imori_JB
DOODLE前世に何の罪を犯したのか(今世も大概碌な事はしていない)ってくらい間が悪い男、☔。一歩進んだら三歩くらい下がる。
雌獅子は愛を抱く⑦ 目が覚める。
僅かに開いたカーテンの隙間から差し込む夕日に目を焼かれ、紅い空間の中で目を開いた。寝かしつけるだけのつもりが、幼子の体温に釣られて随分長く寝ていたらしい。
昼前の時点で来ていた客人達の事をちらりと思い出したが、流石に帰っているだろう。そもそも招いてもいない。勝手に来て勝手に帰っていく輩だ。
「……礼那」
娘はすやすやと眠っている。握り締めている小さな手の細い指を一本ずつ辿りながら反応を窺うが、何の反応もない。
これはきっと、今夜はもう眠ってくれないだろう。仕方が無い。夜中に元気になるであろう娘に一晩中付き合う覚悟を固めつつ、まだ夢の中にいる彼女を抱き上げて部屋を出た。今夜は寝ないにしても夕飯は食べさせなければ。
3113僅かに開いたカーテンの隙間から差し込む夕日に目を焼かれ、紅い空間の中で目を開いた。寝かしつけるだけのつもりが、幼子の体温に釣られて随分長く寝ていたらしい。
昼前の時点で来ていた客人達の事をちらりと思い出したが、流石に帰っているだろう。そもそも招いてもいない。勝手に来て勝手に帰っていく輩だ。
「……礼那」
娘はすやすやと眠っている。握り締めている小さな手の細い指を一本ずつ辿りながら反応を窺うが、何の反応もない。
これはきっと、今夜はもう眠ってくれないだろう。仕方が無い。夜中に元気になるであろう娘に一晩中付き合う覚悟を固めつつ、まだ夢の中にいる彼女を抱き上げて部屋を出た。今夜は寝ないにしても夕飯は食べさせなければ。
imori_JB
DOODLEまっっっっっったく懐かれない☔とギャンブラーズと娘。☔はもとより他のギャンブラーにもあんまり懐いてほしくない(教育に悪いから)🦁♀は複雑。
雌獅子は愛を抱く⑥ ゆらゆらと左右に身体が揺らしながら、ピンク色の小さな唇をへの字に曲げた幼子は真剣な表情で一歩、二歩と足を進める。
まだ覚束無い足取りを周囲の大人達、特に幼子の世話も業務の一環として任されている園田は真剣に見守っていた。
何せ雇用主の大切な大切な宝物である一人娘だ。万が一にも転倒して怪我をさせるような事があってはいけない。
ソファーの縁に掴まりながら歩く幼子は、ゆっくりとそのままスライドしていく。途中にはソファーに座る招かれざる客人達の足があるのだが、進撃する幼子は止まらないので園田は内心冷や汗を掻く。
モミジのような小さな手がくしゃり、とカソックの膝辺りを掴むのを慈悲深い微笑みを湛えて見つめる客人その①の天堂は、顔を上げた幼子に微笑んだ。片手を離した幼子は――園田の心配ポイントが増えた――、天堂に向かって指を突きつけて叫ぶ。
2625まだ覚束無い足取りを周囲の大人達、特に幼子の世話も業務の一環として任されている園田は真剣に見守っていた。
何せ雇用主の大切な大切な宝物である一人娘だ。万が一にも転倒して怪我をさせるような事があってはいけない。
ソファーの縁に掴まりながら歩く幼子は、ゆっくりとそのままスライドしていく。途中にはソファーに座る招かれざる客人達の足があるのだが、進撃する幼子は止まらないので園田は内心冷や汗を掻く。
モミジのような小さな手がくしゃり、とカソックの膝辺りを掴むのを慈悲深い微笑みを湛えて見つめる客人その①の天堂は、顔を上げた幼子に微笑んだ。片手を離した幼子は――園田の心配ポイントが増えた――、天堂に向かって指を突きつけて叫ぶ。
Rij6K7unsUwlilX
DONEねこさめせんせい終わりです。ラストは構図が思い浮かばずhttps://hyggestory.net/comic-2/trace
さんで構図お借りしました。
最後まで見て頂きありがとうございます。 9
konekonepie
MAIKING使えるものは全部使うスタイルのアグレッシブ求愛ねこさめ先生に化け狐のコャししさんがほだされるんじゃないかなって話。ある意味では死ネタなのかもしれない。
猫の九つ むかしむかしの遠いある日、とある御山のとある祠に一匹の狐が住みつきました。
狐は陽の光を織ったような金色の毛並みをした珍しい一匹でしたが、不思議と狩りをする里の衆の目に留まりません。それもそのはず、狐はただの狐ではなく百を生きた妖の狐だったのです。
しかしその長い獣の生の中、何度も何度も狙われてきた彼は人間を恐ろしいものだと認識しており、妖として生まれ直してからも人里には立ち入ろうとしませんでした。
狩りをする人間にさえその身を見せなければ、長くを生きた彼の知恵には大きな熊や狼、鷹さえも簡単には近づけません。
そうしているうちに狐は更に歳を重ね、いつからか御山の主のような立場になっておりました。
2920狐は陽の光を織ったような金色の毛並みをした珍しい一匹でしたが、不思議と狩りをする里の衆の目に留まりません。それもそのはず、狐はただの狐ではなく百を生きた妖の狐だったのです。
しかしその長い獣の生の中、何度も何度も狙われてきた彼は人間を恐ろしいものだと認識しており、妖として生まれ直してからも人里には立ち入ろうとしませんでした。
狩りをする人間にさえその身を見せなければ、長くを生きた彼の知恵には大きな熊や狼、鷹さえも簡単には近づけません。
そうしているうちに狐は更に歳を重ね、いつからか御山の主のような立場になっておりました。
bonchinote
DONEいっぱいハート出ちゃうようになった村雨先生のトンペナです。初恋イチゴ味「ええっ、銀行のペナルティーで礼二君からハートが出るようになっちゃったって!? 心配だなあ」
「心臓じゃなくてだよね? 心配で様子みにきちゃった」
「まさしく愛を体現したようなペナルティー、なかなか良い行いをするな銀行というのも」
「帰れマヌケども♡♡♡」
不運はいつだって、呼んでいなくともやって来る。悪魔と死神と邪神が一堂に会したような光景は村雨にとって悪夢そのものだった。
インターホンが鳴り、鍵を開けたことをすぐに村雨は後悔する羽目になる。不機嫌を隠そうともせず顔をしかめた、村雨の頭頂部あたりから紫色の小さなハートが三つ、ホロリと転がり出た。
フローリングの床に当たって硬質な音を立てるそれは決して比喩表現でなく、確かな質量を伴っている。
3274「心臓じゃなくてだよね? 心配で様子みにきちゃった」
「まさしく愛を体現したようなペナルティー、なかなか良い行いをするな銀行というのも」
「帰れマヌケども♡♡♡」
不運はいつだって、呼んでいなくともやって来る。悪魔と死神と邪神が一堂に会したような光景は村雨にとって悪夢そのものだった。
インターホンが鳴り、鍵を開けたことをすぐに村雨は後悔する羽目になる。不機嫌を隠そうともせず顔をしかめた、村雨の頭頂部あたりから紫色の小さなハートが三つ、ホロリと転がり出た。
フローリングの床に当たって硬質な音を立てるそれは決して比喩表現でなく、確かな質量を伴っている。
Rij6K7unsUwlilX
DONEさめししバックハグ企画③にょさめ×しし
こんな健康的な笑顔してるけどズルベチョに抱かれてるんだぜこの男…
2枚目はいつもの様に癖絵+語りです
今回はパス無しでいけますが一応ニッチなやつです 2
bonchinote
DONE二行でわかるあらすじ「銀行のペナルティーで獅子神さんがエロマンガみたいな言葉しか話せなくなっちゃったって!?」
えっ!?銀行のペナルティーで獅子神さんがエロマンガみたいな言葉しか話せなくなっちゃったって!?「銀行のペナルティーで獅子神さんがエロマンガみたいな言葉しか話せなくなっちゃったって!? 心配になって来ちゃった!」
足音荒く現れた真経津の態度は、言葉に反し明らかに嬉々としていた。
日当たりの良い村雨宅に並ぶ椅子は、集う者に比例して増えていた。はじめは二脚だった椅子が三脚、四脚と増え──……このような豪邸を建てながらも、人を呼ぶ気は当初なかったに違いない。気の置けない人間が増えたこと、まさに村雨邸は彼の内面そのものだった。
ペナルティを受ければまずは村雨邸へ。身近に、それもギャンブラーとして理解のある医師がいるのは極めて都合がよかった。小言を垂れながらも「次は事前に連絡してから来い。準備がある」と言う、懐に入った人間限定の面倒見の良さを村雨は持ち合わせていた。
2050足音荒く現れた真経津の態度は、言葉に反し明らかに嬉々としていた。
日当たりの良い村雨宅に並ぶ椅子は、集う者に比例して増えていた。はじめは二脚だった椅子が三脚、四脚と増え──……このような豪邸を建てながらも、人を呼ぶ気は当初なかったに違いない。気の置けない人間が増えたこと、まさに村雨邸は彼の内面そのものだった。
ペナルティを受ければまずは村雨邸へ。身近に、それもギャンブラーとして理解のある医師がいるのは極めて都合がよかった。小言を垂れながらも「次は事前に連絡してから来い。準備がある」と言う、懐に入った人間限定の面倒見の良さを村雨は持ち合わせていた。
bonchinote
DONE「オレがオマエをどこへ出しても恥ずかしくない好感度の高い先生にしてやる!」村雨先生のコンディションを整えようと頑張る獅子神さんの話ここに天才はいない「む、村雨が、病院のサイトに載る……!?」
獅子神敬一は驚愕した。なんでも、村雨の写真が病院のサイトに掲載されるらしい。
(病院、大丈夫なのか)
撮影日は三日後なのだという。
日付も変わろうという真夜中でも、村雨の食欲は衰えない。獅子神が起きているのを前提として、連絡も寄越さず襲来する男は、合い鍵を渡していなければただの強盗でしかない。好き勝手冷蔵庫を漁る二十八の男が、まさか表舞台に立つ日が来ようとは。
第一村雨に余所行きの笑顔など貼り付けられるのだろうか。無愛想な村雨の笑顔を思い返しても、悪魔のような笑顔しか浮かばなかった。
コンロの上に位置する換気扇は業務用の強力なもので、この時間に調理をしても他の部屋への影響を心配しなくていい。
4279獅子神敬一は驚愕した。なんでも、村雨の写真が病院のサイトに掲載されるらしい。
(病院、大丈夫なのか)
撮影日は三日後なのだという。
日付も変わろうという真夜中でも、村雨の食欲は衰えない。獅子神が起きているのを前提として、連絡も寄越さず襲来する男は、合い鍵を渡していなければただの強盗でしかない。好き勝手冷蔵庫を漁る二十八の男が、まさか表舞台に立つ日が来ようとは。
第一村雨に余所行きの笑顔など貼り付けられるのだろうか。無愛想な村雨の笑顔を思い返しても、悪魔のような笑顔しか浮かばなかった。
コンロの上に位置する換気扇は業務用の強力なもので、この時間に調理をしても他の部屋への影響を心配しなくていい。
bonchinote
DONE村雨礼二は弟であり兄になりたい話です。それらすべて気の狂う日常「お兄ちゃんと言ってみろ」
「お兄ちゃん」
答えた瞬間に出た、長い長い村雨の溜息は過去最大級のものだった。大抵の場合、村雨の言動にはなんの前触れもない。初めて獅子神と村雨の出会った時、真経津が「耳が聞こえていても話が通じない」と言ったのもあながち間違いではなかった。
「もっと弟らしく心からの信頼と憧れを込めて言えんのか」
「ちょっとよく分かんねえ、説明しろ」
「私ほどの弟ともなれば周りが勝手に兄になるからな」
村雨曰く、弟の立場しか味わったことのない身として、知見を広げるために一度兄の立場に立っておくべき、らしい。
(聞いてもよく分からねえ……)
考えようとすればするほど獅子神のこめかみ辺りがツキツキと傷んだ。あのタッグマッチ以降、少しばかり成長したと思っていた自分の甘さを痛感する。ともに過ごす時間が長くなっても、村雨礼二という男は未だ底知れない。
1690「お兄ちゃん」
答えた瞬間に出た、長い長い村雨の溜息は過去最大級のものだった。大抵の場合、村雨の言動にはなんの前触れもない。初めて獅子神と村雨の出会った時、真経津が「耳が聞こえていても話が通じない」と言ったのもあながち間違いではなかった。
「もっと弟らしく心からの信頼と憧れを込めて言えんのか」
「ちょっとよく分かんねえ、説明しろ」
「私ほどの弟ともなれば周りが勝手に兄になるからな」
村雨曰く、弟の立場しか味わったことのない身として、知見を広げるために一度兄の立場に立っておくべき、らしい。
(聞いてもよく分からねえ……)
考えようとすればするほど獅子神のこめかみ辺りがツキツキと傷んだ。あのタッグマッチ以降、少しばかり成長したと思っていた自分の甘さを痛感する。ともに過ごす時間が長くなっても、村雨礼二という男は未だ底知れない。
takamura_lmw
DONE🎉ししさんお誕生日おめでとうございます🎉ししさんお誕生日のさめしし、もしくはししさめです。
一月に書いたさめせんお誕生日SSの続きです。
あなたのこれからの人生が、あなたにとって素晴らしいものでありますように。
できれば長生きしてください…頼む…ギャンブルなんかやめろ…ワンへなんか行くな…
「誕生日、おめでとう」『村雨、八月二十七日って空いてたりするか』
恋人の声を聞いた途端、村雨礼二はいざという時の切り札に確保していた上司の弱みを、ここで行使することを決めた。空いた片手で猛然と上司にビジネスチャットを打ちながら、頭の中では担当の患者とそのタスクについて素早くチェックをかける。どうしても村雨でなければならない仕事はないはずだ。あのネタをちらつかせれば上司は確実に休みを寄越すだろう。
「休みは取れる。どうした」
『即答だな』
「偶然ここのところ手が空いていてな」
嘘だった。所属する医局もいわゆる「バイト」先も相応に多忙だ。だがそれを彼に悟らせるつもりはさらさらなかった。
村雨がここまで即座に恋人の―――獅子神敬一の、願いとも言えないような言葉に応えたのは、彼の声になにか特別なものを感じたからだった。不安でも、歓喜でもない。怒りでもなく、愉楽でもない。ただどこか尋常でなく、特別なもの。絶対に逃してはならないなにか。ほとんど第六感のようなものだが、村雨はそういった感覚を重視する性質(たち)だった。
7028恋人の声を聞いた途端、村雨礼二はいざという時の切り札に確保していた上司の弱みを、ここで行使することを決めた。空いた片手で猛然と上司にビジネスチャットを打ちながら、頭の中では担当の患者とそのタスクについて素早くチェックをかける。どうしても村雨でなければならない仕事はないはずだ。あのネタをちらつかせれば上司は確実に休みを寄越すだろう。
「休みは取れる。どうした」
『即答だな』
「偶然ここのところ手が空いていてな」
嘘だった。所属する医局もいわゆる「バイト」先も相応に多忙だ。だがそれを彼に悟らせるつもりはさらさらなかった。
村雨がここまで即座に恋人の―――獅子神敬一の、願いとも言えないような言葉に応えたのは、彼の声になにか特別なものを感じたからだった。不安でも、歓喜でもない。怒りでもなく、愉楽でもない。ただどこか尋常でなく、特別なもの。絶対に逃してはならないなにか。ほとんど第六感のようなものだが、村雨はそういった感覚を重視する性質(たち)だった。
oritkrv0120
DOODLE僕の初恋を君に捧ぐ「……でもよ先生、本当にいいのか?初めての相手がオレなんかで。先生なら他にいくらでも選べんじゃねえの?」
募る想いを告げた村雨を、しかし獅子神は何処か思い詰めたような瞳で見ていた。
「私が欲しいのはあなただと言っている。あなたしかいらないし望まない。恐らくあなたの知っている『だれか』の中でも拙いとは思うが」
自分から口に出しておきながら、酷く苦いものを含んでしまった時のように、村雨が眉間に深く皺を寄せる。
負けず嫌いのこの男が、こんな表情をするのを獅子神は初めて見た。
「負担を強いてしまうかもしれない。それでもどうか、私があなたに触れることを許して欲しい」
赤い双眸は、決して揺らぐことなく真っ直ぐに獅子神を見つめている。命懸けの勝負の最中ですら、殆ど表情を変えることのない村雨の顔に今、切実な懇願が見える。
1702募る想いを告げた村雨を、しかし獅子神は何処か思い詰めたような瞳で見ていた。
「私が欲しいのはあなただと言っている。あなたしかいらないし望まない。恐らくあなたの知っている『だれか』の中でも拙いとは思うが」
自分から口に出しておきながら、酷く苦いものを含んでしまった時のように、村雨が眉間に深く皺を寄せる。
負けず嫌いのこの男が、こんな表情をするのを獅子神は初めて見た。
「負担を強いてしまうかもしれない。それでもどうか、私があなたに触れることを許して欲しい」
赤い双眸は、決して揺らぐことなく真っ直ぐに獅子神を見つめている。命懸けの勝負の最中ですら、殆ど表情を変えることのない村雨の顔に今、切実な懇願が見える。
kons1201
MAIKINGさめししキリがいいところまでかけたので。
性行為にちょっとした忌避感を持つししさんと包容力があるタイプのさめさんの話
性交はしていない、受フェ、扱き合いまでr-15?
念の為passつけてます→ y/n 3537
kons1201
DONEさめしし大粒の甘い葡萄「先生、食べれるか??」
ベッドに寝転ぶ村雨の元へ、葡萄の乗った皿を持ってくる獅子神、下着だけを身に付けたその身体には、村雨から付けられた赤い痕が目立っている。
先程まで、村雨の手で乱されぐずぐずに溶かされていた面影は、薄らと赤く染まる目元や少しかすれた声に微かに残っているのみだった
「あなたは回復が早すぎる」口元に差し出された葡萄を食べながら、村雨はベッドに乗りあがった獅子神の腹筋の筋を指先で撫でる、さっきまで私がここに居たと思い出させる様に
「若いもんで、」
腹を撫でる村雨の指に熱い吐息を零す獅子神は、その指をそのままに、また一粒葡萄を村雨の口に入れた
「美味いだろ?」
「ああ」
村雨の指が、獅子神の腹から離れて葡萄を一粒つまんで、口に入れる
541ベッドに寝転ぶ村雨の元へ、葡萄の乗った皿を持ってくる獅子神、下着だけを身に付けたその身体には、村雨から付けられた赤い痕が目立っている。
先程まで、村雨の手で乱されぐずぐずに溶かされていた面影は、薄らと赤く染まる目元や少しかすれた声に微かに残っているのみだった
「あなたは回復が早すぎる」口元に差し出された葡萄を食べながら、村雨はベッドに乗りあがった獅子神の腹筋の筋を指先で撫でる、さっきまで私がここに居たと思い出させる様に
「若いもんで、」
腹を撫でる村雨の指に熱い吐息を零す獅子神は、その指をそのままに、また一粒葡萄を村雨の口に入れた
「美味いだろ?」
「ああ」
村雨の指が、獅子神の腹から離れて葡萄を一粒つまんで、口に入れる
imori_JB
DOODLE夜に熱を出した娘を医療センターに連れて行った獅子神と、応援で来ていて遭遇した村雨。塩られてる。雌獅子は愛を抱く⑤「ぁーん、えー……」
普段よりずっと弱々しい泣き声がリビングに響く。
ソファーに寝かせた娘は顔を真っ赤にしている。
時折苦しげにヒッ、ヒッ、としゃくり上げる様子を、心配に顔を顰めながら獅子神は従業員達と共に覗き込んでいた。
ピピピと小さな電子音が聞こえると、獅子神は娘の耳に入れていた体温計を外して表示を見、苦く呟く。
「……高いな」
三十八度六分。
夕方までは機嫌良く元気に過ごしていた娘は、夕食後のベビーシッターが退勤した辺りからぐったりし始めた。
水分も取りたがらず、弱々しく泣く姿に獅子神は判断を下す。
「夜間急病行って来る、お前達は上がれ」
「お供しますよ」
「いや、遅くなるだろうしいい」
時間は既に二十二時半に近い。
3153普段よりずっと弱々しい泣き声がリビングに響く。
ソファーに寝かせた娘は顔を真っ赤にしている。
時折苦しげにヒッ、ヒッ、としゃくり上げる様子を、心配に顔を顰めながら獅子神は従業員達と共に覗き込んでいた。
ピピピと小さな電子音が聞こえると、獅子神は娘の耳に入れていた体温計を外して表示を見、苦く呟く。
「……高いな」
三十八度六分。
夕方までは機嫌良く元気に過ごしていた娘は、夕食後のベビーシッターが退勤した辺りからぐったりし始めた。
水分も取りたがらず、弱々しく泣く姿に獅子神は判断を下す。
「夜間急病行って来る、お前達は上がれ」
「お供しますよ」
「いや、遅くなるだろうしいい」
時間は既に二十二時半に近い。
konekonepie
DONEさめししがいつも通りに過ごしていちゃいちゃする話なんでもない日の君と 仕事を終えてから家に来た村雨をいつも通りに出迎えて、ただいま、なんて言う彼をおかえり、と笑いながら招き入れた。
キスとハグはいつも通り手洗いとうがいを済ませてから。リビングに戻ってくるなり両腕を広げて、ん、とスキンシップをせがんでくる彼を、コンロの火を止めてから抱きしめに行くまでがいつもの流れだ。
これは最近だと真経津達がいてもお構いなしのルーティンになっていて、二人きりの時だけこの後にキスが入る。頬だったり、唇だったり、耳だったり。その時の彼の気分によって違うキスを受け止めてからそれに応えるのが、オレの好きな流れだった。
「今日のメニューを聞いても?」
「今日はエビチリと中華スープ。棒棒鶏とナムルも用意してあるぜ」
5113キスとハグはいつも通り手洗いとうがいを済ませてから。リビングに戻ってくるなり両腕を広げて、ん、とスキンシップをせがんでくる彼を、コンロの火を止めてから抱きしめに行くまでがいつもの流れだ。
これは最近だと真経津達がいてもお構いなしのルーティンになっていて、二人きりの時だけこの後にキスが入る。頬だったり、唇だったり、耳だったり。その時の彼の気分によって違うキスを受け止めてからそれに応えるのが、オレの好きな流れだった。
「今日のメニューを聞いても?」
「今日はエビチリと中華スープ。棒棒鶏とナムルも用意してあるぜ」
imori_JB
DOODLEギャンブラー達の感想と、引っ張り出された(元)銀行。原因が判明しても彼女の意志は揺るがない。
雌獅子は愛を抱く④「いや~……あれは厄介だわ」
真経津宅のソファーに乱暴に腰を下ろした叶は、背もたれでぐいっと背筋を伸ばしつつ天井を見上げた。
此処に来る前、これから仕事だと言うから勤務先に置いてきた村雨は果たして使い物になるのだろうか、と普段の当人に訊ねたら指一本切り落とされても不思議では無い事をちらりと考える。
「……愛の反対は何だと思う」
「有名な奴だろ? 無関心」
「その通り」
向かい側に座った天堂は膝の上で手を組み、物憂げに溜息を吐いた。今日の感想はまさしくそれに尽きる。
掛かり切りになっていたカラス銀行の件に片が付き、打ち上げ気分で久しく会っていない獅子神の元を訪ねた。
それは懐かしい友人に会いたいからというだけではなく、銀行の策略の中で恋人の手を離さざるを得なかった村雨と獅子神とが再び共に歩けるようになれば、というお節介な下心もあったのだ。共通認識であったそれらは見事撃沈した。最早ヨリを戻すどころの話ではない、凄まじい勢いで事故っている。
7202真経津宅のソファーに乱暴に腰を下ろした叶は、背もたれでぐいっと背筋を伸ばしつつ天井を見上げた。
此処に来る前、これから仕事だと言うから勤務先に置いてきた村雨は果たして使い物になるのだろうか、と普段の当人に訊ねたら指一本切り落とされても不思議では無い事をちらりと考える。
「……愛の反対は何だと思う」
「有名な奴だろ? 無関心」
「その通り」
向かい側に座った天堂は膝の上で手を組み、物憂げに溜息を吐いた。今日の感想はまさしくそれに尽きる。
掛かり切りになっていたカラス銀行の件に片が付き、打ち上げ気分で久しく会っていない獅子神の元を訪ねた。
それは懐かしい友人に会いたいからというだけではなく、銀行の策略の中で恋人の手を離さざるを得なかった村雨と獅子神とが再び共に歩けるようになれば、というお節介な下心もあったのだ。共通認識であったそれらは見事撃沈した。最早ヨリを戻すどころの話ではない、凄まじい勢いで事故っている。
imori_JB
DOODLE別れた後妊娠が発覚し、シングルで育てているにょたししの話の続き。雌獅子は堂々と我が子を護る。
雌獅子は愛を抱く③「久しぶり! 可愛い赤ちゃんだね獅子神さん、ところで誰の子?」
暫くの硬直の後、気を取り直したように真経津が言った。その言葉にさも何を分かり切った事を、とでも言うかのように獅子神は片眉を跳ね上げて見せる。
「オレの子だけど?」
「いやそういう事じゃなくて」
頭を掻きながら珍しく言葉を選んでいる様子の叶に、重ねて応える。
「オレの、子だけど?」
寧ろ他の何だというとばかりに圧を籠めれば、その程度で怯むようなタマでは無い筈の真経津と叶は声を揃えた。
「「アッハイ」」
「――村雨君、村雨君大丈夫か、しっかりしろ」
静かな後方では天堂が村雨の肩を揺さ振っている。
大きな眼鏡の向こうの目は閉ざされ、元々血色が良くない顔は今は完全に血の気が無い。睡眠不足だろうか、今すぐ自宅に帰って寝ていろと獅子神は思う。
2509暫くの硬直の後、気を取り直したように真経津が言った。その言葉にさも何を分かり切った事を、とでも言うかのように獅子神は片眉を跳ね上げて見せる。
「オレの子だけど?」
「いやそういう事じゃなくて」
頭を掻きながら珍しく言葉を選んでいる様子の叶に、重ねて応える。
「オレの、子だけど?」
寧ろ他の何だというとばかりに圧を籠めれば、その程度で怯むようなタマでは無い筈の真経津と叶は声を揃えた。
「「アッハイ」」
「――村雨君、村雨君大丈夫か、しっかりしろ」
静かな後方では天堂が村雨の肩を揺さ振っている。
大きな眼鏡の向こうの目は閉ざされ、元々血色が良くない顔は今は完全に血の気が無い。睡眠不足だろうか、今すぐ自宅に帰って寝ていろと獅子神は思う。
imori_JB
DOODLE別れた後に妊娠発覚し、一人で産み育てる決意をしたにょたししの話の続き。無事出産後、一年三か月が経過。
思わぬニュースに驚いていた後、招かれざる来客が…。
雌獅子は愛を抱く② 平日、獅子神の昼時は忙しい。
株の売買立会、前場と後場の間の一時間で自分達と従業員の食事を作り、済ませなければならない。従業員にはその間別の仕事も頼みたいので、昼休みはその株式取引が無い一時間と後場の最初の一時間とで交代制で取らせている。今日は園田が後場に昼休みを取る番で、先程からベビースプーンと離乳食を両手に格闘していた。もう一人と出産後に雇い入れたベビーシッターは一足先に別室で休憩している。
『続いてのニュースです。市中銀行第三位のカラス銀行が経営破綻し――』
そんな慌ただしい昼の時間、ふと聞こえて来たニュースに少なからぬ驚きを持って獅子神は顔を上げた。
テレビの画面には横一直線に並べた机にはずらりと行員が並び深々と頭を下げている。数秒の後上げられた顔には、見覚えのあるものが幾つか混ざっていた。
2829株の売買立会、前場と後場の間の一時間で自分達と従業員の食事を作り、済ませなければならない。従業員にはその間別の仕事も頼みたいので、昼休みはその株式取引が無い一時間と後場の最初の一時間とで交代制で取らせている。今日は園田が後場に昼休みを取る番で、先程からベビースプーンと離乳食を両手に格闘していた。もう一人と出産後に雇い入れたベビーシッターは一足先に別室で休憩している。
『続いてのニュースです。市中銀行第三位のカラス銀行が経営破綻し――』
そんな慌ただしい昼の時間、ふと聞こえて来たニュースに少なからぬ驚きを持って獅子神は顔を上げた。
テレビの画面には横一直線に並べた机にはずらりと行員が並び深々と頭を下げている。数秒の後上げられた顔には、見覚えのあるものが幾つか混ざっていた。
imori_JB
DOODLE一方的に別れを告げられた後に妊娠が判明したにょたししが一人で産み育てる決意を固める話。尚その頃…。
雌獅子は愛を抱く『このお電話はお繋ぎする事が出来ませ――』
何度か聞いたメッセージを最後まで聞かずに通話を打ち切る。
「……はぁ」
深々溜息を吐いて、これ以上は無駄だとスマートフォンをサイドテーブルの上に置いた。そのすぐ近くにはこの家には不釣り合いな、ファンシーなキャラクターが表紙を飾る手帳が一冊。
おめでたですねと全くめでたくない事を病院で宣告されたのは、獅子神が恋人「だった」村雨に別れを告げられて二週間後の事だった。
その時の獅子神は生まれて初めての恋が終わった痛みから食欲不振が続き、けれど幾ら何でもこんなには続かないだろうと訝しんで病院を受診してみれば、内科から産科に回されて容赦のない宣告だ。
何とか顔を強張らせないように笑顔を作ったつもりだが上手く行っていただろうか、と獅子神は明後日の方向の心配をする。
1631何度か聞いたメッセージを最後まで聞かずに通話を打ち切る。
「……はぁ」
深々溜息を吐いて、これ以上は無駄だとスマートフォンをサイドテーブルの上に置いた。そのすぐ近くにはこの家には不釣り合いな、ファンシーなキャラクターが表紙を飾る手帳が一冊。
おめでたですねと全くめでたくない事を病院で宣告されたのは、獅子神が恋人「だった」村雨に別れを告げられて二週間後の事だった。
その時の獅子神は生まれて初めての恋が終わった痛みから食欲不振が続き、けれど幾ら何でもこんなには続かないだろうと訝しんで病院を受診してみれば、内科から産科に回されて容赦のない宣告だ。
何とか顔を強張らせないように笑顔を作ったつもりだが上手く行っていただろうか、と獅子神は明後日の方向の心配をする。
imori_JB
DOODLE俳優パロのさめにょたししの続き。言質を取られてはい決着。
いちおう此処で完結です。
この後週末に村雨の実家に連れていかれて顔合わせ、次のデートでブライダルフェア、三回目のデートで結婚式でリアルタイムアタックも完了する。
午前零時を過ぎても② けっこん。血痕……いや、結婚??
目の前の男と結婚という単語がいまいち結びつかない。そういった事とは完全に縁遠い雰囲気だ。
妙な事を口走った男には血痕の方がよほどしっくり来るが余りにも文脈的に不自然、というよりも完全に意味不明で破綻する。結婚の方でもある意味十分破綻しているが。
いや結婚、結婚である。目の前の男は何と言ったか。交際を前提に結婚を。こうさい。けっこん。獅子神と。獅子神と????
「……、……、……はぁ!?」
嬉しいでも悲しいでも無く、良いでも悪いでも無く。獅子神の口から突いて出たのは心の底からの驚愕だ。
誓って――誰にかは知らないが――獅子神と村雨はそんな関係では無い。同じ作品に出演した共演者というだけだ。
4862目の前の男と結婚という単語がいまいち結びつかない。そういった事とは完全に縁遠い雰囲気だ。
妙な事を口走った男には血痕の方がよほどしっくり来るが余りにも文脈的に不自然、というよりも完全に意味不明で破綻する。結婚の方でもある意味十分破綻しているが。
いや結婚、結婚である。目の前の男は何と言ったか。交際を前提に結婚を。こうさい。けっこん。獅子神と。獅子神と????
「……、……、……はぁ!?」
嬉しいでも悲しいでも無く、良いでも悪いでも無く。獅子神の口から突いて出たのは心の底からの驚愕だ。
誓って――誰にかは知らないが――獅子神と村雨はそんな関係では無い。同じ作品に出演した共演者というだけだ。
imori_JB
DOODLE俳優村雨×俳優にょたしし。書きたい所だけ。性に纏わる全般に苦手意識があるにょたししにベッドシーンについて演技指導(実地)した世界線の二人。
もしくは俳優村雨礼二による結婚RTA。
午前零時を過ぎても① 厚いドアの隙間に身体を滑り込ませて外に出て後ろ手に閉めてしまえば、中の喧騒はもう殆ど届かない。
ふう、と体温と酒気の混ざった溜息を吐き出した獅子神はドアの前を離れ、普段は食前食後のアルコールを楽しむためのカウンター席の椅子を引き、座る。
今日この一軒家の人気レストランはとある映画の製作委員会による貸し切りになっていて、獅子神が此処で勝手をしても他の客の邪魔になる恐れはない。
限られた人々だけを招いたプレミアム試写会と舞台挨拶を終えた後の打ち上げは、皆羽目を外しているようだ。出演していない筈の親しい俳優の姿もちらほら見えていたのは何故だろう。
主演女優――正しくはW主演の片割れである獅子神の元には製作スタッフや関係者などが次から次へと押し寄せた。彼等を労い愛想よく答えるのも仕事の内、折角の料理も殆ど手を付けることが出来ず勧められたアルコールだけが胃の中に重なっていった。
3776ふう、と体温と酒気の混ざった溜息を吐き出した獅子神はドアの前を離れ、普段は食前食後のアルコールを楽しむためのカウンター席の椅子を引き、座る。
今日この一軒家の人気レストランはとある映画の製作委員会による貸し切りになっていて、獅子神が此処で勝手をしても他の客の邪魔になる恐れはない。
限られた人々だけを招いたプレミアム試写会と舞台挨拶を終えた後の打ち上げは、皆羽目を外しているようだ。出演していない筈の親しい俳優の姿もちらほら見えていたのは何故だろう。
主演女優――正しくはW主演の片割れである獅子神の元には製作スタッフや関係者などが次から次へと押し寄せた。彼等を労い愛想よく答えるのも仕事の内、折角の料理も殆ど手を付けることが出来ず勧められたアルコールだけが胃の中に重なっていった。
imori_JB
DOODLEにょたししがモブレに反撃して相手が死んだ話の続き。ゴミはゴミ箱へ、当然のお片付けです。
Dust To Dust -Ⅱ「診せろ」
村雨の言葉に獅子神は顔を強張らせ、再び俯いた。
毛布の下の身体に残された跡は、恋人に見せるには余りにもおぞましい痕跡だ。
勿論それを晒した事により村雨に何らかの心変わりが生じる事などありえないし、その事は獅子神も良く分かっている。
それでも心情としては見せたくない、が先に立つ。村雨は今、誰よりも見せたくない相手だった。
他の相手ならば容赦無く邪魔な布を剥ぎ取り診察するか、診せる気がないなら帰れと蹴り出す村雨も流石に今の獅子神相手には何方も出来ない。
無表情の下で途方に暮れれば、獅子神にぴったりと毛布越しに密着し獅子神の背を撫でていた真経津が察して柔らかく促す。
「獅子神さん、村雨さんに診てもらおう? ね?」
4843村雨の言葉に獅子神は顔を強張らせ、再び俯いた。
毛布の下の身体に残された跡は、恋人に見せるには余りにもおぞましい痕跡だ。
勿論それを晒した事により村雨に何らかの心変わりが生じる事などありえないし、その事は獅子神も良く分かっている。
それでも心情としては見せたくない、が先に立つ。村雨は今、誰よりも見せたくない相手だった。
他の相手ならば容赦無く邪魔な布を剥ぎ取り診察するか、診せる気がないなら帰れと蹴り出す村雨も流石に今の獅子神相手には何方も出来ない。
無表情の下で途方に暮れれば、獅子神にぴったりと毛布越しに密着し獅子神の背を撫でていた真経津が察して柔らかく促す。
「獅子神さん、村雨さんに診てもらおう? ね?」
imori_JB
DOODLE昼休みクオリティ。モブレされそうになって反撃したらやりすぎて相手を死なせちゃったにょたししとありゃーやっちゃったねーどこで始末しよっかなーなクインテットというちょっと地獄な妄想。
続かない。
Dust To Dust『もしもし、村雨先生の携帯番号で間違い無いでしょうか。……はい、園田です。実は、獅子神さんの事で緊急のご連絡が……』
*
しとしとと雨が降る暗闇の中、高級住宅街の一角を車が疾走していた。時刻は既に深夜に差し掛かっている。
恨みがましい同僚達の視線を振り切って退勤しハンドルを握った村雨は、ガレージに愛車を止めて運転席から乱雑な動作で降り立った。
不機嫌に細めた目で見つめる先はこのガレージの所有者である獅子神の家。窓二つから光が漏れている。
今日も今日とて日勤からの残業に入っていた村雨の元に来た一本の電話。
ギャンブラー仲間であり、恋人でもある獅子神が雇用する従業員からのそれは、村雨を絶句させるに相応しい内容だった。
2850*
しとしとと雨が降る暗闇の中、高級住宅街の一角を車が疾走していた。時刻は既に深夜に差し掛かっている。
恨みがましい同僚達の視線を振り切って退勤しハンドルを握った村雨は、ガレージに愛車を止めて運転席から乱雑な動作で降り立った。
不機嫌に細めた目で見つめる先はこのガレージの所有者である獅子神の家。窓二つから光が漏れている。
今日も今日とて日勤からの残業に入っていた村雨の元に来た一本の電話。
ギャンブラー仲間であり、恋人でもある獅子神が雇用する従業員からのそれは、村雨を絶句させるに相応しい内容だった。
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DOODLEカラス銀行創立記念謝恩パーティーに、村雨のエスコートで登場したにょたしし。宇佐美の個人的な感情はクインテット(ーにょたしし)にはバレバレ。
牽制と嫌がらせで宇佐美の死体蹴りに余念がない村雨先生はライバルは蹴落としたいらしい。
全三話の予定でしたがもう一話続きます。
シークレット・ラヴァーズ③「富岡様ご夫妻、正面玄関にお着きです」
「了解、お迎えに上がります」
「河上様がB会場からご退出なさいました。A会場に向かわれます」
「分かりました、エレベータ前でお待ちしております」
カラス銀行創立記念謝恩パーティー当日。特別イベント開始時間が逼ると、次から次へと上顧客であるVIP達が到着し出迎えの為に特五の行員達が足早に行き交っていた。
場所は何時もの如くクロウホテル、観客を入れるゲームも行われる広い吹き抜けのバンケットホールが特別業務部四課・五課合同主催の特別イベントの会場だ。
此処は行内では通称A会場と呼ばれている。普通課が主催している一般的な式典やパーティーなどを行っている一階の大ホールはB会場と呼ばれており、カラス銀行として何方に力を入れているかは呼び方一つでも良く分かる。
4487「了解、お迎えに上がります」
「河上様がB会場からご退出なさいました。A会場に向かわれます」
「分かりました、エレベータ前でお待ちしております」
カラス銀行創立記念謝恩パーティー当日。特別イベント開始時間が逼ると、次から次へと上顧客であるVIP達が到着し出迎えの為に特五の行員達が足早に行き交っていた。
場所は何時もの如くクロウホテル、観客を入れるゲームも行われる広い吹き抜けのバンケットホールが特別業務部四課・五課合同主催の特別イベントの会場だ。
此処は行内では通称A会場と呼ばれている。普通課が主催している一般的な式典やパーティーなどを行っている一階の大ホールはB会場と呼ばれており、カラス銀行として何方に力を入れているかは呼び方一つでも良く分かる。
takamura_lmw
DONE桜流しのさめしし、もしくはししさめ。ハッピーエンドです。ほんとなんです。メリバでもないキラッキラのハピエンなんです。信じてください。これがずっと出力できなくてここ一ヶ月他のものをなんも書けてませんでした。桜が散る前に完成して良かったと思うことにします。次はお原稿と、にょたゆりでなれそめを書きたいです。
桜流し 獅子神敬一が死んだ。
四月の二日、桜が散り出す頃のことだった。
村雨にその死を伝えたのは真経津だった。
「——は?」
「死んじゃったんだって。試合には勝ったのに。獅子神さんらしいよね」
真経津は薄く微笑んで言った。「獅子神さん、死んじゃった」と告げたその時も、彼は同じ顔をしていた。
「……いつだ」
「今日。ボク、さっきまで銀行にいたんだ。ゲームじゃなかったんだけど、手続きで。そしたら宇佐美さんが来て教えてくれた。仲が良かったからって」
村雨はどこかぼんやりと真経津の言葉を聞いていた。
「あれは、……獅子神は家族がいないだろう。遺体はどうするんだ」
「雑用係の人たちが連れて帰るって聞いたよ」
「そうか」
「銀行に預けてる遺言書、あるでしょ。時々更新させられる、お葬式とか相続の話とか書いたやつ。獅子神さん、あれに自分が死んだ後は雑用係の人たちにお葬式とか後片付けとか任せるって書いてたみたい。まあ銀行も、事情が分かってる人がお葬式してくれた方が安心だもんね」
22432四月の二日、桜が散り出す頃のことだった。
村雨にその死を伝えたのは真経津だった。
「——は?」
「死んじゃったんだって。試合には勝ったのに。獅子神さんらしいよね」
真経津は薄く微笑んで言った。「獅子神さん、死んじゃった」と告げたその時も、彼は同じ顔をしていた。
「……いつだ」
「今日。ボク、さっきまで銀行にいたんだ。ゲームじゃなかったんだけど、手続きで。そしたら宇佐美さんが来て教えてくれた。仲が良かったからって」
村雨はどこかぼんやりと真経津の言葉を聞いていた。
「あれは、……獅子神は家族がいないだろう。遺体はどうするんだ」
「雑用係の人たちが連れて帰るって聞いたよ」
「そうか」
「銀行に預けてる遺言書、あるでしょ。時々更新させられる、お葬式とか相続の話とか書いたやつ。獅子神さん、あれに自分が死んだ後は雑用係の人たちにお葬式とか後片付けとか任せるって書いてたみたい。まあ銀行も、事情が分かってる人がお葬式してくれた方が安心だもんね」
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DOODLE仲良いしいな先輩と花ちゃんに夢見てる。あの二人同い年だし同期だったりしないかな。特四女子から見た村雨とにょたしし。にょたししが途中から、村雨は最後にちょろっとでる。ディスってるのは仕様です。
シークレット・ラヴァーズ②「そうそう、聞いてよ花ちゃん~」
カラス銀行本店の最寄り駅前にある百貨店。
セール初日の土曜日がオフに当たり、意気揚々とやって来たカラス銀行特別業務部四課宇佐美班の女王様こと羽柴しいなは連れと共に心行くまでショッピングを楽しみ、そして今小休止の為に百貨店内のカフェに来ていた。あくまで小休止だ、この後まだまだ見たいものはある。
次に回るフロアとルートについて頭の中で算段しつつ、冷たいアイスカフェオレを一気に半分吸い込んでから今日の連れに話を向けた。アイスティーの氷をストローで突いていた連れは顔を上げる。
「何だよしいな」
同じく特別業務部四課、片伯部班の加賀花火。同い年の為入行時期も近く――当初配属された課は全く異なっていたが――、特四自体女性行員が少ない部署とあって、顔を合わせれば立ち話くらいはする仲だ。互いに男社会といっていい特別業務部四課になどいれば愚痴の一つや二つ、三つや四つ出て来るものなのだ。
5241カラス銀行本店の最寄り駅前にある百貨店。
セール初日の土曜日がオフに当たり、意気揚々とやって来たカラス銀行特別業務部四課宇佐美班の女王様こと羽柴しいなは連れと共に心行くまでショッピングを楽しみ、そして今小休止の為に百貨店内のカフェに来ていた。あくまで小休止だ、この後まだまだ見たいものはある。
次に回るフロアとルートについて頭の中で算段しつつ、冷たいアイスカフェオレを一気に半分吸い込んでから今日の連れに話を向けた。アイスティーの氷をストローで突いていた連れは顔を上げる。
「何だよしいな」
同じく特別業務部四課、片伯部班の加賀花火。同い年の為入行時期も近く――当初配属された課は全く異なっていたが――、特四自体女性行員が少ない部署とあって、顔を合わせれば立ち話くらいはする仲だ。互いに男社会といっていい特別業務部四課になどいれば愚痴の一つや二つ、三つや四つ出て来るものなのだ。
imori_JB
DOODLE村雨とにょたししが付き合ってることを知らなかった宇佐美班の面々に、真経津邸に入り浸るせいで自然と知った御手洗がうっかり暴露した話。村雨もにょたししも出てこない。あとほんのり宇佐美→にょたしし。
しいな先輩が滅茶苦茶に村雨をディスりますが仕様です。
シークレット・ラヴァーズ①「以上が当行の創立記念謝恩パーティーの概要になります。何か質問は?」
カラス銀行特別業務部四課、宇佐美班。主任の宇佐美から三週間後に控えるパーティーの概要について説明されていた班員達は手元の書類から顔を上げ、それぞれ顔を見合わせる。
毎年年に一度行われているパーティーであるからして既に数回経験している面々にとっては特段今更疑問を持つような内容では無い。
しかし今回が初めてである御手洗にとっては疑問しかないイベントだ。
「あの……何ですか、この……」
「ギャンブル体験イベント?」
「はい」
普通課が主催するイベントとは異なり特別課が主催するイベントは勿論ギャンブルに関した物だ。
創立記念謝恩パーティーの中でも特別業務部4課と5課が合同で主催する4リンク以上に所属しているギャンブラー達を招き、彼らを相手にVIP達がギャンブルを楽しむという企画はその中のメインイベントとして位置づけられている。
4190カラス銀行特別業務部四課、宇佐美班。主任の宇佐美から三週間後に控えるパーティーの概要について説明されていた班員達は手元の書類から顔を上げ、それぞれ顔を見合わせる。
毎年年に一度行われているパーティーであるからして既に数回経験している面々にとっては特段今更疑問を持つような内容では無い。
しかし今回が初めてである御手洗にとっては疑問しかないイベントだ。
「あの……何ですか、この……」
「ギャンブル体験イベント?」
「はい」
普通課が主催するイベントとは異なり特別課が主催するイベントは勿論ギャンブルに関した物だ。
創立記念謝恩パーティーの中でも特別業務部4課と5課が合同で主催する4リンク以上に所属しているギャンブラー達を招き、彼らを相手にVIP達がギャンブルを楽しむという企画はその中のメインイベントとして位置づけられている。
imori_JB
TRAININGさめしし習作シリーズ。疲れすぎてバグった村雨先生が獅子神の所に居れば三大欲求全部満たされるな?(キュピーン)する話。
または、雄っぱいに癒される話。
三大欲求ワンストップ①「お疲れ様でした」
背中に掛かる看護師の声が妙に遠く聞こえる。
グラグラと揺れる頭を持て余しながら、村雨は病院の自動ドアをのろのろと潜り抜けた。
日勤で外来、夜は当直という名の夜勤、そのまま再び当直明けで日勤、帰ろうと思った所に緊急搬送の受け入れ、落ち着いた頃合に今度こそと思った所に容体急変で緊急オペ。
一切の睡眠を取らないまま六十時間働き続けた所で村雨は数えるのを止めた。数えなくても村雨の優秀な感覚は正確に、秒刻みで時刻を把握できているのだが考えたくも無かったのだ。
今までの医師となってからの最高連続勤務時間は七十二時間、それを超えたとだけ認識している。
そして睡眠を取らせないという極めて原始的で古典的な拷問が如何に有用であるかその身をもって実感したのだった。
4205背中に掛かる看護師の声が妙に遠く聞こえる。
グラグラと揺れる頭を持て余しながら、村雨は病院の自動ドアをのろのろと潜り抜けた。
日勤で外来、夜は当直という名の夜勤、そのまま再び当直明けで日勤、帰ろうと思った所に緊急搬送の受け入れ、落ち着いた頃合に今度こそと思った所に容体急変で緊急オペ。
一切の睡眠を取らないまま六十時間働き続けた所で村雨は数えるのを止めた。数えなくても村雨の優秀な感覚は正確に、秒刻みで時刻を把握できているのだが考えたくも無かったのだ。
今までの医師となってからの最高連続勤務時間は七十二時間、それを超えたとだけ認識している。
そして睡眠を取らせないという極めて原始的で古典的な拷問が如何に有用であるかその身をもって実感したのだった。