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    諭吉

    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。御前試合の後、隠し刀が諭吉に髪を整えてもらうお話です。諭吉の断髪式に立ち会いたかった……!どうしてなんだ、諭吉!
    >前作:探り合い
    https://poipiku.com/271957/11594741.html
    まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    枝を惜しむ もう朝である。障子を通り過ぎた陽の光に瞼をぴくりと動かすと、諭吉はうっすらと浮かび上がっていた意識を完全に現実へと上陸させた。つい先ごろうたた寝をしながら書物を読んでいたつもりが、いつの間にやら轟沈してしまったらしい。やるべきことは山積していると言うのに、ままならぬものである。光陰矢の如しというが、このところは本当に年中時間が勝手に体を通り抜けていっているような気がしている。国全体が大きなうねりの中にあって、置いていかれぬためには必死で鮪のように泳ぎ続けねばならない。
     無意識のままに簡単に身支度を整え、ここが勝海舟の邸だということを再認する。要するに仕事で一日を食い潰したのだろう。どこを向いても自分くらいしかできないだろうという未来が転がっているので、少しも気の休まる日がない。顔を洗ってもしっくりしないので、朝食を終えたら(もちろん太っ腹な勝であれば出してくれるに決まっている)朝湯に行って仕切り直しを図ろうか。鏡を見て、自分の髪を整え直し――諭吉は鏡の端に写った相手に会釈した。
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。数年間の別離を経て、江戸で再会する隠し刀と諭吉。以前とは異なってしまった互いが、もう一度一緒に前を向くお話です。遊郭の諭吉はなんで振り返れないんですか?

    >前作:ハレノヒ
    https://poipiku.com/271957/11274517.html
    まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    答え 今年も春は鬱陶しいほどに浮かれていた。だんだんと陽が熟していくのだが、見せかけばかりでちっとも中身が伴わない。自分の中での季節は死んでしまったのだ、と隠し刀は長屋の庭に咲く蒲公英に虚な瞳を向けた。季節を感じ取れるようになったのはつい数年前だと言うのに、人並みの感覚を理解した端から既に呪わしく感じている。いっそ人間ではなく木石であれば、どんなに気が楽だったろう。
     それもこれも、縁のもつれ、自分の思い通りにならぬ執着に端を発する。三年前、たったの三年前に、隠し刀は恋に落ちた。相手は自分のような血腥い人生からは丸切り程遠い、福沢諭吉である。幕府の官吏であり、西洋というまだ見ぬ世界への強い憧れを抱く、明るい未来を宿した人だった。身綺麗で清廉潔白なようで、酒と煙草が大好物だし、愚痴もこぼす、子供っぽい甘えや悪戯っけを浴びているうちに深みに嵌ったと言って良い。彼と過ごした時間に一切恥はなく、また彼と一緒に歩んでいきたいともがく自分自身は好きだった。
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。前作を読んだ方がより楽しめるかもしれません。遅刻しましたが、明けましておめでとう、そして誕生日おめでとう~!会えなくなってしまった隠し刀が、諭吉の誕生日を祝う短いお話です。

    >前作:岐路
    https://poipiku.com/271957/11198248.html

    まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ro
    ハレノヒ 正月を迎えた江戸は、今や一面雪景色である。銀白色が陽光を跳ね返して眩しく、子供らが面白がってザクザクと踏み、かつまた往来であることを気にもせず雪合戦に興じるものだからひどく喧しい。しかしそれがどんどんと降り積もる量が多くなってきたとなれば、正月を祝ってばかりもいられない。交通量の多い道道では、つるりと滑れば大事故に繋がる可能性が高い。
     自然、雪国ほどの大袈裟なものではないが、毎朝毎夕に雪かきをしては路肩にどんと積み上げるのが日課に組み込まれるというもので、木村芥舟の家に住み込んでいた福沢諭吉も免れることは不可能だ。寧ろ家中で一番の頼れる若手として期待され、庭に積もった雪をせっせと外に捨てる任務を命じられていた。これも米国に渡るため、芥舟の従者として咸臨丸に乗るためだと思えば安い。実際、快く引き受けた諭吉の態度は好意的に受け止められている。今日はもう雪よ降ってくれるなと願いながら庭の縁側で休んでいると、老女中がそっと茶を差し入れてくれた。
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。諭吉が隠し刀の爪を切る話。意味があるようでないような、尤もなようで馬鹿馬鹿しいささやかな読み合いです。相手の爪を切る動作って、ちょっと良いですね……

    >前作:黄金時間
    https://poipiku.com/271957/11170821.html
    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    鹿爪 冬は、朝だという。かの清少納言の言は、数百年経った今でも尚十分通じる感覚だろう。福沢諭吉は湯屋の二階で窓の隙間から、そっと町が活気付いてゆく様を眺めていた。きりりと引き締まった冷たい空気に起こされ、その清涼さに浸った後、少しでも暖を取ろうとする一連の朝課に趣を感じられる。霜柱は先日踏んだ――情人である隠し刀とぱり、さく、ざく、と子供のように音の違いを楽しんで辺り一面を蹂躙した。雪は恐らく、そう遠くないうちにお目にかかるだろう。
     諭吉にとっての冬の朝の楽しみとは、朝湯に入ることだった。寒さで目覚め、冷えた体をゆるりと温める。朝湯は生まれたてのお湯が瑞々しく、体の隅々まで染み通って活きが良い。一息つくどころか何十年も若返るかのような心地にさせてくれる。特に、隠し刀が常連である湯屋は湯だけでなく様々な心尽くしがあるため、過ごしやすい。例えば今も、半ば専用の部屋のようなものが用意され、隠し刀と諭吉は二人してだらけている。
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。リクエストをいただいた「料理描写(できれば諭吉で)」をテーマに、柚子尽の宴を開く二人のお話。美味しいものを目一杯!

    >前作:二人遊び(R18)
    https://poipiku.com/271957/10767042.html

    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    柚子 季節の移ろいを訴えるのは様々で、例えば朝の空気の冷たさや風の香り、鳥や虫の鳴き声、それに葉の色の変化も忘れられない。今年に別れを告げるように一斉に艶やかな着物を纏って賑わせたかと思うとゆっくりと葉を落としてゆく様は、何度目にしても巡り来る年月に胸を震わせられる。別れを告げるのが葉であるならば、彼らの今年を詰め込んだ結果は文字通りその果実だろう。春は桜桃、夏は西瓜、秋は梨、そうして秋が深まって冬に近づいてくると目立つのは、
    「良い香りですね」
    柚子だ。通り一つ向こうから漂う強い香りに鼻をくすぐられ、福沢諭吉は思わず足を止めた。農家が運んできたのだろうか、俄かに市でも立ったかのように風に乗った香りが人々を誘う。実際既に引き込まれた人々の喧騒で、隠し刀の長屋がある方角は随分と賑わっているようだった。まさか彼が?これから遊びに行こうと計画していたこともあり、諭吉は足を早めた。
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    zeppei27

    DONEマーカス、君とはもっといろいろ話ができると思っていたのに!横浜貴賓館関係メンバーでワイワイしたい!マーカスのお悩み相談会に、刀が伊賀七とサトウと取り組む話です。諭吉は最後に登場します。

    >前作:影遊び
    https://poipiku.com/271957/10694953.html
    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    ありふれた椿事 世界は広い。日々の生活に追われていると、目先の環境しか考えられないものだが、その目先をどんどん遠くに伸ばしてゆくとやがては海を出て、そうして別の国にとたどり着くのだから面白い。自分は日本のどこか、ではなく世界のどこか、に暮らしているのだと唐突に思い当たって驚かずにはいられない。隠し刀も、福沢諭吉に出会うまでは自分の住む陸地のことを考えるので精一杯だった。だからこそ、自分の片割れを見つけることができなかったとも言える。
     理屈はすんなりと飲み込めた。さりとて日常生活の中で異国に想いを馳せることはまだまだ少ないのが世情で、時折異国のものを見かけ、異人を目にして、ああ世界は広いと想起される程度のことである。ある意味自分よりも、尊王攘夷を唱える志士たちの方が世界を実感していると言えよう。忌み嫌う人間の方が高い意識を抱いているというのは皮肉な話だった。
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    DONEなんとなく続いている主福で、単品でも読めます。仕事人間の隠し刀を心配したサトウが、権蔵も交えて競馬を観に行くお話です。馬は良い……諭吉は最後に出てきます。

    >前作:『君は可愛い』
    https://poipiku.com/271957/10561821.html
    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    有意義な休日 あらゆる時間には意味がある。目的があればそれに向かって寸暇を惜しんで努力しなければならないし、生活するためには衣食住を事足りなさせなければならない。他に大切なものができれば、そちらにあらゆるものを惜しみなく注ぐだろう。やるか、やらないかという選択肢はなく、ただやることだけが永遠に続いてゆく。公私の境目などあったものではない。全てが公であり私だった。道具として育てられてきた隠し刀にとって、この『生き方』はごく当たり前のものだが、どうやら世間では少しばかり勝手が違うらしい。
     じりり、じりり、と両腕に力をこめながら薬研を均等に動かす。前へ、後ろへ。無心にこなせる作業なので、慎重を要するとはいえ思考を他に使える点で好ましい。じー、じっ、ざりりという音が長屋に充満するのも時間を刻むようで耳心地が良い。一個できた分を油紙に包んで軽く捻る。材料を補充し、薬研に手をかけたところで道具よりも先にしゃがれ声が割入った。縁側で猫と遊んでいる権蔵だろう。
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    DONE完全単品・読切の主福で、隠し刀の恋愛相談を受けるうちに恋に落ちる諭吉の話です。ワンドロに参加できないから……いつもの二人は時系列が合わなくて……ここにしか打ち上げられないものを書いてみました。ミイラ取りがミイラになる話が好きです。
    雨天決行 ああ、それは恋という奴だ。人のありように一過言ある、悪く言えば斜に構えた福沢諭吉は、流暢に語る男の横顔を呆然と眺めた。勝海舟の屋敷に我が物顔で上がり込み、職務に励む自分を堂々と邪魔する彼こそは、隠し刀。名無しの権兵衛にして風来坊、得体のしれない人でなしである。余りにも傍若無人が堂に入っているため、家主含めて誰も咎めることもない。人の姿をした野良猫のような存在とも言える。
     その猫は長らく悩んでいることがあるらしい。竹で割ったように人と人の情という面倒な綾を断ち切る彼にしては珍しく、さっさと終わらしにしないでダマになるままで今日もうだうだ意味のないことを垂れ流している。
    「その人を見るたびに胸が苦しくなって、話しにくくなるんだよ。本当はたくさん話しかけたいんだ。なのに、どうしてなんだろうね?喋ってもうまい話もできなくて……まあ、諭吉も知っている通り、俺はつまらない男だから、大した話は元々できないんだけれどな」
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    DONEなんとなく続いている主福で、単品でも読めます。隠し刀の歯を検診する諭吉のお話。ひょっとすると私の性癖とやらは歯なのでは……?何か別の扉を開きかけたので閉じました。
    >前作:『地獄極楽、紙一重』https://poipiku.com/271957/10506541.html
    >まとめ:https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
     歯は面白い。歯は生まれついてのものだけれども、小さいながらに人それぞれの人生を背負ってきている。例えば歯並びが悪く、まるでぼろぼろの塀のような歯は、当人も親も面倒を見る習慣がなかったことを示唆するだろう。貧しさ、衛生観念、無関心、長じても周囲が指摘しなかったか、あるいは永劫頓着しない性格か。多少の懸念が抱かれる。すり減り具合は癖を見抜く術であるし、本数の多い少ないは歴戦の証だ。清国では年齢を歯数とも呼ぶのももっともだろう。
     さて医学を学んだ立場から、多少歯についても心得がある福沢諭吉にとって、情人である隠し刀の歯はなかなかの上物に思われた。栄養状態がやや危惧されるものの、血で繋がれてきたらしい大きめの歯は揃っているし、右奥がややすり減り気味である点は然程心配するものではない。虫歯はなく、欠けもない。良い状態だ。そして何より気に入っているのは――
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    zeppei27

    DONE企画3本目、りひとさんからいただいたご指名の諭吉で、『バウムクーヘンエンド』です。完全に独立した単品だよ!史実で妻帯者だから、ばっちりですね!特に贈る側が気づかないのが好きなので……業が深い仕上がりになりました。
     リクエストありがとうございました!
    輪違 めでたい話である。人と人が縁付き、新しい家門を形成し、将来の繁栄を子子孫孫まで伝えようとする。家族ができる、人生を共に歩む相手ができる、それだけでも十分喜ばしい。
     そんなものは、畢竟自分には縁遠いものであったのだと隠し刀は痛感していた。家を持たず、自由に生き、己なりに人と人との縁を理解し不器用に繋いできたつもりであるが、所詮は枠外の存在である。
    「おめでとう」
    覚悟を決めるために口中で台詞を反芻しながら、長屋で一人、祝儀の品を作る。人生で初めて作るものが、一番の友人のためとは幸運だろう。自分がまた一つ、人らしくなった証だ——この胸をじくじくと痛ませるくだらない想いも含めて。
     何もかも気づくのが遅く、全て手遅れだった。誰も悪くはない、強いていうならば己の不始末と言える。鮮やかな楓が染め抜かれた風呂敷の中に、秘蔵の葉巻をたっぷり詰め込み、仕入れたばかりのウヰスキーボンボンなる菓子を添えたところで、隠し刀は深々とため息をついた。どれほど作業が進もうとも、頭の中は遅々として回らない。数日前に勝海舟邸を訪れた時から、自分の時間は止まったままだった。
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    zeppei27

    DONE何となく続きの主福で、付き合い始めたものの進展せずもだもだする諭吉と、観察者アーネスト・サトウの友情(?)話です。お互いに相手をずるいと思いつつ、つい許してしまうような関係性は微笑ましい。単品でも多分読めるはず!

    前作>
    https://poipiku.com/271957/10313215.html
    帰宅 比翼という鳥は、一羽では飛べない生き物だという。生まれつき、一つの目と一つの翼しか持たず、その片割れとなる相手とぴたりと寄り添って初めて飛べるのだ。無論伝説上の生き物であるのだから現実にはあり得ないものの、対となる相手がいなければどうにも生きることさえ立ち行かないという現象は起こりうる。
     かつての自分であれば鼻で笑ってしまうような想いに、福沢諭吉は今日もむぐむぐと唇を運動させた。ぐっと力を入れていなければ、ついついだらしのない表情を浮かべてしまう。見る人が見れば、自分が誰かを待ちわびていることが手に取るようにわかるに違いない。
     隠し刀と恋をする(そう、自分はけじめをつけたのだ!)ようになって以来、諭吉は一日千秋という言葉の意味を身を以て知った。滅多矢鱈に忙しい相手は、約束なくしては会うことの叶わぬ身である。彼の住まいに誘われたことはあるものの、家主は方々に出掛けてばかりで待ちわびる時間が一層辛くなるだけであった。
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    zeppei27

    DONERONIN主福、前作の何となく続きです。無茶な人助けばかりする隠し刀の姿を見たらば、普通は心配になってしまうのでは?理性的に面倒を避けようとする諭吉の理解を超えた行動なんだろうなあと思うと、ちょっとだけ申し訳なくなります。冷静な人がメチャクチャになってしまう姿は良い。
    前作>
    https://poipiku.com/271957/10302464.html
    名付けたならば まだ熱を持っているような気がする。鏡台の前で髪を整えながら、福沢諭吉は努めて上の空でいようと懸命な努力を続けていた。普段であれば真正面から鏡の中の自分に向き合うところが、今日はどうにも難しい。否、この数日ほどはずっと同じ煩悶を繰り返しては鎮めていた。毎日見てそらで思い出せるような自分の顔など、今更何を感じよう。形ばかりの気合を入れてちら、と鏡を見てう、と思わず呻き声が出た。
    「いつもと同じ、のはずなんですけれどもね」
    どうしてこうも面映さが沸々と胸の中を満たしてゆくものか。ちらりと一瞬見ただけで、自分に向けられた眼差しの熱さまで思い起こされて頬が上気する。数奇な出会いを経た友人かつ一教子に過ぎないはずの隠し刀が、戯れともつかぬ誘いかけで自分の顎に触れた。太く節くれだった指先は戸惑う諭吉の唇をこじ開け――狼藉はそこまでだった。悪戯げな囁きを残して、全ては何事もなかったかのように日常に舞い戻っている。
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    zeppei27

    DONE初RONINで気分のままに、隠し刀(男)×諭吉です。どうして契らせてくれないんだ諭吉ぃ!姫扱いをしてきたのにこの仕打ち、昇華させずにはいられませんでした。服装と言い、恥じらいを見せる様子と言い、居合(史実)まで持ち出してきて胸がいっぱいです。理性的な人が熱くなって激情に身を任せる時の勢いって良いですね……。
    舌足らず 横浜貴賓館は今日も活況を呈していた。国も身分も分け隔てなく、世界に対し門戸を開かんとする人々で溢れ、明日への野望や希望がひしめき合って熱気を孕んでいる。交わされる言葉はほぼ日本語ではなく、目を閉じて仕舞えばここが日本であることをも忘れてしまうような様相である。長らく鎖国を強いてきた国とは思えぬ状態で、十年前の日本人であれば誰もが想像だにしなかっただろう。
     ここに、輝かんばかりの明日が見えようとしている。福沢諭吉もまた、そんな足掛かりを得るべく出入りする人間の一人だった。当初は幕府外国方として公文書を翻訳するためだけであったが、今では出入りする人々に日本語を教えるという小遣い稼ぎもできて一石二鳥である。とりわけアーネスト・サトウは、並々ならぬ熱意を持って学ぼうという姿勢が面白く、彼に教える時間が公務に計算されることも含めて希少な存在だ。本居宣長に興味を持ち、和歌を嗜もうとする英国人など、彼の母国でも滅多におるまい。彼との交流は、諭吉に母国に対する新しい見方を発見させる刺激的な時間だった。
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    miomiowo

    DONE趣味の詰め込み。エクソシスト五とストリッパー乙のパロです。五乙固定ですが、ちょこっとモブとの絡み(諭吉を巡って)があったりします
    Last drop of my blood1エクソシスム・アクシズ。
    日本では東京と京都に拠点を構え、各国にも拠点を持つ国際的組織。エクソシスト達が管轄区画にて発生した悪魔関連の一切を執り行うのが専らの活動内容だ。
    ちなみにエクソシスム・アクシズに加入前から独自に活動をしていた帝国時代の特殊祓魔局の名残で、日本ではエクソシストを祓魔官と呼んでいる。

    エクソシスム・アクシズ東京支部は他の省庁と同じく千代田区にビルを構えている。一見他の官公庁やオフィスビルと変わらないが、その地下最下層には内部でも秘密裏になっている大聖堂がある。
    日本に二人しかいない特級祓魔官、五条悟が制服である黒のキャソックを纏い、エレベーターケージのボタンを押す。エレベーターが上昇を始めて最下層から脱すると五条は漸く一息吐いてやれやれと肩を竦めた。隠しエレベーターから降りて地下駐車場に着くと1台のセダンが五条の前に近づく。リアシートに乗り込んだ五条は、組んだ脚の上にスマホを放り出してシートポケットからキャンディ包みのチョコレートを取り出した。
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