たける
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DONEラーメン食べたい夜に書いた。タケルと漣。(2019/06/24)なんてことない夜になんてことのない夜に
うまくいかない日ってのはある。きっと、誰にでも。
今日は行きがけにベッドの足に小指をぶつけた。変装用の帽子が木枯らしに吹き飛ばされて川に落ちた。仕事では納得の行く演技ができなくて撮影を長引かせてしまったし、気に入っている靴の紐は切れた。男道ラーメンは味玉が売り切れていたし、帰り道は猫にも会えない。
今日だけだ、わかってる。だけど、こんな日は何もかもうまくいかない気がしてしまう。そんなもんだから、寒いというそれだけの理由でうちにきた銀色の猫に、なんだか安心してしまった。なんか、それだけはいつもと変わらないことのようなことの気がしたから。
「ラーメン食いてぇ」
その言葉に振り向くと、コイツは一切の遠慮もなく、俺の服を着て我が家の安いベッドの上に転がっていた。風呂上がりの髪がぺしゃりとしている。せめて、今夜みたいに冷える冬の夜くらい、乾かせばいいのに。
4860うまくいかない日ってのはある。きっと、誰にでも。
今日は行きがけにベッドの足に小指をぶつけた。変装用の帽子が木枯らしに吹き飛ばされて川に落ちた。仕事では納得の行く演技ができなくて撮影を長引かせてしまったし、気に入っている靴の紐は切れた。男道ラーメンは味玉が売り切れていたし、帰り道は猫にも会えない。
今日だけだ、わかってる。だけど、こんな日は何もかもうまくいかない気がしてしまう。そんなもんだから、寒いというそれだけの理由でうちにきた銀色の猫に、なんだか安心してしまった。なんか、それだけはいつもと変わらないことのようなことの気がしたから。
「ラーメン食いてぇ」
その言葉に振り向くと、コイツは一切の遠慮もなく、俺の服を着て我が家の安いベッドの上に転がっていた。風呂上がりの髪がぺしゃりとしている。せめて、今夜みたいに冷える冬の夜くらい、乾かせばいいのに。
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DONE穴を掘る漣。遭遇するタケル。(2018年頃?)穴 ザク、ザク、ザク。
定期的に音が聞こえてくる。その音を合図に意識が浮上する感覚。どうやら眠っていたようだ。ザク、ザク、ザク。さして大きくもない音が響いている。その音以外は見当たらない。やたらと静かな空間。
そもそも、俺は眠っていたのだろうか。ぼや、と靄のかかったような思考は寝起きのそれだ。だが、何か違和感がある。でも、その正体が掴めない。まぁ、眠っていたんだろう。
ぱち、と。目を開いても視界は暗いままだった。夜なんだろうか。明かりをつけようとリモコンに手を伸ばすが、手が掴んだのはざら、という感触の何か。
いつも枕元に置いているリモコンがない。いや、そもそも枕がない。あろうことか、布団すらない。
2702定期的に音が聞こえてくる。その音を合図に意識が浮上する感覚。どうやら眠っていたようだ。ザク、ザク、ザク。さして大きくもない音が響いている。その音以外は見当たらない。やたらと静かな空間。
そもそも、俺は眠っていたのだろうか。ぼや、と靄のかかったような思考は寝起きのそれだ。だが、何か違和感がある。でも、その正体が掴めない。まぁ、眠っていたんだろう。
ぱち、と。目を開いても視界は暗いままだった。夜なんだろうか。明かりをつけようとリモコンに手を伸ばすが、手が掴んだのはざら、という感触の何か。
いつも枕元に置いているリモコンがない。いや、そもそも枕がない。あろうことか、布団すらない。
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DONEおいしい飲み物を飲むタケルと漣(2019/02/10)名前はなくて、あったかい ホットチョコレートを飲む話
レンジで温めた牛乳にチョコレートを一欠片。華奢なスプーンは持っていないから、カレーを掬うための大きなスプーンでくるくるとマグカップの中身をかき回す。
ボクサーをしていた時は、この指がこんなに柔らかな動きをするなんて、思ってなかったわけではないが、意識したことは一度もなかった。ハンドクリームを塗るようになった手は、ようやくアップで撮られても胸を張っていられるようになった。
マグカップの中、熱い牛乳がチョコレートを溶かしていく。湯気に甘い香りが混じって、それから少しして華やかな馴染みのない香りがする。これが、最近のお気に入り。チョコレートに包まれていたラム酒の香り。
6655レンジで温めた牛乳にチョコレートを一欠片。華奢なスプーンは持っていないから、カレーを掬うための大きなスプーンでくるくるとマグカップの中身をかき回す。
ボクサーをしていた時は、この指がこんなに柔らかな動きをするなんて、思ってなかったわけではないが、意識したことは一度もなかった。ハンドクリームを塗るようになった手は、ようやくアップで撮られても胸を張っていられるようになった。
マグカップの中、熱い牛乳がチョコレートを溶かしていく。湯気に甘い香りが混じって、それから少しして華やかな馴染みのない香りがする。これが、最近のお気に入り。チョコレートに包まれていたラム酒の香り。
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DONE焼き芋と道漣ちゃん タケルくんを添えて(2020/03/09)焼き芋食べる道漣ちゃん「らーめん屋……いや、これがデザートって無理あんだろ……」
「おいオマエ、円城寺さんがせっかく買っておいてくれたんだぞ。……食べきれなくてすまない、円城寺さん」
「いや、これは自分が買いすぎたんだ。気にしないでくれ」
たくさん食べてくれてありがとうな。懐かしいアナウンスに釣られて買ってきた焼き芋は、半分以下まで減っている。でも、九本も買ってしまったんだ。子供の腕くらいある大きな焼き芋はあと三本残っていた。あと一本ずつ、とはいかない。ただでさえたらふく食べた後のデザートに出したんだ。ここまで減ったのは二人がよく食べるからにほかならない。
焼き芋がこんなにあるのに、でっかいハンバーグを焼いて、ご飯を五合も炊いてしまったんだ。歯止めが効かない、というのは違う気がするが、二人にはいくらでも食べさせたくなってしまう。きっと、今まで自分にたらふく食わせてくれた人たちもこういう気持ちだったに違いない。
2338「おいオマエ、円城寺さんがせっかく買っておいてくれたんだぞ。……食べきれなくてすまない、円城寺さん」
「いや、これは自分が買いすぎたんだ。気にしないでくれ」
たくさん食べてくれてありがとうな。懐かしいアナウンスに釣られて買ってきた焼き芋は、半分以下まで減っている。でも、九本も買ってしまったんだ。子供の腕くらいある大きな焼き芋はあと三本残っていた。あと一本ずつ、とはいかない。ただでさえたらふく食べた後のデザートに出したんだ。ここまで減ったのは二人がよく食べるからにほかならない。
焼き芋がこんなにあるのに、でっかいハンバーグを焼いて、ご飯を五合も炊いてしまったんだ。歯止めが効かない、というのは違う気がするが、二人にはいくらでも食べさせたくなってしまう。きっと、今まで自分にたらふく食わせてくれた人たちもこういう気持ちだったに違いない。
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DONE弱るタケルと励ます漣。カプなし。(2020/10/31)それは影に似ている。 プロデューサーはいつも新幹線に乗るとアイスクリームを食べる。必ず食べるもんだから、相当好きなんだろう。
自分だけじゃない。俺と円城寺さんにはバニラ味、アイツにはチョコ味のアイスクリームをいつだって手渡してくれる。実を言うと、たまにはチョコ味が食べたい日もあるんだけど、それでも俺は黙って薄い真珠色をしたアイスクリームを受け取っている。プロデューサーにはこういうところがあった。なんて言葉で表せばいいのかがわからない、決して賢くはないところが。
新幹線はあまり揺れないから、気がつくととんでもなく遠くに運ばれていたりする。いまだって相当な距離を走ってきた。北へ、北へ、北へ。外だってきっと寒い。それでも新幹線の車内は暖かいから、俺はアイスクリームを買った。プロデューサーもいない、アイツもいない、円城寺さんもいない車内で、チョコ味のアイスクリームをひとつだけ買った。
10671自分だけじゃない。俺と円城寺さんにはバニラ味、アイツにはチョコ味のアイスクリームをいつだって手渡してくれる。実を言うと、たまにはチョコ味が食べたい日もあるんだけど、それでも俺は黙って薄い真珠色をしたアイスクリームを受け取っている。プロデューサーにはこういうところがあった。なんて言葉で表せばいいのかがわからない、決して賢くはないところが。
新幹線はあまり揺れないから、気がつくととんでもなく遠くに運ばれていたりする。いまだって相当な距離を走ってきた。北へ、北へ、北へ。外だってきっと寒い。それでも新幹線の車内は暖かいから、俺はアイスクリームを買った。プロデューサーもいない、アイツもいない、円城寺さんもいない車内で、チョコ味のアイスクリームをひとつだけ買った。
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DONEタケルと漣。ギリギリカプなし(危うい)(2019/7/25)
銀幕越しのジュリエット 朝起きたら、アイツが死んでいた。
アイツが世にも珍しい病に蝕まれたと知ったのはその日の夕方だった。その病は大げさに言えば死因そのものであったけど、アイツはそれを聞いてつまらなそうに「ふーん」と言っただけだった。
アイツは生き返った。いや、それは適切ではない。アイツは別に死んでいなかった。俗に言う、仮死状態というものらしい。俺にはイメージがわかなかったけれど、九十九さんが何かの物語のようだと言っていて、それはアイツの限りなく色をなくした心音に相応しい気がしていた。その病には、物語のヒロインの名前がついていた。
アイツは死んで、生き返る。スイッチは睡眠だ。眠るたびに仮死状態に陥るなんて、厄介な病だと思う。
3887アイツが世にも珍しい病に蝕まれたと知ったのはその日の夕方だった。その病は大げさに言えば死因そのものであったけど、アイツはそれを聞いてつまらなそうに「ふーん」と言っただけだった。
アイツは生き返った。いや、それは適切ではない。アイツは別に死んでいなかった。俗に言う、仮死状態というものらしい。俺にはイメージがわかなかったけれど、九十九さんが何かの物語のようだと言っていて、それはアイツの限りなく色をなくした心音に相応しい気がしていた。その病には、物語のヒロインの名前がついていた。
アイツは死んで、生き返る。スイッチは睡眠だ。眠るたびに仮死状態に陥るなんて、厄介な病だと思う。
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DONEタケルと漣。花火とふたり。(2019/08/07)夜空に硝煙 毎年、遠くに聞いていた。小さな破裂音と、空を照らす光の花。
呼び覚まされた記憶はいつも柔らかく輝いていて、そうじゃない思い出を持っているやつがいるってこと、考えたこともなかったんだ。
「納涼花火大会のレポっスか! 楽しみっス!」
「のーりょーはなび大会?」
プロデューサーの言葉に返された、期待に満ちた声とふわふわとした声。円城寺さんがイマイチわかっていない様子のアイツに『納涼』の説明をするのを、俺は黙って聞いていた。
納涼。意味を知っているつもりだったが自信はなかった。それでもあながち間違っていなかったことに内心ホッとする。ところがアイツはまだ疑問があるようで、仕事に関わることだからだろうか、いつもよりは素直に円城寺さんに問いかける。
6305呼び覚まされた記憶はいつも柔らかく輝いていて、そうじゃない思い出を持っているやつがいるってこと、考えたこともなかったんだ。
「納涼花火大会のレポっスか! 楽しみっス!」
「のーりょーはなび大会?」
プロデューサーの言葉に返された、期待に満ちた声とふわふわとした声。円城寺さんがイマイチわかっていない様子のアイツに『納涼』の説明をするのを、俺は黙って聞いていた。
納涼。意味を知っているつもりだったが自信はなかった。それでもあながち間違っていなかったことに内心ホッとする。ところがアイツはまだ疑問があるようで、仕事に関わることだからだろうか、いつもよりは素直に円城寺さんに問いかける。
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DONE漣とモブじいさん。タケルと道流もいる。(2020/05/29)ゆりかごのうた「漣、ちょっと話せるかな」
呼び止めた男性に対し、漣は「下僕、」とだけ言った。それはただ『そこにいる人間』を認識しただけで、返事ではない。代わりに反応してみせたのは共にレッスンをしていた道流の方だ。席を外すべきかと問うべく、道流は口を開く。
「師匠、自分たちは」
「ああ、気にしないで」
プロデューサーは漣の了承もなしにそう言った。いてもよいと言うよりは、いていてほしいのだろう。自由気ままな漣にはそばで見ていてくれる人が必要だとプロデューサーは常々思っていたが、現実問題として自分だけではそれは叶わないとわかっている。その役目を少しだけ、道流に期待しているのだ。
「そろそろ梅雨だから、いい加減ね。寮に部屋を用意したから」
10580呼び止めた男性に対し、漣は「下僕、」とだけ言った。それはただ『そこにいる人間』を認識しただけで、返事ではない。代わりに反応してみせたのは共にレッスンをしていた道流の方だ。席を外すべきかと問うべく、道流は口を開く。
「師匠、自分たちは」
「ああ、気にしないで」
プロデューサーは漣の了承もなしにそう言った。いてもよいと言うよりは、いていてほしいのだろう。自由気ままな漣にはそばで見ていてくれる人が必要だとプロデューサーは常々思っていたが、現実問題として自分だけではそれは叶わないとわかっている。その役目を少しだけ、道流に期待しているのだ。
「そろそろ梅雨だから、いい加減ね。寮に部屋を用意したから」
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DONEタケルと道流と人じゃない牙崎漣。(2020/11/08)家のない、旅人だった君へ。 事務所の動画配信チャンネルには俺も参加している。そこでいつものメンバーとゲーム配信をしていたら、『実家のような安心感』というコメントをもらったことがある。きっと賑やかな家なんだろう。
実家、というか。施設は子供が多いから、俺の実家と呼べる場所も騒がしい。でもアイドルになって、実家のような場所がもうひとつできた。円城寺さんの家だ。
円城寺さんの家は絵本の中に出てくる暖かな家の温度がする。俺には馴染みがないはずなのに、すっと入ってくるというか。縁がないと思っていたはずなのに、いざ巡り合うとずっとそこにいたかのような。
「さぁ、ゆっくりくつろいでくれ」
円城寺さんはいつもこう言う。俺たちが初めて家にきた日から、ずっと。
4692実家、というか。施設は子供が多いから、俺の実家と呼べる場所も騒がしい。でもアイドルになって、実家のような場所がもうひとつできた。円城寺さんの家だ。
円城寺さんの家は絵本の中に出てくる暖かな家の温度がする。俺には馴染みがないはずなのに、すっと入ってくるというか。縁がないと思っていたはずなのに、いざ巡り合うとずっとそこにいたかのような。
「さぁ、ゆっくりくつろいでくれ」
円城寺さんはいつもこう言う。俺たちが初めて家にきた日から、ずっと。
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DONEタケルと漣。グロ。(2018/07/29)愛しの果実タケルの目がおかしくなった。いや、おかしくなったのは目ではなく脳かもしれない。
タケルの目には時折、食べ物が人のパーツに見える。
誰にも言ったことはなかったから、その秘密はタケルだけが知っていた。今日も人の指にしか見えないメンマを食べた。
その人体のパーツがはたして誰のものなのか。それを認識したのは、よくゲームをやる仲間とゲーム合宿の名目で訪れたロッジでの出来事だった。夏の夜だ、隼人がスイカを持ってきてスイカ割りをしようと笑った。
タケルには、スイカはどう見ても牙崎漣の頭部にしか見えなかった。
スイカ割りの名目で割られた漣の頭部は、派手に脳漿を散らして手のひらサイズまで砕かれた。みんな、うまそうにアイツの頭部にかじりついてる。滴る血が腕に伝えばそれを舐めとっている。みんなが楽しそうだった。自分だけが異常なのはわかっていた。
1651タケルの目には時折、食べ物が人のパーツに見える。
誰にも言ったことはなかったから、その秘密はタケルだけが知っていた。今日も人の指にしか見えないメンマを食べた。
その人体のパーツがはたして誰のものなのか。それを認識したのは、よくゲームをやる仲間とゲーム合宿の名目で訪れたロッジでの出来事だった。夏の夜だ、隼人がスイカを持ってきてスイカ割りをしようと笑った。
タケルには、スイカはどう見ても牙崎漣の頭部にしか見えなかった。
スイカ割りの名目で割られた漣の頭部は、派手に脳漿を散らして手のひらサイズまで砕かれた。みんな、うまそうにアイツの頭部にかじりついてる。滴る血が腕に伝えばそれを舐めとっている。みんなが楽しそうだった。自分だけが異常なのはわかっていた。
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DONEタケルと隼人とアイスクリーム(2018/11/13)セブンティーンとアイスクリームもう厚手の上着がないと寒い季節だ。帽子、眼鏡、マスク。いかにも変装をしていますといった風貌で俺たちは歩く。枯れ葉をさくさくと踏みしめて、目当てのゲームセンターにたどり着く。
隼人さんがよくやっている音楽ゲームの新作が入ったらしい。俺もひさしぶりにシューティングゲームがしたかった。最近、忙しくてゲームセンターにくるタイミングがなかったから。
隼人さんの目的は音楽ゲームで、俺の目的はシューティングだ。それでもゲームセンターの入口で別れるようなことはせず、隼人さんは俺がシューティングゲームをしてるときに横で楽しそうに話してくれたし、俺は隼人さんにくっついて新作だというゲームの曲を聞いていた。
そうやって、しばらくゲームセンターにいた。2人で対戦もしたけど、やっぱり音楽ゲームやシューティングゲームはどうやったって得意なほうが勝つ。1対1の勝敗の決着はエアホッケーでつけた。俺だってアイツほどではないけど勝負事は好きだし、隼人さんだって熱くなっていた。
2224隼人さんがよくやっている音楽ゲームの新作が入ったらしい。俺もひさしぶりにシューティングゲームがしたかった。最近、忙しくてゲームセンターにくるタイミングがなかったから。
隼人さんの目的は音楽ゲームで、俺の目的はシューティングだ。それでもゲームセンターの入口で別れるようなことはせず、隼人さんは俺がシューティングゲームをしてるときに横で楽しそうに話してくれたし、俺は隼人さんにくっついて新作だというゲームの曲を聞いていた。
そうやって、しばらくゲームセンターにいた。2人で対戦もしたけど、やっぱり音楽ゲームやシューティングゲームはどうやったって得意なほうが勝つ。1対1の勝敗の決着はエアホッケーでつけた。俺だってアイツほどではないけど勝負事は好きだし、隼人さんだって熱くなっていた。
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DONEタケ漣ワンドロ4「ねこ」タケルくんが自慰してます。あと虎牙道がメイド服着てます。(2020/03/28)
ジェットコースターは止まらない 本格的にヤバい。このまま進むと戻れない。俺は今、最悪の道を辿っていることがわかる。
多分この道の一歩目はアイツとお付き合いを始めたことだ。紆余曲折、と言うには余りにも短い期間でジェットコースターのように駆け抜けたこの恋は、頬に唇を寄せたあたりで一時停止。相変わらずの関係を続けているが、たまに俺の部屋で手が触れ合って視線が絡む。そんな日常的非日常で俺の脳裏を掠める一つの不安。コイツって、この先を知ってるんだろうか。
たぶん、キスは知っている、はず。ただその認識が俺のそれとは違うってのはわかってる。結婚式のキスであんなに動揺する人間、ましてや俺より年上の男は見たことがない。思い出す、頬にキスしたときの悲鳴のような声と真っ赤な顔。もうわかる。知識でしか知らない大人のキスをコイツにしたら、きっとオーバーヒートしてぶっ倒れる。
1904多分この道の一歩目はアイツとお付き合いを始めたことだ。紆余曲折、と言うには余りにも短い期間でジェットコースターのように駆け抜けたこの恋は、頬に唇を寄せたあたりで一時停止。相変わらずの関係を続けているが、たまに俺の部屋で手が触れ合って視線が絡む。そんな日常的非日常で俺の脳裏を掠める一つの不安。コイツって、この先を知ってるんだろうか。
たぶん、キスは知っている、はず。ただその認識が俺のそれとは違うってのはわかってる。結婚式のキスであんなに動揺する人間、ましてや俺より年上の男は見たことがない。思い出す、頬にキスしたときの悲鳴のような声と真っ赤な顔。もうわかる。知識でしか知らない大人のキスをコイツにしたら、きっとオーバーヒートしてぶっ倒れる。
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DONEタケルと漣。カプ未満だが感情がデカい。(2019/03/30)溢れる、 この感情が理解できたら、何かが変わるのだろうか。
***
テレビ画面の右上。攻撃力、防御力、すばやさ。パラメータの横、冒険を共にする少女の真っ赤に染まったハートマーク。
「よっしゃー! 親愛度マックスになった!」
「これでようやく絆の必殺技が使えるな」
そう言って笑う恭二さんと隼人さん。早速モーションを見ようと兜さんがコントローラーを握る。それをぼんやりと見ながら思う。
こうやって、気持ちが目に見えたらいいのに。
「ん? どうしたんじゃ? タケル」
「……ん、ああ。なんでもない」
絆を結んだ少女との必殺技が、テレビ画面の中でキラキラとした星を散らしていた。
こんなふうに、わかりやすく感情が見えればいいのに。
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テレビ画面の右上。攻撃力、防御力、すばやさ。パラメータの横、冒険を共にする少女の真っ赤に染まったハートマーク。
「よっしゃー! 親愛度マックスになった!」
「これでようやく絆の必殺技が使えるな」
そう言って笑う恭二さんと隼人さん。早速モーションを見ようと兜さんがコントローラーを握る。それをぼんやりと見ながら思う。
こうやって、気持ちが目に見えたらいいのに。
「ん? どうしたんじゃ? タケル」
「……ん、ああ。なんでもない」
絆を結んだ少女との必殺技が、テレビ画面の中でキラキラとした星を散らしていた。
こんなふうに、わかりやすく感情が見えればいいのに。
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DONEタケルと漣とケーキの話。(2018/07/18)生クリームと苺の乗った甘いの。その奇妙な習慣が始まった日の空は覚えていないけれど、そのきっかけになったであろう出来事をタケルは鮮明に覚えていた。
もっとも、それはタケルがそう思い込んでいるだけなのかもしれないが、おそらくはこれが原因であろうと大河タケルは自惚れている。
そう自惚れてしまうほど、二人の間には時間が流れていた。牙崎漣は21才になっていたし、大河タケルは次の誕生日で二十歳になる。
半年ほど前に始まった奇妙は非日常は、日常へと形を変えて未だに彼らの間に横たわっていた。
***
きっかけは秋だった。ちょうど、牙崎漣が成人した年だった。
THE虎牙道のメンバーはCafe Paradeにいた。次の仕事が一緒の巻緒と咲にミーティングでも、と誘われたのだ。
10493もっとも、それはタケルがそう思い込んでいるだけなのかもしれないが、おそらくはこれが原因であろうと大河タケルは自惚れている。
そう自惚れてしまうほど、二人の間には時間が流れていた。牙崎漣は21才になっていたし、大河タケルは次の誕生日で二十歳になる。
半年ほど前に始まった奇妙は非日常は、日常へと形を変えて未だに彼らの間に横たわっていた。
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きっかけは秋だった。ちょうど、牙崎漣が成人した年だった。
THE虎牙道のメンバーはCafe Paradeにいた。次の仕事が一緒の巻緒と咲にミーティングでも、と誘われたのだ。
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DONEタケルと隼人が二人乗りする話。二人乗りはダメですよ。(2018/06/22)自転車の歌今日はもうレッスンもなく暇だったこと。ペットボトルの水を飲みきってしまいそうだったこと。事務所の喧噪の中で、ふと孤独になってしまったこと。そして、それが取り立てて苦ではなかったこと。今ハマってるゲームとコラボしたお菓子が、二番目に近いコンビニで出てること。そんないくつかの理由で俺は事務所の階段を下ってコンビニへ向かおうとしていた。
「あれ?タケルじゃん。どうしたの?」
そんな俺を呼び止めたのは隼人さんだった。自転車を漕いできたのだろう、軽く汗をかいている。他の人たちはどうしたんだろう。それに、いつもより少し早い時間だと思った。
「コンビニにでも行こうかと思って」
「へぇー。ねぇ、俺も行っていい?」
「ああ、もちろん」
4136「あれ?タケルじゃん。どうしたの?」
そんな俺を呼び止めたのは隼人さんだった。自転車を漕いできたのだろう、軽く汗をかいている。他の人たちはどうしたんだろう。それに、いつもより少し早い時間だと思った。
「コンビニにでも行こうかと思って」
「へぇー。ねぇ、俺も行っていい?」
「ああ、もちろん」
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DONE不思議な遊園地に迷い込むタケルと漣。(2018/06/22)次は──遊園地前牙崎漣と言う男、いや、”生き物”は泣かないのだと思っていた。俺はコイツをなにか、ことわりの違う生き物のように思っていたから。
そう思っていたコイツが泣いた。泣くつもりはないと言うように、口は特になにも示さず、涙だけを流して泣いていた。
正直に言うと、その光景に俺は何か満たされるものがあった。だって、コイツは人に囲まれていた時は泣かず、円城寺さんと俺との3人でいたときにも泣かず、俺と2人きりになった瞬間に泣き出した。それが少しだけいじらしいように感じられた。コイツに抱く感情とは無縁だと思っていたそれに、自分自身戸惑った。
ぽろぽろと涙をこぼすコイツの腕を引いて電車に乗った。人が少なかったから各駅停車の電車に乗った。俺は泣いているコイツを放り出すほど薄情ではなかったので、家に連れ帰って暖かい飲み物をあげようと思っていた。コイツはきっと甘いものが好きだから、2人であたたかいココアを飲もう。そう思っていた。電車の揺れにあやされるように、しばらくしたらコイツの涙は止まった。
2690そう思っていたコイツが泣いた。泣くつもりはないと言うように、口は特になにも示さず、涙だけを流して泣いていた。
正直に言うと、その光景に俺は何か満たされるものがあった。だって、コイツは人に囲まれていた時は泣かず、円城寺さんと俺との3人でいたときにも泣かず、俺と2人きりになった瞬間に泣き出した。それが少しだけいじらしいように感じられた。コイツに抱く感情とは無縁だと思っていたそれに、自分自身戸惑った。
ぽろぽろと涙をこぼすコイツの腕を引いて電車に乗った。人が少なかったから各駅停車の電車に乗った。俺は泣いているコイツを放り出すほど薄情ではなかったので、家に連れ帰って暖かい飲み物をあげようと思っていた。コイツはきっと甘いものが好きだから、2人であたたかいココアを飲もう。そう思っていた。電車の揺れにあやされるように、しばらくしたらコイツの涙は止まった。
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DONEタケルと漣が星を見に行く話。(2018/09/06)ミッドナイト・スタァライト「燃えるお星様の味がする」
そう言って手渡された宵闇色の液体。喉を燃やし胃に火を灯す、あの味をすっかり忘れていた。
***
あの味を思い出したのは二十歳の誕生日だった。
12月の冷えた空気の中を歩いて歩いて、男道ラーメンへのいつもの道を少し外れた所にあるオシャレな外観の店に着いた日。
その日は俺の誕生日だったから、てっきりお祝いは男道ラーメンでやるのだと思っていた。俺たちの間には三年の月日が流れていた。だから俺は、誕生日という日が彼らの手で華やかに彩られることになんの疑いも持っていなかった。
カラコロとベルが鳴るドアを開けて入った店内は、陽気な笑い声で満ちていた。円城寺さんが、人数を聞いてきた店員に予約していた円成寺だと告げる。それを聞いた店員は笑顔で俺たちを円形のテーブルへ案内した。
14014そう言って手渡された宵闇色の液体。喉を燃やし胃に火を灯す、あの味をすっかり忘れていた。
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あの味を思い出したのは二十歳の誕生日だった。
12月の冷えた空気の中を歩いて歩いて、男道ラーメンへのいつもの道を少し外れた所にあるオシャレな外観の店に着いた日。
その日は俺の誕生日だったから、てっきりお祝いは男道ラーメンでやるのだと思っていた。俺たちの間には三年の月日が流れていた。だから俺は、誕生日という日が彼らの手で華やかに彩られることになんの疑いも持っていなかった。
カラコロとベルが鳴るドアを開けて入った店内は、陽気な笑い声で満ちていた。円城寺さんが、人数を聞いてきた店員に予約していた円成寺だと告げる。それを聞いた店員は笑顔で俺たちを円形のテーブルへ案内した。
NEIA_AINE
PROGRESS完全にケツ叩きの霊能力者マコト。タカマコどこに行ったのか教えてほしい。代わりにタケルさんが死んでるけど死ぬほど出てくる。キン誕読んでも掴みきれないそんなタケルさんが大好き。掴ませろ。頼む。まだ書ききれてないけど、進捗。今6000字ぐらい。 幽霊って信じるか?ってこの導入は前にもしたことがあるかもしれないな。あのときは見えない敵におれたちは踊らされて散々な目にあった。そもそも幽霊ってのは正体見たり枯尾花、なんて言われるぐらい存在があやふやなものだ。そう簡単に幽霊が見えたらたまったものではない。結局のところ、都市伝説と同じだ。信じるか信じないかはあなた次第ってね。これは普段から愛と平和の池袋のために東奔西走するおれのちょっと現実離れした話。おれは昼でも夜でも池袋のために身を粉にする奉仕者なんだ。
『次のニュースです。昨夜池袋三丁目の交差点でバイクと乗用車が絡む事故があり、バイクに乗っていた男性が怪我をしました。警察はこの事故を……………』
「やだ。三丁目って言ったら藤岡さんのご親戚の家の近くじゃない」
おふくろが朝のニュースを見ながらぼやく。味噌汁を片手に持っているが食べる口は、喋る方向に舵を切っており、手は完全に空中浮遊状態。おれはそれを横目に食器をシンクに落とす。朝ごはんをおふくろがさばいてくれている間に、おれは仕込んだばかりのフルーツを簡単に仕分けしつつ開店準備をしなければならないのだ。あまり悠長にテレビを 6618