ごはんを食べよう③「死んでも生き返る。生と死がぐちゃぐちゃの場所。迷う人が多い場所」
手を伸ばしてイライの頬をするりと撫ぜる。イライはゆっくりと瞬きをした。深い青い色の目に、今、未来を視る力は宿っていない。
彼をただの人間にしたのはイソップだった。
「あなたは?」
イソップの手がイライの首筋をなぞり、そのシャツを整えて引っ込む。
イライはぱちぱちと瞬きをした。
「あなたは、帰りたい?」
「……私は……」
イライはそう言って、困った顔でイソップを見た。それが答えだった。
ああ、帰りたいのかと思う。彼の婚約者を残した時代に、彼の婚約者のいる世界に、帰りたいのかと。
たとえ死と隣り合わせの世界でも、イライはそこに希望を見出していた。
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