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    乱数

    hanihoney820

    DOODLE円満和解壁崩壊後前提乱寂。
    宇宙に飛ばされそうになる先生と、なんとかしてそれを止めたい乱数のお話。
    エセSF(少し不思議)、暴力表現あり。その他なんでも許せる方向け。
    宇宙に行かなかった。77




    「──こんなとこにいたのか」

     聞こえてきた声に、顔を上げた。そこにいたのは一郎で、あまり予想していなかった存在に素直に驚く。困ったように、でも優しく笑った彼はごく自然な動きで乱数の隣に腰を下ろした。地面に直接、何も敷くことなく道端に蹲る、乱数の隣に。

    「夢野さんと有栖川さんが、心配してたぞ」
    「うん……そっか、ごめん、もうこんな時間だったんだ。気付かなかったな」
    「はは、ぼーっとしてたのか?」
    「うん、ぼーっとしてた」

     乱数がこの場所に──一郎と描いていた未完成のグラフィティの前に来た頃、まだ周囲は明るかったはずだった。それなのに今辺りはとっぷりと日が暮れて真っ暗で、それなりに人通りもあるはずの道にも人っこひとりいない。いったい今は何時なのだろう、一郎は乱数を探してこんな時間にこんな所まで来てくれたのだろうか。だとしたらあまりに悪い、仮にも未成年をこんな時間まで──。反射的にそう考えかけて思い出す。一郎はもうだいぶ前に、成人を迎えたのだった。
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    hanihoney820

    DOODLE円満和解壁崩壊後前提乱寂。
    宇宙に飛ばされそうになる先生と、なんとかしてそれを止めたい乱数のお話。
    エセSF(少し不思議)、暴力表現あり。その他なんでも許せる方向け。
    宇宙に行かなかった。5.65




    「──と、いうわけで。こうして神宮寺寂雷は、宇宙には行きませんでしたとさ。おしまい」

     めでたしめでたし、で話を結んだ乱数の前で、拍手喝采の代わりに幻太郎がコン、と湯呑みを置いた音が軽く響いた。

     こうして幻太郎と面と向かって会うのは、とても久しぶりだった。何せ彼は今や時の人。大成功を約束された大スター様。最終調整やらサイン会やらテレビに雑誌にラジオやら普通に他原稿の締め切りやらで大忙しで、なかなか会う時間を取れなかった。そんな中でのようやくのオフ。聞きたいことも聞いて欲しいこともたくさんあって、今まさに聞いて欲しいことを話している最中。
    神宮寺寂雷が、宇宙に行かなかった。ただそれだけの話を。

    「いや〜、まさか本当にやめるなんて、正直思ってなかったんだけどね。確固たる鉄の意思とか、あるんだと思ってたんだけど。まあああ見えて結構勢いというか? 思いつきというか? 一回突っ走り始めると止まらなくなるとこあるしねぇ」
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    hanihoney820

    DOODLE円満和解壁崩壊後前提乱寂。
    宇宙に飛ばされそうになる先生と、なんとかしてそれを止めたい乱数のお話。
    エセSF(少し不思議)、暴力表現あり。その他なんでも許せる方向け。
    宇宙に行かなかった。10




    結局、神宮寺寂雷は宇宙に行かなかった。

    ただ、それだけの話だ。




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    『皆さん、こんばんは。トキメキハラハライケメンパラダイス学園学長の夢野幻太郎です。本日の朝礼では、皆さんに人生におけるとても大切な三つの袋の話をしたいと思います。まずひとつめは袋小路。まあ駄目なものは駄目なのでさっさと諦めるが吉、ということなのですが──え? おふざけ禁止? 尺が無くなる? 失礼な。小生は至って真面目なんですがねぇ……。とはいえ誰かの真面目が誰かの不真面目であることもこれまた真理。大切なのはそう、ふたつ目の堪忍袋──はいはいすみませんでした。それでは早速本題に入りましょう。改めまして、こんばんは。シブヤディビジョン代表Fling Posseのメンバーであり、小説家の夢野幻太郎です。誠に光栄ながら本日から五週連続、エフエム東都さんにて午後九時のゴールデンタイムに一時間ほどお時間を頂き、こうしてお話をさせて頂くことになりました。題して【夢野幻太郎と歩く宇宙の旅】。というのも、この度小生の作品である【Stella】の長編アニメ映画化が決定致しました。これも偏に読者の皆々様、出版に関わって下さった方々、そしてモデルとなったFling Posseのふたり、飴村乱数と有栖川帝統のおかげです。本当に、ありがとうございます』
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