ラッコ
SPOILERTRPG「レコードユアレポート」
(ムーキセキ 著)
TRPGの探索者ならどなたでも遊べるシナリオです
記された名前
・稲荷田狐
レコードユアレポート■タイプライターからの挨拶
|ではあらためて。ワタシは記録とお喋りが好きなしがないタイプライターだが、しばしよろしくお願いするよ。|
|あなたのことを記録させて欲しい。|
狐「僕も似たようなモノだけどね。よろしくお願いしちゃおうかな」
■あなたの『名前』
|最初の質問だ。|
|まずはあなたの『名前』を教えてもらえるだろうか?|
狐「稲荷田狐。変わった名前でしょう?同じ名前の方にお会いした事はまだ無いね」
■あなたの『世界』について
|ここには様々な世界からやってくるようでね。これを記録しておかないと。|
|あなたの言葉で『あなたの住む世界』がどんな場所なのか説明してくれるかい?|
狐「ごく普通の生活の中に、非日常が舞い込んでくる世界だね。魔法であったり、怪物であったりと、一般常識では理解されないようなモノに遭遇するよ。…そうだなぁ、僕が一番最初に事件に巻き込まれた時は、自殺した方を運ぶ電車に詰め込まれたっけ。そういえばあの時の言葉って、僕にとって重要な約束に繋がるものになってるね…」
4364|ではあらためて。ワタシは記録とお喋りが好きなしがないタイプライターだが、しばしよろしくお願いするよ。|
|あなたのことを記録させて欲しい。|
狐「僕も似たようなモノだけどね。よろしくお願いしちゃおうかな」
■あなたの『名前』
|最初の質問だ。|
|まずはあなたの『名前』を教えてもらえるだろうか?|
狐「稲荷田狐。変わった名前でしょう?同じ名前の方にお会いした事はまだ無いね」
■あなたの『世界』について
|ここには様々な世界からやってくるようでね。これを記録しておかないと。|
|あなたの言葉で『あなたの住む世界』がどんな場所なのか説明してくれるかい?|
狐「ごく普通の生活の中に、非日常が舞い込んでくる世界だね。魔法であったり、怪物であったりと、一般常識では理解されないようなモノに遭遇するよ。…そうだなぁ、僕が一番最初に事件に巻き込まれた時は、自殺した方を運ぶ電車に詰め込まれたっけ。そういえばあの時の言葉って、僕にとって重要な約束に繋がるものになってるね…」
ラッコ
SPOILERクトゥルフ神話TRPG「ピーター・グライムズの画廊」
(さび茶 著)
ネタバレ注意!
観覧者
・稲荷田狐
・喜島陽斗
ピーター・グライムズの画廊 狐と陽斗がアトリエから出てきても、目の前の男は顔を上げる事なくキャンバスに集中していた。陽斗が狐の耳元で怪訝そうに囁く。
「何や、あのおっさん。俺達が勝手にアトリエに出入りしても何も言わんなぁ」
「うん。普通だったら勝手に入るなって、怒ると思うんだけど…」
二人が首を傾げながら黙ってしまうと、静寂に守られた画廊の中で、男の筆を走らせる音だけが存在を主張するように響いた。
床に敷き詰められた赤い絨毯。それに映える白い壁。壁に掛けられた無数の絵画はどれも写実的に描かれてはいるものの、音を発する事も無ければ動き出す事も無い。ただ、時を止めた姿のまま額縁へと収まっている。生きたまま閉じ込められたような生々しさが、この画廊に一層の不気味さを添えていた。
1379「何や、あのおっさん。俺達が勝手にアトリエに出入りしても何も言わんなぁ」
「うん。普通だったら勝手に入るなって、怒ると思うんだけど…」
二人が首を傾げながら黙ってしまうと、静寂に守られた画廊の中で、男の筆を走らせる音だけが存在を主張するように響いた。
床に敷き詰められた赤い絨毯。それに映える白い壁。壁に掛けられた無数の絵画はどれも写実的に描かれてはいるものの、音を発する事も無ければ動き出す事も無い。ただ、時を止めた姿のまま額縁へと収まっている。生きたまま閉じ込められたような生々しさが、この画廊に一層の不気味さを添えていた。
ラッコ
SPOILERクトゥルフ神話TRPG「君におはようと言えたら」
(著 セカイ)
ネタバレ注意!
なんちゃってRPをまとめたものです
おはようと言いたい二人
・稲荷田狐
・早乙女智雪
「君におはようと言えたら」 パシンと紙束の表面を軽く叩き、早乙女は事も無げに言った。
「よし、俺がスイッチを押すから、あんたは本物の俺を連れて遠くへ逃げるんだ」
その言葉に狐の心臓は冷たく握り潰された。次いですうっと血の気が引くのがわかる。視界が一瞬白くなり、目眩がした。
しばらくの間沈黙が流れる。僅かに聞こえる機械の稼働音と、ゴボゴボと培養液が循環する音だけが研究所の最奥に響く。
狐はようやく上顎に貼り付いた舌を引き剥がし、引きつった笑いのようなものを浮かべた。
「ヤダ」
早乙女は返事もせずにノートパソコンや散らばった紙束に目を通していた。聞こえていないのかと、狐はもう一度、今度は少し強い調子で言った。
「ヤダ」
早乙女が狐に顔を向ける。端正で彫りの深い顔は、狐が威圧されるほど真剣味を帯びていた。刑事の眼差し。そこには一寸の隙も無い。
3797「よし、俺がスイッチを押すから、あんたは本物の俺を連れて遠くへ逃げるんだ」
その言葉に狐の心臓は冷たく握り潰された。次いですうっと血の気が引くのがわかる。視界が一瞬白くなり、目眩がした。
しばらくの間沈黙が流れる。僅かに聞こえる機械の稼働音と、ゴボゴボと培養液が循環する音だけが研究所の最奥に響く。
狐はようやく上顎に貼り付いた舌を引き剥がし、引きつった笑いのようなものを浮かべた。
「ヤダ」
早乙女は返事もせずにノートパソコンや散らばった紙束に目を通していた。聞こえていないのかと、狐はもう一度、今度は少し強い調子で言った。
「ヤダ」
早乙女が狐に顔を向ける。端正で彫りの深い顔は、狐が威圧されるほど真剣味を帯びていた。刑事の眼差し。そこには一寸の隙も無い。
ラッコ
SPOILERクトゥルフ神話TRPG「かんおけのなかにいる」
(くまさん 著)
ネタバレ注意!
おまけつき!
葬列者
・稲荷田狐
・早乙女智雪
かんおけのなかにいる 早乙女に手を引かれ、狐は墓地の最奥にある薔薇の生垣の前に立った。無数の触手をゆらめかせる、黒い不定形の生き物を目の当たりにしたせいか、頭がジリジリと重い。それは早乙女も同じらしく、ランタンの炎に照らされた端正な顔はいつのも快活さを欠いている。それでも早乙女は警察としての義務感からか、生まれ持っての正義感からなのか、必死に生垣をランタンで照らし、二人が生き残る術を探していた。
「駄目だな、無傷で通り抜けられそうにない」
ため息混じりに早乙女が言う。革手袋を外し、薔薇の鋭い棘に指先で触れると白い指先にぽつんと赤い血の珠が浮かんだ。途端に僅かなうめき声を上げ、早乙女が頭を抑えた。
「早乙女さん!」
ようやく我に返った狐が早乙女に駆け寄る。大丈夫だとでも言うかのように、早乙女は右手を軽く上げた。
2588「駄目だな、無傷で通り抜けられそうにない」
ため息混じりに早乙女が言う。革手袋を外し、薔薇の鋭い棘に指先で触れると白い指先にぽつんと赤い血の珠が浮かんだ。途端に僅かなうめき声を上げ、早乙女が頭を抑えた。
「早乙女さん!」
ようやく我に返った狐が早乙女に駆け寄る。大丈夫だとでも言うかのように、早乙女は右手を軽く上げた。
ラッコ
SPOILERクトゥルフ神話TRPG「図書館兎と霧の国」
(著 はるあき)
旅行者
・葛ノ葉烏
・早乙女智雪
図書館兎と霧の国 本から立ち昇る霧の中、アリスは少女らしかぬ傲慢な顔で烏と早乙女を嗤った。
「神様以外のことはどうでもいいの。家族だってどうなってもいい。邪魔だったから、ロリーナにも蛇を産む器になってもらった。イーディスは、幼すぎて駄目だったみたいだけど」
少女の唇から紡がれる冷酷な言葉に嫌悪感が膨らむ。早乙女の予想が正しければ、ロンドンを這い回っていた蛇は蛇病に罹っていた女性が産み落としたものだ。中にはロリーナが産んだ蛇もいるかもしれない。
「もうやめなさい、アリス」
烏が宥めるように声を出す。命令されたとでも思ったのかアリスは怒りで目を見開き、女王の威厳を持って立ち上がった。
「黙りなさい!この本には全部書いてあるの。過去のことも、未来のことも。ロンドンを霧でいっぱいにして神様を呼べば、私は全ての未来を知ることができるのよ」
1882「神様以外のことはどうでもいいの。家族だってどうなってもいい。邪魔だったから、ロリーナにも蛇を産む器になってもらった。イーディスは、幼すぎて駄目だったみたいだけど」
少女の唇から紡がれる冷酷な言葉に嫌悪感が膨らむ。早乙女の予想が正しければ、ロンドンを這い回っていた蛇は蛇病に罹っていた女性が産み落としたものだ。中にはロリーナが産んだ蛇もいるかもしれない。
「もうやめなさい、アリス」
烏が宥めるように声を出す。命令されたとでも思ったのかアリスは怒りで目を見開き、女王の威厳を持って立ち上がった。
「黙りなさい!この本には全部書いてあるの。過去のことも、未来のことも。ロンドンを霧でいっぱいにして神様を呼べば、私は全ての未来を知ることができるのよ」
ラッコ
DONETRPG小説「降る、落ちる、枯れる」
if死刑囚、藤堂椿
霧夢さんとの初めての合作!!
・稲荷田狐
・早乙女智雪
「降る、落ちる、枯れる」 最高裁判所は藤堂椿に死刑判決を下した。身を切る様な冷たい冬の日だった。
喫煙室で稲荷田狐は何本目かのメビウスに火をつけた。火をつけたはいいが煙を吸い込む事はせず、ただ無駄に紫煙が立ち上る様を虚ろな目で見ていた。
ここ数日で煙草を吸う量が目に見えて増えていた。喫煙が目的というよりも、手元に何かが欲しかった。それがたまたま禁煙に失敗した煙草だっただけの話で、立ち上り、どこからか入り込んでくる冬の風に揺れ、形を変える煙を目で追わないといけないような気さえしている。口に咥える事もなく、呆然と灰皿に何本もの灰を落としていた。
ギィっと喫煙室のドアが開く。冷たくて新鮮な空気が肌を刺した。
「稲荷田さんも休憩か?」
7869喫煙室で稲荷田狐は何本目かのメビウスに火をつけた。火をつけたはいいが煙を吸い込む事はせず、ただ無駄に紫煙が立ち上る様を虚ろな目で見ていた。
ここ数日で煙草を吸う量が目に見えて増えていた。喫煙が目的というよりも、手元に何かが欲しかった。それがたまたま禁煙に失敗した煙草だっただけの話で、立ち上り、どこからか入り込んでくる冬の風に揺れ、形を変える煙を目で追わないといけないような気さえしている。口に咥える事もなく、呆然と灰皿に何本もの灰を落としていた。
ギィっと喫煙室のドアが開く。冷たくて新鮮な空気が肌を刺した。
「稲荷田さんも休憩か?」
ラッコ
SPOILERクトゥルフ神話TRPG「bad blood buddy」
(著 なまこ屋さん。)
ネタバレ注意!
エンディング(ロマンチックプラス)
バディ
・夜鷹
・早乙女智雪
「bad blood buddy」In Paris, our lives are one masked ball
(パリでの人生は仮面舞踏会 オペラ座の怪人より引用)
ガチャンと重い音がして手錠が甲板に落ちた。ようやく解放された右手首に触れながら、夜鷹は周囲を見回した。
甲板に降りてくる機動隊。欄干をよじ登って突入してくる警察官。スポットライトのように浴びせかけられる光。夜空に響くヘリの音。
…制圧されんのも時間の問題だな。
どうやって逃げるか思案していると、何機もの警察のヘリに混ざって情報屋のカラスのヘリがあった。操縦席からカラスがニコニコと手を振っているのが見える。夜鷹はニィっと笑った。
「今日はこれでお別れだね、早乙女さん」
今の今まで共に手錠に繋がれていた早乙女を見る。
1838(パリでの人生は仮面舞踏会 オペラ座の怪人より引用)
ガチャンと重い音がして手錠が甲板に落ちた。ようやく解放された右手首に触れながら、夜鷹は周囲を見回した。
甲板に降りてくる機動隊。欄干をよじ登って突入してくる警察官。スポットライトのように浴びせかけられる光。夜空に響くヘリの音。
…制圧されんのも時間の問題だな。
どうやって逃げるか思案していると、何機もの警察のヘリに混ざって情報屋のカラスのヘリがあった。操縦席からカラスがニコニコと手を振っているのが見える。夜鷹はニィっと笑った。
「今日はこれでお別れだね、早乙女さん」
今の今まで共に手錠に繋がれていた早乙女を見る。
ラッコ
PASTクトゥルフ神話TRPG「シグナルレッド・デッド」
(著 八重樫アキノ)
〜前哨戦〜
注意!捏造です
バディ
・稲荷田狐
・夜鷹
・早乙女智雪
「シグナルレッド・デッド〜前哨戦〜」 早乙女智雪がカラオケルームの扉を開けると、先に入っていた銀髪の男が顔をあげた。色白の細面。神経質で冷たい印象の男だが、早乙女の姿を認めると、銀縁眼鏡の奥にある目が親しみの色を帯びて微笑んだ。
「こんにちは、お待ちしてました」
「あぁ。悪い、遅れたか?」
「大丈夫、時間通りです」
早乙女が向かいの席に座ると、男はテーブルに広げていた書類を纏め、早乙女の方に正面を向けて揃えた。
目の前の男の名前は稲荷田狐といった。何処となく厭世的な気配を漂わせる探偵で、ひょんな事から共に怪異を生き延び、それ以来妙な気に入られ方をされてしまっている。
早乙女は独自に失踪事件を調べていた。とある地域で人が落とし穴に落ちたかのように行方不明になる。その中には早乙女の知人の名前も幾つかあった。
4502「こんにちは、お待ちしてました」
「あぁ。悪い、遅れたか?」
「大丈夫、時間通りです」
早乙女が向かいの席に座ると、男はテーブルに広げていた書類を纏め、早乙女の方に正面を向けて揃えた。
目の前の男の名前は稲荷田狐といった。何処となく厭世的な気配を漂わせる探偵で、ひょんな事から共に怪異を生き延び、それ以来妙な気に入られ方をされてしまっている。
早乙女は独自に失踪事件を調べていた。とある地域で人が落とし穴に落ちたかのように行方不明になる。その中には早乙女の知人の名前も幾つかあった。
ラッコ
DOODLEクトゥルフ神話TRPG「じゃれ本・狐の不祥事」
エンディング
じゃれ本・狐の不祥事 で、結局、僕って前科ついたの?
狐は事務所の喫煙所でメビウスをふかしながら考えていた。
成行きで熊を退治して、成行きで何か凄い伝説のマタギに処理を任せて、運良く逃げ出したがやはり気になった。さすがにoso18を退治したとなればニュースになるかと思ったが、世間は一向に騒がしくならない。どうやら、あのマタギが上手くやってくれたらしい。
さすが伝説のマタギ。…実はよく知らないけど。
そういえば事の発端となった男も消えていた。あっちは正当防衛だと言い張れば何とかなりそうな気がしていたので、微塵も気にしていなかった。
「稲荷田さん、煙草吸う時は窓開けてください」
「すいません」
同僚からの指摘で窓を開ける。相変わらず通行人の多い大通りを見下ろしていた狐は、見覚えのある女性を見つけ身を乗り出した。
1235狐は事務所の喫煙所でメビウスをふかしながら考えていた。
成行きで熊を退治して、成行きで何か凄い伝説のマタギに処理を任せて、運良く逃げ出したがやはり気になった。さすがにoso18を退治したとなればニュースになるかと思ったが、世間は一向に騒がしくならない。どうやら、あのマタギが上手くやってくれたらしい。
さすが伝説のマタギ。…実はよく知らないけど。
そういえば事の発端となった男も消えていた。あっちは正当防衛だと言い張れば何とかなりそうな気がしていたので、微塵も気にしていなかった。
「稲荷田さん、煙草吸う時は窓開けてください」
「すいません」
同僚からの指摘で窓を開ける。相変わらず通行人の多い大通りを見下ろしていた狐は、見覚えのある女性を見つけ身を乗り出した。
ラッコ
DOODLEクトゥルフ神話TRPG「星空エトランゼ」
エンディング
星空旅行者
・稲荷田狐
・中場米暁
星空エトランゼ はっと狐が目を覚ます。
先程まで自分達を押しつぶさんばかりに広がっていた異様な宇宙は今は無い。代わりに星座図鑑で見るような星空がプラネタリウムのドームに映し出されている。意識を失う直前まで座っていた座席に、無事に戻ってこられたようだ。
ほっとしたのと同時に、狐は座り心地の良い座席にずるずると沈んだ。
あぁ、またこういう系かぁ…。戻れて良かったぁ…。
安堵と疲労の色が浮かぶ顔を両手覆う。カチカチっと眼鏡のフレームに硬いものが当たる音がした。何だっけと両手を顔から離すと、紺色のリストバンドの星型のチャームが目に留まる。二つ並んだ石を見てふっと思い出した。
そういえは、暁さんは?
狐が視線を巡らせると、そう離れていない場所に雨雲色をした頭を見つけた。小さな体が座席に深く沈みすぎている。まるでようやくチャイルドシートに座れるようになった子どものようで、狐は思わず笑ってしまう。
1109先程まで自分達を押しつぶさんばかりに広がっていた異様な宇宙は今は無い。代わりに星座図鑑で見るような星空がプラネタリウムのドームに映し出されている。意識を失う直前まで座っていた座席に、無事に戻ってこられたようだ。
ほっとしたのと同時に、狐は座り心地の良い座席にずるずると沈んだ。
あぁ、またこういう系かぁ…。戻れて良かったぁ…。
安堵と疲労の色が浮かぶ顔を両手覆う。カチカチっと眼鏡のフレームに硬いものが当たる音がした。何だっけと両手を顔から離すと、紺色のリストバンドの星型のチャームが目に留まる。二つ並んだ石を見てふっと思い出した。
そういえは、暁さんは?
狐が視線を巡らせると、そう離れていない場所に雨雲色をした頭を見つけた。小さな体が座席に深く沈みすぎている。まるでようやくチャイルドシートに座れるようになった子どものようで、狐は思わず笑ってしまう。
ラッコ
SPOILERクトゥルフ神話TRPG「シグナルレッド・デッド」
(著 八重樫アキノ)
ネタバレ注意!
バディ
・夜鷹
・早乙女智雪
シグナルレッド・デッド 早乙女のレディスミスが銃声を上げる。
薄暗く血生臭い廃ビルのロビーに、ほのかに硝煙が香った。
ぶよぶよとした白いヒキガエルのような外見をした醜悪な化け物、ムーンビーストはその巨体に似つかわしくない俊敏な動きで大きく仰け反り、銃弾を避けた。そして軟体動物のようにぐにゃりと上半身を起き上がらせると、ぐるんと首を回し夜鷹と早乙女の方を見る。短い肉色の触手が蠢く顔をにんまりと笑わせた。
次の瞬間、ムーンビーストは右手にある大人の背丈ほどある赤い槍を投げつけてきた。夜鷹が目で軌道を追う。投げられた槍の切っ先は早乙女に向かっていた。早乙女はまだ回避行動を取れる体勢にない。
心臓を冷たい手に掴まれる。
夜鷹は躊躇うことなく、黒いブーツの底で床を蹴った。名前を呼びたかったが、その酸素すら無駄にしたくない。早乙女の胸に飛び込むようにしてその体を押す。硝煙の香りが残る体に覆いかぶさるようにして、二人で瓦礫の陰へと倒れ込んだ。
1656薄暗く血生臭い廃ビルのロビーに、ほのかに硝煙が香った。
ぶよぶよとした白いヒキガエルのような外見をした醜悪な化け物、ムーンビーストはその巨体に似つかわしくない俊敏な動きで大きく仰け反り、銃弾を避けた。そして軟体動物のようにぐにゃりと上半身を起き上がらせると、ぐるんと首を回し夜鷹と早乙女の方を見る。短い肉色の触手が蠢く顔をにんまりと笑わせた。
次の瞬間、ムーンビーストは右手にある大人の背丈ほどある赤い槍を投げつけてきた。夜鷹が目で軌道を追う。投げられた槍の切っ先は早乙女に向かっていた。早乙女はまだ回避行動を取れる体勢にない。
心臓を冷たい手に掴まれる。
夜鷹は躊躇うことなく、黒いブーツの底で床を蹴った。名前を呼びたかったが、その酸素すら無駄にしたくない。早乙女の胸に飛び込むようにしてその体を押す。硝煙の香りが残る体に覆いかぶさるようにして、二人で瓦礫の陰へと倒れ込んだ。
ラッコ
SPOILERクトゥルフ神話TRPG「村ホラーRTA」
ネタバレ注意!
来訪者
・稲荷田狐
・早乙女智雪
村ホラーRTA 公民館に入ると、そこは外と変わらぬ闇に包まれた空間だった。むしろ今まで唯一頼みの綱だった月明かりが遮られ、そのまま落下してしまうのではないかと思わせる程の漆黒があった。
一歩足を踏み入れると、ギィイと木製の床が軋んだ。埃臭さが鼻につく。確か佐代子の話ではここに各家の当主が集まっているとのことだった。しかし、狐と早乙女が足を踏み入れた建物は歩を進める度に埃が舞い上がる。使用されているどころか、むしろ放置されているかのようだった。
「公民館、ここですよね?」
「あぁ、人が使うにしては何の手入れもされていないがな」
早乙女が険しい視線で床を観察している。狐も同じ意見だった。掃除がされていない。しかも積もった埃の中に足跡一つ残されていない。つまり、人が立ち入った形跡がないのだ。
1687一歩足を踏み入れると、ギィイと木製の床が軋んだ。埃臭さが鼻につく。確か佐代子の話ではここに各家の当主が集まっているとのことだった。しかし、狐と早乙女が足を踏み入れた建物は歩を進める度に埃が舞い上がる。使用されているどころか、むしろ放置されているかのようだった。
「公民館、ここですよね?」
「あぁ、人が使うにしては何の手入れもされていないがな」
早乙女が険しい視線で床を観察している。狐も同じ意見だった。掃除がされていない。しかも積もった埃の中に足跡一つ残されていない。つまり、人が立ち入った形跡がないのだ。
ラッコ
DOODLEクトゥルフ神話TRPG「探偵は七夕に走る」
(こんなシナリオは無いですw)
お願いごとがある人
・稲荷田狐
・白石白波
探偵は七夕に走る 来ると思っていた。そんな気はしていた。
「稲荷田さん、指名依頼です。依頼人の方が応接室でお待ちになっています」
同僚からの連絡で探偵事務所の応接室に向かった狐は、依頼人の顔を見てすぐさま気が抜けていくのがわかった。
「やぁ、狐先生。依頼だよ」
応接室のソファに座っていたのは、この暑いのにスーツ姿の白波だった。相変わらず飄々とした笑みを浮かべ、狐に向かって気さくに手を振っている。
狐は扉を閉め、タブレット端末を机に置き、白波の向かいのソファの横に立つ。白波にわかるように小さく溜め息をついた。
「…一応挨拶はする決まりだから。今回、白石様を担当いたします、調査員の稲荷田狐です」
「知ってるとも、先生。缶蹴りは勝ち知らずの名探偵さんだ。そう畏まるとしっかりして見えるね」
1188「稲荷田さん、指名依頼です。依頼人の方が応接室でお待ちになっています」
同僚からの連絡で探偵事務所の応接室に向かった狐は、依頼人の顔を見てすぐさま気が抜けていくのがわかった。
「やぁ、狐先生。依頼だよ」
応接室のソファに座っていたのは、この暑いのにスーツ姿の白波だった。相変わらず飄々とした笑みを浮かべ、狐に向かって気さくに手を振っている。
狐は扉を閉め、タブレット端末を机に置き、白波の向かいのソファの横に立つ。白波にわかるように小さく溜め息をついた。
「…一応挨拶はする決まりだから。今回、白石様を担当いたします、調査員の稲荷田狐です」
「知ってるとも、先生。缶蹴りは勝ち知らずの名探偵さんだ。そう畏まるとしっかりして見えるね」
ラッコ
SPOILERクトゥルフ神話TRPG「ワンルーム殺人事件」
一応ネタバレ注意!
入居者
・稲荷田狐
・白石白波
ワンルーム殺人事件 狐の口から鮮血が漏れた。
ゴブ、ゴブッと咳と一緒に吐き出された血が真新しいフローリングに飛び散る。赤い斑点を狐はまじまじと観察する。想像していたよりもずっと鮮やかな赤い色をしていた。
これ、僕が吐いた?
確認を取るかのように白波を見る。その手にナイフが握られていた。刀身にはぬるりとした粘りのある血液が光っている。
それで僕を刺したの?
目で訴えかけるが、白波はいつも通りほのかに笑みを湛えた不思議な表情をしていた。その顔を見て、狐も思わず血を吐きながら笑った。
「ひどい、僕の事刺したんだ」
狐の言葉に白波は何も答えない。緑色の目がじっと狐を見ているだけだった。
初めて会った時も白波は狐を見ているだけだった。ジャングルジムに腰を下ろし、星空を眺める姿は今でも思い出せる。流れる銀髪を見た時の驚きと恐怖だって、鮮明に記憶の中にあった。
1143ゴブ、ゴブッと咳と一緒に吐き出された血が真新しいフローリングに飛び散る。赤い斑点を狐はまじまじと観察する。想像していたよりもずっと鮮やかな赤い色をしていた。
これ、僕が吐いた?
確認を取るかのように白波を見る。その手にナイフが握られていた。刀身にはぬるりとした粘りのある血液が光っている。
それで僕を刺したの?
目で訴えかけるが、白波はいつも通りほのかに笑みを湛えた不思議な表情をしていた。その顔を見て、狐も思わず血を吐きながら笑った。
「ひどい、僕の事刺したんだ」
狐の言葉に白波は何も答えない。緑色の目がじっと狐を見ているだけだった。
初めて会った時も白波は狐を見ているだけだった。ジャングルジムに腰を下ろし、星空を眺める姿は今でも思い出せる。流れる銀髪を見た時の驚きと恐怖だって、鮮明に記憶の中にあった。
ラッコ
SPOILERクトゥルフ神話TRPG「植物園の怪物達」
・池周辺部分(ネタバレ注意!)
来園者
・稲荷田狐
・ノア・カートライト
植物園の怪物達 血の池に菖蒲、蓮、睡蓮が浮いている。
異界と化した植物園で出会ったカートライトとアルヒルトと共に、狐は赤い水の上に浮かぶ真っ青な水鳥を見ていた。一切の音が消えた異空間で水鳥の目線だけが唯一、自分達以外の生きた存在のように思えた。
フンッとカートライトが鼻で笑う。
「…睡蓮の花言葉は「滅亡」だ…」
どこか自嘲気味に、カートライトが掠れた声で呟いた。聞き耳を立てる程ではないが、カートライトの声はマスクをしているせいか掠れて聞こえにくい。それに加えてこちらに喋りかけるというより、独り言に近い喋り方をするため聞き漏らしてしまいそうになる。
「じゃあ、睡蓮の下に鍵があるんだ」
流暢な日本語を喋るカートライトだったが、狐はなるべく子どもに話しかけるような易しい言葉で喋った。親切心もあったがカートライトの突き放すような性格が面白く、ちょっとからかってやりたいという悪戯心も確かにあった。
1845異界と化した植物園で出会ったカートライトとアルヒルトと共に、狐は赤い水の上に浮かぶ真っ青な水鳥を見ていた。一切の音が消えた異空間で水鳥の目線だけが唯一、自分達以外の生きた存在のように思えた。
フンッとカートライトが鼻で笑う。
「…睡蓮の花言葉は「滅亡」だ…」
どこか自嘲気味に、カートライトが掠れた声で呟いた。聞き耳を立てる程ではないが、カートライトの声はマスクをしているせいか掠れて聞こえにくい。それに加えてこちらに喋りかけるというより、独り言に近い喋り方をするため聞き漏らしてしまいそうになる。
「じゃあ、睡蓮の下に鍵があるんだ」
流暢な日本語を喋るカートライトだったが、狐はなるべく子どもに話しかけるような易しい言葉で喋った。親切心もあったがカートライトの突き放すような性格が面白く、ちょっとからかってやりたいという悪戯心も確かにあった。
ラッコ
TRAININGクトゥルフ神話TRPG「閉じた家」
導入部分
調査員
・稲荷田狐
・藤堂和真
閉じた家 はいはい、僕しかいませんよー。
葛ノ葉探偵事務所の固定電話が鳴る。事務所で一人待機していた狐は、心の中で軽口を叩きながらデスクの電話を取った。
「お電話ありがとうございます。葛ノ葉探偵事務所、稲荷田です」
大学時代から手伝いをしてきた賜物か、舌の上に乗った言葉が滑らかに出る。
「あの…」
電話の主は小さな女の子だった。探偵業に就いて初めて知ったのだが、未成年からの依頼は珍しいものではない。多くの場合はイジメの証拠集め、友人の人間関係の調査だ。その場合は保護者を依頼人に変更してもらい、引き受ける場合がほとんどだった。
恥ずかしそうな、躊躇うような第一声は緊張のせいだろう。探偵事務所に電話をかけてくる人間は、多くの場合不安で緊張している。この女の子も例に漏れずそうだろうと狐は思った。
1735葛ノ葉探偵事務所の固定電話が鳴る。事務所で一人待機していた狐は、心の中で軽口を叩きながらデスクの電話を取った。
「お電話ありがとうございます。葛ノ葉探偵事務所、稲荷田です」
大学時代から手伝いをしてきた賜物か、舌の上に乗った言葉が滑らかに出る。
「あの…」
電話の主は小さな女の子だった。探偵業に就いて初めて知ったのだが、未成年からの依頼は珍しいものではない。多くの場合はイジメの証拠集め、友人の人間関係の調査だ。その場合は保護者を依頼人に変更してもらい、引き受ける場合がほとんどだった。
恥ずかしそうな、躊躇うような第一声は緊張のせいだろう。探偵事務所に電話をかけてくる人間は、多くの場合不安で緊張している。この女の子も例に漏れずそうだろうと狐は思った。
ラッコ
TRAININGクトゥルフ神話TRPG「壁から海老フライが生えているんだが」
導入部分
海老フライをご注文のお客様
・稲荷田狐
・霞ヶ丘煌平
壁から海老フライが生えているんだが この人はついに呪われたのだ。
依頼人である霞ヶ丘煌平の話を聞いて狐はそう思った。
2メートルはある巨体を丸めて話す様子は小人の国を訪れたガリバーのように見える。確か年齢は自分と同じ35歳のはずだ。大の大人から相談されるには、今聞いた話はあまりにも馬鹿げている。
「煌平さん、酔ってませんか?」
公園のベンチに並んで座っていた狐は、コーヒーの缶で煌平を指した。
そもそも煌平との出会いは行きずりのバーだった。そこで狐は早々に酔い潰れ、散々に嘔吐しながら煌平に絡んでいた記憶がある。後で店と煌平に弁償と謝罪をしようと店のある場所を探したが、誰に聞いても「そんな店は知らない」との事だった。
あの夜の馬鹿騒ぎが夢の中の出来事だったのだろうかと自分を疑ったが、煌平の名刺だけはしっかりと財布に残っていた。名刺を頼りにその住所を訪れると霞ヶ丘煌平はしっかりと存在し、古美術商を営んでいた。
1104依頼人である霞ヶ丘煌平の話を聞いて狐はそう思った。
2メートルはある巨体を丸めて話す様子は小人の国を訪れたガリバーのように見える。確か年齢は自分と同じ35歳のはずだ。大の大人から相談されるには、今聞いた話はあまりにも馬鹿げている。
「煌平さん、酔ってませんか?」
公園のベンチに並んで座っていた狐は、コーヒーの缶で煌平を指した。
そもそも煌平との出会いは行きずりのバーだった。そこで狐は早々に酔い潰れ、散々に嘔吐しながら煌平に絡んでいた記憶がある。後で店と煌平に弁償と謝罪をしようと店のある場所を探したが、誰に聞いても「そんな店は知らない」との事だった。
あの夜の馬鹿騒ぎが夢の中の出来事だったのだろうかと自分を疑ったが、煌平の名刺だけはしっかりと財布に残っていた。名刺を頼りにその住所を訪れると霞ヶ丘煌平はしっかりと存在し、古美術商を営んでいた。
ラッコ
TRAININGクトゥルフ神話TRPG「死にたがり電車」
(著 ごんずい)
導入のみ
乗客
・稲荷田狐
・嫻夜那
死にたがり電車 狐は駅のプラットホームで電車を待っていた。
素行調査の帰りが夕方の帰宅ラッシュの時間と重なってしまい、駅にはサラリーマンから学生までたくさんの人で混雑している。狐はこの景色が嫌いではなかった。たくさんの人間が存在しながらも、それぞれにスマホの世界に入り浸っていたり、イヤホンで音楽の世界に入り込んでしまっている。
足音だけが言葉のように響く。俯いて歩く人の姿はなぜか狐の心を慰めた。
すっと狐の視界に赤がよぎる。赤い髪色のロングヘアの女性だった。しかし髪色より人目を引くのはその容姿の美しさだろう。整った顔立ちと、意思の強さを感じさせる真一文字に結ばれた唇。この辺では滅多に見ないタイプの美人だった。しなやかな肢体は猫のように油断なく艶めかしいが、同時にこの駅には似つかわしいものではなかった。何よりそこだけ張り詰めたような迫力がある。
1877素行調査の帰りが夕方の帰宅ラッシュの時間と重なってしまい、駅にはサラリーマンから学生までたくさんの人で混雑している。狐はこの景色が嫌いではなかった。たくさんの人間が存在しながらも、それぞれにスマホの世界に入り浸っていたり、イヤホンで音楽の世界に入り込んでしまっている。
足音だけが言葉のように響く。俯いて歩く人の姿はなぜか狐の心を慰めた。
すっと狐の視界に赤がよぎる。赤い髪色のロングヘアの女性だった。しかし髪色より人目を引くのはその容姿の美しさだろう。整った顔立ちと、意思の強さを感じさせる真一文字に結ばれた唇。この辺では滅多に見ないタイプの美人だった。しなやかな肢体は猫のように油断なく艶めかしいが、同時にこの駅には似つかわしいものではなかった。何よりそこだけ張り詰めたような迫力がある。