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    下町小劇場・芳流

    PAST大昔のロマサガ1小説。
    ちょっとだけグレイ✕クローディア。
    年越しの話。
    SF版ロマサガ1を前提にしているので、ミンサガとの矛盾、イメージ違いがあります。
    2004.1執筆。
    このジャンルの作品の中では、新しい方(待て)。
    十二の葡萄 年の瀬のメルビルは、普段の落ち着いた佇まいが嘘のように、賑わっていた。
     北が暑く、南が寒いこの地方では、年末は、夏の盛りである。
     惜しげもなく降り注いだ高い夏の日差しは、今はもう海の向こうに姿を消し、代わって街角を照らすのは、市民お手製のランプである。普段は家の中にしまいこまれている机や椅子を表通りに出し、仄かな灯かりとともにその上を彩るのは、秘蔵のワインにとっておきの魚や野菜。人々は思い思いの格好で、飲み、歌い、そしてちらちらと一定の方向に視線を向けていた。
     彼らの注視する先にあるのは、世界で唯一のエロール正神殿である。マルディアス十二神のうち、最高位に位置する神々の父エロール。それを祭った世界でただひとつの由緒正しい神殿は、森の中に屹立していた。そして、その聳え立つ宮の頂きには、これもまたこの街でただひとつの時計塔とともに、二つの月光を受けて輝く、荘厳な鐘が備え付けられていた。
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    seeds_season

    DONEミス晶♂風味。「呪いと祝福――あるいは奇跡について」の、魔法使い側から見たお話。内容はほぼ一緒ですが晶が寝ている間に何があったかはこちらに書いてます。

    ※まほやく初心者につき、未読イベスト・カドストが山のようにあるので、あちこち設定等で矛盾あると思われ。
    ※魔法に関する捏造が色々あります。ふわっと読んでください。
    祝福と呪い――あるいは奇跡について 《賢者》は異界からやってくる。
     それは悠久の彼方から続く習わしだったから、疑問を抱くことすらなかった。
     異界から召喚された賢者と、その賢者の力で世界中から集められる二十名の《賢者の魔法使い》。彼らの活躍により《大いなる厄災》の襲来は阻まれ、世界の平和は保たれる。
     この仕組みは一体いつから、どのようにして始まったものなのか。その記録は残っていない。
     そして当代の賢者――真木晶もまた、歴代の賢者に倣って召喚された。
     いつもと違っていたのは、彼が召喚された夜――正確にはその直前まで、賢者の魔法使い達が戦っていた《大いなる厄災》が、例年にない規模だったこと。
     どうにか撃退には成功したものの、賢者の魔法使いはその数を半数に減らし、また各地の被害も深刻だ。
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    bros801

    TRAINING🍣ブラフェイ🎧(R15?)🔰07
    ⚠️ブラ→←フェイ前提のモブフェイ

    兄の代わりにもならない熱を求めて夜の街を彷徨う、不安定で無気力で無邪気で矛盾した弟の話。

    倫理観がブレイクビーツしている🎧は、ある意味せかいでいちばんおひめさま だと思っているオタクの妄想です。

    ⚠️ベッドシーンそのものは描写していませんが、喋らないし名前もないモブ男とフェイスが関係を持っているシーンがあります。
    # あの子は今夜も だれかのしたで ないているの◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



     幼い頃からフェイスは、向けられる視線に敏感だ。

     周囲の人間はいつも、うっとりとした表情でフェイスの両親と、兄の顔を見る。まるで国立美術館での芸術鑑賞を楽しむかのように。

     それから少しだけ視線を下げて、9歳離れた兄の後ろで顔を半分隠しているフェイスを視界に入れると、みな一様に息を呑むのだ。

     音の波に揺蕩うことを好むフェイスにとって、自身の顔を見た直後に漏れ聞こえる感嘆のため息はただの雑音でしかなかったが、僅かでも不埒な考えを抱く者など許さないと、いつだって手を握ってくれる存在がそばにいた。

    「俺のそばから、決して離れてはいけない。守れるな? フェイス」

     両親に促されて出席させられるよくわからないパーティーは、フェイスだけのヒーローをひとりじめできる時間でもあった。
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    きゃし子

    MOURNING今書いてる夏雨の2年前にボツにした初稿から、雨の中で踊るシーン。ちなみに、ホールドの向きが間違っているので位置関係に矛盾があります。
    タンゴだけど、型を知らないと踊れないソシアルダンスじゃなくてアルゼンチンタンゴ(リーダーが上手ければ初見でも踊れる)を想定。
    雨の中で踊る跡観 ちょうど広場の中央付近だ。煩わしかったのか、少し歩くと観月は立ち止まり、振り返って俺を見据え、つかまれていた右腕を伸ばし、俺の手に左手を添えて自分の体の方に引き寄せた。さすがによろけることはないが、虚を突かれたすきに観月が左手で俺の手を取った。「行きましょう」とほとんど口の動きだけで言って、再び腕を伸ばした分、距離を取った。観月が目を細めて、まつ毛に湛えていた滴が目尻の辺りから落ちたのが分かった。手を普通に繋いでいる。
     観月は俺の手を引いて大きく踏み出すと、体を傾けて走り出し、広場に緩やかな弧を描こうとした。意図をはかりかねてそのまま従えば、重力と遠心力に振り回された。そのまま振り回されてやるのもしゃくなので、踏み止まって右足を大きく引き、そのまま観月ごと右腕を折りたたんで引いた。足元の水がひときわ大きく跳ねる。左腕を背中に回すと観月は素直に腕の中におさまった。
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