待ち焦がれる祝福の日 ここは漆黒の要塞、煉獄と呼ばれる亜空間。そこに存在する屋敷は主を除き、如何なる者の侵入も許さない。
それだけでもここの守りは十分すぎるほどではあるのだが、ある一室には更に侵入を躊躇うほどの強靭な結界が張ってある。
まるで魔術師の宝物庫さながらのように……いや、本人にとっては正しく宝物庫なのだ。中のもの全てに劣化を防ぐ魔術を施すほどの。
そんな宝物庫に入り、そこから一枚のゴシップ記事を丁寧な手つきで取り出す。
それは世界で初めて封書を取り入れた記事で、もう随分昔のものだ。
『その男は私のだぞ! 知らないやつらが私の知らないところで勝手に取り合うな!』
その昔の記事、あいつの誕生日に暴露された封書は目が覚めるような大きな声で叫ぶ。
752