薔薇「ダズンローズデーを知っているかい?」
依頼の報告を受けた後、ミューヌが柔らかく微笑みながら尋ねてきた。たおやかな笑みの店主にルガディンは傾げていた首を振って答える。
「12本のバラの日、という意味でね。結婚生活に必要な、12の言葉全てをパートナーに誓うというものなんだ」
感謝、希望……永遠、と薔薇の花に込められた言葉を店主は指折り教えてくれた。なるほど、と納得したように頷く。
「勉強になった」
彼の短い言葉に満足気に目を細め、
「奥様によろしくね」
意味深な呟きと共に手を振って見送られた。
そんな事を思い出したルガディンは花屋の店先を覗く。色とりどりの薔薇の中から12本か、とつい眉間に皺が寄ってしまう。声をかけてきた店員にとりあえず赤と黒と紫の薔薇をそれぞれ4本ずつ纏めてもらうことにした。微かに手元から漂う薔薇の香りに気恥ずかしさを覚えながら、足早にラベンダーベッドのヴィエラの家に向かう。
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