ごはんを食べよう⑤「イライ……!」
逃げなければ。心音は近付いている。
自分たちを探しているのだろうか。
イソップはイライの手を引いて立ち上がった。
「イソップくん……?」
「こっちへ」
ここで隠密していてもすぐに見つかるだろう。
ならば少しでも可能性の高い生存方法を選ぶべきだ。
「イソップくん、私のことはいい、君だけでも……」
「黙って」
イソップはイライの治療を完了させて言った。
分かっている、暗号機の解読をしない以上、二人で出ることは不可能だ。少しでも生存の可能性を増やすなら、イライの言うとおり、イライを囮にして自分だけハッチで出るのが一番いい。
それをしないのは、昨日、イライに身を挺して庇われて、自分だけ逃がされたせいかもしれない。
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