光芒を憎む 姉が死んだ。
葬儀の日は、両親も、年に一度程度しか顔を合わせないような親族も、沢山の姉の友人達も、誰もが泣いていた。空さえ、姉の死を悼むかのような雨だった。
そんな中でぼんやりと、花に囲まれた箱に仕舞われた姉を俺は見ていた。呆とパイプ椅子に座った儘の俺を、誰も咎めず、声一つ掛けられなかったので、俺は又ぼんやり、と、『何故姉さんは死なねば成らなかったのだろう』と益体もない思考を漂った。
恵那院の家は、まあそれなりと云った処の上流階級だった。社長令息だの時を遡ればやんごとなき血がどうのなんてものでは全く無かったが、姉弟揃って幼稚舎から私学に通うのが当然というような家だった。
恵那院家の長子たる姉は、それはもう、優しい女だった。
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