鏡板の松 縁側から眺めると、塀に沿って盆栽がいくつも並んでいる。大半は松だ。いくつかは梅や楓なんかで、色付くさまが鑑賞者には見目麗しく写るものだが、今は季節外れの風に晒されて白っぽく乾いて見えるので、檸檬には違いなんてさっぱり分からない。
「邪魔だ」と簡潔に述べて、蜜柑が檸檬の背中を箒で叩く。大人しく、既に蜜柑が掃いた辺りに移動すると、淡々と縁側から埃を掃き出していく。
別段、掃除をサボっている訳でなはない。流しなんかの水周りは軽く清め終えたし、埃の掃き出しを申し出た蜜柑が、未だ掃除を続けているだけだ。一人で単純な作業をしているのもつまらないだろうな、と思って、話しかけてさえいる。いっそ、親切だと言えるのではないだろうか。
1853