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    ひわ@turoporfali

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    ひわ@turoporfali

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    #F蘭ワンドロ お題:うさぎ。

    うさぎの気持ち「そういえば最近、陸岡はニンジンを生では食べないのか」
     夕食のカレーを口にしながらうるうが聞いた。もっとも夕食だろうが朝食だろうが、ここBar Fではカレーしか出ないのだが。
    「 今でも生で食えるけど、あれは緊張してたんだよ。はじめはうるうのこと、物静かで頼れるお兄さんみたいだなって勘違いしてたから」
     すまし顔のうるうを横目で軽く睨みながら、樹果が応える。
    「勘違い…意外に手厳しいな」
    「猫かぶってたんじゃねえのか」
     自分好みに味をツボスコで調整しながら焔が言った。
    「次にその下品な液体を僕のカレーにふりかけたなら、今度こそ絶対に殺す」
     言い放つうるうの口元に焔が反射的にカレーの匙を突き出す。勢いに押されて、うるうは激辛カレーを口にしてしまう。
    「お、おい! 普通よけるだろ!」
     慌てた焔がタンブラーの水を差し出す。
    「勝負を挑まれて逃げ出すのは性に合わない」
     うるうがやっと返事をした。水をひとくち飲んでもまだ頬の赤みが消えていない。
    「樹果くん、頼れるお兄さんやったらここにもおるで〜」
    「うさんくせー。だいたい、本当に頼れるお兄さんはそんなこと自分から言わない」
     小動物どうしが毛づくろいしあっているような、他愛無い会話が楽しく思えてきたのはいつからだろう。
     蘭丸は、ただニコニコとしてカレーを食べ続けている。頼れるお兄さん、そんなひとが自分にもいたらいいなと思いながら。いないなら、自分が頼れるお兄さんになるしかないのか、それはよくわからないけれど。
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    ひわ@turoporfali

    DONE #F蘭ワンドロ お題:虹/rainbow。
    虹を食べる 一軒家の後片付けはなかなか骨が折れる。押入れの中から貰い物のタオルはごっそり出てくるし、昭和生まれのおばあちゃんは悪気はないけど、賞味期限にルーズすぎて怖い。もう、いなくなってしまったけど。可愛がってくれたおばあちゃんに最後のお別れができた。
     仕事がうまくいかなくて、電車を見て、ふらっと誘い込まれるように気を失って、なぜか飛行機に乗っていた。いろいろなものから逃げたかったのかな。
    「千佳ちゃん、あと少しでお昼だから、そうめんとトウモロコシ茹でてくるねー」
    「あー、ありがとうございます」
     一緒に片付けをしていたおばさんは、お昼の用意をしに、近所の自分の家に戻るらしい。
     出前もコンビニも遠いここでは「お構いなく」ということもできない。何か作れたらよかったな、と台所に行き水屋を漁る。おかきやチョコレートの袋の奥に、ゼリー菓子があるのを見つけた。まるで虹みたい、そう思っておばあちゃんに言ったら、来るたびにいつも出されるようになった。思いつきで言ってみただけで、特別好きというわけでもなかった。でも目に鮮やかできれい。そのとき気づいた。このゼリー菓子がここにあるってことは、おばあちゃんが、わたしがまた来ると思ってたから買ってたんだ。
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