咲かせた底力 俺は台所に立ち、本日何度目かのため息をついた。添付の原稿とともに送られてきた「だるくてねてる」というメッセージを思い出す。
先生はいわゆる「修羅場の馬鹿力」タイプではないし、その体力も無い、だからある程度の形は既にあったのだろうがあと一息だったらしい。ぽやぽやした調子で夜公園の木を見上げてた、と告げられ「ごめんねぇ」と締められたので、「だから早咲きの花を見に行こうと言ったじゃないですか」という文句は飲み込まざるを得なかった。なぜなら、作品は満開の桜の風景を、みずみずしく匂い立つばかりに書かれていたからだ。
そろそろお粥が煮える。汗をかかせて早々に治そうかとよぎったが添い寝で我慢しようか。
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