赴いたときに聞いた長谷部の言葉から、不動はそれを十分承知していた。不動自身のことも、おそらくは快くは思っていないだろう。そもそも人の身を得てからというもの、甘酒に溺れるばかりで、不動はおよそ他人に気に入られるようなそぶりは一切取っていなかった。
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