諭吉
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。御前試合の後、隠し刀が諭吉に髪を整えてもらうお話です。諭吉の断髪式に立ち会いたかった……!どうしてなんだ、諭吉!>前作:探り合い
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まとめ
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枝を惜しむ もう朝である。障子を通り過ぎた陽の光に瞼をぴくりと動かすと、諭吉はうっすらと浮かび上がっていた意識を完全に現実へと上陸させた。つい先ごろうたた寝をしながら書物を読んでいたつもりが、いつの間にやら轟沈してしまったらしい。やるべきことは山積していると言うのに、ままならぬものである。光陰矢の如しというが、このところは本当に年中時間が勝手に体を通り抜けていっているような気がしている。国全体が大きなうねりの中にあって、置いていかれぬためには必死で鮪のように泳ぎ続けねばならない。
無意識のままに簡単に身支度を整え、ここが勝海舟の邸だということを再認する。要するに仕事で一日を食い潰したのだろう。どこを向いても自分くらいしかできないだろうという未来が転がっているので、少しも気の休まる日がない。顔を洗ってもしっくりしないので、朝食を終えたら(もちろん太っ腹な勝であれば出してくれるに決まっている)朝湯に行って仕切り直しを図ろうか。鏡を見て、自分の髪を整え直し――諭吉は鏡の端に写った相手に会釈した。
4937無意識のままに簡単に身支度を整え、ここが勝海舟の邸だということを再認する。要するに仕事で一日を食い潰したのだろう。どこを向いても自分くらいしかできないだろうという未来が転がっているので、少しも気の休まる日がない。顔を洗ってもしっくりしないので、朝食を終えたら(もちろん太っ腹な勝であれば出してくれるに決まっている)朝湯に行って仕切り直しを図ろうか。鏡を見て、自分の髪を整え直し――諭吉は鏡の端に写った相手に会釈した。
hoshina0018
DONE主福です。酔ってやらかした諭吉と、それに付き合う刀の話冷凍室+(愛+ス)= 職場から帰宅し、ウイスキーの入ったグラスを片手にぼうっと独りテレビを見ている福沢の顔は、若干目が据わっており、彼にしてはだいぶ酔っていた。
目線の先に流れている映像は、今人気の女優が、「頑張った自分へのご褒美に」と、少しお高めのカップアイスを口に運んで顔を綻ばせているところで、ふと、福沢は何か思い出したのか、おもむろに携帯を手に取り操作し始める。
操作が終わり、ソファに携帯を投げ出すと、天井を見上げ口角がゆるりと上がった。
◇◇◇
窓から建ち並ぶビルのあちらこちらで電気がついているのを横目に見ながら、自販機の前でコーヒーを飲んでいた時、ヒップポケットに入っている携帯が震えた。
手に取り、画面を見ると恋人の名が表示されており、直ぐに通話ボタンを押す。
6307目線の先に流れている映像は、今人気の女優が、「頑張った自分へのご褒美に」と、少しお高めのカップアイスを口に運んで顔を綻ばせているところで、ふと、福沢は何か思い出したのか、おもむろに携帯を手に取り操作し始める。
操作が終わり、ソファに携帯を投げ出すと、天井を見上げ口角がゆるりと上がった。
◇◇◇
窓から建ち並ぶビルのあちらこちらで電気がついているのを横目に見ながら、自販機の前でコーヒーを飲んでいた時、ヒップポケットに入っている携帯が震えた。
手に取り、画面を見ると恋人の名が表示されており、直ぐに通話ボタンを押す。
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。勝邸で、勝・龍馬・諭吉・刀が、お互いを素知らぬ顔で観察しながら仲良く腹ごしらえをするお話です。>前作:春待顔
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まとめ
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探り合い 食事とは、元来生きる限りは必要な行為だ。寝て、起きて、食べる。他の行動がどれほど違い、中身が異なれども誰しも等しく日々行うだろう。それを不便だと思う向きもあるが、福沢諭吉にとっては人生の楽しみの一つだった。都度豪勢なものを、と言わずとも美味しいものを食べたいと願うし、可能な限り好む人と喜びを分かち合いたいとも考えている。
要するに食事とは、”場”なのだった。美味しさは状況により大きく異なる。家族、友人、知人、見知らぬ人同士と共に、戦場で食べれば楽しむ暇などなく忙しなく、心置きなく寛げる宴であれば、粗末な食べ物でさえも極上の逸品に変わる。だが同時に――同席者を観察する格好の場であることを、これまで一度も意識したことがなかった。
6823要するに食事とは、”場”なのだった。美味しさは状況により大きく異なる。家族、友人、知人、見知らぬ人同士と共に、戦場で食べれば楽しむ暇などなく忙しなく、心置きなく寛げる宴であれば、粗末な食べ物でさえも極上の逸品に変わる。だが同時に――同席者を観察する格好の場であることを、これまで一度も意識したことがなかった。
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DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。数年間の別離を経て、江戸で再会する隠し刀と諭吉。以前とは異なってしまった互いが、もう一度一緒に前を向くお話です。遊郭の諭吉はなんで振り返れないんですか?>前作:ハレノヒ
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まとめ
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答え 今年も春は鬱陶しいほどに浮かれていた。だんだんと陽が熟していくのだが、見せかけばかりでちっとも中身が伴わない。自分の中での季節は死んでしまったのだ、と隠し刀は長屋の庭に咲く蒲公英に虚な瞳を向けた。季節を感じ取れるようになったのはつい数年前だと言うのに、人並みの感覚を理解した端から既に呪わしく感じている。いっそ人間ではなく木石であれば、どんなに気が楽だったろう。
それもこれも、縁のもつれ、自分の思い通りにならぬ執着に端を発する。三年前、たったの三年前に、隠し刀は恋に落ちた。相手は自分のような血腥い人生からは丸切り程遠い、福沢諭吉である。幕府の官吏であり、西洋というまだ見ぬ世界への強い憧れを抱く、明るい未来を宿した人だった。身綺麗で清廉潔白なようで、酒と煙草が大好物だし、愚痴もこぼす、子供っぽい甘えや悪戯っけを浴びているうちに深みに嵌ったと言って良い。彼と過ごした時間に一切恥はなく、また彼と一緒に歩んでいきたいともがく自分自身は好きだった。
18819それもこれも、縁のもつれ、自分の思い通りにならぬ執着に端を発する。三年前、たったの三年前に、隠し刀は恋に落ちた。相手は自分のような血腥い人生からは丸切り程遠い、福沢諭吉である。幕府の官吏であり、西洋というまだ見ぬ世界への強い憧れを抱く、明るい未来を宿した人だった。身綺麗で清廉潔白なようで、酒と煙草が大好物だし、愚痴もこぼす、子供っぽい甘えや悪戯っけを浴びているうちに深みに嵌ったと言って良い。彼と過ごした時間に一切恥はなく、また彼と一緒に歩んでいきたいともがく自分自身は好きだった。
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。前作を読んだ方がより楽しめるかもしれません。遅刻しましたが、明けましておめでとう、そして誕生日おめでとう~!会えなくなってしまった隠し刀が、諭吉の誕生日を祝う短いお話です。>前作:岐路
https://poipiku.com/271957/11198248.html
まとめ
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ハレノヒ 正月を迎えた江戸は、今や一面雪景色である。銀白色が陽光を跳ね返して眩しく、子供らが面白がってザクザクと踏み、かつまた往来であることを気にもせず雪合戦に興じるものだからひどく喧しい。しかしそれがどんどんと降り積もる量が多くなってきたとなれば、正月を祝ってばかりもいられない。交通量の多い道道では、つるりと滑れば大事故に繋がる可能性が高い。
自然、雪国ほどの大袈裟なものではないが、毎朝毎夕に雪かきをしては路肩にどんと積み上げるのが日課に組み込まれるというもので、木村芥舟の家に住み込んでいた福沢諭吉も免れることは不可能だ。寧ろ家中で一番の頼れる若手として期待され、庭に積もった雪をせっせと外に捨てる任務を命じられていた。これも米国に渡るため、芥舟の従者として咸臨丸に乗るためだと思えば安い。実際、快く引き受けた諭吉の態度は好意的に受け止められている。今日はもう雪よ降ってくれるなと願いながら庭の縁側で休んでいると、老女中がそっと茶を差し入れてくれた。
2769自然、雪国ほどの大袈裟なものではないが、毎朝毎夕に雪かきをしては路肩にどんと積み上げるのが日課に組み込まれるというもので、木村芥舟の家に住み込んでいた福沢諭吉も免れることは不可能だ。寧ろ家中で一番の頼れる若手として期待され、庭に積もった雪をせっせと外に捨てる任務を命じられていた。これも米国に渡るため、芥舟の従者として咸臨丸に乗るためだと思えば安い。実際、快く引き受けた諭吉の態度は好意的に受け止められている。今日はもう雪よ降ってくれるなと願いながら庭の縁側で休んでいると、老女中がそっと茶を差し入れてくれた。
hoshina0018
DONE現パロ主福です。ノンデリな隠し刀とツンデレ気味な諭吉の年越しのお話。
年明けまで つけっぱなしのテレビから年末の特別番組が流れていて、芸能人の笑い声が部屋に響く。真剣に見ている訳でなく、ただのBGMと化してるそれは、同棲している二人にとっては日常茶飯事の事である。
ここ数日で一年の部屋の汚れも大掃除で綺麗さっぱりと落とし、正月飾りも出した。あとは年が明けるのを待つのみとなった。
外では粉雪が僅かに降っており、窓からそれを眺めながらちびちびと酒を飲み進める隠し刀と、同じく酒を飲みながら本を読み耽っている福沢諭吉は、半纏を着て炬燵でぬくぬくと暖を取っている。
突如、隠し刀が腰を上げ、テーブル越しに福沢へ近付いてきた。本に影が落ちて読みにくくなったが、すぐ退くだろうと気にせず文字を追う。しかし全く動く気配が無く、流石に変に思った福沢は顔を上げると、そのまま動かないでくれ、と言われ、訳も分からぬまま固まった。
4740ここ数日で一年の部屋の汚れも大掃除で綺麗さっぱりと落とし、正月飾りも出した。あとは年が明けるのを待つのみとなった。
外では粉雪が僅かに降っており、窓からそれを眺めながらちびちびと酒を飲み進める隠し刀と、同じく酒を飲みながら本を読み耽っている福沢諭吉は、半纏を着て炬燵でぬくぬくと暖を取っている。
突如、隠し刀が腰を上げ、テーブル越しに福沢へ近付いてきた。本に影が落ちて読みにくくなったが、すぐ退くだろうと気にせず文字を追う。しかし全く動く気配が無く、流石に変に思った福沢は顔を上げると、そのまま動かないでくれ、と言われ、訳も分からぬまま固まった。
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DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。諭吉が隠し刀の爪を切る話。意味があるようでないような、尤もなようで馬鹿馬鹿しいささやかな読み合いです。相手の爪を切る動作って、ちょっと良いですね……>前作:黄金時間
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>まとめ
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鹿爪 冬は、朝だという。かの清少納言の言は、数百年経った今でも尚十分通じる感覚だろう。福沢諭吉は湯屋の二階で窓の隙間から、そっと町が活気付いてゆく様を眺めていた。きりりと引き締まった冷たい空気に起こされ、その清涼さに浸った後、少しでも暖を取ろうとする一連の朝課に趣を感じられる。霜柱は先日踏んだ――情人である隠し刀とぱり、さく、ざく、と子供のように音の違いを楽しんで辺り一面を蹂躙した。雪は恐らく、そう遠くないうちにお目にかかるだろう。
諭吉にとっての冬の朝の楽しみとは、朝湯に入ることだった。寒さで目覚め、冷えた体をゆるりと温める。朝湯は生まれたてのお湯が瑞々しく、体の隅々まで染み通って活きが良い。一息つくどころか何十年も若返るかのような心地にさせてくれる。特に、隠し刀が常連である湯屋は湯だけでなく様々な心尽くしがあるため、過ごしやすい。例えば今も、半ば専用の部屋のようなものが用意され、隠し刀と諭吉は二人してだらけている。
4741諭吉にとっての冬の朝の楽しみとは、朝湯に入ることだった。寒さで目覚め、冷えた体をゆるりと温める。朝湯は生まれたてのお湯が瑞々しく、体の隅々まで染み通って活きが良い。一息つくどころか何十年も若返るかのような心地にさせてくれる。特に、隠し刀が常連である湯屋は湯だけでなく様々な心尽くしがあるため、過ごしやすい。例えば今も、半ば専用の部屋のようなものが用意され、隠し刀と諭吉は二人してだらけている。
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DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。webオンリーで先行公開していたものです。横浜で出会う人々で開く天麩羅パーティと、可愛くてずるい情人・諭吉のお話です。>前作:鬼が笑う
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>まとめ
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黄金時間 何かと鋏は使いよう、と同じことで、どんな道具であろうと人であろうと、使い方一つで無限に可能性を秘めている。僅かながらの知恵で工夫を凝らし、己自身の研鑽を積んできた隠し刀にとって、進歩とは文字通り一歩一歩進む地道なものだった。人間はいきなり跳べたりはしない。全身の筋肉を鍛え、どこへ向かえば良いのか判断するための知識が必要だ。
ところが世界は広いもので、進歩が駆け足どころか悠々と遥か遠くへと飛躍することもある。阿鼻機流はその最たる例だ。滑空の理屈は解れども、鳥のように飛ぶ発想は到底抱けない。思いつけること自体が一種の才能と言えるだろう。郷里の行き詰まった――ある種、一つの技術を突き詰めることに徹していた――社会から出た隠し刀は、長屋にやってきたその天賦の才能の持ち主を笑顔で出迎えた。
7791ところが世界は広いもので、進歩が駆け足どころか悠々と遥か遠くへと飛躍することもある。阿鼻機流はその最たる例だ。滑空の理屈は解れども、鳥のように飛ぶ発想は到底抱けない。思いつけること自体が一種の才能と言えるだろう。郷里の行き詰まった――ある種、一つの技術を突き詰めることに徹していた――社会から出た隠し刀は、長屋にやってきたその天賦の才能の持ち主を笑顔で出迎えた。
hoshina0018
DONE睡眠不足な諭吉を寝かせたい隠し刀の話。主→福色々とご都合主義です。
いいから寝てくれ! これでいい加減寝てくれ───
隠し刀は暗い天井裏から切に願った。
その手には香炉が握られており、煙が下へ下へと滝のように流れている。
周りを見渡せばあちらこちらに蜘蛛の巣が張り巡らされ、鼠が埃っぽい天井板をうろちょろと走っている。
なぜこの様な状況下にいるのか、事の発端は数日前に遡る。
隠し刀は気になっている事があった。それは彼の目の下に携えている隈だ。
勤めの他に西洋医学、語学の勉学、居合の鍛錬などなど、多忙極まりない日々を送っているのは知っていたが、更に最近、労咳を治す薬のきっかけになるかもしれないと金色の花を咲かせた竹の根元の土を拝借したばかりで、今はその研究にも勤しんでいる。
日に日に疲労が濃くなっていく顔に、自身も忙しく走り回っている身ではあるが流石に心配になるほどだ。
8535隠し刀は暗い天井裏から切に願った。
その手には香炉が握られており、煙が下へ下へと滝のように流れている。
周りを見渡せばあちらこちらに蜘蛛の巣が張り巡らされ、鼠が埃っぽい天井板をうろちょろと走っている。
なぜこの様な状況下にいるのか、事の発端は数日前に遡る。
隠し刀は気になっている事があった。それは彼の目の下に携えている隈だ。
勤めの他に西洋医学、語学の勉学、居合の鍛錬などなど、多忙極まりない日々を送っているのは知っていたが、更に最近、労咳を治す薬のきっかけになるかもしれないと金色の花を咲かせた竹の根元の土を拝借したばかりで、今はその研究にも勤しんでいる。
日に日に疲労が濃くなっていく顔に、自身も忙しく走り回っている身ではあるが流石に心配になるほどだ。
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DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。『拝借』したからには、ね!『返却』しに行く隠し刀と諭吉、そしてFriendペリーの日常話。>前作:柚子
https://poipiku.com/271957/10787205.html
>まとめ
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後始末 子供というのは、社会的にまだまだ分別がつかない生き物だと見なされている。故にどれほど大それた悪戯をしでかそうともそれは悪戯に過ぎず、叱責や多少の罰を受けることはあっても大人のように責任を負わされることはない。例外はあれども、少なくとも福沢諭吉はこれまでちょっとした思いつきで躓く羽目になったことはなかった。長じて分別がついてからは、人の道を外れることもなく、実に品行方正な生き方をしてきたので全ては最早無関係の思い出である。
が、自分の思いつきはどれほど大義名分をつけても免責されぬものであったらしい。珍しく身なりを整えた隠し刀が、彼の家で出迎えてくれたと思えば切り出された提案に、諭吉は目を白黒させるばかりだった。
4694が、自分の思いつきはどれほど大義名分をつけても免責されぬものであったらしい。珍しく身なりを整えた隠し刀が、彼の家で出迎えてくれたと思えば切り出された提案に、諭吉は目を白黒させるばかりだった。
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DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。リクエストをいただいた「料理描写(できれば諭吉で)」をテーマに、柚子尽の宴を開く二人のお話。美味しいものを目一杯!>前作:二人遊び(R18)
https://poipiku.com/271957/10767042.html
>まとめ
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柚子 季節の移ろいを訴えるのは様々で、例えば朝の空気の冷たさや風の香り、鳥や虫の鳴き声、それに葉の色の変化も忘れられない。今年に別れを告げるように一斉に艶やかな着物を纏って賑わせたかと思うとゆっくりと葉を落としてゆく様は、何度目にしても巡り来る年月に胸を震わせられる。別れを告げるのが葉であるならば、彼らの今年を詰め込んだ結果は文字通りその果実だろう。春は桜桃、夏は西瓜、秋は梨、そうして秋が深まって冬に近づいてくると目立つのは、
「良い香りですね」
柚子だ。通り一つ向こうから漂う強い香りに鼻をくすぐられ、福沢諭吉は思わず足を止めた。農家が運んできたのだろうか、俄かに市でも立ったかのように風に乗った香りが人々を誘う。実際既に引き込まれた人々の喧騒で、隠し刀の長屋がある方角は随分と賑わっているようだった。まさか彼が?これから遊びに行こうと計画していたこともあり、諭吉は足を早めた。
8497「良い香りですね」
柚子だ。通り一つ向こうから漂う強い香りに鼻をくすぐられ、福沢諭吉は思わず足を止めた。農家が運んできたのだろうか、俄かに市でも立ったかのように風に乗った香りが人々を誘う。実際既に引き込まれた人々の喧騒で、隠し刀の長屋がある方角は随分と賑わっているようだった。まさか彼が?これから遊びに行こうと計画していたこともあり、諭吉は足を早めた。
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DONE何となく続いている主福の話で、単品でも読めます。人が置いていった物だらけの長屋を整理できない隠し刀と、何故できないかを考えながらお手伝いをする諭吉のお話です。ちょっとしんみり。>前作:ありふれた椿事
https://poipiku.com/271957/10717664.html
>まとめ
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思い出道楽 物、物、物。見るものを圧倒するような無言の存在たちに、福沢諭吉はただただ口をつぐむばかりだった。茶箪笥、書見台、脇息に座布団。座布団の上には信楽焼だろう素朴な猫の焼き物と本物の野良猫が寝転んでいる。埃っぽい床には扇子や団扇が箱に乱雑に入れられ、その隣には端切れの山が茶と書かれた箱にどっさりと積まれていた。上を向けば民芸品の達磨が目のない虚を呈しており、書物も乱雑に散らばってやる気がない。
商品なぞ見つけたい人間だけが見つけるが良い、という堂々たる様子はおよそ店と呼ぶには憚られた。第一、物がひしめき合って店内全体が暗く、入り込んだらば底知れぬほど入り組んでいる。見る者が見れば、これは宝の山なのだろう。現に物の合間から覗く人影は少なくはない。しかし、部外者にしてみればここは塵芥の城にも等しかった。
7090商品なぞ見つけたい人間だけが見つけるが良い、という堂々たる様子はおよそ店と呼ぶには憚られた。第一、物がひしめき合って店内全体が暗く、入り込んだらば底知れぬほど入り組んでいる。見る者が見れば、これは宝の山なのだろう。現に物の合間から覗く人影は少なくはない。しかし、部外者にしてみればここは塵芥の城にも等しかった。
zeppei27
DONEマーカス、君とはもっといろいろ話ができると思っていたのに!横浜貴賓館関係メンバーでワイワイしたい!マーカスのお悩み相談会に、刀が伊賀七とサトウと取り組む話です。諭吉は最後に登場します。>前作:影遊び
https://poipiku.com/271957/10694953.html
>まとめ
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ありふれた椿事 世界は広い。日々の生活に追われていると、目先の環境しか考えられないものだが、その目先をどんどん遠くに伸ばしてゆくとやがては海を出て、そうして別の国にとたどり着くのだから面白い。自分は日本のどこか、ではなく世界のどこか、に暮らしているのだと唐突に思い当たって驚かずにはいられない。隠し刀も、福沢諭吉に出会うまでは自分の住む陸地のことを考えるので精一杯だった。だからこそ、自分の片割れを見つけることができなかったとも言える。
理屈はすんなりと飲み込めた。さりとて日常生活の中で異国に想いを馳せることはまだまだ少ないのが世情で、時折異国のものを見かけ、異人を目にして、ああ世界は広いと想起される程度のことである。ある意味自分よりも、尊王攘夷を唱える志士たちの方が世界を実感していると言えよう。忌み嫌う人間の方が高い意識を抱いているというのは皮肉な話だった。
5880理屈はすんなりと飲み込めた。さりとて日常生活の中で異国に想いを馳せることはまだまだ少ないのが世情で、時折異国のものを見かけ、異人を目にして、ああ世界は広いと想起される程度のことである。ある意味自分よりも、尊王攘夷を唱える志士たちの方が世界を実感していると言えよう。忌み嫌う人間の方が高い意識を抱いているというのは皮肉な話だった。
しとら
DOODLEアートブックの桂さんやばすぎやばすぎエロすぎなんですかあれ!?!?!?!?!?!?!?!?
興奮してどうにかなりそう
ほんとやばい助けて🚑
あと高杉くんはピンクの羽織かわいい
諭吉はなんであんな少ないんですか?衣装のことは自分で調べろってことか??さすが福沢先生…はい…わかりました独学します…衣装剥ぎ取らないと 2
hoshina0018
DONE臆病な隠し刀と恋人の諭吉の話。主福のつもりですが、主福主でも読めると思います。秘密の花園 初冬の肌寒い夕方。木枯らしに負けじと、隠し刀の中にも木の葉を散らすような風が吹いていた。
仕事の報酬を受け取り、長屋へ帰ろうとしていたところ、目の前を歩いていた幼子が、何が気に食わないのかはわからないが駄々をこね、この世の終わりかと思う程の泣き声をあげて母親を困らせていた。
報酬の中にミルク入りしょくらあとがあった事を思い出した隠し刀は足を止め、怖がられぬよう子の目線に近くなるようしゃがんで、しょくらあとをそっと差し出す。
すると、知らない人の出現に驚いたのか、子がぽかんと呆気にとられ、涙が引っ込んだ後、手中の見た事のない物を不思議そうに眺める。
西洋の甘味だと教えると、恐る恐る手に取り、小さく齧ればたちまち笑顔が咲いた。もじもじと恥ずかしそうに、ありがとう、とお礼を言われ、心が温まるのを感じてそっと微笑む。
11347仕事の報酬を受け取り、長屋へ帰ろうとしていたところ、目の前を歩いていた幼子が、何が気に食わないのかはわからないが駄々をこね、この世の終わりかと思う程の泣き声をあげて母親を困らせていた。
報酬の中にミルク入りしょくらあとがあった事を思い出した隠し刀は足を止め、怖がられぬよう子の目線に近くなるようしゃがんで、しょくらあとをそっと差し出す。
すると、知らない人の出現に驚いたのか、子がぽかんと呆気にとられ、涙が引っ込んだ後、手中の見た事のない物を不思議そうに眺める。
西洋の甘味だと教えると、恐る恐る手に取り、小さく齧ればたちまち笑顔が咲いた。もじもじと恥ずかしそうに、ありがとう、とお礼を言われ、心が温まるのを感じてそっと微笑む。
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福で、単品でも読めます。仕事人間の隠し刀を心配したサトウが、権蔵も交えて競馬を観に行くお話です。馬は良い……諭吉は最後に出てきます。>前作:『君は可愛い』
https://poipiku.com/271957/10561821.html
>まとめ
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有意義な休日 あらゆる時間には意味がある。目的があればそれに向かって寸暇を惜しんで努力しなければならないし、生活するためには衣食住を事足りなさせなければならない。他に大切なものができれば、そちらにあらゆるものを惜しみなく注ぐだろう。やるか、やらないかという選択肢はなく、ただやることだけが永遠に続いてゆく。公私の境目などあったものではない。全てが公であり私だった。道具として育てられてきた隠し刀にとって、この『生き方』はごく当たり前のものだが、どうやら世間では少しばかり勝手が違うらしい。
じりり、じりり、と両腕に力をこめながら薬研を均等に動かす。前へ、後ろへ。無心にこなせる作業なので、慎重を要するとはいえ思考を他に使える点で好ましい。じー、じっ、ざりりという音が長屋に充満するのも時間を刻むようで耳心地が良い。一個できた分を油紙に包んで軽く捻る。材料を補充し、薬研に手をかけたところで道具よりも先にしゃがれ声が割入った。縁側で猫と遊んでいる権蔵だろう。
11217じりり、じりり、と両腕に力をこめながら薬研を均等に動かす。前へ、後ろへ。無心にこなせる作業なので、慎重を要するとはいえ思考を他に使える点で好ましい。じー、じっ、ざりりという音が長屋に充満するのも時間を刻むようで耳心地が良い。一個できた分を油紙に包んで軽く捻る。材料を補充し、薬研に手をかけたところで道具よりも先にしゃがれ声が割入った。縁側で猫と遊んでいる権蔵だろう。
zeppei27
DONE完全単品・読切の主福で、隠し刀の恋愛相談を受けるうちに恋に落ちる諭吉の話です。ワンドロに参加できないから……いつもの二人は時系列が合わなくて……ここにしか打ち上げられないものを書いてみました。ミイラ取りがミイラになる話が好きです。雨天決行 ああ、それは恋という奴だ。人のありように一過言ある、悪く言えば斜に構えた福沢諭吉は、流暢に語る男の横顔を呆然と眺めた。勝海舟の屋敷に我が物顔で上がり込み、職務に励む自分を堂々と邪魔する彼こそは、隠し刀。名無しの権兵衛にして風来坊、得体のしれない人でなしである。余りにも傍若無人が堂に入っているため、家主含めて誰も咎めることもない。人の姿をした野良猫のような存在とも言える。
その猫は長らく悩んでいることがあるらしい。竹で割ったように人と人の情という面倒な綾を断ち切る彼にしては珍しく、さっさと終わらしにしないでダマになるままで今日もうだうだ意味のないことを垂れ流している。
「その人を見るたびに胸が苦しくなって、話しにくくなるんだよ。本当はたくさん話しかけたいんだ。なのに、どうしてなんだろうね?喋ってもうまい話もできなくて……まあ、諭吉も知っている通り、俺はつまらない男だから、大した話は元々できないんだけれどな」
9147その猫は長らく悩んでいることがあるらしい。竹で割ったように人と人の情という面倒な綾を断ち切る彼にしては珍しく、さっさと終わらしにしないでダマになるままで今日もうだうだ意味のないことを垂れ流している。
「その人を見るたびに胸が苦しくなって、話しにくくなるんだよ。本当はたくさん話しかけたいんだ。なのに、どうしてなんだろうね?喋ってもうまい話もできなくて……まあ、諭吉も知っている通り、俺はつまらない男だから、大した話は元々できないんだけれどな」
zeppei27
DONEなんとなく続いている主福で、単品でも読めます。隠し刀の歯を検診する諭吉のお話。ひょっとすると私の性癖とやらは歯なのでは……?何か別の扉を開きかけたので閉じました。>前作:『地獄極楽、紙一重』https://poipiku.com/271957/10506541.html
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痕 歯は面白い。歯は生まれついてのものだけれども、小さいながらに人それぞれの人生を背負ってきている。例えば歯並びが悪く、まるでぼろぼろの塀のような歯は、当人も親も面倒を見る習慣がなかったことを示唆するだろう。貧しさ、衛生観念、無関心、長じても周囲が指摘しなかったか、あるいは永劫頓着しない性格か。多少の懸念が抱かれる。すり減り具合は癖を見抜く術であるし、本数の多い少ないは歴戦の証だ。清国では年齢を歯数とも呼ぶのももっともだろう。
さて医学を学んだ立場から、多少歯についても心得がある福沢諭吉にとって、情人である隠し刀の歯はなかなかの上物に思われた。栄養状態がやや危惧されるものの、血で繋がれてきたらしい大きめの歯は揃っているし、右奥がややすり減り気味である点は然程心配するものではない。虫歯はなく、欠けもない。良い状態だ。そして何より気に入っているのは――
3678さて医学を学んだ立場から、多少歯についても心得がある福沢諭吉にとって、情人である隠し刀の歯はなかなかの上物に思われた。栄養状態がやや危惧されるものの、血で繋がれてきたらしい大きめの歯は揃っているし、右奥がややすり減り気味である点は然程心配するものではない。虫歯はなく、欠けもない。良い状態だ。そして何より気に入っているのは――
zeppei27
DONE何となく続いている主福で、単品でも読めます。人斬りの現場を見られて逃げる隠し刀と、相手の本性に触れて悩み、砕いて進む諭吉のお話です。人でなしが人になってゆく、それを元に相手と起こす化学反応は楽しい……!>前作『煙に抱く』https://poipiku.com/271957/10442688.html
>まとめ https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
人でなしの恋 江戸近隣で最も西洋に近い場所と言えば横浜だろう。外国人居留地に住む人々の生活のため、あるいは元より商売のために運ばれてきた文物がこれでもかと店先に並べられている。骨董通りなぞに店を構える日本人にいたっては、片言の英語による異人たちとの値段交渉がすっかり板についていた。
早く自分自身が米国に行きたいと気が逸る福沢諭吉は、横浜貴賓館で異人たちと交流することに加えて、異国の書物からの情報収集に余念がない。今日も長らく待ちわびていた、医学雑誌(そんなものが欧米諸国にはあるのだ)が店に届いたと知らせを受け、弾むような足取りで本町を歩いていた。この辺りは西洋式の建築物が多く、ちょっとした異国旅行のような気分にさせてくれる点も良い。
10343早く自分自身が米国に行きたいと気が逸る福沢諭吉は、横浜貴賓館で異人たちと交流することに加えて、異国の書物からの情報収集に余念がない。今日も長らく待ちわびていた、医学雑誌(そんなものが欧米諸国にはあるのだ)が店に届いたと知らせを受け、弾むような足取りで本町を歩いていた。この辺りは西洋式の建築物が多く、ちょっとした異国旅行のような気分にさせてくれる点も良い。
zeppei27
DONE企画3本目、りひとさんからいただいたご指名の諭吉で、『バウムクーヘンエンド』です。完全に独立した単品だよ!史実で妻帯者だから、ばっちりですね!特に贈る側が気づかないのが好きなので……業が深い仕上がりになりました。リクエストありがとうございました!
輪違 めでたい話である。人と人が縁付き、新しい家門を形成し、将来の繁栄を子子孫孫まで伝えようとする。家族ができる、人生を共に歩む相手ができる、それだけでも十分喜ばしい。
そんなものは、畢竟自分には縁遠いものであったのだと隠し刀は痛感していた。家を持たず、自由に生き、己なりに人と人との縁を理解し不器用に繋いできたつもりであるが、所詮は枠外の存在である。
「おめでとう」
覚悟を決めるために口中で台詞を反芻しながら、長屋で一人、祝儀の品を作る。人生で初めて作るものが、一番の友人のためとは幸運だろう。自分がまた一つ、人らしくなった証だ——この胸をじくじくと痛ませるくだらない想いも含めて。
何もかも気づくのが遅く、全て手遅れだった。誰も悪くはない、強いていうならば己の不始末と言える。鮮やかな楓が染め抜かれた風呂敷の中に、秘蔵の葉巻をたっぷり詰め込み、仕入れたばかりのウヰスキーボンボンなる菓子を添えたところで、隠し刀は深々とため息をついた。どれほど作業が進もうとも、頭の中は遅々として回らない。数日前に勝海舟邸を訪れた時から、自分の時間は止まったままだった。
4395そんなものは、畢竟自分には縁遠いものであったのだと隠し刀は痛感していた。家を持たず、自由に生き、己なりに人と人との縁を理解し不器用に繋いできたつもりであるが、所詮は枠外の存在である。
「おめでとう」
覚悟を決めるために口中で台詞を反芻しながら、長屋で一人、祝儀の品を作る。人生で初めて作るものが、一番の友人のためとは幸運だろう。自分がまた一つ、人らしくなった証だ——この胸をじくじくと痛ませるくだらない想いも含めて。
何もかも気づくのが遅く、全て手遅れだった。誰も悪くはない、強いていうならば己の不始末と言える。鮮やかな楓が染め抜かれた風呂敷の中に、秘蔵の葉巻をたっぷり詰め込み、仕入れたばかりのウヰスキーボンボンなる菓子を添えたところで、隠し刀は深々とため息をついた。どれほど作業が進もうとも、頭の中は遅々として回らない。数日前に勝海舟邸を訪れた時から、自分の時間は止まったままだった。
zeppei27
DONEなんとなく続きの主福で、単品でも読めます。付き合ってから積極性を増す諭吉にドギマギする隠し刀と、見守る櫻屋・勝のお話です。物覚えがいい人に教えたら思いもよらぬ反撃を受けるって良いですね!多生之縁 とんでもない人物に、とんでもないことを教えてしまった。罪悪感と背徳感から、隠し刀は柄にもなく深い悔恨の念を抱いていた。まさかこんなことになるとは、まるで予想がつかなかったと言えば嘘になる。それでも可能性は低いと思っていたのだ。何しろ隠し刀が己の手腕を染み込ませた相手は、かの理性の人・福沢諭吉なのである。
「考え事ですか?」
ひそりとした声に思考の波から戻ると、隠し刀は小首を傾げる諭吉の頬を手の甲で撫でた。すりり、とすかさず寄って顔を綻ばせる情人は可愛いと同時に末恐ろしい。付き合いたての頃であれば、何をするんです!などと恥ずかしがって逃げ出していただろうに、今では危うくこちらが取り込まれそうになる。人通りが少ないとはいえ、二人がいる場所は横浜貴賓館の図書室なのだ。
13754「考え事ですか?」
ひそりとした声に思考の波から戻ると、隠し刀は小首を傾げる諭吉の頬を手の甲で撫でた。すりり、とすかさず寄って顔を綻ばせる情人は可愛いと同時に末恐ろしい。付き合いたての頃であれば、何をするんです!などと恥ずかしがって逃げ出していただろうに、今では危うくこちらが取り込まれそうになる。人通りが少ないとはいえ、二人がいる場所は横浜貴賓館の図書室なのだ。
zeppei27
DONE何となく続きの主福で、付き合い始めたものの進展せずもだもだする諭吉と、観察者アーネスト・サトウの友情(?)話です。お互いに相手をずるいと思いつつ、つい許してしまうような関係性は微笑ましい。単品でも多分読めるはず!前作>
https://poipiku.com/271957/10313215.html
帰宅 比翼という鳥は、一羽では飛べない生き物だという。生まれつき、一つの目と一つの翼しか持たず、その片割れとなる相手とぴたりと寄り添って初めて飛べるのだ。無論伝説上の生き物であるのだから現実にはあり得ないものの、対となる相手がいなければどうにも生きることさえ立ち行かないという現象は起こりうる。
かつての自分であれば鼻で笑ってしまうような想いに、福沢諭吉は今日もむぐむぐと唇を運動させた。ぐっと力を入れていなければ、ついついだらしのない表情を浮かべてしまう。見る人が見れば、自分が誰かを待ちわびていることが手に取るようにわかるに違いない。
隠し刀と恋をする(そう、自分はけじめをつけたのだ!)ようになって以来、諭吉は一日千秋という言葉の意味を身を以て知った。滅多矢鱈に忙しい相手は、約束なくしては会うことの叶わぬ身である。彼の住まいに誘われたことはあるものの、家主は方々に出掛けてばかりで待ちわびる時間が一層辛くなるだけであった。
7614かつての自分であれば鼻で笑ってしまうような想いに、福沢諭吉は今日もむぐむぐと唇を運動させた。ぐっと力を入れていなければ、ついついだらしのない表情を浮かべてしまう。見る人が見れば、自分が誰かを待ちわびていることが手に取るようにわかるに違いない。
隠し刀と恋をする(そう、自分はけじめをつけたのだ!)ようになって以来、諭吉は一日千秋という言葉の意味を身を以て知った。滅多矢鱈に忙しい相手は、約束なくしては会うことの叶わぬ身である。彼の住まいに誘われたことはあるものの、家主は方々に出掛けてばかりで待ちわびる時間が一層辛くなるだけであった。
zeppei27
DONERONIN主福、前作の何となく続きです。無茶な人助けばかりする隠し刀の姿を見たらば、普通は心配になってしまうのでは?理性的に面倒を避けようとする諭吉の理解を超えた行動なんだろうなあと思うと、ちょっとだけ申し訳なくなります。冷静な人がメチャクチャになってしまう姿は良い。前作>
https://poipiku.com/271957/10302464.html
名付けたならば まだ熱を持っているような気がする。鏡台の前で髪を整えながら、福沢諭吉は努めて上の空でいようと懸命な努力を続けていた。普段であれば真正面から鏡の中の自分に向き合うところが、今日はどうにも難しい。否、この数日ほどはずっと同じ煩悶を繰り返しては鎮めていた。毎日見てそらで思い出せるような自分の顔など、今更何を感じよう。形ばかりの気合を入れてちら、と鏡を見てう、と思わず呻き声が出た。
「いつもと同じ、のはずなんですけれどもね」
どうしてこうも面映さが沸々と胸の中を満たしてゆくものか。ちらりと一瞬見ただけで、自分に向けられた眼差しの熱さまで思い起こされて頬が上気する。数奇な出会いを経た友人かつ一教子に過ぎないはずの隠し刀が、戯れともつかぬ誘いかけで自分の顎に触れた。太く節くれだった指先は戸惑う諭吉の唇をこじ開け――狼藉はそこまでだった。悪戯げな囁きを残して、全ては何事もなかったかのように日常に舞い戻っている。
5259「いつもと同じ、のはずなんですけれどもね」
どうしてこうも面映さが沸々と胸の中を満たしてゆくものか。ちらりと一瞬見ただけで、自分に向けられた眼差しの熱さまで思い起こされて頬が上気する。数奇な出会いを経た友人かつ一教子に過ぎないはずの隠し刀が、戯れともつかぬ誘いかけで自分の顎に触れた。太く節くれだった指先は戸惑う諭吉の唇をこじ開け――狼藉はそこまでだった。悪戯げな囁きを残して、全ては何事もなかったかのように日常に舞い戻っている。
zeppei27
DONE初RONINで気分のままに、隠し刀(男)×諭吉です。どうして契らせてくれないんだ諭吉ぃ!姫扱いをしてきたのにこの仕打ち、昇華させずにはいられませんでした。服装と言い、恥じらいを見せる様子と言い、居合(史実)まで持ち出してきて胸がいっぱいです。理性的な人が熱くなって激情に身を任せる時の勢いって良いですね……。舌足らず 横浜貴賓館は今日も活況を呈していた。国も身分も分け隔てなく、世界に対し門戸を開かんとする人々で溢れ、明日への野望や希望がひしめき合って熱気を孕んでいる。交わされる言葉はほぼ日本語ではなく、目を閉じて仕舞えばここが日本であることをも忘れてしまうような様相である。長らく鎖国を強いてきた国とは思えぬ状態で、十年前の日本人であれば誰もが想像だにしなかっただろう。
ここに、輝かんばかりの明日が見えようとしている。福沢諭吉もまた、そんな足掛かりを得るべく出入りする人間の一人だった。当初は幕府外国方として公文書を翻訳するためだけであったが、今では出入りする人々に日本語を教えるという小遣い稼ぎもできて一石二鳥である。とりわけアーネスト・サトウは、並々ならぬ熱意を持って学ぼうという姿勢が面白く、彼に教える時間が公務に計算されることも含めて希少な存在だ。本居宣長に興味を持ち、和歌を嗜もうとする英国人など、彼の母国でも滅多におるまい。彼との交流は、諭吉に母国に対する新しい見方を発見させる刺激的な時間だった。
3493ここに、輝かんばかりの明日が見えようとしている。福沢諭吉もまた、そんな足掛かりを得るべく出入りする人間の一人だった。当初は幕府外国方として公文書を翻訳するためだけであったが、今では出入りする人々に日本語を教えるという小遣い稼ぎもできて一石二鳥である。とりわけアーネスト・サトウは、並々ならぬ熱意を持って学ぼうという姿勢が面白く、彼に教える時間が公務に計算されることも含めて希少な存在だ。本居宣長に興味を持ち、和歌を嗜もうとする英国人など、彼の母国でも滅多におるまい。彼との交流は、諭吉に母国に対する新しい見方を発見させる刺激的な時間だった。
MONO
PROGRESS【現パロ 作業進捗】昨日から映画悪いもん一番くじが始まりましたね!(そんな名前ではない)
普段はやらないんですが今回はタレ様の為に頑張りました。
むしろ頑張り過ぎて諭吉っぴが数名行方不明に…(^-^)アレアレ?
でもお陰様でお迎えできました。
うなだれながら最後に10枚買って10枚目でタレ様出てきた時は店員さんも一緒に興奮してくれたのでいい思い出です。
(いよいよ原稿と関係ないw)
miomiowo
DONE趣味の詰め込み。エクソシスト五とストリッパー乙のパロです。五乙固定ですが、ちょこっとモブとの絡み(諭吉を巡って)があったりしますLast drop of my blood1エクソシスム・アクシズ。
日本では東京と京都に拠点を構え、各国にも拠点を持つ国際的組織。エクソシスト達が管轄区画にて発生した悪魔関連の一切を執り行うのが専らの活動内容だ。
ちなみにエクソシスム・アクシズに加入前から独自に活動をしていた帝国時代の特殊祓魔局の名残で、日本ではエクソシストを祓魔官と呼んでいる。
エクソシスム・アクシズ東京支部は他の省庁と同じく千代田区にビルを構えている。一見他の官公庁やオフィスビルと変わらないが、その地下最下層には内部でも秘密裏になっている大聖堂がある。
日本に二人しかいない特級祓魔官、五条悟が制服である黒のキャソックを纏い、エレベーターケージのボタンを押す。エレベーターが上昇を始めて最下層から脱すると五条は漸く一息吐いてやれやれと肩を竦めた。隠しエレベーターから降りて地下駐車場に着くと1台のセダンが五条の前に近づく。リアシートに乗り込んだ五条は、組んだ脚の上にスマホを放り出してシートポケットからキャンディ包みのチョコレートを取り出した。
6698日本では東京と京都に拠点を構え、各国にも拠点を持つ国際的組織。エクソシスト達が管轄区画にて発生した悪魔関連の一切を執り行うのが専らの活動内容だ。
ちなみにエクソシスム・アクシズに加入前から独自に活動をしていた帝国時代の特殊祓魔局の名残で、日本ではエクソシストを祓魔官と呼んでいる。
エクソシスム・アクシズ東京支部は他の省庁と同じく千代田区にビルを構えている。一見他の官公庁やオフィスビルと変わらないが、その地下最下層には内部でも秘密裏になっている大聖堂がある。
日本に二人しかいない特級祓魔官、五条悟が制服である黒のキャソックを纏い、エレベーターケージのボタンを押す。エレベーターが上昇を始めて最下層から脱すると五条は漸く一息吐いてやれやれと肩を竦めた。隠しエレベーターから降りて地下駐車場に着くと1台のセダンが五条の前に近づく。リアシートに乗り込んだ五条は、組んだ脚の上にスマホを放り出してシートポケットからキャンディ包みのチョコレートを取り出した。
なゆれん不法投棄用
DOODLE(模写+れんきゅんビッチにみえます)元ネタ:https://argo-bdp.com/live/post-30252/
この笑顔、別名「ATMおじさんのパスワード」
そう微笑むと、ATMのおじさんから無限に諭吉さんを搾取できる。
そしてその諭吉さんはイケメンのバンドマンと行くのホテル代。
イケメンバンドマンと滅茶苦茶嵌めセックスするのに、
ATMのおじさんは指一本も触れないよ。興奮すぎる。