木漏れ日に顔を埋めて クロムはシエルを自宅に上げた直後、強く抱きしめた。
青年の腕に成長途中の少年の体が包まれる。抱擁し少年の髪に顔を埋め数秒、クロムは腕の力はそのままに“はっ”と我に返った。
目を瞬かせ状況を鑑みれば腕の中でシエルが固まっている。緊張のあまり体を強張らせる少年は、密着した青年の胸に自身の速い鼓動を伝えていた。
「あの……、クロムさん……」
蚊の鳴くような声で名を呼ぶ少年にクロムは目を見開く。
(オレは……何をしてるんだ?)
彼は何故己が少年を抱いているのか、自分でもわからず頭を真っ白にする。この場面に至るまでの記憶が一瞬飛んだ、その事実に気づいた彼はシエルと同様、全身を硬直させた。
話は数時間前に遡る。龍宮クロムは午前の仕事を終え、昼食を買いに駒刃寿司に立ち寄った。
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