誕生日に欲しい物 季節は春を過ぎて梅雨に入っている。カーテンを開けてみれば休日の今日も雨。仕方ないとは云え、敦はちょっと溜息をつきたくなった。それから気分を切り替えて朝食の支度を始める。
ふいに思い出す。そういえばもうすぐ、太宰との同棲開始から初めての太宰の誕生日が来る。
遡れば数ヶ月前。敦が太宰のアパートに通い詰めるものだから、「いっその事うちに住んでしまえば?」と訊かれて敦は一も二もなく頷いたのであった。
太宰が、台所に立つ敦の肩に手を置いて手元を覗き込む。洗面所で顔を洗ってきたらしく、洗顔料の爽やかな香りが敦の鼻先を擽る。
「あ、やっぱり味噌汁だ。敦君の作るのは具沢山だし味の素が入ってて美味しいんだよね~」
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