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    ファウスト

    sigu_mhyk

    DONE1日1ネファネチャレンジ 85
    魔法舎 ネロ+ファウスト(まだ付き合ってない)
    発火装置晩酌の場所が中庭からネロの部屋に。
    テーブルに向き合って座ることから、ベッドに並んで座るように。
    回数を重ねるごとに距離は近付き、互いの体温も匂いもじわりと肌に届く距離を許してもなお、隣に座る友人の男は決心がつかないらしくなかなか手を出してこない。
    手を僅かに浮かせてこちらに伸ばすかと思えば、ぱたりと諦めたように再びシーツの海に戻る。じりじりと近付きながら、数センチ進んだところでぎゅうとシーツを握り締め、まるでそこにしがみつくように留まる。
    ベッドについた二人の手の間、中途半端に開いた拳ひとつ分の距離。ネロの気後れが滲むこの空間をチラリと視線だけで伺って、密かに息をついた。
    よく分からないが魚らしき生き物も、毒々しい色をした野菜らしき植物にも。鋭く研がれた刃物にも、熱く煮えた鍋にも、炎をあげるフライパンにすら恐れることなく涼しい顔で手を伸ばすネロは、そのくせファウストの手を同じように掴むことができないでいる。刃物よりずっとやわらかく、コンロに灯るとろ火よりも冷たいファウストの手は、ネロの手の感触を知らないで今日まできた。
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    tono_bd

    DOODLE・『未完のワインに思いを馳せて』後の話。未読の方は一部ネタバレが含まれます。
    ・ファウストの火傷の跡のある脚について触れます。

    ファウストがうっかりシャイロックの機嫌を損ねたため、葡萄踏み体験をしていた事をフィガロにバラされた事により、怒ったフィガロがファウストのズボンを脱がす話。(※付き合ってない)

    イベント期間中(9月)から書いていました……。
    フィガロがファウストの脚に触れる話 どうしてこんな事になったのか――。若干だが酔いが醒めて来た頭で考えるがまるで答えは出ない。
     ただ事実を述べるとすれば、ファウストは自室のベッドの上に座らされていて、目の前には床に膝をついて傅くフィガロがいる。そして恭しくも強引にファウストの裸の足を掴んで離してくれない。
     普段なら決して素足に触れさせる事も、床に膝をつく事もさせはしないのに、今この状況の主導権はファウストには無いに等しかった。
     優れた陶器を撫でるような手つきで膝から下を撫で下ろしたフィガロの顔を信じられない目で凝視していると、それに気が付いたフィガロは挑発的な上目遣いで見せつけてくる。そして少しだけ普段よりも熱を持った頬を臑に頬ずりをしてから肉厚の舌で自身の唇を舐めた。緊張で乾いてしまった唇を潤す仕草にも見えるが、捕食者の顔で獲物を前に舌舐めずりしているようにも映った。どちらが本当かなんてファウストに分かる筈も無く、ただ少しでもこの男から離れようと後ずさるが、実際どれくらい距離が取れたかなんてたった数センチくらいに違い無い。いや寧ろ……離れた数センチを咎めるようにその数倍は引き戻される。
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    てんてんです

    DONEネロファウ未満くらいの短編。休日に二人で遊ぶ予定だったのにファウストが体調を崩しちゃった話です。
    【いていな展示】秋の風邪とホットワイン その日の嵐の谷は名前に似合わず快晴で、柔らかい秋の日差しが窓から差し込む、心地の良い昼下がりだった。
     こんなに気持ちが良く涼しい休日に、静かな場所で居心地の良い友人と二人。のんびりとつまみでも作りながら昼から酒を開けてしまいたい絶好の日だが、いや、元々そのつもりだったのだが、今日はそれどころでは無かった。
    「先生、熱測れた」
    「うん」
    家主は寝巻きになりベッドの中で上半身を起こし、緩慢に体温系を脇から取り出すとネロに渡した。既に結構熱が出ているが、毛布をぎゅっと引き寄せて寒そうにしているのでまだもう少し上がるかもしれない。
    「その……何か欲しいものとかある」
    つい数刻前まで何事もなく元気そうにしていたのに、突然体調を崩してしまったファウストに、ネロはどうしていいのか分かりかねていた。何か食べたいと言われれば作ってやることはできるけれど、他に何をしたら良いのか分からない。辛そうにしている友人にしてやれることがあればいいのだが、こんな時に何かしてもらった覚えが記憶の中に無いネロは、何をするのが正解なのか分かりかねていた。
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    rotten_Mame

    DONE2022/11/05 いていな2展示作品

    人間の家族ができたネロが、家族の死後にファウストの元を訪れて居候する話。
    ネロとファウストの間に恋愛感情はありません。ネロ×モブ人間の描写が中心です。

    パスワードはお品書きに記載してあるので、そちらをご参照ください。

    長い展示品になってしまいましたが、メッセージボードに書き込みなどしてくださると励みになります。
    花が枯れたら会いに来て 洗濯物が溜まった日の朝は早く起きる。そうでなければ昼過ぎに起床して、朝昼兼用の食事を取る。洗濯物があったとしても天気が悪ければやっぱり昼過ぎに起床する。それがファウストの、嵐の谷での生活だった。ここ東の国は、晴れの日が他国と比べて少ない。それに加えて谷での生活は天気に左右されやすいので、晴天の朝を逃すと着るものに困ってしまう。
     昨晩、ファウストは寝る前に戸締りをしながら、次の日が快晴になると察した。何百年も生きているからか、はたまた彼が魔法使いだからなのか、その因果関係は不明だけれど、ファウストは150歳を超えたあたりから、次の日の天候を空気中の水分量や風の動き、その土地の精霊のざわめきによって予測できるようになった。同じことを言う魔法使いもいれば、何百年も生きていてもその感覚自体がわからないという者もいる。
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    てんてんです

    DONEファウストがネロの飯屋を成り行きで手伝うことになる話。全年齢です。
    後編は12月目処でまとめて上げるか本にできたら……できたらいいなぁ

    【!注意!】
    ・キャラの死(ネロ、ファウスト意外)に関する表現があります
    【いていな展示】五線譜の上、旅は続く (前編) 長い人生の中でひとつひとつの別れにいちいち心を傾けて擦り減っていては生きていけないことくらい、分かっているつもりだった。
     どのみち、あと十年も経たないうちに離れるつもりの場所だった。流れた時間に対して変わらない見た目に不信感を抱かれる前にその土地を一度離れる必要があるのだから。世界の変化には良い風が吹いていたけれど、こんな東の辺境の地で凝り固まった価値観はたったの十数年で変わるものでもない。あと数十年経って、古い考えの人間達がこの世から去ってしまうまでは、悲しいことに。
     十数年で離れるつもりの土地だったとはいえ、分かっていた別れと、突然突きつけられる別れではダメージが違う。あれは昨日の出来事で、店を畳むことになった原因は自分の不注意としか言いようがない。夜明け頃、だれもいないだろうと慢心して店の裏口に箒で降り立った時、がしゃんと皿が割れる音がした。裏口に呆然と立っていたのは常連客の、よく一人で店にくる純朴で明るい青年だった。しばらく病気で臥せっている妹のために、ネロの店のミネストローネが好きだからと店に来る度に持ち帰りで頼み、律儀にお礼のメモを付けた皿を夜のうちに返しに来ている子だった。
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