はるなつ
PASTTwitterにあげている忘羨ワンドロワンライまとめ②20221015〜20220325
※何でも許せる方向けです※
かなりOOCしています(>人<;)
下に行くほど新しい日付になります 24
はるなつ
PASTTwitterにあげている忘羨ワンドロワンライまとめ①20220423〜1008
※何でも許せる方向けです※
クリスタに慣れるために始めて、現在もチャレンジ中
ワンドロで終わった試しがなくまだまだ修行中です
下に行くほど新しい日付になります
かなり試行錯誤しています 26
名護屋乃(なごやん)
DONE忘羨ワンドロ最終お題「あなたの最高の忘羨をご自由に」への投稿作品です。(忘羨ワンドロワンライの開催、長い間ありがとうございました)
タイトルをお題からとって、そのまま『最高の忘羨』としてしまいました💦
俺の考える最高の忘羨てこういうイメージ!という感じなので…
烏滸がましいタイトルですが、お赦しください🙇
ごーる
DOODLE熱烈歓迎!⚠︎Attention⚠︎
全て個人の妄想によるフィクションです。実在の人物・団体・事象とは一切関係ございません。無断の転載を固くお断りします。
It's all an individual fantasy fiction.
上手くいっちゃった夷陵老祖AU。
会いたいと、心から願った彼は。 7
ごーる
DOODLE酒は呑んでも呑まれるな⚠︎Attention⚠︎
全て個人の妄想によるフィクションです。実在の人物・団体・事象とは一切関係ございません。無断の転載を固くお断りします。
It's all an individual fantasy fiction.
《それ》の、襲来。
「けっこん」 10
瀧よし
DONE文箱の蓋を指先で撫でる。
月明かりすらない新月の夜、雪灯も届かず仄暗く揺れる蝋燭の灯りが私の影を揺らす。
箱の中に、私の魂の中に、君から貰った物は全て閉じ込めた。
幾度問えども返ってくることはなく、それでも日々奏でている琴の音は私の執着。
哀しい音と誰かが言った。
「魏嬰……」
君に再び会えたなら、永遠に隣に立つと誓うから。
外からの子弟が呼ぶ声に瞳を伏せ立ち上がり、扉へ向かった。
魏嬰ーー今度こそ離しはしない。
君を求めて伸ばした手は、ただ暗闇を掴んだ。
文箱の蓋を指先で撫でる。
開け放った窓から賑やかな鳥の囀りが聞こえ、春の陽気がふわりと私の髪を揺らす。
箱の中に、私の魂の中に、君から貰った物は全て閉じ込めたつもりだった。
687月明かりすらない新月の夜、雪灯も届かず仄暗く揺れる蝋燭の灯りが私の影を揺らす。
箱の中に、私の魂の中に、君から貰った物は全て閉じ込めた。
幾度問えども返ってくることはなく、それでも日々奏でている琴の音は私の執着。
哀しい音と誰かが言った。
「魏嬰……」
君に再び会えたなら、永遠に隣に立つと誓うから。
外からの子弟が呼ぶ声に瞳を伏せ立ち上がり、扉へ向かった。
魏嬰ーー今度こそ離しはしない。
君を求めて伸ばした手は、ただ暗闇を掴んだ。
文箱の蓋を指先で撫でる。
開け放った窓から賑やかな鳥の囀りが聞こえ、春の陽気がふわりと私の髪を揺らす。
箱の中に、私の魂の中に、君から貰った物は全て閉じ込めたつもりだった。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題: 『全力疾走』『にせもの』
所要時間:1時間40分
注意事項: 道侶後
忘羨ワンドロワンライ【全力疾走】【にせもの】「納得いかない!」
雲深不知処には似つかわしくない大声に、周囲から『しぃー!」と諌めるような声がかかる。思わず周囲を見回し、藍景儀は唇を尖らす。
「だってそうだろう? 確かに偽物が混じってるっては言ってたけど、見つけた玉が全部、全員分が偽物だなんて、そんなの絶対おかしいだろ?」
周囲の数名が同意して深く頷く。藍景儀は唇を尖らせたまま腕を組み直した。
「元々、全部偽物だったなんてことないよな」
藍思追は首を横に振る。
「それはないよ。最初に本物が人数分あることをみんなの前で確認してからばら撒かれたんだよ? それに――」
藍思追は言い淀んだが、周囲の門弟から突かれて促されると、小さく息を吸い込んでから言葉を続けた。
5081雲深不知処には似つかわしくない大声に、周囲から『しぃー!」と諌めるような声がかかる。思わず周囲を見回し、藍景儀は唇を尖らす。
「だってそうだろう? 確かに偽物が混じってるっては言ってたけど、見つけた玉が全部、全員分が偽物だなんて、そんなの絶対おかしいだろ?」
周囲の数名が同意して深く頷く。藍景儀は唇を尖らせたまま腕を組み直した。
「元々、全部偽物だったなんてことないよな」
藍思追は首を横に振る。
「それはないよ。最初に本物が人数分あることをみんなの前で確認してからばら撒かれたんだよ? それに――」
藍思追は言い淀んだが、周囲の門弟から突かれて促されると、小さく息を吸い込んでから言葉を続けた。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題: 『おままごと』
所要時間:1時間55分
注意事項: 幼少期
忘羨ワンドロワンライ【おままごと】「忘機の様子はどうだ?」
藍啓仁は忙しなく髭を撫でつけながら、目の前で一礼した藍曦臣に問いかけた。
「私の部屋で寝かせています。熱が高いので薬湯を飲ませました。熱が出たのは風邪のせいですが、医師はむしろ膝の裂傷の方が心配だと。薬膏を毎日塗り直し、しばらくは膝を酷使させぬ方が良いそうです」
藍啓仁は顔を顰める。雪の中、冷たい石畳の上に長く跪いていたのだ、幼い膝はどれほど痛んだだろうか。迎えに行った頃は既に痛みを通り越し、何も感じなくなっていたに違いない。
「しばらくは私の目の届くところに置いておこうと思っておりますが、よろしいでしょうか」
藍啓仁はしばし熟考する。藍曦臣は結丹したとは言え、まだ少年の域を出ない。座学は自室で行うこともできるが、剣技については兄弟子に混じっての修練が必要だ。だが、藍忘機が無理せぬように目を配るとなると、他の門弟に任せるというわけにもいかない。
5966藍啓仁は忙しなく髭を撫でつけながら、目の前で一礼した藍曦臣に問いかけた。
「私の部屋で寝かせています。熱が高いので薬湯を飲ませました。熱が出たのは風邪のせいですが、医師はむしろ膝の裂傷の方が心配だと。薬膏を毎日塗り直し、しばらくは膝を酷使させぬ方が良いそうです」
藍啓仁は顔を顰める。雪の中、冷たい石畳の上に長く跪いていたのだ、幼い膝はどれほど痛んだだろうか。迎えに行った頃は既に痛みを通り越し、何も感じなくなっていたに違いない。
「しばらくは私の目の届くところに置いておこうと思っておりますが、よろしいでしょうか」
藍啓仁はしばし熟考する。藍曦臣は結丹したとは言え、まだ少年の域を出ない。座学は自室で行うこともできるが、剣技については兄弟子に混じっての修練が必要だ。だが、藍忘機が無理せぬように目を配るとなると、他の門弟に任せるというわけにもいかない。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題: 『仙薬』
所要時間:58分
注意事項: 道侶後
忘羨ワンドロワンライ【仙薬】「止血するには、まずは押さえるってことは学んだよな? 傷口が汚れているなら洗う。毒があれば搾り出して、毒の全身への侵食を進めないように必要以上に体を動かさないこと。刺し傷で絞り出すことが難しい場合は、切開して絞り出すか、吸い出す。――では、今日はその次、丹薬についてだ」
魏無羨はポンと丸めた教本で自らの肩を叩く。
今、魏無羨の前に並んでいるのは、これから夜狩に参加を許される予定の若い門弟たちだ。彼らは実戦の前に薬剤の講義を受ける。詳しい内容は薬師が教えるが、初歩の初歩、最初の授業を担うのは夜狩を指揮する高位の門弟と決まっている。今日は魏無羨にその役目が回って来た。
「夜狩の際には、全員に丹薬袋と止血粉が支給される。もちろん、自前で中の薬を増やしてもいいが、丹薬袋に最初から入っているのは三種類だ。霊気が尽きかけた時のための補気丸、血を流しすぎた時の補血丸、そして霊気をうまく制御できなくなった時のための理気丸だ。理気丸を服用するときは、霊気の消耗が激しくなるので補気丸も一緒に服用することが望ましいが、混迷しているときは補気丸ではなく直接霊気を送る方が安全だ。霊気には相性があるので、日頃から気を付けておくこと。年齢、顔立ち、背格好、血統、似ているもの同士の方が相性はいい」
4156魏無羨はポンと丸めた教本で自らの肩を叩く。
今、魏無羨の前に並んでいるのは、これから夜狩に参加を許される予定の若い門弟たちだ。彼らは実戦の前に薬剤の講義を受ける。詳しい内容は薬師が教えるが、初歩の初歩、最初の授業を担うのは夜狩を指揮する高位の門弟と決まっている。今日は魏無羨にその役目が回って来た。
「夜狩の際には、全員に丹薬袋と止血粉が支給される。もちろん、自前で中の薬を増やしてもいいが、丹薬袋に最初から入っているのは三種類だ。霊気が尽きかけた時のための補気丸、血を流しすぎた時の補血丸、そして霊気をうまく制御できなくなった時のための理気丸だ。理気丸を服用するときは、霊気の消耗が激しくなるので補気丸も一緒に服用することが望ましいが、混迷しているときは補気丸ではなく直接霊気を送る方が安全だ。霊気には相性があるので、日頃から気を付けておくこと。年齢、顔立ち、背格好、血統、似ているもの同士の方が相性はいい」
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題: 『手懐ける』
所要時間:1時間20分
注意事項: 小蘋果と魏無羨
忘羨ワンドロワンライ【手懐ける】「小蘋果、世話をしに来たぞ、起きてるか?」
小蘋果は大きな耳をピンと伸ばした。僅かに首を持ち上げて体を震わせ、折り曲げた脚の隙間に体を寄せている兎を起こして退かすと、ぐんと首を伸ばして小屋の扉を振り返る。簡単に開け閉めできる小屋の戸を押し開け姿を現した黒い影を見て、小蘋果はイーっと口を開けて歯を見せた。見ようによっては笑っているようにも見えるその顔は、小蘋果が嬉しい時に見せる表情だ。かれこれ三日、魏無羨は姑蘇藍氏の門弟に代わって小蘋果の世話に来ていた。藍忘機は仙門百家あげての大きな話し合いのために門弟を多く引き連れて金麟台に出かけている。年嵩の門弟たちが藍忘機の補佐のために駆り出され、年少の門弟たちがその穴を埋めているため、小蘋果の世話は魏無羨に回って来た。
4788小蘋果は大きな耳をピンと伸ばした。僅かに首を持ち上げて体を震わせ、折り曲げた脚の隙間に体を寄せている兎を起こして退かすと、ぐんと首を伸ばして小屋の扉を振り返る。簡単に開け閉めできる小屋の戸を押し開け姿を現した黒い影を見て、小蘋果はイーっと口を開けて歯を見せた。見ようによっては笑っているようにも見えるその顔は、小蘋果が嬉しい時に見せる表情だ。かれこれ三日、魏無羨は姑蘇藍氏の門弟に代わって小蘋果の世話に来ていた。藍忘機は仙門百家あげての大きな話し合いのために門弟を多く引き連れて金麟台に出かけている。年嵩の門弟たちが藍忘機の補佐のために駆り出され、年少の門弟たちがその穴を埋めているため、小蘋果の世話は魏無羨に回って来た。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題: 『神頼み』
所要時間:1時間45分
注意事項: 空白の16年中
忘羨ワンドロワンライ【神頼み】 藍景儀は十一を過ぎてしばらくして結丹した。幼い頃から同室の藍思追が同期で一番早く結丹して以来、絶対に自分も結丹するのだと心に決めて、毎日苦手な早起きを頑張り、得意ではない整理整頓も礼法の授業も励んだ。その甲斐あってか思追に遅れること二か月で結丹し、同期の中では二人だけが、今日からの遠出の勤めに参加する。これは結丹した門弟が正式に夜狩に参加できるようになるまでの期間に行われる、夜狩の準備段階だ。
幼い時から雲深不知処で寄宿生活をする門弟達は、あまり世間慣れしていない。特に藍思追と藍景儀は共に実家が雲深不知処の中にある内弟子で、雲深不知処からほど近い彩衣鎮にすら、年に数回、兄弟子に連れられて出かけたことがある程度だ。夜狩をするとなれば、街で休むなら宿を自分たちで取り、街がないなら夜営を自分たちで行わなければならない。もちろん、食事の準備も自分たちで行うことになるし、夜営に適した場所を選び、様々な采配を行うのも自分たちだ。夜狩では常に列をなして行動できるわけではない。最悪、その場で散開して帰還する羽目になったとしたら、一人で安全を確保しながら雲深不知処に向かわなくてはならない。そのためには地理に慣れ、人に慣れておかなくてはならないのだ。こうした夜狩に必要な知識を遠出の勤めを繰り返すことで習得し、剣技や邪祟の知識などを習得してはじめて、姑蘇藍氏の仙師として夜狩の列に連なることができるようになる。
5469幼い時から雲深不知処で寄宿生活をする門弟達は、あまり世間慣れしていない。特に藍思追と藍景儀は共に実家が雲深不知処の中にある内弟子で、雲深不知処からほど近い彩衣鎮にすら、年に数回、兄弟子に連れられて出かけたことがある程度だ。夜狩をするとなれば、街で休むなら宿を自分たちで取り、街がないなら夜営を自分たちで行わなければならない。もちろん、食事の準備も自分たちで行うことになるし、夜営に適した場所を選び、様々な采配を行うのも自分たちだ。夜狩では常に列をなして行動できるわけではない。最悪、その場で散開して帰還する羽目になったとしたら、一人で安全を確保しながら雲深不知処に向かわなくてはならない。そのためには地理に慣れ、人に慣れておかなくてはならないのだ。こうした夜狩に必要な知識を遠出の勤めを繰り返すことで習得し、剣技や邪祟の知識などを習得してはじめて、姑蘇藍氏の仙師として夜狩の列に連なることができるようになる。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題: 『赤い糸』
所要時間:1時間25分
注意事項: 座学以前
忘羨ワンドロワンライ【赤い糸】 世家によって多少の違いはあるが、仙師は十二歳頃から結丹しはじめ、十五で座学を修め、十八で剣術を修めて一人前となる。二十歳を過ぎると結丹する者は稀だ。姑蘇藍氏のように幼くして門弟となり本格的な修練を始めることが普通であるという世家もあれば、ある程度成長するまでは通いで修練し、結丹してから門弟として迎えるような小世家もある。ひとたび門弟となるとその世家に一生を捧げるのが当たり前の世家もあるが、雲夢江氏のように門弟の出入りがある世家も多い。
雲夢江氏の門弟が流動的なのは、蓮花塢が水路を中心とした交易の要所であることが大きい。雲夢江氏は、門弟以外に武術を必要とする市井の民にも剣術や弓術を学ぶ機会を与えている。彼らの多くは水路沿いの街の民であり、男女の別なく水路の安全と街の安全のために武術を修めにくるのだ。その中にはごく少数だが修練によって思いがけず遅い結丹を迎える者も居る。彼らは市井の民と仙師の分け隔てなく武術を教えてくれる雲夢江氏に愛着と忠誠とを持っている。水路を伝って頻繁に街と蓮花塢を行き来する中で、世の不穏な気配や他の世家の情報を知ると、それを蓮花塢へと直ぐに伝えてくれるのだ。そんな日常の中で、門弟が民と縁を結んで蓮花塢を去り、結丹した民が妻を娶って蓮花塢の辺りに住み着き門弟となる。このようにして蓮花塢の門弟は流動する。全て人の縁によるものだ。
5453雲夢江氏の門弟が流動的なのは、蓮花塢が水路を中心とした交易の要所であることが大きい。雲夢江氏は、門弟以外に武術を必要とする市井の民にも剣術や弓術を学ぶ機会を与えている。彼らの多くは水路沿いの街の民であり、男女の別なく水路の安全と街の安全のために武術を修めにくるのだ。その中にはごく少数だが修練によって思いがけず遅い結丹を迎える者も居る。彼らは市井の民と仙師の分け隔てなく武術を教えてくれる雲夢江氏に愛着と忠誠とを持っている。水路を伝って頻繁に街と蓮花塢を行き来する中で、世の不穏な気配や他の世家の情報を知ると、それを蓮花塢へと直ぐに伝えてくれるのだ。そんな日常の中で、門弟が民と縁を結んで蓮花塢を去り、結丹した民が妻を娶って蓮花塢の辺りに住み着き門弟となる。このようにして蓮花塢の門弟は流動する。全て人の縁によるものだ。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題: 『仮病』『ふわふわ』
所要時間:1時間52分
注意事項: 道侶後
忘羨ワンドロワンライ【仮病】【ふわふわ】「魏先輩が扉を開けてくださいません」
藍思追が困った顔で藍忘機を訪ねて来たのは、そろそろ昼餉の時間になろうかという頃だった。仙督として来訪者の相手をする必要があった藍忘機は、常なら自ら用意する魏無羨の朝餉の準備を思追に任せた。膳を静室に運び、並べ、食事をさせて片付けるまでが仕事である。思追はこの仕事が好きだ。話に夢中になって箸が止まりかける魏無羨に、それとなく食事を勧めながら、思う存分魏無羨と二人の時間を楽しむ。魏無羨の持つ多くの邪祟の知識や夜狩の経験談は、夜狩の指揮をとるようになった思追にとって得難いものだし、それ以上に、手に汗握る冒険譚を聞いているようでワクワクが止まらない。だから、その日も藍思追は内心大喜びで静室を訪れたのだ。だが、期待に反して静室の扉は開かなかった。
6652藍思追が困った顔で藍忘機を訪ねて来たのは、そろそろ昼餉の時間になろうかという頃だった。仙督として来訪者の相手をする必要があった藍忘機は、常なら自ら用意する魏無羨の朝餉の準備を思追に任せた。膳を静室に運び、並べ、食事をさせて片付けるまでが仕事である。思追はこの仕事が好きだ。話に夢中になって箸が止まりかける魏無羨に、それとなく食事を勧めながら、思う存分魏無羨と二人の時間を楽しむ。魏無羨の持つ多くの邪祟の知識や夜狩の経験談は、夜狩の指揮をとるようになった思追にとって得難いものだし、それ以上に、手に汗握る冒険譚を聞いているようでワクワクが止まらない。だから、その日も藍思追は内心大喜びで静室を訪れたのだ。だが、期待に反して静室の扉は開かなかった。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題: 『朔月』
所要時間:1時間50分
注意事項: 道侶後
忘羨ワンドロワンライ【朔月】「次の朔月は、夜明け前に冷泉で潔斎を行い卯の刻から冥室で朔月の楽の奉納を行うため、朝餉は思追が運んでくる」
静室での夕餉の後に藍忘機にそう言われ、魏無羨はキョトンと目を見開いた。
雲深不知処では年に二回、朔月に楽の奉納を行うことになっているらしい。本来は宗主が務める仕事だが、藍曦臣が閉関しているため藍忘機が行うのだろう。青蘅君が閉関中は長らく藍啓仁が務めてきたそうだ。雲深不知処には古くからの祭事が幾つも残っているが、潔斎まで行うものは珍しい。
「随分と厳格なんだな。朝餉くらい自分で取りに行けるぞ?」
魏無羨は数日前に結丹した。結丹の際に体に掛かった負荷は大きく、結丹したとは言えまだ回復は十分ではない。そのため、藍忘機は膳の準備から湯浴みまで甲斐甲斐しく世話をし、随分と魏無羨を甘やかしている。魏無羨が朝餉は自分で取りに行くというのに『だめ』と返して、藍忘機は言葉を続ける。
6143静室での夕餉の後に藍忘機にそう言われ、魏無羨はキョトンと目を見開いた。
雲深不知処では年に二回、朔月に楽の奉納を行うことになっているらしい。本来は宗主が務める仕事だが、藍曦臣が閉関しているため藍忘機が行うのだろう。青蘅君が閉関中は長らく藍啓仁が務めてきたそうだ。雲深不知処には古くからの祭事が幾つも残っているが、潔斎まで行うものは珍しい。
「随分と厳格なんだな。朝餉くらい自分で取りに行けるぞ?」
魏無羨は数日前に結丹した。結丹の際に体に掛かった負荷は大きく、結丹したとは言えまだ回復は十分ではない。そのため、藍忘機は膳の準備から湯浴みまで甲斐甲斐しく世話をし、随分と魏無羨を甘やかしている。魏無羨が朝餉は自分で取りに行くというのに『だめ』と返して、藍忘機は言葉を続ける。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題: 『巻き戻る』『反省文』
所要時間:1時間55分
注意事項: 道侶後
忘羨ワンドロワンライ【巻き戻る】【反省文】 雲深不知処の禁書室の虫干しには工夫が必要である。そもそも人目に触れないように禁書室に収納されているのだ、虫干しと相性が良いはずがない。作業は高位の弟子たちだけで、虫干しの場所には容易に入り込めないように結界を張り蔵書閣付近を人払いして行われる。
そんな厳重な作業の中、思いもかけない出来事が起きた。見たことがない符が挟み込まれた、目録にない書が見つかったのだ。すぐに藍啓仁によって吟味され、書は百年ほど前のもので、内容は雲深不知処に持ち込まれた相談事を記録したものと分かった。その中の相談の一つに、今では世家としては絶えてしまった近隣の小世家から持ち込まれた『不明の符』の記録があり、おそらくこれが挟み込まれていた符のことだろうと思われた。小世家から雲深不知処に符が届けられた理由は、その符に透かしの雲紋が浮かんでおり、符の裏に何やら謝罪めいた文言が書かれていたためだったが、そこで藍啓仁は頭を抱えた。透かしの紙が使用されるようになったのは藍啓仁がまだ幼い頃からであり、どうしても書の記載とは年代が合わないのだ。
6720そんな厳重な作業の中、思いもかけない出来事が起きた。見たことがない符が挟み込まれた、目録にない書が見つかったのだ。すぐに藍啓仁によって吟味され、書は百年ほど前のもので、内容は雲深不知処に持ち込まれた相談事を記録したものと分かった。その中の相談の一つに、今では世家としては絶えてしまった近隣の小世家から持ち込まれた『不明の符』の記録があり、おそらくこれが挟み込まれていた符のことだろうと思われた。小世家から雲深不知処に符が届けられた理由は、その符に透かしの雲紋が浮かんでおり、符の裏に何やら謝罪めいた文言が書かれていたためだったが、そこで藍啓仁は頭を抱えた。透かしの紙が使用されるようになったのは藍啓仁がまだ幼い頃からであり、どうしても書の記載とは年代が合わないのだ。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライ『抱擁』お題: 『抱擁』
所要時間:1時間5分
注意事項: 知己
忘羨ワンドロワンライ【抱擁】 ポタリ――と落ちた雪が白く世界を覆う。黒々とした地面と木々を覆い尽くして、世界は白くなる。
魏無羨は雪が生まれ落ちる天空を見上げた。月を覆い尽くした厚い雲から、音もなく雪が生まれ落ちる。
魏無羨は冷泉で垣間見た藍忘機の白い背中を思い出す。
藍忘機の白い背中には、無惨なほどに痕を残した戒鞭の傷があった。傷の所以を尋ねても藍忘機は答えなかった。答えをくれたのはその兄だ。
魏無羨のために負った傷――否、藍忘機はそうは思っていないだろう。知己と共に有ろうとして、あの日の誓いのままに生きようとして負った傷だ。
魏無羨はそっと琴を爪弾く藍忘機を振り返る。
地位も名声も、輝かしい栄光も富も要らない、この世でただ一人、この知己が居ればそれで十分に満たされる――魏無羨は思う。
3323魏無羨は雪が生まれ落ちる天空を見上げた。月を覆い尽くした厚い雲から、音もなく雪が生まれ落ちる。
魏無羨は冷泉で垣間見た藍忘機の白い背中を思い出す。
藍忘機の白い背中には、無惨なほどに痕を残した戒鞭の傷があった。傷の所以を尋ねても藍忘機は答えなかった。答えをくれたのはその兄だ。
魏無羨のために負った傷――否、藍忘機はそうは思っていないだろう。知己と共に有ろうとして、あの日の誓いのままに生きようとして負った傷だ。
魏無羨はそっと琴を爪弾く藍忘機を振り返る。
地位も名声も、輝かしい栄光も富も要らない、この世でただ一人、この知己が居ればそれで十分に満たされる――魏無羨は思う。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題: 『霜降(二十四節気)』
所要時間:1時間48分
注意事項: 道侶後
忘羨ワンドロワンライ【霜降】 藍忘機は、隣で眠っていた魏無羨が突然布団を剥いで起き上がる気配を感じて目を開けた。宵っ張りで朝が弱い道侶の常と違う行動に、僅かに胸騒ぎがする。
「魏嬰、どうした?」
呆然と牀の上で座り込んでいる魏無羨の頬に涙が落ちたのを見て、藍忘機は慌ててその肩を抱く。
「魏嬰?」
「思い出した。――何で忘れてたんだ? いや、そもそも蘇る前の、しかも童の頃のことなんて、何で今頃になって思い出したんだ?」
どうやら忘れていた記憶を取り戻したようだと魏無羨は言う。
「俺の五歳の冬だ。帰って来ない両親を待つのをやめて、蓮の花が咲き乱れる場所に父親の家があるという言葉を頼りに彷徨い歩いた最初の冬だ。――何で今頃」
藍忘機は朝の冷気に冷え始めた道侶の薄い肩に、そっと傍の掛布をかけてやる。
5308「魏嬰、どうした?」
呆然と牀の上で座り込んでいる魏無羨の頬に涙が落ちたのを見て、藍忘機は慌ててその肩を抱く。
「魏嬰?」
「思い出した。――何で忘れてたんだ? いや、そもそも蘇る前の、しかも童の頃のことなんて、何で今頃になって思い出したんだ?」
どうやら忘れていた記憶を取り戻したようだと魏無羨は言う。
「俺の五歳の冬だ。帰って来ない両親を待つのをやめて、蓮の花が咲き乱れる場所に父親の家があるという言葉を頼りに彷徨い歩いた最初の冬だ。――何で今頃」
藍忘機は朝の冷気に冷え始めた道侶の薄い肩に、そっと傍の掛布をかけてやる。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題:「本の虫」
所要時間:1時間40分
注意事項: 座学時代
忘羨ワンドロワンライ【本の虫】「魏兄はまだお仕置き中?」
講義が終わった後、慌ただしく蘭室から出た江晩吟を追いかけてきて、聶懐桑が周囲を憚るようにそっと訊ねる。
「夜は帰ってくるぞ、さすがに。朝、遅れると罰が追加されるからって、ブツブツ文句を言いながら姉上に急かされて出かけて行って、食事は全部向こうで摂らされるらしく、帰ってくるのは寝る直前だな。おかげで静かでいい」
「え。食事もあっちなの?」
「なんでも、蔵書閣の傍に食事や仮眠がとれる小部屋があるんだと。もちろん仕置きのためにあるわけじゃなく、本来は夜通し書物を調べたりする時のためにある――らしいがな」
「へえ。じゃあ、藍二公子と本当にずっと一緒なんだ。魏兄、可哀想に」
眉をハの字に下げた聶懐桑に、江晩吟は首を傾げる。
5010講義が終わった後、慌ただしく蘭室から出た江晩吟を追いかけてきて、聶懐桑が周囲を憚るようにそっと訊ねる。
「夜は帰ってくるぞ、さすがに。朝、遅れると罰が追加されるからって、ブツブツ文句を言いながら姉上に急かされて出かけて行って、食事は全部向こうで摂らされるらしく、帰ってくるのは寝る直前だな。おかげで静かでいい」
「え。食事もあっちなの?」
「なんでも、蔵書閣の傍に食事や仮眠がとれる小部屋があるんだと。もちろん仕置きのためにあるわけじゃなく、本来は夜通し書物を調べたりする時のためにある――らしいがな」
「へえ。じゃあ、藍二公子と本当にずっと一緒なんだ。魏兄、可哀想に」
眉をハの字に下げた聶懐桑に、江晩吟は首を傾げる。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題:「紅葉」
所要時間:1時間45分
注意事項: 道侶後
忘羨ワンドロワンライ【紅葉】 雲深不知処の秋の深まりは早い。麓に近い山門近くは木々が青々としているが、山の奥まった所にある修行のための岩肌や、穀断ちして修練を行うための裏山の東屋辺りには少しずつ秋の気配が漂い始めている。この山奥に散在する東屋を定期的に手入れするのは比較的年長の内弟子の勤めの一つで、それ自体が修練の一つとして数えられている。周囲の草むしりから屋根や柱の手入れ、井戸の掃除までを二人でこなすのは、なかなか骨が折れる。特に秋の手入れは念入りに行わなくてはならない、そうしないと冬の間に雪で東屋が傷んでしまうのだ。
藍思追は裏山への道を歩きながら、帳面を片手に思案していた。この秋のその勤めを誰に割り振るか――というのが問題だ。今までは藍景儀と二人で修行がてらよく手入れに行っていたのだが、藍忘機が仙督になって以降、藍思追と藍景儀が供につくことが多くなり、なかなかそこまでは手が回らない。
5132藍思追は裏山への道を歩きながら、帳面を片手に思案していた。この秋のその勤めを誰に割り振るか――というのが問題だ。今までは藍景儀と二人で修行がてらよく手入れに行っていたのだが、藍忘機が仙督になって以降、藍思追と藍景儀が供につくことが多くなり、なかなかそこまでは手が回らない。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題:「残暑」
所要時間:1時間50分
注意事項:CQL道侶後
忘羨ワンドロワンライ 静室の床に足を投げ出して座り、魏無羨はフンフンと鼻歌を歌いながら筆を動かしていた。綺麗な丸い円の中は複雑な模様が絡み合う。開発中の新しい陣である。
雲深不知処は山深く涼しいが、晩夏の昼下がりはさすがに熱気がこもる。もちろん冷泉の傍に行って涼む手もあるのだが、夏場に多い童の風邪の時はそうもいかない。ここしばらく何人かの童が床についているため、陣で涼しくしてやれないか魏無羨は知恵を搾り始めた。まずは小さな陣を組んでみて、自分で試そうと考えていた。
「魏嬰」
「帰ったのか藍湛、思ったより早いな」
魏無羨は振り返りもせず呼びかけに応える。一気に複雑な模様を描き上げて、陣を完成させたのち、ようやく振り返った。その視線の先には道侶となった藍忘機が西瓜を提げて立っている。
5316雲深不知処は山深く涼しいが、晩夏の昼下がりはさすがに熱気がこもる。もちろん冷泉の傍に行って涼む手もあるのだが、夏場に多い童の風邪の時はそうもいかない。ここしばらく何人かの童が床についているため、陣で涼しくしてやれないか魏無羨は知恵を搾り始めた。まずは小さな陣を組んでみて、自分で試そうと考えていた。
「魏嬰」
「帰ったのか藍湛、思ったより早いな」
魏無羨は振り返りもせず呼びかけに応える。一気に複雑な模様を描き上げて、陣を完成させたのち、ようやく振り返った。その視線の先には道侶となった藍忘機が西瓜を提げて立っている。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題:「中秋節」
所要時間:1時間41分
注意事項:CQL道侶後
忘羨ワンドロワンライ【中秋節】 中秋節は家族で過ごす日である。もちろん雲夢でも、ここ姑蘇でも。
雲夢は宗主の屋敷を取り巻くように師弟や分家の屋敷が並び、下働きの家人もそのほとんどが通いであるため休みを取る。だから中秋節の食事を作るのは、虞夫人とその側近の二人、そして師姉の役割だった。時期がちょうど蓮の実の収穫期の終わりになるため、月餅の餡は蓮の実で作る。滑らかな餡を作るのは力仕事になるので、魏無羨は毎年延々スリコギを握らされていた。もうこれ以上はすり潰せないというくらいに潰して、蜜を加えて煮詰めて――滑らかな餡に仕上がるかどうかはスリコギでどれだけ頑張ったかによる。口でとろけるような餡に仕上がると、いつも師姉が手放しで褒めてくれる。
4886雲夢は宗主の屋敷を取り巻くように師弟や分家の屋敷が並び、下働きの家人もそのほとんどが通いであるため休みを取る。だから中秋節の食事を作るのは、虞夫人とその側近の二人、そして師姉の役割だった。時期がちょうど蓮の実の収穫期の終わりになるため、月餅の餡は蓮の実で作る。滑らかな餡を作るのは力仕事になるので、魏無羨は毎年延々スリコギを握らされていた。もうこれ以上はすり潰せないというくらいに潰して、蜜を加えて煮詰めて――滑らかな餡に仕上がるかどうかはスリコギでどれだけ頑張ったかによる。口でとろけるような餡に仕上がると、いつも師姉が手放しで褒めてくれる。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題:「遺言」
所要時間:1時間36分
注意事項:CQL道侶後
忘羨ワンドロワンライ【遺言】 三ヶ月前、藍忘機は魏無羨との長い知己の関係を終え、ようやく道侶となった。披露目はしていないが、世話になった座学同学の面々には書簡で伝えたようだ。仙門百家には数ヶ月後の清談会で簡単に伝えて終わるだろう。大仰なことは何もしていない。藍家の祠堂で三拝した三日後には魏無羨が結丹したこともあり、藍啓仁が師弟たちに簡単に伝達しただけだ。
『魏無羨が藍忘機の道侶となり、今生での結丹も果たした。修為を上げるために修練に参加することがあるかもしれないので、その際にはよく教えを乞うように』
既に面識があり教えを受けたことのある師弟たちも多く、降って湧いたような慶事に沸き立ったが、藍啓仁の心配をよそに、ひと月もすると師弟たちは元通り――否、元よりはるかに修練に打ち込むようになった。そのたったひと月で、魏無羨は次期双璧の二人を抜き去り、かつての『六芸に秀でた豊神俊朗』と言われるものが如何なるものか、全員に示して見せたからだ。
5219『魏無羨が藍忘機の道侶となり、今生での結丹も果たした。修為を上げるために修練に参加することがあるかもしれないので、その際にはよく教えを乞うように』
既に面識があり教えを受けたことのある師弟たちも多く、降って湧いたような慶事に沸き立ったが、藍啓仁の心配をよそに、ひと月もすると師弟たちは元通り――否、元よりはるかに修練に打ち込むようになった。そのたったひと月で、魏無羨は次期双璧の二人を抜き去り、かつての『六芸に秀でた豊神俊朗』と言われるものが如何なるものか、全員に示して見せたからだ。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題:「すねる」「○○を隠す」
主要時間:1時間47分
注意事項:まだ知己
忘羨ワンドロワンライ【すねる】【〇〇を隠す】 辺境まで旅して得た成果を持って雲深不知処へと魏無羨がやって来てから、おおよそ一月が過ぎた。魏無羨はというと、未だ雲深不知処に厄介になっている。
魏無羨が雲深不知処に足を向けたのは旅の顛末を知らせるだけでなく、温情が遺した医書を雲深不知処に保管してもらう算段をつけるためでもあった。遅れて医書を携えてきた鬼将軍から書物を受け取り蔵書閣へと納めた時、藍啓仁はかつての焼き討ちの際に失われた多くの書の事を嘆いた。その中には陣法に関する書も多く、特に陣法に優れている藍啓仁は残念でならなかったようだ。すると魏無羨が陣法の書なら蓮花塢に残っているはずと言い出し、今度はその書を蓮花塢から運び入れ、損傷したものは修復するようにと魏無羨に仕事が与えられた。蓮花塢の陣法の書は全て、かつて魏無羨が学んだものだったからだ。隠され、存在を忘れられていた書物の痛みは激しく、魏無羨は日がな一日蔵書閣に入り浸っては、書の修復に励んでいる。まだ当分のあいだ雲深不知処からは出られそうにない。
5190魏無羨が雲深不知処に足を向けたのは旅の顛末を知らせるだけでなく、温情が遺した医書を雲深不知処に保管してもらう算段をつけるためでもあった。遅れて医書を携えてきた鬼将軍から書物を受け取り蔵書閣へと納めた時、藍啓仁はかつての焼き討ちの際に失われた多くの書の事を嘆いた。その中には陣法に関する書も多く、特に陣法に優れている藍啓仁は残念でならなかったようだ。すると魏無羨が陣法の書なら蓮花塢に残っているはずと言い出し、今度はその書を蓮花塢から運び入れ、損傷したものは修復するようにと魏無羨に仕事が与えられた。蓮花塢の陣法の書は全て、かつて魏無羨が学んだものだったからだ。隠され、存在を忘れられていた書物の痛みは激しく、魏無羨は日がな一日蔵書閣に入り浸っては、書の修復に励んでいる。まだ当分のあいだ雲深不知処からは出られそうにない。
はるもん🌸
MOURNING #忘羨ワンドロワンライ騙し合い「藍湛」
「魏嬰‥‥」
藍忘機は小舟の上で魏無羨を抱きこむようにして座っていた。魏無羨は心地よさそうに藍忘機の首元に口をつける。とても良い雰囲気だった。互いの名を呼び合い、視線を交差させる。
「藍湛、俺はお前と出会って数年、ずっとお前の事を友達だと思ってたんだけど、お前はどう思ってた?」
「‥‥わからない」
「わからないだって?お前にもわからない事がこの世にあったんだな」
「兎や、西瓜を見る度君を思い出す事は多々あった」
口ではいつも魏無羨が勝っていた。しかし時折、藍忘機は意図せずして今のように魏無羨を黙らせる。魏無羨はむずがゆそうに口を開けたり閉めたりして、黙る。少し頬が朱に染まっていた。
(ん?あれは‥‥)
2608「魏嬰‥‥」
藍忘機は小舟の上で魏無羨を抱きこむようにして座っていた。魏無羨は心地よさそうに藍忘機の首元に口をつける。とても良い雰囲気だった。互いの名を呼び合い、視線を交差させる。
「藍湛、俺はお前と出会って数年、ずっとお前の事を友達だと思ってたんだけど、お前はどう思ってた?」
「‥‥わからない」
「わからないだって?お前にもわからない事がこの世にあったんだな」
「兎や、西瓜を見る度君を思い出す事は多々あった」
口ではいつも魏無羨が勝っていた。しかし時折、藍忘機は意図せずして今のように魏無羨を黙らせる。魏無羨はむずがゆそうに口を開けたり閉めたりして、黙る。少し頬が朱に染まっていた。
(ん?あれは‥‥)
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題:「溺れる」
主要時間:1時間12分
注意事項:まだ知己
忘羨ワンドロワンライ【溺れる】「なんだなんだ、藍湛、拗ねてるのか?」
魏無羨は静室に上がり込むなり藍忘機の袖を引いた。藍忘機は俯いたまま、小さく首を振る。
辺境からの旅を終え、魏無羨は雲深不知処へと事の顛末を報告に来た。崖の上で笛を吹いていたところに藍忘機が迎えに来た時は、いつもの無表情ながらそれなりに機嫌は良さそうだったのだが、魏無羨が藍啓仁に挨拶し、旅のついでに手ずから作ったという茉莉花の茶を土産として手渡した辺りからしだいに雲行きが怪しくなった。
せっかくだから煎れてみよと藍啓仁に請われ、魏無羨は『これは煮出さないのだ』と言って、火から茶瓶を外すと、そこに茶を加えた。途端に華やかな若葉と花の香が部屋に満ちる。無類の茶好きの藍啓仁は、たまにはこのような雅趣も良かろうと大いに喜び、閉関中の藍曦臣に分けてやろうと茶筒を取り出そうとした。すると、魏無羨は懐から小さな瓢箪を出し、こっちが藍宗主の分だと言って藍啓仁に渡したのだ。傷みやすいため瓢箪には術を施してあると言う。
2548魏無羨は静室に上がり込むなり藍忘機の袖を引いた。藍忘機は俯いたまま、小さく首を振る。
辺境からの旅を終え、魏無羨は雲深不知処へと事の顛末を報告に来た。崖の上で笛を吹いていたところに藍忘機が迎えに来た時は、いつもの無表情ながらそれなりに機嫌は良さそうだったのだが、魏無羨が藍啓仁に挨拶し、旅のついでに手ずから作ったという茉莉花の茶を土産として手渡した辺りからしだいに雲行きが怪しくなった。
せっかくだから煎れてみよと藍啓仁に請われ、魏無羨は『これは煮出さないのだ』と言って、火から茶瓶を外すと、そこに茶を加えた。途端に華やかな若葉と花の香が部屋に満ちる。無類の茶好きの藍啓仁は、たまにはこのような雅趣も良かろうと大いに喜び、閉関中の藍曦臣に分けてやろうと茶筒を取り出そうとした。すると、魏無羨は懐から小さな瓢箪を出し、こっちが藍宗主の分だと言って藍啓仁に渡したのだ。傷みやすいため瓢箪には術を施してあると言う。
NaO40352687
DONE忘羨ワンドロワンライお題:「隠し味」
主要時間:1時間36分
注意事項:道侶設定
忘羨ワンドロワンライ【隠し味】 魏無羨は赤い飯が好きだ。何をどう間違ったのか、考えられない唐辛子の量を最適だと思い込んでおり、大抵の鍋を真っ赤にする。しかし、けして味音痴というわけではない。むしろ酒の肴の味にはうるさい方だ。絶品と言われた江厭離の汁物は、魏無羨の口に合うように配合を変えていった結果であるし、細やかな隠し味までピタリと当てて見せる。だがなぜか自ら杓子を握ると、鍋が真っ赤になるのである。
ゆえに、藍家の弟子たちは魏無羨が杓子を握ろうものなら、それを急いで取り上げ、何か手伝うことはないかと釜戸のそばをウロウロするのを慇懃に断る。夜狩で野宿ともなれば、なんとか周辺の地酒を見繕ってきて手渡し、『あちらに綺麗な花が咲いていましたよ』とか『あの木は枝振りが良いので、座ると月が見えるんじゃないですか』とか、極め付けは『含光君とお二人で少し広いところで食事の準備が整うまでゆったりとお休みください』とか、とにかくなんとか理由をつけて追い払い、その隙に薪に鍋を掛け、真っ当な色の粥を炊くのだ。
3229ゆえに、藍家の弟子たちは魏無羨が杓子を握ろうものなら、それを急いで取り上げ、何か手伝うことはないかと釜戸のそばをウロウロするのを慇懃に断る。夜狩で野宿ともなれば、なんとか周辺の地酒を見繕ってきて手渡し、『あちらに綺麗な花が咲いていましたよ』とか『あの木は枝振りが良いので、座ると月が見えるんじゃないですか』とか、極め付けは『含光君とお二人で少し広いところで食事の準備が整うまでゆったりとお休みください』とか、とにかくなんとか理由をつけて追い払い、その隙に薪に鍋を掛け、真っ当な色の粥を炊くのだ。
Kk_moon2307
DONE忘羨ワンドロワンライとMDZS交流会6のコラボお題「白兔」「黒兔」を拝借いたしました😊毛繕い 雲深不知処には、綿毛のような真っ白なウサギが生息している。
いまは全部で何羽いるのか、途中で数えることを諦めてしまうほど多くいるが、そのはじまりは魏無羨が藍忘機に贈った二羽だということを知っているのはごく僅かだ。
ウサギたちは藍忘機のことがそれはもう大好きで、彼の姿を見るや否やわらわらと集まってくる。
一羽一羽代わる代わる抱き上げ、ゆったりと撫でては白い綿の塊の機嫌をとる藍忘機を、魏無羨は草むらに横たわって眺めていた。
いつまでこの光景を見続けていればいいのか、三羽目ですでに飽きてしまい欠伸をしていた魏無羨の視界に、二羽のウサギの姿が映った。
一羽はほかの個体と同様に白いが、もう一羽は黒い。
雲深不知処に来て随分と経つが、黒いウサギを見たのははじめてのことで、魏無羨はそのウサギに興味を持った。
1002いまは全部で何羽いるのか、途中で数えることを諦めてしまうほど多くいるが、そのはじまりは魏無羨が藍忘機に贈った二羽だということを知っているのはごく僅かだ。
ウサギたちは藍忘機のことがそれはもう大好きで、彼の姿を見るや否やわらわらと集まってくる。
一羽一羽代わる代わる抱き上げ、ゆったりと撫でては白い綿の塊の機嫌をとる藍忘機を、魏無羨は草むらに横たわって眺めていた。
いつまでこの光景を見続けていればいいのか、三羽目ですでに飽きてしまい欠伸をしていた魏無羨の視界に、二羽のウサギの姿が映った。
一羽はほかの個体と同様に白いが、もう一羽は黒い。
雲深不知処に来て随分と経つが、黒いウサギを見たのははじめてのことで、魏無羨はそのウサギに興味を持った。
リンネ
DONE #忘羨ワンドロワンライお題「道案内」
夜気の迫る音 そこは暗く、冷たい場所だった。
耳の奥で金属音が鳴り続けるような無音、或いは本当に、鳴っているのかもしれない。
痛い、と思った。
藍忘機は耳を塞ぎ、その無音の痛みから逃れた。
とにかくここがどこなのか、どういった場所なのかを把握する必要がある。
現実味のないその暗闇から夢だとも思ったが、肉体の感覚は現実だと訴える。
いつここに迷い込み、どれくらいここにいるのか。
何かを、何か大切なものを探していたはずだ。
「魏嬰」
大切なものなど、わかり切っている。藍忘機にとって最も大切だと言えるのは彼ひとりに他ならない。もちろん、彼以外がどうでもいいと言う訳ではないけれど、もし彼か彼以外の全てかを選べと言われたら迷わず彼を選ぶだろう。
1714耳の奥で金属音が鳴り続けるような無音、或いは本当に、鳴っているのかもしれない。
痛い、と思った。
藍忘機は耳を塞ぎ、その無音の痛みから逃れた。
とにかくここがどこなのか、どういった場所なのかを把握する必要がある。
現実味のないその暗闇から夢だとも思ったが、肉体の感覚は現実だと訴える。
いつここに迷い込み、どれくらいここにいるのか。
何かを、何か大切なものを探していたはずだ。
「魏嬰」
大切なものなど、わかり切っている。藍忘機にとって最も大切だと言えるのは彼ひとりに他ならない。もちろん、彼以外がどうでもいいと言う訳ではないけれど、もし彼か彼以外の全てかを選べと言われたら迷わず彼を選ぶだろう。
mikecatlatte
DONE #忘羨ワンドロワンライ3月26日のお題【ラッキースケベ】
ラッキースケベ要素は、少なくなっちゃったかも??です。
まだ知己な謎時空の忘羨ですので、なんとなく状況で察しながら読んでほしいです。
触りっこ程度(まだはいってない)ところでタイムアップしました。
面白かったって思ってくれる人がいたら、本番まで書きたいな~ 2888
ニノ式 啓水
DONE祝你生日快乐 藍湛!まだまだ知己のようです。がんばれ、藍忘機☆ミ
n番煎じな気がしますが、知己はいつもだいたいこんな感じってことで(
★忘羨ワンドロ 1/22「今までの全てのお題」より【雪】
wei16mdzs
DONE毎回遅刻参加ですみません💦色塗り一時間縛り。
肌色多めの為R18→一定期間後、リスト限定に切替予定です。
お題【手を繋ぐ】【金丹】
魏嬰「…ありがとう、藍湛。これでようやくお前と同じ刻を歩いていける…。」
藍湛「魏嬰、私達の間でその言葉は不要。だが、私も同じ気持ちだ。」
魏嬰「なんだよ、今日の夫殿は随分と涙脆いようだな。」
藍湛「-----それは君も同じだ…。」
wei16mdzs
DONEお題【香炉】【雪】15藍忘機×20夷陵老祖でまた香炉も用いた模様。
20魏嬰「藍湛、たまにはこういう場所で交わるのも悪くないだろ。」
15藍湛「…この…恥知らず!」
20魏嬰「それって最高の褒め言葉だって知っているか?」
念のためワンクッション投稿としております。
#忘羨ワンドロワンライ
mikecatlatte
MAIKINGお題:【褒美】#忘羨ワンドロワンライ
ご褒美に縄で緊縛天天したい魏無羨の話。
どっちのご褒美かわからない。お題守れてるか不安。
R15なのでポイピクです。
入れてないけど、苦手な人は見ないで! 7
Kk_moon2307
MAIKING忘羨ワンドロワンライ(@1hour_mdzs)から拝借のお題【AU】で【現代AU】です。苦手な方はご注意下さい。兄姉の呼び方を少し変えてます。
Twitter上では途中の途中でばらけてupしてしまったのでこちらに置いておきますが、完全完成形はpixivに上げる予定です……🙇一時間で完成させるのは難しいなあ……
酒と本音と後悔と【仮】「……合コン」
魏無羨が拝むように頭を下げると藍忘機はその秀麗な眉を顰め、汚らわしくて口にも出したくない単語だと云わんばかりの声色で呟いた。
「藍湛、お前の言いたいことは判ってる。でも今回だけだから頼む!」
再び頭を下げる魏無羨に藍忘機は仕方なくといった素振りで本を閉じる。
今回だけ、と様々なことでもう何度も頼みごとをしているが、藍忘機は最初は素っ気なくしていても結局は話を聞いてくれることを知っている。
そのことに関して、彼らと付き合いの長い友人たちは甘えすぎで甘やかしすぎだと諫めるわけだが。
「君になら頼めるひとは他にいるだろう」
「確かにいるけど、今回はごく一般的な友達にはしんどいメンツで……」
魏無羨が微妙な言い回しで語った参加者はその付き合いの長い友人たちだった。
2748魏無羨が拝むように頭を下げると藍忘機はその秀麗な眉を顰め、汚らわしくて口にも出したくない単語だと云わんばかりの声色で呟いた。
「藍湛、お前の言いたいことは判ってる。でも今回だけだから頼む!」
再び頭を下げる魏無羨に藍忘機は仕方なくといった素振りで本を閉じる。
今回だけ、と様々なことでもう何度も頼みごとをしているが、藍忘機は最初は素っ気なくしていても結局は話を聞いてくれることを知っている。
そのことに関して、彼らと付き合いの長い友人たちは甘えすぎで甘やかしすぎだと諫めるわけだが。
「君になら頼めるひとは他にいるだろう」
「確かにいるけど、今回はごく一般的な友達にはしんどいメンツで……」
魏無羨が微妙な言い回しで語った参加者はその付き合いの長い友人たちだった。
Kk_moon2307
DONE忘羨ワンドロワンライ(@1hour_mdzs)のお題『傘』を拝借いたしました😊R指定で考えた話だったのに辿り着きませんでした💦
雨に濡れる魏嬰を藍湛が迎えに行く話です。
雨に濡れれば「……これは参ったな」
魏無羨は降り頻る雨に、ひとつ息をつき空を見上げた。
雲深不知処を出たときには晴れていたのに。
この時期は雲の動きがはやく、急に天候が変わることもある。
とはいえ、あまり荷物を増やしたくないがために笠を用意してこなかったことは己の過失で、雨を恨んでも仕方ない。
屋台の軒下で雨足の勢いが収まるのを少し待ってはみたものの、当分その気配はない。
「藍湛、帰ってきてないといいんだけど」
頼まれた仕事で朝はやく出た藍忘機は、日が暮れる頃には戻ると言っていて、魏無羨は特に用事もないから留守番をしていると彼に告げていたのだ。
しかしじっとしていることが苦手な魏無羨が、遊び相手もいない雲深不知処で一日時間を潰せるはずもなく、彩衣鎮で目的もなく屋台巡りに繰り出していたわけだ。
2308魏無羨は降り頻る雨に、ひとつ息をつき空を見上げた。
雲深不知処を出たときには晴れていたのに。
この時期は雲の動きがはやく、急に天候が変わることもある。
とはいえ、あまり荷物を増やしたくないがために笠を用意してこなかったことは己の過失で、雨を恨んでも仕方ない。
屋台の軒下で雨足の勢いが収まるのを少し待ってはみたものの、当分その気配はない。
「藍湛、帰ってきてないといいんだけど」
頼まれた仕事で朝はやく出た藍忘機は、日が暮れる頃には戻ると言っていて、魏無羨は特に用事もないから留守番をしていると彼に告げていたのだ。
しかしじっとしていることが苦手な魏無羨が、遊び相手もいない雲深不知処で一日時間を潰せるはずもなく、彩衣鎮で目的もなく屋台巡りに繰り出していたわけだ。
ニノ式 啓水
DONE10/2 お題「甘える」 陳情令ベースです。道侶になってるかなってないかは、ご想像におまかせします(■執筆1時間、推敲+校正15分
※加筆修正分を支部にあげています。https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16208861 6
wei16mdzs
DONE⚠️肌色多めです。お題→【目隠し】【汗】
#忘羨ワンドロワンライ
百鳳山if。
「…このまま君を私の元に隠す。」
※少し早いですがリスト限定に変更します。ありがとうございました😊
※目隠しなしverも追加しました。(9/5) 2