二の足を何百年踏む気なのか、あの男小平太と平が交際を始めたらしい。
昔の記憶が無くてもくっつくところはくっつくんだなぁ、と手を繋いで帰っていく二人を教室の窓から眺める。
二人とも笑っている。今世でも同じ笑顔が見られるとは、こんな嬉しいことはない。
「お前はいいのか?」
「私じゃあ気持ち悪がられて終わりだろうよ」
留は仙蔵の嫌いな顔で笑う。文次郎に昔の記憶は無い。文次郎だけでなく、伊作や長次にも無ければ後輩達にも記憶持ちはいなかった。
仙蔵と留三郎ーー今は女性なので留ーーだけが箱庭のような学園生活を覚えている。
その気安さから二人はよく行動を共にしていた。だから二人が付き合っているのではないかという噂が立てられるのだ。
「いっそ私達で付き合うか?」
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