NOCO
DONE謎世界線の聖職者×淫魔 夏五即堕ち2コマ(ド健全)です。※おいしいところだけを借りた考証のまったくなっていない設定ですのでご注意ください。
※特定の思想・宗教を揶揄する意図は一切ございません。 7133
eimo_5469
MAIKING呪の映画見た日にガーッと書いて放置していたものを発掘したので供養。そのうち続きを書きたい(願望)乙骨との戦闘後、五条に拾われた夏油の話。原作軸で途中だし何番煎じどころの騒ぎではないネタ。
いつもの書き方から少し変えてみた。
RELIEFもう一度、お前と話をしたい。
彼は……いや、悟はそう言って、私をその場から連れ出した。
そう言えばあれから10年の月日が流れたのかと、今更ながらに思う。
10年ぶりに悟の部屋に来たが、相変わらず物は少ないし、家に帰っているのかと思うくらい生活感がまるでなかった。
「あまり動き回るなよ」
「動いた所で何もできないから大丈夫さ」
「腕もなけりゃ呪力もないし呪霊も居ないからな。じっとしてな」
乙骨との戦いから2週間。殺されたと思ったこの命は、目の前にいる“最強の術師の気まぐれ”で拾われた。その気まぐれが終わる時、再び殺されるのだろう。現にこの身体は病院に搬送され、しかし満足な治療を受ける事も出来ずに出る事になった。別に理由を聞く事はしない。既に死んだ命。その延長線だ。悟の気が済んだ時に殺されるだけ。
6959彼は……いや、悟はそう言って、私をその場から連れ出した。
そう言えばあれから10年の月日が流れたのかと、今更ながらに思う。
10年ぶりに悟の部屋に来たが、相変わらず物は少ないし、家に帰っているのかと思うくらい生活感がまるでなかった。
「あまり動き回るなよ」
「動いた所で何もできないから大丈夫さ」
「腕もなけりゃ呪力もないし呪霊も居ないからな。じっとしてな」
乙骨との戦いから2週間。殺されたと思ったこの命は、目の前にいる“最強の術師の気まぐれ”で拾われた。その気まぐれが終わる時、再び殺されるのだろう。現にこの身体は病院に搬送され、しかし満足な治療を受ける事も出来ずに出る事になった。別に理由を聞く事はしない。既に死んだ命。その延長線だ。悟の気が済んだ時に殺されるだけ。
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DONE夏五版ワンドロワンライ第69回お題「終わりの日」お借りしました。0最後から、違う世界に飛んだ夏の話。
夏五版ワンドロワンライ第69回お題「終わりの日」 全ての始まりの日は、いつだろうか。
この世界に生まれ落ちた日か。初めて家の隅に漂う呪いを視認した日か。
それとも――満開の桜の下で、君と初めて出会った瞬間だろうか。
「素晴らしい、素晴らしいよ」
一歩、また一歩。壁にほとんど凭れるように、ゆっくりと、しかし確実に前へ進んでいく。
「正に世界を変える力だ」
片方の腕が吹き飛ばされたせいで、うまくバランスが取れない。しかし麻痺しかけてはいるが痛覚によって、今にも飛びそうになる意識を、まだ辛うじて留めることができていた。
ここで立ち止まって倒れ込んで、目を閉じてしまえば、すぐに楽になれるとわかっていた。
それでも、夏油自身がそれをよしとはしない。
まだ、なにも成し遂げてはいない。
2162この世界に生まれ落ちた日か。初めて家の隅に漂う呪いを視認した日か。
それとも――満開の桜の下で、君と初めて出会った瞬間だろうか。
「素晴らしい、素晴らしいよ」
一歩、また一歩。壁にほとんど凭れるように、ゆっくりと、しかし確実に前へ進んでいく。
「正に世界を変える力だ」
片方の腕が吹き飛ばされたせいで、うまくバランスが取れない。しかし麻痺しかけてはいるが痛覚によって、今にも飛びそうになる意識を、まだ辛うじて留めることができていた。
ここで立ち止まって倒れ込んで、目を閉じてしまえば、すぐに楽になれるとわかっていた。
それでも、夏油自身がそれをよしとはしない。
まだ、なにも成し遂げてはいない。
MondLicht_725
DONE夏五版ワンドロワンライ第68回お題「奇特」お借りしました。転生夏五(記憶なし×あり)。
ぼんやり考えている全寮制がっこうの2人。
夏五版ワンドロワンライ第68回お題「奇特」 つい最近、他人に指摘されて初めて知ったのだが、何気なく使っていた「奇特」とは、非常に珍しい、という意味の他に、特別に優れていること、というものがあるらしい。
こんな私をあれこれ気にかけてくれて、積極的に話しかけてきて、どんなに邪険にしても挫けない。まったく彼は奇特な男だ――話の流れでそんなことを口にしたときだったと思う。
ま、あいつならそっちの意味でもなんら違和感はないけどね、とその知人は付け加えた。
出会ったときからの大きな謎だ。なぜ彼はこんなにも、私に心を砕いてくれるのだろうかと。
物心ついたときから、ヒトというものが苦手だった。話すことはもちろん、大勢の中に佇むだけでも苦痛に感じた。
これといって明言できる理由はない。
1345こんな私をあれこれ気にかけてくれて、積極的に話しかけてきて、どんなに邪険にしても挫けない。まったく彼は奇特な男だ――話の流れでそんなことを口にしたときだったと思う。
ま、あいつならそっちの意味でもなんら違和感はないけどね、とその知人は付け加えた。
出会ったときからの大きな謎だ。なぜ彼はこんなにも、私に心を砕いてくれるのだろうかと。
物心ついたときから、ヒトというものが苦手だった。話すことはもちろん、大勢の中に佇むだけでも苦痛に感じた。
これといって明言できる理由はない。
おはぎ
DONE支部にて公開した「揺れる△」のスピンオフ的なものです。元ネタ↓
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17670107
転生大学生夏五の夏がバイトしてる塾の生徒視点のお話。
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こんな先生に思春期に出会ったら色々おかしくなっちゃわない?大丈夫??って思いながら書きました。この子にとってきっとすごく大事な思い出の一つになったと思います。
ホットのミルクティー今でもあの時の衝撃が忘れられない。
どのくらい待っていたのか、寒空の下、まだ冬の気温に慣れていない指先が悴んで、耳まで薄ら赤くしながら先輩を待ってた。ちょっとストーカーみたいでキモいけど、絵美が今日を逃したら先輩と会えないかもよっていうから。先輩はもうすぐ高校受験の山場がくるし、部活も引退しちゃったし学校では見かけなくなっちゃうかもしれない。確かに塾の行き帰りくらいでしか会えなくなっちゃうんだろうな、学校行く楽しみが減っちゃうよ。
でも、今日もし会えたら。先輩にまた会えますかって聞いてみようかな。それでもしいいよって言ってくれたら、今度は差し入れとか持ってきちゃおうかな。
「先輩まだ授業終わんないのかな〜つか寒すぎる〜」
5266どのくらい待っていたのか、寒空の下、まだ冬の気温に慣れていない指先が悴んで、耳まで薄ら赤くしながら先輩を待ってた。ちょっとストーカーみたいでキモいけど、絵美が今日を逃したら先輩と会えないかもよっていうから。先輩はもうすぐ高校受験の山場がくるし、部活も引退しちゃったし学校では見かけなくなっちゃうかもしれない。確かに塾の行き帰りくらいでしか会えなくなっちゃうんだろうな、学校行く楽しみが減っちゃうよ。
でも、今日もし会えたら。先輩にまた会えますかって聞いてみようかな。それでもしいいよって言ってくれたら、今度は差し入れとか持ってきちゃおうかな。
「先輩まだ授業終わんないのかな〜つか寒すぎる〜」
おはぎ
DONE支部にて公開した「揺れる△」のスピンオフ的なものです。元ネタ↓
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17670107
転生大学生夏五の二人が通う喫茶店のマスター視点のお話。
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周囲から見た二人、を考えるのがとても好きで小話を思いついたので書いてみました。
色んな角度から二人を見てほっこりしたい。
白い子と黒い子妻と22歳の時に創業した喫茶店「ラ・ポーズ La Pause」フランス語で"憩いの場"という意味らしい。妻が好きだったフランス映画のワンシーンから拝借したその店名を私は結構気に入っている。
その店も今年で創業43年、当時最先端だった深い赤のベルベットソファも今ではすっかり"レトロ"の仲間入りだ。店主と同じようにガタもくるが、丁寧に磨いてきた刳物の調度品はいっそういい味が出てきた。人間も磨けば光る、古希のお祝いにと孫がくれた深い紫のタイを撫でながら自分もまだまだ、と意気込んだ。
平日の昼間は見知った顔ばかりのこの店に、つい最近、随分と若い常連さんが加わった。数駅先にある大学の学生さんだろうか。若い子に好んでもらえそうなメニューなんてまるで無い古い店だから、まさか常連さんになってくれるとは思わなかった。
2681その店も今年で創業43年、当時最先端だった深い赤のベルベットソファも今ではすっかり"レトロ"の仲間入りだ。店主と同じようにガタもくるが、丁寧に磨いてきた刳物の調度品はいっそういい味が出てきた。人間も磨けば光る、古希のお祝いにと孫がくれた深い紫のタイを撫でながら自分もまだまだ、と意気込んだ。
平日の昼間は見知った顔ばかりのこの店に、つい最近、随分と若い常連さんが加わった。数駅先にある大学の学生さんだろうか。若い子に好んでもらえそうなメニューなんてまるで無い古い店だから、まさか常連さんになってくれるとは思わなかった。
MondLicht_725
DONE夏五版ワンドロワンライ第66回お題「ライアー」お借りしました。原作軸の夏五で離反後すぐ(夏不在)
暗い。
夏五版ワンドロワンライ第66回お題「ライアー」 あれはきっと、社交辞令的な約束だったのだ。
だからきっと、口にした本人は憶えていない。その程度のことだった。
無理に行かなくていいと、担任は言った。大丈夫だからと答えたのは悟である。
近くを通り過ぎたことはあったが、実際に足を向けたのは初めてだった。閑静な住宅街の一角、いくつも並んでいる似たような形の2階建て家屋の1つ。いつもは静かなのだろうその場所は、黄色い規制テープが張り巡らされ風で小刻みに揺れていた。
すでに話は通っていたようで、玄関に立っていた制服姿の警察官は、無言のまま近づいた悟を一瞥しただけですぐに中に通してくれる。
土足のまま上がり込んで3歩進んだだけの廊下、開きっぱなしになっているのリビングへ繋がるスモークガラスの扉、半分が赤黒く染まっているダイニングのテーブル、倒れた2つの椅子―――惨状は、まだあちらこちらに色濃く残されている。
1314だからきっと、口にした本人は憶えていない。その程度のことだった。
無理に行かなくていいと、担任は言った。大丈夫だからと答えたのは悟である。
近くを通り過ぎたことはあったが、実際に足を向けたのは初めてだった。閑静な住宅街の一角、いくつも並んでいる似たような形の2階建て家屋の1つ。いつもは静かなのだろうその場所は、黄色い規制テープが張り巡らされ風で小刻みに揺れていた。
すでに話は通っていたようで、玄関に立っていた制服姿の警察官は、無言のまま近づいた悟を一瞥しただけですぐに中に通してくれる。
土足のまま上がり込んで3歩進んだだけの廊下、開きっぱなしになっているのリビングへ繋がるスモークガラスの扉、半分が赤黒く染まっているダイニングのテーブル、倒れた2つの椅子―――惨状は、まだあちらこちらに色濃く残されている。
guacatos
PASTHow to cross the Infinity ♾"cleaned" this from last year 💫
It's Kiss Day so you can have it!!
MondLicht_725
DONE夏五版ワンドロワンライ第65回お題「喝采」お借りしました。原作軸の夏五+α。
暗い?
夏五版ワンドロワンライ第65回お題「喝采」 さあさ、お立会い。
ご用とお急ぎでない方は、ゆっくりと聞いていってね。
ここにおりますのは、非常にグットルッキングな男。姓は五条、名は悟。京都の名家のひとり息子として生まれ、かなりレアな力を併せ持って生まれたがために蝶よ花よと大切に育てられました。広大な屋敷の外に出ることはほとんどなく、ゆえに頭の中に詰め込まれたのは世間一般とは少々、いやかーなーりーかけ離れた常識。
五条家の常識は世間様の非常識。世界が屋敷の中だけの子供の頃はそれでよかったが、この五条悟、高校1年にして初めてひとり外に出ることになりまして。場所は首都東京、大都会――と思いきや、ずっとずーっと山の方。ひっそり隠れるように佇む専門学校。
2251ご用とお急ぎでない方は、ゆっくりと聞いていってね。
ここにおりますのは、非常にグットルッキングな男。姓は五条、名は悟。京都の名家のひとり息子として生まれ、かなりレアな力を併せ持って生まれたがために蝶よ花よと大切に育てられました。広大な屋敷の外に出ることはほとんどなく、ゆえに頭の中に詰め込まれたのは世間一般とは少々、いやかーなーりーかけ離れた常識。
五条家の常識は世間様の非常識。世界が屋敷の中だけの子供の頃はそれでよかったが、この五条悟、高校1年にして初めてひとり外に出ることになりまして。場所は首都東京、大都会――と思いきや、ずっとずーっと山の方。ひっそり隠れるように佇む専門学校。
時緒🍴自家通販実施中
TRAINING5/21ワンライお題【喝采/踏切/稲光】
ちょっとしたホラー夏五です。夜蛾先生に頼まれて踏切の怪異に挑む二人です。
雨が降る 踏切で奇妙なことが起こると高専に電話があったのは、じめじめとした梅雨の時期で、その日も雨が降っていた。
「行ってくれるか」そう夜蛾先生は教室に俺と傑を呼び出して言った。踏切で何が起こっているのか俺たちも先生も知らされていない状態だったから正直不安だったが、電話の主人はもっと取り乱していて、一体何が起こっているのか知れそうにもなかったのだという。ただ先生は拍手をする人間がいる、いや、人間じゃあないかもしれない、とだけ言った。俺はそこでなぜか嫌な予感がしたが、呪術師はこの世ならざるものを恐れてはならないし逃げてもいけない。俺はそれを思い出し、薄暗い部屋でサングラスを掛け直した。
「傑も行くの? 俺一人でもいいけど?」
1468「行ってくれるか」そう夜蛾先生は教室に俺と傑を呼び出して言った。踏切で何が起こっているのか俺たちも先生も知らされていない状態だったから正直不安だったが、電話の主人はもっと取り乱していて、一体何が起こっているのか知れそうにもなかったのだという。ただ先生は拍手をする人間がいる、いや、人間じゃあないかもしれない、とだけ言った。俺はそこでなぜか嫌な予感がしたが、呪術師はこの世ならざるものを恐れてはならないし逃げてもいけない。俺はそれを思い出し、薄暗い部屋でサングラスを掛け直した。
「傑も行くの? 俺一人でもいいけど?」
にがい
TRAINING祓本夏五。七も出ます。
灰は名前だけ。
ぼんやりしたお話なのでこちらに。
柔らかな願い「夏油さんへのお土産です」
昼下がりの事務所で七海が寄越してきたのは、日本酒と思わしき瓶だった。
「つる……れい?なあ、これなんて読むの」
「かくれい。新潟のお酒です。あなたでも読めない漢字があるんですね」
「酒の銘柄なんて知らねーっての。え、新潟行ったの?」
「ええ、そうですよ」
それがなにか、と言いたげな七海に、僕へのお土産はと聞けば、ありませんという冷たい言葉だけが返ってきた。
「七海、ほんと旅行好きな」
そう呟きながら、彼がそうしている理由みたいなものに実は心当たりがあるので、口から言葉を出した途端、妙な気まずさみたいなものを感じて、今のは言わなくてもよかったな、なんて柄にもなく思ったりした。
「いけませんか」
7213昼下がりの事務所で七海が寄越してきたのは、日本酒と思わしき瓶だった。
「つる……れい?なあ、これなんて読むの」
「かくれい。新潟のお酒です。あなたでも読めない漢字があるんですね」
「酒の銘柄なんて知らねーっての。え、新潟行ったの?」
「ええ、そうですよ」
それがなにか、と言いたげな七海に、僕へのお土産はと聞けば、ありませんという冷たい言葉だけが返ってきた。
「七海、ほんと旅行好きな」
そう呟きながら、彼がそうしている理由みたいなものに実は心当たりがあるので、口から言葉を出した途端、妙な気まずさみたいなものを感じて、今のは言わなくてもよかったな、なんて柄にもなく思ったりした。
「いけませんか」
藤 夜
DONE夏五教師×教師の平和軸
支部に掲載中の『巡る季節 巡る想い』から10月のお話。
伊地知さん視点で飲み会のお話。おとな組で賑やかに^^
【神無月】「この時季はどこの地方に行っても収穫祭で賑やかでいいよねえ――。たまには僕たちも飲みに行こうよ」
「何言ってるんですか。あなた下戸でしょう」
「えぇぇ――、そんなの雰囲気だよ」
珍しくみなさんお揃いの職員室で、ひとり楽しげに言い出した言葉に、速攻突っ込みを入れてくださった七海さんに感謝したい。僕たちの中には、否応もなく私も含まれているのは、火を見るより明らかだ。
「まあ、悟が飲まないって約束できるなら、いいんじゃないの」
あっ。思わぬところに伏兵がいた。昔から掴みどころのない先輩ではあるけれど、五条さんを止める係りを担っている場合が、多くもなかったな、うん。混ぜるな危険でしたね。
「するする。たこわさとか、もずくとか、つまみっぽいものが食べたいんだよねー」
1840「何言ってるんですか。あなた下戸でしょう」
「えぇぇ――、そんなの雰囲気だよ」
珍しくみなさんお揃いの職員室で、ひとり楽しげに言い出した言葉に、速攻突っ込みを入れてくださった七海さんに感謝したい。僕たちの中には、否応もなく私も含まれているのは、火を見るより明らかだ。
「まあ、悟が飲まないって約束できるなら、いいんじゃないの」
あっ。思わぬところに伏兵がいた。昔から掴みどころのない先輩ではあるけれど、五条さんを止める係りを担っている場合が、多くもなかったな、うん。混ぜるな危険でしたね。
「するする。たこわさとか、もずくとか、つまみっぽいものが食べたいんだよねー」
MondLicht_725
DONE夏離反後から数年、空飛んでたら酔っ払い五に遭遇した話。【夏五】孤独な海月 小学校の遠足で訪れた水族館で、真っ白な海月を見た。薄暗い丸い水槽の中に、ふよふよと1匹だけ漂っていた。仲間はいないのだろうか、家族は――幼心に、広い水槽の中で彷徨う海月が寂しそうに見えて、なんだか私まで悲しくなったのだ。
すべて消し去ったと思っていたのに、意外にも記憶は残っているものだ。不意にそんな過去を思い出したのは、思いもよらなかった邂逅のせいである。
「なにしてるんだい、悟」
思わず声を掛けてしまうくらいには、奇妙な状況だった。
偶然、たまたま、旧知に出くわすことはある。猿どもが溢れかえった駅構内で、薄汚れたビルとビルの隙間で、忘れられて朽ちていくばかりの廃屋で。
けれどまさか、呪霊に乗って移動中の空の上で、かつての親友と出くわすとは思いもよらなかった。
3053すべて消し去ったと思っていたのに、意外にも記憶は残っているものだ。不意にそんな過去を思い出したのは、思いもよらなかった邂逅のせいである。
「なにしてるんだい、悟」
思わず声を掛けてしまうくらいには、奇妙な状況だった。
偶然、たまたま、旧知に出くわすことはある。猿どもが溢れかえった駅構内で、薄汚れたビルとビルの隙間で、忘れられて朽ちていくばかりの廃屋で。
けれどまさか、呪霊に乗って移動中の空の上で、かつての親友と出くわすとは思いもよらなかった。
おはぎ
MOURNING夏五ワンライお題をお借りしたやつ色々消化して、二人でまた笑ってくれ〜〜〜
三途の川うーん、これは……やっぱ所謂アレ?あの、サンズノカワってやつかな?
僕死んではいないと思うけど……夢なのかな。
「……はい、それならここの道を進んで川を渡ってくださいね。結構深いので気をつけて。次の方どうぞー」
おぉみんな全然躊躇いないねぇ、ちゃんと受付までいるし。丁寧なご案内つきかよ、ウケる。まさか腐った蜜柑のおじいちゃんより先にここに来るとはね、僕が戻ってちゃんと教えておいてあげない、と……?
――え? いやいや、そんなことある?
「……傑?」
「おや、久しいね悟!」
「はぁ!? おま、こんなとこで何してんだよ!」
「え、何って……受付、かな?」
自分が最期を看取った親友が、まさか三途の川でバイトしてるって誰が想像できる?
3833僕死んではいないと思うけど……夢なのかな。
「……はい、それならここの道を進んで川を渡ってくださいね。結構深いので気をつけて。次の方どうぞー」
おぉみんな全然躊躇いないねぇ、ちゃんと受付までいるし。丁寧なご案内つきかよ、ウケる。まさか腐った蜜柑のおじいちゃんより先にここに来るとはね、僕が戻ってちゃんと教えておいてあげない、と……?
――え? いやいや、そんなことある?
「……傑?」
「おや、久しいね悟!」
「はぁ!? おま、こんなとこで何してんだよ!」
「え、何って……受付、かな?」
自分が最期を看取った親友が、まさか三途の川でバイトしてるって誰が想像できる?
おはぎ
MOURNINGこれも夏五ワンライのお題をお借りしたもの離反直前のギリギリな心情を想像すると心臓が痛い…
横断歩道白、黒、白、黒――
うだるような暑さの中、夏油はぼんやりと目の前の大通りを見つめていた。蝉たちの大合唱が頭の中で鳴り響き、耳鳴りと重なって酷く五月蠅い。
眼を閉じると、灰原の遺体を目の前にしたあの瞬間が鮮明に蘇る。何のためにこんなことをしているのか、自分たちの命を賭して守るべきものは何か。見知らぬ他人のために命を落とす仲間達を、自分はあと何人見送ればいいのか。
違う、ダメだ。そうじゃない。非術師を守るために私達術師は存在している。呪術を持つものとして、当然の義務だ。
――本当に? 本当にそうなのか。じゃあ私達術師は、誰が守ってくれる?
――――違う、チガウ、[弱者生存]それがあるべき社会の姿だ。弱きを助け、強きを挫く。それが呪術師だろう。迷うな、ブレるな。
1479うだるような暑さの中、夏油はぼんやりと目の前の大通りを見つめていた。蝉たちの大合唱が頭の中で鳴り響き、耳鳴りと重なって酷く五月蠅い。
眼を閉じると、灰原の遺体を目の前にしたあの瞬間が鮮明に蘇る。何のためにこんなことをしているのか、自分たちの命を賭して守るべきものは何か。見知らぬ他人のために命を落とす仲間達を、自分はあと何人見送ればいいのか。
違う、ダメだ。そうじゃない。非術師を守るために私達術師は存在している。呪術を持つものとして、当然の義務だ。
――本当に? 本当にそうなのか。じゃあ私達術師は、誰が守ってくれる?
――――違う、チガウ、[弱者生存]それがあるべき社会の姿だ。弱きを助け、強きを挫く。それが呪術師だろう。迷うな、ブレるな。
おはぎ
MOURNING夏五ワンライのお題に沿って書いたものぽいぴく試してみたくて供養!
離反無し/教師if(硝子さん禁煙失敗中) /
マカロン「傑、なんか甘いもの持ってるだろ」
「ふはっ、本当にすごいな悟は」
「五条、まじで犬並みじゃん」
束の間の休み時間、もはや溜まり場になりつつある家入の医務室にどこからともなく甘い香りを嗅ぎつけた五条が勢いよく扉を開けて入ってくる。
「今日はホワイトデーだろ、硝子に渡すついでにお茶でもと思っていたんだよ。悟も少し休んで行くかい?」
「あったりまえでしょ、僕がこんな機会逃すわけないじゃん」
「お茶が欲しけりゃ、自分で入れろよ五条」
「はいはい、それくらいはやりますよっと」
慣れた手つきで戸棚を開け、何故か置いてある五条専用のマグカップを取り出し、ケトルで湯を沸かし始める。
「悟、君も補助やら教員やらからバレンタインにもらったんじゃないのか? ちゃんとお返ししなくては駄目だよ」
2750「ふはっ、本当にすごいな悟は」
「五条、まじで犬並みじゃん」
束の間の休み時間、もはや溜まり場になりつつある家入の医務室にどこからともなく甘い香りを嗅ぎつけた五条が勢いよく扉を開けて入ってくる。
「今日はホワイトデーだろ、硝子に渡すついでにお茶でもと思っていたんだよ。悟も少し休んで行くかい?」
「あったりまえでしょ、僕がこんな機会逃すわけないじゃん」
「お茶が欲しけりゃ、自分で入れろよ五条」
「はいはい、それくらいはやりますよっと」
慣れた手つきで戸棚を開け、何故か置いてある五条専用のマグカップを取り出し、ケトルで湯を沸かし始める。
「悟、君も補助やら教員やらからバレンタインにもらったんじゃないのか? ちゃんとお返ししなくては駄目だよ」
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DONEワンドロワンライの第64回 お題「胡蝶の夢」お借りしました。【夏五】第64回 お題「胡蝶の夢」――…る、――…とる
「悟!」
びくりと、体が跳ねた。目を開けると、葬式にでも行ってきたような上下黒のスーツ姿の男が、呆れ顔で天井からぶら下がっている。
…いや違う、五条が仰向けにひっくり返っているのだ。
「――…れ、すぐる?」
「待っても来ないと思ったら…ほら起きて、移動だよ」
「本当に、すぐる?げとー、すぐる?」
「はあ?」
とにかく起きろと屈んだ男に額を軽く叩かれ、渋々上体を起こす。途端にくらりと襲ってきた眩暈を、首を振って追い出した。
起き上がってみてようやく、五条自身も全く同じ黒いスーツを着ていることに気づく。寝るためになのかネクタイは緩んでいたが、こちらも同じく黒である。
混乱していた思考が徐々に落ち着きを取り戻す。今の状況を思い出す。
1930「悟!」
びくりと、体が跳ねた。目を開けると、葬式にでも行ってきたような上下黒のスーツ姿の男が、呆れ顔で天井からぶら下がっている。
…いや違う、五条が仰向けにひっくり返っているのだ。
「――…れ、すぐる?」
「待っても来ないと思ったら…ほら起きて、移動だよ」
「本当に、すぐる?げとー、すぐる?」
「はあ?」
とにかく起きろと屈んだ男に額を軽く叩かれ、渋々上体を起こす。途端にくらりと襲ってきた眩暈を、首を振って追い出した。
起き上がってみてようやく、五条自身も全く同じ黒いスーツを着ていることに気づく。寝るためになのかネクタイは緩んでいたが、こちらも同じく黒である。
混乱していた思考が徐々に落ち着きを取り戻す。今の状況を思い出す。
時緒🍴自家通販実施中
TRAINING5/14ワンライお題【祝福/胡蝶の夢/ふりがな】
幸せで、怖い夢をみる五条のお話です。高専時代のお話。
毎夜みる夢 繰り返し何度も見る夢がある。俺はその中で高専の教師をしていて、硝子や、面倒だが可愛らしい生徒たちに囲まれている。そしてそんな俺の隣には髪型を変えた傑もいて、彼もどうやら俺と同じく教師らしいことが分かる。俺たちはその夢の中では呪術師を続けていて、やはり友人であり恋人同士だった。
ここまではよくある俺の願望なんだろう。でも不思議なのは、見たこともない小さな女の子の双子二人が傑になついていることで、彼女らは俺にひらがなで書かれた肩たたき券(肩の部分には可愛らしいふりがながふられている)をくれる。「傑さまと仲良くしてくれてありがとう」「傑さまは寂しがり屋さんだから」そんなふうに俺に言った後、「結婚式は私たちがお花を撒いてあげるからね」なんてませたことを言ってきゃーって叫びながら走り去ってゆく。どうやら彼女らは俺たちの関係を知っているようで、傑も俺もここにいる人々には隠していないようだった。俺が面倒を見ている生徒たちも笑っている。「早く結婚しなよ先生」「見てるだけで恥ずかしいから早く結婚したら」「傑さんと一緒にいたらちょっとはマシになるんじゃないですか」生徒たちは口が悪かったが、俺たちの仲を祝福してくれる。いやあ、僕もそろそろ結婚したいんだけどね、傑が恥ずかしがってさぁ。——僕? あれ、俺は今僕って言った? なんで? そういえば傑がせめて僕って言えって言ってたよな。俺って言うのはよしたほうがいいって。夢の中でそれを思い出してるのかな。俺はまばたきをする。しかし次の瞬間双子が消え、傑が消え、生徒たちも消え、結局残ったのは硝子だけだった。そして彼女は言うのだ。「また気づいちゃったね」と。「気づかなきゃ夢を見てられたのに」と。俺は混乱する。僕は混乱する。そしてまばたきをして、ぼんやりと天井に向かって手を伸ばす。この部屋には、最後まで残ってくれた硝子ももういない。僕は、いや俺は、自分の部屋でどうでもいい夢を見ていたことに気づく。すぐにどっちが夢なのか分からなくて、携帯電話を触る。表示された年月日から、まだ自分が高専生であることに気づく。良かった、俺はまだ高専生だ、傑もいる、硝子もいる、見知らぬ生徒たちや双子の少女たちもいない。俺は吐きそうになりながら着替え、傑の部屋を訪ねる。するとそこにはまだ眠っている彼がいて、俺はその横顔の尊さに泣きそうになりながらベッドの脇に座り込む。
1454ここまではよくある俺の願望なんだろう。でも不思議なのは、見たこともない小さな女の子の双子二人が傑になついていることで、彼女らは俺にひらがなで書かれた肩たたき券(肩の部分には可愛らしいふりがながふられている)をくれる。「傑さまと仲良くしてくれてありがとう」「傑さまは寂しがり屋さんだから」そんなふうに俺に言った後、「結婚式は私たちがお花を撒いてあげるからね」なんてませたことを言ってきゃーって叫びながら走り去ってゆく。どうやら彼女らは俺たちの関係を知っているようで、傑も俺もここにいる人々には隠していないようだった。俺が面倒を見ている生徒たちも笑っている。「早く結婚しなよ先生」「見てるだけで恥ずかしいから早く結婚したら」「傑さんと一緒にいたらちょっとはマシになるんじゃないですか」生徒たちは口が悪かったが、俺たちの仲を祝福してくれる。いやあ、僕もそろそろ結婚したいんだけどね、傑が恥ずかしがってさぁ。——僕? あれ、俺は今僕って言った? なんで? そういえば傑がせめて僕って言えって言ってたよな。俺って言うのはよしたほうがいいって。夢の中でそれを思い出してるのかな。俺はまばたきをする。しかし次の瞬間双子が消え、傑が消え、生徒たちも消え、結局残ったのは硝子だけだった。そして彼女は言うのだ。「また気づいちゃったね」と。「気づかなきゃ夢を見てられたのに」と。俺は混乱する。僕は混乱する。そしてまばたきをして、ぼんやりと天井に向かって手を伸ばす。この部屋には、最後まで残ってくれた硝子ももういない。僕は、いや俺は、自分の部屋でどうでもいい夢を見ていたことに気づく。すぐにどっちが夢なのか分からなくて、携帯電話を触る。表示された年月日から、まだ自分が高専生であることに気づく。良かった、俺はまだ高専生だ、傑もいる、硝子もいる、見知らぬ生徒たちや双子の少女たちもいない。俺は吐きそうになりながら着替え、傑の部屋を訪ねる。するとそこにはまだ眠っている彼がいて、俺はその横顔の尊さに泣きそうになりながらベッドの脇に座り込む。