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    bell39399

    @bell39399

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    bell39399

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    平和なTLに戻さないとね。
    気分転換ばんえれちゃん。

    #バンエレ

     妖精族の女の子たちは恋のお話が大好きだ。自分たちのこと、森の動物たちのこと、人間のこと。もちろん全員がそうというわけではないし、妖精姫たるエレインは《そうではない》ほうの妖精だ。
     そもそも妖精は生殖で増えるわけでもないのに、恋をしても仕方ないだろうに。
     そんなふうにすら思っていた。

     今はそうではない、と彼女はもう、自分をごまかせないくらいに自覚している。だって恋をしているから。全く我ながら呆れてしまうとエレインは、目の前で寝転ぶバンにバレないようにそっと嘆息した。出会ってたかだか数日だというのに、このおかしな気持ちはきっと恋と呼ぶものなのだろう。あの頃、まだここに沢山の妖精たちが集まり笑いさざめいていた頃、恋の話に花を咲かせていた彼女たちは果たしてこんな気持ちを味わったことがあるのだろうか。
    「どうしたエレイン?」
     急にバンの顔が目前に迫る。近い近い近い! エレインは飛び上がりそうになるのは堪えたが、顔が赤くなるのは止められなかった。
    「な、何でもないの! ちょっと昔のことを思い出してただけ」
    「ああ、なるほど♫」
     バンは納得したらしくまたゴロンと横になる。顔と顔の距離が離れてエレインがホッとしたような、がっかりしたような奇妙な心地になっていると「寂しいか?」と、控えめな声で問われた。
    「寂しさなんてもうないわ」
     それは本心。もう、そんな気持ちは何百年も前になくしている。
     ……何よりも。
    「今はあなたがここにいるから」
     自然に唇から零れ出た言葉に、バンは目を見開いてエレインを見上げていた。エレイン自身もハッと我に返り、再びほてりだした顔を両手で抑える。
    「あ、あの! おっおしゃべりとか、ラベルコレクション楽しいし、ね……!」
    「俺も」
    「えっ」
     その手をバンがそっと触れた。
    「いや、お前がわかってるやつで嬉しいぜ〜♫」
     手はすぐに離れた。そして突然がばっと起き上がり、傍らにおいてあったラベルコレクションを手に取るバン。
    「じゃあ続き見せてやるから、もう少しこっち来い♫」
    「うん!」
     エレインはそっと近づく。さっきの顔と顔の距離くらいに。
     でもバンの視線はエールラベルコレクションの上。
     それくらいがいいの、それくらいでいいの。
     エレインの胸中ははあたたかく甘く、そして少し苦しい。
     
     恋なんて、しても仕方がないものだから。
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    bell39399

    MAIKINGバンエレ水浴び一人アンソロその1(2以降があるかは謎)

    途中まで書いたやつポイ。
    一人称に直すかも。なんとなく
    それを見た時、バンは幻を見たのかと思った。もしくはまだ寝ぼけているのか。
     

     夜中、水音を聞いた気がしてふと目が覚めた。もとより熟睡することのないたちだったが、この森に来てからは妙によく眠れる。にもかかわらず、だ。それに何故か少し冷える。
     その原因に気づき、思わず自嘲した。なんの事はない、隣で寝ていたこの森の聖女がいなかっただけの事だ。
     この森も、この森である秘宝を守っているという少女も奇妙な事だらけだった。安らぎやぬくもりとは無縁の生活を送ってきたバンだったが、ここに来てからは気持ちが凪いでいる。不思議なことだが本能で警戒する必要がないと感じていた。
     エレインと名乗る妖精少女(本人曰く千年は生きているらしいが)とのやり取りも実に愉快だった。彼女はバンの他愛のない話を夢中で聞いて、四季のようにくるくると表情を変えながらバンの言葉の一つ一つにいちいち反応する。時には金色の睫毛を伏せ、時には頬を膨らませ、そして何よりよく笑った。バンは彼女の笑顔で初めて「花が綻ぶような」という形容の意味を知った。
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