デバッグ了遊「それでここの行で……ああ、ここがnullになっているのがおかしいな。直すから少し待ってくれ、了見」
「……」
了見は困惑していた。
というのもその日了見がカフェナギに顔を出すと、店の前で藤木遊作が何やら難しい顔をしていた。
テーブルには空のコーヒーカップとタブレット、ミニキーボード──そして手元に可愛らしいぬいぐるみがある。髪の跳ねがやや特徴的なアッシュグレーで、まるい顔に刺しゅうされている大きな目は淡い青色をしており、ご丁寧に白いジャケットを着せられている代物だ。
「……藤木遊作」
声をかけて初めてこちらに気づいたようで、遊作は顔をあげた。
「了見か。今、急ぎの修正をしているんだ。すまないが後にしてくれるか」
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