ファウストの言う通り 午前で授業が終わり、昼食を食べた後のことだ。中庭の噴水の縁に、ファウストと二人で並んで座ってぽつぽつと言葉を交わしていると、中庭に棲みついている猫が足音もなく忍び寄ってきた。俺たちの足元に丸まって日向ぼっこを始めた。ファウストは顔を綻ばせながら、足元の猫の腹を撫でてやった。ひとしきり撫でてもらって満足したのか、猫はひょいと立ち上がると俺の膝にちょんと前脚を乗せた。
俺たちは思わず顔を見合わせた。
「よくわかってるじゃないか。賢い子だ」
「勘弁してよ」
おまえさ、ファウストに懐いてたじゃん。猫は俺をじっと見つめて、カリカリとエプロンの裾を引っ掻く。
「ふふ、出してやったら」
ファウストは楽しそうだ。
「しょうがねえな」
8198