トール
そのこ
DOODLE星辰剣とフリック。星辰剣、ビクトールのがさつさに切れ気味なだけで別にビクトールと一緒にいるのが嫌なわけではないあたりがかわいいよね。2025-05-05
風のよく通る洞窟に私を置いていった男が帰ってきた。理由など一つだ。かの吸血鬼が生きていた。それ以外にビクトールが私を取りに来るはずがない。
写し身の術とはまったく生意気この上ない。次こそ完全に滅してやろう。とはいうもののビクトールにも手がかりはなく、カーン・マリィとかいう若造が代わりに探ってくれる手筈となった。ビクトールもそれを良しとし、私は奴の背中の上で戦争に加担する事となるらしい。
吸血鬼とは関係がない事を優先したのか。
ハイランド皇国とやらの軍を打ち破った。今は集まってくる人間を訓練したりする職務を真面目にこなしている。私を背負っていると目立ちすぎるとのたまったビクトールは、基本的に私を自室に置きっぱなしだ。
1618風のよく通る洞窟に私を置いていった男が帰ってきた。理由など一つだ。かの吸血鬼が生きていた。それ以外にビクトールが私を取りに来るはずがない。
写し身の術とはまったく生意気この上ない。次こそ完全に滅してやろう。とはいうもののビクトールにも手がかりはなく、カーン・マリィとかいう若造が代わりに探ってくれる手筈となった。ビクトールもそれを良しとし、私は奴の背中の上で戦争に加担する事となるらしい。
吸血鬼とは関係がない事を優先したのか。
ハイランド皇国とやらの軍を打ち破った。今は集まってくる人間を訓練したりする職務を真面目にこなしている。私を背負っていると目立ちすぎるとのたまったビクトールは、基本的に私を自室に置きっぱなしだ。
くりくま
DONE一次創作BL漫画「♡BL♡推しヒーローが敵幹部に恋に落ちたので全力で応援するオタク」1話推しである先輩ヒーロー(男23歳)に対し、最高の結婚相手を見つけるという独特の推し活を楽しむ主人公(女)オタク、戸井とーる(21)!
推しが敵幹部(男25歳)に恋に落ちた瞬間に立ち会ってしまい?!
推しの一目惚れとかありがてえ!!!良いもの見た!!!これは全力で応援するしかない!!! 8
そのこ
DOODLE砂漠越えからミューズに向かう直前。アナベルとビクトール。ビクフリの一形態なのでアナベルが常にフラれていてちょっとどうなんでしょうね。2025-05-02
「本当に帰ってきたんだねえ」
珍しく酔っぱらったアナベルが繰り返す。小さな酒場のカウンター、人の声がまるで波音のように揺蕩ういい店だ。隣に座ったアナベルは、柔らかい手でビクトールの肩を抱いた。女にしては大きな掌で優しく引き寄せられる。
「本当にねえ」
「そんなにか」
1年ほど前、一旦挨拶には寄ったが、その時にはノースウィンドウに帰ったと嘘をついた後ろめたさもあり、どこかよそよそしかったと自分でも思っている。それ以前と言えばデュナンでネクロードの手がかりがまったくつかめないことに業を煮やした自分がもう帰らぬ、と言った時だ。
アナベルは反対しなかった。しても無駄だと悟っていたのだ。忘れてしまえという事も出来ず、かといって代われるはずもない。ビクトールを見送ることしか出来なかったアナベルの、深い悲しみの目をどうしていままで忘れていられたのだろう。
1576「本当に帰ってきたんだねえ」
珍しく酔っぱらったアナベルが繰り返す。小さな酒場のカウンター、人の声がまるで波音のように揺蕩ういい店だ。隣に座ったアナベルは、柔らかい手でビクトールの肩を抱いた。女にしては大きな掌で優しく引き寄せられる。
「本当にねえ」
「そんなにか」
1年ほど前、一旦挨拶には寄ったが、その時にはノースウィンドウに帰ったと嘘をついた後ろめたさもあり、どこかよそよそしかったと自分でも思っている。それ以前と言えばデュナンでネクロードの手がかりがまったくつかめないことに業を煮やした自分がもう帰らぬ、と言った時だ。
アナベルは反対しなかった。しても無駄だと悟っていたのだ。忘れてしまえという事も出来ず、かといって代われるはずもない。ビクトールを見送ることしか出来なかったアナベルの、深い悲しみの目をどうしていままで忘れていられたのだろう。
そのこ
DOODLE砂漠越え後、ノースウィンドウに帰郷した後。フリック。ビクフリが大前提。ビクトールさんの執着をこう、こうね。気が付いてるような。ないような。
2025-05-01
首筋に傷がある。ビクトールのやつ、思い切りかみつきやがって。明らかに人の歯型の傷を人目に晒すことは出来なくて、手持ちの中でも襟の高い服を選ぶ羽目になる。本格的に暑くなる前に消えれば良いんだが。
帰りたいと望みながらも、恐ろしくて帰れない。そんな故郷への旅路に付き合った。10年たった町は朽ちて枯れ、人っ子一人いやしない。それが事実だった。皆が生き返ることはないし、かといってまったくもって姿を変えているわけでもない。10年が10年として振りつもった景色を、ビクトールがどう思ったのか。
襟元を引っ張りながら部屋を出た。今日は一人だ。ビクトールはと言えば、何やらミューズから客人が来るとか何とかで、朝から出かけている。うれしそうな声をしていたからきっと仲のいい友人とかなんだろう。敵も多いが、同じぐらいかそれ以上に好かれている奴だ。
1534首筋に傷がある。ビクトールのやつ、思い切りかみつきやがって。明らかに人の歯型の傷を人目に晒すことは出来なくて、手持ちの中でも襟の高い服を選ぶ羽目になる。本格的に暑くなる前に消えれば良いんだが。
帰りたいと望みながらも、恐ろしくて帰れない。そんな故郷への旅路に付き合った。10年たった町は朽ちて枯れ、人っ子一人いやしない。それが事実だった。皆が生き返ることはないし、かといってまったくもって姿を変えているわけでもない。10年が10年として振りつもった景色を、ビクトールがどう思ったのか。
襟元を引っ張りながら部屋を出た。今日は一人だ。ビクトールはと言えば、何やらミューズから客人が来るとか何とかで、朝から出かけている。うれしそうな声をしていたからきっと仲のいい友人とかなんだろう。敵も多いが、同じぐらいかそれ以上に好かれている奴だ。
ぎのォ
DOODLE酔い潰れて寝ちゃったフリックから寝言でオデッサの名前が出ることはあるじゃろ~の妄想。色々なことを飲み込んでるんだろうけど、そんなときビクトールは無理に踏み込むこともなく優しく寝かし付けてあげてくれっていう…(ろくろ)穏やかな夢を見ておくれ腐れ縁… 4そのこ
DOODLE砂漠越え直後。ノースウィンドウに帰るビクトールさんとフリック。手ぇつなぐのはカプだと言われればカプなんじゃないか。ビクフリです。2025-04-28
戻りたくなかったというのは事実で、戻りたかったというのも同じぐらい本当なんだと思う。
町はビクトールが言ったように崩れていた。屋根は落ち、草木が壁を浸食し、石畳はだいぶん土をかぶっている。そこここに突き刺さった、墓とも何とも言い難い粗末な板切れの下には一体誰が埋まっているんだろう。
なるほど確かにこれは忌地だ。さっきまで高く鳴いていた鳥もどこかへ行って、風の音しか聞こえない。ざわざわと木の葉と枝がこすれて音を立てるのに、しんと静かだ。朽ちたドアの向こうには朽ちた家がある。乱雑に転がされたいすと桶が床に転がって揺れている。
入口から大きな通りがあって、左右に朽ちた建物が並んでいる。擦り切れた布や地面に落ちた看板の成れの果てから察するに、ここが目抜き通りだったんだろう。
2522戻りたくなかったというのは事実で、戻りたかったというのも同じぐらい本当なんだと思う。
町はビクトールが言ったように崩れていた。屋根は落ち、草木が壁を浸食し、石畳はだいぶん土をかぶっている。そこここに突き刺さった、墓とも何とも言い難い粗末な板切れの下には一体誰が埋まっているんだろう。
なるほど確かにこれは忌地だ。さっきまで高く鳴いていた鳥もどこかへ行って、風の音しか聞こえない。ざわざわと木の葉と枝がこすれて音を立てるのに、しんと静かだ。朽ちたドアの向こうには朽ちた家がある。乱雑に転がされたいすと桶が床に転がって揺れている。
入口から大きな通りがあって、左右に朽ちた建物が並んでいる。擦り切れた布や地面に落ちた看板の成れの果てから察するに、ここが目抜き通りだったんだろう。
そのこ
DOODLEビクトールさん、ノースウィンドウに帰る。フリックと帰ったのはなんかそりゃあそうよな、と思うんですけど、同時にフリックには話しててほしくないという願望。2025-04-27
遠くに街が見えてくる。目的地だ。岬から広がるように町があって、昔はトゥリバーからのサウスウィンドウをつなぐ交易路としてそこそこ栄えていた。10年前のあの日、何にも分からない内に全部が壊れた。
生き残ったのは俺ぐらいで、俺もまたあの村に居続ける事を選ばなかった。もし、吸血鬼があの災禍を成したのだと知らなければ、一人で村に残ったかもしれないが、それも全部たらればの話だ。
天気はとてもいい。空が高くて鳥が鳴く。最後に立ち寄った村で聞いた話によれば、野盗の類が住みつくことも特になく、ただそのまま朽ちていっているらしい。だってあんな事があった土地だろう、と眉を寄せる村人に俺は曖昧な笑みを見せた。
1351遠くに街が見えてくる。目的地だ。岬から広がるように町があって、昔はトゥリバーからのサウスウィンドウをつなぐ交易路としてそこそこ栄えていた。10年前のあの日、何にも分からない内に全部が壊れた。
生き残ったのは俺ぐらいで、俺もまたあの村に居続ける事を選ばなかった。もし、吸血鬼があの災禍を成したのだと知らなければ、一人で村に残ったかもしれないが、それも全部たらればの話だ。
天気はとてもいい。空が高くて鳥が鳴く。最後に立ち寄った村で聞いた話によれば、野盗の類が住みつくことも特になく、ただそのまま朽ちていっているらしい。だってあんな事があった土地だろう、と眉を寄せる村人に俺は曖昧な笑みを見せた。
そのこ
DOODLE砂漠越え直後。フリックとビクトール。ビクトールさん、1で帰るって言ってモラビアで捕まってますけど、ウォーレンの所にいたのが行きか帰りか不透明なのおもしろいよな。2025-04-26
「ちょっと付き合ってくんねえか?」
仕事がない時なら日がな一日一緒にいると言うのに、改まってなんだ。そう言おうとしてやめたのは何やらひどく追い詰められたような目をビクトールがしていたからだ。似合わぬしわを眉間に寄せて、伺うように俺を見ている。
読んでいた本を閉じ、椅子に座り直す。その間に、ビクトールも寝台に腰を掛けた。外からはサウスウィンドウの市場ののどかな客引きの声がして、柔らかな午後の光が差し込んできている。つい先日まで過酷な砂漠にいたなんてまるで夢のような、穏やかな日だ。
寝台に座り込んだまま、ビクトールは黙り込んだ。組んだ指先をより合わせる仕草は、まるで叱られる子供のようだ。素面では話しづらい事なのだろうか。だったら夜にでも話せば良いものを。
2218「ちょっと付き合ってくんねえか?」
仕事がない時なら日がな一日一緒にいると言うのに、改まってなんだ。そう言おうとしてやめたのは何やらひどく追い詰められたような目をビクトールがしていたからだ。似合わぬしわを眉間に寄せて、伺うように俺を見ている。
読んでいた本を閉じ、椅子に座り直す。その間に、ビクトールも寝台に腰を掛けた。外からはサウスウィンドウの市場ののどかな客引きの声がして、柔らかな午後の光が差し込んできている。つい先日まで過酷な砂漠にいたなんてまるで夢のような、穏やかな日だ。
寝台に座り込んだまま、ビクトールは黙り込んだ。組んだ指先をより合わせる仕草は、まるで叱られる子供のようだ。素面では話しづらい事なのだろうか。だったら夜にでも話せば良いものを。
そのこ
DOODLEネクロードが逃げた後、フリックとビクトールさん。ビクフリの文脈です。オリジナルだと頬に触れてる感じあったけど、触れて無さそうってのはなかなか雰囲気変わるなって。
2025-04-25
よせばいいのに土塊を触った。ついさっきまでは失われた人の形をしてたはずなのに、化け物に踏まれて、もう散々。胸の悪くなるような腐った土のにおいと、崩れてなお残る見開いた眼を閉じてやりたかった。
あの時も、助けを請われた。ディジーはまだ生きていて、ビクトールの名前を呼んだ。もう声もあんまり覚えていない。だけれど、大きな青い目が恐怖にゆがんでいたのは脳裏に焼きついている。さっきも同じ目をしていた。その目のまま、土塊はただぐずりと溶けていた。
土とも人の肉ともつかない塊が指に絡みついたのか、それとも沈み込んだのか。手袋越しでさえ異様な感触だった。冷たく、湿り気を帯び、錯覚のように熱がある。人間のものではない。断じて、あれは人間ではなかった。
2287よせばいいのに土塊を触った。ついさっきまでは失われた人の形をしてたはずなのに、化け物に踏まれて、もう散々。胸の悪くなるような腐った土のにおいと、崩れてなお残る見開いた眼を閉じてやりたかった。
あの時も、助けを請われた。ディジーはまだ生きていて、ビクトールの名前を呼んだ。もう声もあんまり覚えていない。だけれど、大きな青い目が恐怖にゆがんでいたのは脳裏に焼きついている。さっきも同じ目をしていた。その目のまま、土塊はただぐずりと溶けていた。
土とも人の肉ともつかない塊が指に絡みついたのか、それとも沈み込んだのか。手袋越しでさえ異様な感触だった。冷たく、湿り気を帯び、錯覚のように熱がある。人間のものではない。断じて、あれは人間ではなかった。
そのこ
DOODLEアナベルとフリック。アナベルさん、ビクトールはもう二度と隣に誰かを置かないと思ってたのにフリックがいてビビったろうな。これはビクフリの文脈です。2025-04-24
定例の報告会の後、少し時間が余ってしまった。次の予定まで、アナベル自身も時間があったし、今日は一人で来たフリックもまたすぐに帰らねばならぬ事もないらしい。茶を淹れてしゃべるといっても、お互いにどうしても共通の知人の話になる。
フリックはどうやら昔の話を殆ど聞いていないらしい。ただ故郷を滅ぼされ、誰にも頼らずに復讐の旅に出た。どうして誰も頼らなかったのか、忘れてしまうことは出来なかったのか。
10年前のビクトールが、どれだけ暗い目をしていたか。
「解放軍の頃はそりゃあ信用できない顔してたけどな」
「でもするっと懐にはいるんだろう」
「そう。だからこそ俺は嫌いだったけどな」
笑うフリックの表情はどこか甘さが勝つ。容貌のやわらかさと言うよりも、ビクトールに向ける感情に、言葉ほどのとげのなさから来る甘さなのだろう。もう帰ってこないと思っていたビクトールが、隣国からたった一人連れ帰ってきた男は、その事実の重さと甘さには何も気づいていないようだった。
1341定例の報告会の後、少し時間が余ってしまった。次の予定まで、アナベル自身も時間があったし、今日は一人で来たフリックもまたすぐに帰らねばならぬ事もないらしい。茶を淹れてしゃべるといっても、お互いにどうしても共通の知人の話になる。
フリックはどうやら昔の話を殆ど聞いていないらしい。ただ故郷を滅ぼされ、誰にも頼らずに復讐の旅に出た。どうして誰も頼らなかったのか、忘れてしまうことは出来なかったのか。
10年前のビクトールが、どれだけ暗い目をしていたか。
「解放軍の頃はそりゃあ信用できない顔してたけどな」
「でもするっと懐にはいるんだろう」
「そう。だからこそ俺は嫌いだったけどな」
笑うフリックの表情はどこか甘さが勝つ。容貌のやわらかさと言うよりも、ビクトールに向ける感情に、言葉ほどのとげのなさから来る甘さなのだろう。もう帰ってこないと思っていたビクトールが、隣国からたった一人連れ帰ってきた男は、その事実の重さと甘さには何も気づいていないようだった。
そのこ
DOODLEノースウィンドウ。ネクロードの生存が明らかになった時。2主君からみたビクトールさん。2主君はビクトールさんが好き。2025-04-22
「タイラギ、もしビクトールがおかしくなったらさっさと逃げていいからな」
宿を出る前フリックさんが僕にだけ、それこそおかしな事をいった。対処法でもなんでもなく、ただ逃げろなんて。
ビクトールさんの様子、たしかにずっとおかしかった。その原因が目の前に広がる廃村だ。建物がそこそこきれいに残っているのに、やたらと道々に墓標が建っているのが異様な、静かな静かな風景。
ナナミもアイリさんも言葉がないみたいだった。フリードさんは知っていたのか、いると噂されている化け物を警戒してあたりを見渡している。
ビクトールさんだけがまるで作り物みたいにいつものように笑って見せた。
「なんもねえとこだろ」
2077「タイラギ、もしビクトールがおかしくなったらさっさと逃げていいからな」
宿を出る前フリックさんが僕にだけ、それこそおかしな事をいった。対処法でもなんでもなく、ただ逃げろなんて。
ビクトールさんの様子、たしかにずっとおかしかった。その原因が目の前に広がる廃村だ。建物がそこそこきれいに残っているのに、やたらと道々に墓標が建っているのが異様な、静かな静かな風景。
ナナミもアイリさんも言葉がないみたいだった。フリードさんは知っていたのか、いると噂されている化け物を警戒してあたりを見渡している。
ビクトールさんだけがまるで作り物みたいにいつものように笑って見せた。
「なんもねえとこだろ」
そのこ
DOODLEミューズ陥落直後。フリックとビクトール。アナベルの死、腐れ縁はミューズ陥落の段階で気づいてたよなあって。2025-04-21
小さな小屋で舟を待っている。王国軍の手はコロネまで回っていたが、流通が完全に途絶える事はない。ただ、裏には回るから、ミューズから押し寄せた避難民は港の周りで立往生を強いられている。
自分たちはいつか貸しを作ったコロネの大地主が出すという舟に乗せてもらう手筈だ。広くもない小屋には、似たように逃げてきた金持ちやら彼らが雇った傭兵やらが車座を組んで座っていた。このまま夜まで待つ。傭兵たちも自分たち以上の情報は持っておらず、分かるのは、ミューズが落ちたという事ぐらい。正規軍は自分たち傭兵部隊が撤退するのとほぼ時を同じくして壊滅したという。
まったく、どうしたものやら。
本当に手の届く範囲の市民だけを逃がして、傭兵連中には散り散りになるよう命じるのが精一杯。サウスウィンドウへ、と言いはしたものの、あそこで自分たちが受け入れられるのかも今は分からない。
1146小さな小屋で舟を待っている。王国軍の手はコロネまで回っていたが、流通が完全に途絶える事はない。ただ、裏には回るから、ミューズから押し寄せた避難民は港の周りで立往生を強いられている。
自分たちはいつか貸しを作ったコロネの大地主が出すという舟に乗せてもらう手筈だ。広くもない小屋には、似たように逃げてきた金持ちやら彼らが雇った傭兵やらが車座を組んで座っていた。このまま夜まで待つ。傭兵たちも自分たち以上の情報は持っておらず、分かるのは、ミューズが落ちたという事ぐらい。正規軍は自分たち傭兵部隊が撤退するのとほぼ時を同じくして壊滅したという。
まったく、どうしたものやら。
本当に手の届く範囲の市民だけを逃がして、傭兵連中には散り散りになるよう命じるのが精一杯。サウスウィンドウへ、と言いはしたものの、あそこで自分たちが受け入れられるのかも今は分からない。
そのこ
DOODLE砦が落ちた後、砦にいるやたらと先輩風を吹かせてくる男の子。あの子は「ビクトールさん」が「拾ってきた」「孤児」……うん、きっとそう!2025-04-15
「ポールの奴が死んだってホント?」
「ああ」
皆が集まる天幕のほうからぶらぶら歩いて、俺のそばに座り込んだビクトールさんはそう重々しく頷いた。
胸がずんと重くなった。俺たちが負けるわけないだろ、と笑っていたのが俺の記憶の中で最後だ。
俺たちは負けたんだって。砦は焼けてしまって、いっぱい知ってる人が死んだ。俺はハイランドのやつらが攻めてくる前に砦から出されちゃったから何にも知らないけど、背後に回られてやられちゃったんだって。
だから俺たちはミューズまで逃げている。時々、一日ほど立ち止まって砦に残ったやつらの合流を待ちながら、少しずつミューズに近づいていた。
本当は小さい子はみんな先に行けって言われてたけど、俺はタイラギが来たからもう先輩なのだ。タイラギより先に安全なところにいるわけにはいかない。タイラギの姿は見えないが、死んだところも誰も見なかったらしい。シロと一緒にいますよ、とキニスンが言っていたからそういうものなのかもしれない。
1720「ポールの奴が死んだってホント?」
「ああ」
皆が集まる天幕のほうからぶらぶら歩いて、俺のそばに座り込んだビクトールさんはそう重々しく頷いた。
胸がずんと重くなった。俺たちが負けるわけないだろ、と笑っていたのが俺の記憶の中で最後だ。
俺たちは負けたんだって。砦は焼けてしまって、いっぱい知ってる人が死んだ。俺はハイランドのやつらが攻めてくる前に砦から出されちゃったから何にも知らないけど、背後に回られてやられちゃったんだって。
だから俺たちはミューズまで逃げている。時々、一日ほど立ち止まって砦に残ったやつらの合流を待ちながら、少しずつミューズに近づいていた。
本当は小さい子はみんな先に行けって言われてたけど、俺はタイラギが来たからもう先輩なのだ。タイラギより先に安全なところにいるわけにはいかない。タイラギの姿は見えないが、死んだところも誰も見なかったらしい。シロと一緒にいますよ、とキニスンが言っていたからそういうものなのかもしれない。
tyuya_house
INFO▎CoC: パニックドリップデパートメント2025.01.15 / 2025.01.26
▼ KP・KPC / 五間 六木 ひるよ
▼ PL / 牧之瀬 愛紀 とーるさん
エンドA 両生還
そのこ
DOODLE傭兵隊の砦陥落後、クルガンとシード。火炎槍、ここで持ち出して来たらそりゃあびびるよなトランの国宝だとおもうんですけど、ビクトールさんはどう思いますか?2025-04-08
部下からの報告を受け、クルガンは元より寄っていた眉間のしわをさらに深くする。
傭兵隊の砦は落ち、焼け跡がくすぶっている。直接攻め込んだ白狼軍は大爆発に巻き込まれ、それなりの損害が出ているという。ルカもまた手ひどい火傷を負った。おののき、撤退を進軍した軍医は、ルカ自身の命により後方へ送られたという。
電撃的にジョウストンへ攻め入り、トト、リューベと壊滅させたハイランド軍が次にその刃を向けたのはミューズが雇う傭兵部隊だ。二年ほど前に設立され、東方の守りを任されている。残しておけばミューズを攻める際に後ろを取られる可能性があり、単純な戦力としても無視するには少々厄介だった。とはいえだ。
1748部下からの報告を受け、クルガンは元より寄っていた眉間のしわをさらに深くする。
傭兵隊の砦は落ち、焼け跡がくすぶっている。直接攻め込んだ白狼軍は大爆発に巻き込まれ、それなりの損害が出ているという。ルカもまた手ひどい火傷を負った。おののき、撤退を進軍した軍医は、ルカ自身の命により後方へ送られたという。
電撃的にジョウストンへ攻め入り、トト、リューベと壊滅させたハイランド軍が次にその刃を向けたのはミューズが雇う傭兵部隊だ。二年ほど前に設立され、東方の守りを任されている。残しておけばミューズを攻める際に後ろを取られる可能性があり、単純な戦力としても無視するには少々厄介だった。とはいえだ。
卸@とても眠い
DONE幻水2、クリアしました~(*´▽`*)一度ノーマルエンドになっちゃってロックアックスからやり直したのは内緒(^^ゞ
ビクトールさんが強くて最後までお世話になっちゃった。流石クマさん(´艸`*) 3
あける
TRAININGトールの誕生日が近づいてきたので、ディアミリ+トール風味のお話です幸せな夢 オーブのコロニーであるヘリオポリスは、オーブと同じ季節に調節されている。
だから、四月は秋の気候だ。
少しひんやりとした空気が、地球のそれによく似ていて、四月のトールの誕生日には手袋やマフラーなんかを贈って
「風邪引かないようにしてよね」
なんて世話を焼いたものだった。
トールもまんざらでもなさそうに
「もう、ミリィったらお母さんみたいだよ」
なんて笑っていた。
あの顔をもう一度見たい。
笑うと、どこからどう見ても人の良さそうなあの顔を。
それなのに、彼は夢にすら出てきてくれない。
たったの一度もだ。
いや、トールだけではない。
ミリアリアの夢には、トールも、両親も出てきたことはないのだ。
今隣に眠る最愛の彼、ディアッカでさえも。
1798だから、四月は秋の気候だ。
少しひんやりとした空気が、地球のそれによく似ていて、四月のトールの誕生日には手袋やマフラーなんかを贈って
「風邪引かないようにしてよね」
なんて世話を焼いたものだった。
トールもまんざらでもなさそうに
「もう、ミリィったらお母さんみたいだよ」
なんて笑っていた。
あの顔をもう一度見たい。
笑うと、どこからどう見ても人の良さそうなあの顔を。
それなのに、彼は夢にすら出てきてくれない。
たったの一度もだ。
いや、トールだけではない。
ミリアリアの夢には、トールも、両親も出てきたことはないのだ。
今隣に眠る最愛の彼、ディアッカでさえも。
mendakoh
DONE #自分が創作で禁止されたら死亡しそうなものをふぉろわさんから教えて貰ってそれを禁止してキャラ作るで描きました。禁止された要素は絵の右下に記載してあります。
いつもの二次元寄りの奇抜な髪型、爛々とした表情、ビッグシルエットになるアイテム(マフラー、コート、ストール、サルエルパンツ等)封じられるとこんな感じになります。
そのこ
DOODLEシュウ、フリックビクトールで共犯関係にあるとは思うんですけど、上手に纏まんないね。2025-04-01
「おい青いの」
「その呼び方止めろ」
「そうだぜシュウさんよ。怒らせると面倒だぜ」
およそ傭兵には見えない優し気な顔とは裏腹に、この男の戦歴はすさまじいものがある。トラン解放戦争の立役者の一人であり、わずか一年の間に元々この辺りで名前と顔の売れていたビクトールと組んで、傭兵組織を作り上げた。赤月帝国の片隅にある戦士の村の出身であるという事も、これからおそらく使える材料になる。
ビクトールの方もだ。表ざたに出来ない世界での評判はすこぶる悪かったが、実際に相対した人間からは妙に好かれる雰囲気がある。あの人のところで働くのも悪くないな、と傭兵たちに自然と言わせる力は、後天的には得られないものだ。
1477「おい青いの」
「その呼び方止めろ」
「そうだぜシュウさんよ。怒らせると面倒だぜ」
およそ傭兵には見えない優し気な顔とは裏腹に、この男の戦歴はすさまじいものがある。トラン解放戦争の立役者の一人であり、わずか一年の間に元々この辺りで名前と顔の売れていたビクトールと組んで、傭兵組織を作り上げた。赤月帝国の片隅にある戦士の村の出身であるという事も、これからおそらく使える材料になる。
ビクトールの方もだ。表ざたに出来ない世界での評判はすこぶる悪かったが、実際に相対した人間からは妙に好かれる雰囲気がある。あの人のところで働くのも悪くないな、と傭兵たちに自然と言わせる力は、後天的には得られないものだ。
kanzaki_trpg
DOODLECoC「忘れがたき天使」 現行未通過✖自探索者の絵進捗
ずっとあの服装ってわけでも無いなと思ったので新規立ち絵を描いています
ストールって言うかカーディガン羽織ってる感じ
そのこ
DOODLEビクトールさんが砦を「家」っていうの大好きなんですけど、あれが2主君たちを励ます意図もこもってたらどうだろう、と思って。2025ー03ー30
どこへ行ったのかを思っていた男は、バルコニーの隅に椅子を持ち出してだらしなく柵に懐いているところだった。下の広場ではなんとなく形になってきた傭兵部隊が三々五々に散ってそれぞれ訓練に励んでいる。おおよそ真剣な顔つきばかりだが、時折笑い声が響いたり、さざめきのように雑談が聞こえる。
お互いの腹の探り合いは終わって、次の段階。知ったお互いをどう生かすべきか。どう仲を深めていくか。酒の入ったコミュニケーションももちろん良いが、それより常日頃に交わす言葉や行動が、彼らを一つの組織としていく段階だ。
いちいち自分が口を出すこともない。隣に立つ人間がどのような人間かを知っておかねばいざという時に困るという事を知らぬ人間はここにはいないのだから。
1298どこへ行ったのかを思っていた男は、バルコニーの隅に椅子を持ち出してだらしなく柵に懐いているところだった。下の広場ではなんとなく形になってきた傭兵部隊が三々五々に散ってそれぞれ訓練に励んでいる。おおよそ真剣な顔つきばかりだが、時折笑い声が響いたり、さざめきのように雑談が聞こえる。
お互いの腹の探り合いは終わって、次の段階。知ったお互いをどう生かすべきか。どう仲を深めていくか。酒の入ったコミュニケーションももちろん良いが、それより常日頃に交わす言葉や行動が、彼らを一つの組織としていく段階だ。
いちいち自分が口を出すこともない。隣に立つ人間がどのような人間かを知っておかねばいざという時に困るという事を知らぬ人間はここにはいないのだから。
ミ毛ランジェロ
INFOCoC「ビスポークランドでなにがあったか?」❚KP
滝沢さん
❚PL
HO1:ミ毛ランジェロ/サイモン・トールマン
HO2:ちょまぺさん/エラズト・タッソ
HO3:スコレマンさん/キャンディ・キャンディ・クライヤー
全生還にてシナリオクリアです!!
ビスポークランドでこんなことが?! 2
そのこ
DOODLE傭兵隊の砦。ビクトールさんが「家」っていうの嬉しくもあり、その後を知っているので悲しくもある2025‐03‐23
ミューズに呼び出され、砦を留守にして数日。ようやく帰ってこられた。轍のはっきりと残る道を歩けばサクサクと軽い足音が立つ。夕方の風が草原をのびのびと走って、髪の毛を乱した。随分と長くなってしまったから、そろそろ切る頃合いだ。明日にでもフリックに頼んでみようか。
まだ灯りのいらない道をゆっくりと歩く。その先に目指す場所がある。慣れた寝床があって、気やすい店主の元で酒が飲めて、迎えてくれる人がいる。
帰る場所だ。ずっと前に失われたビクトールの故郷とよく似た、だが少しばかり血なまぐさい場所を迷うことなく目指してビクトールは歩いていた。
ありがたい話だ。顔を上げれば遠く、小さな森が見えた。明かりがちらちらと木々の間に揺れている。騒がしい連中の騒がしい声が、まだ聞こえるはずもない距離なのに耳に響いて、思わず笑みが漏れた。
1215ミューズに呼び出され、砦を留守にして数日。ようやく帰ってこられた。轍のはっきりと残る道を歩けばサクサクと軽い足音が立つ。夕方の風が草原をのびのびと走って、髪の毛を乱した。随分と長くなってしまったから、そろそろ切る頃合いだ。明日にでもフリックに頼んでみようか。
まだ灯りのいらない道をゆっくりと歩く。その先に目指す場所がある。慣れた寝床があって、気やすい店主の元で酒が飲めて、迎えてくれる人がいる。
帰る場所だ。ずっと前に失われたビクトールの故郷とよく似た、だが少しばかり血なまぐさい場所を迷うことなく目指してビクトールは歩いていた。
ありがたい話だ。顔を上げれば遠く、小さな森が見えた。明かりがちらちらと木々の間に揺れている。騒がしい連中の騒がしい声が、まだ聞こえるはずもない距離なのに耳に響いて、思わず笑みが漏れた。