menhir_k
REHABILIクロディ推敲クロードとレナだけロゴス(仮)① 深い森の陰の落ちる小道の脇に、見知った顔を見留めてクロードは足を止めた。風が吹くと、揺られた梢からこぼれ落ちる陽光が青い髪の上でさんざめく踊る。向こうもクロードに気が付いたのか、澄んだ高いみ空色の双眸と視線がかち合った。
「クロード」
「やぁ、レナ」
緑の絨毯を踏みしめながら近付くと、少女が柔らかく微笑む。
「どうしたの、こんなすみっこで」
声をかけて、クロードはレナの隣に並んだ。取り立てて目を引くようなものはない。長閑な村の日常が、目の前に広がっている。誘拐騒ぎが遠い昔の出来事のようだった。
あそこ。小首を傾げながらレナがクロードに目配せをする。疎らに行き交う村人の合間に、ひっそりと佇む頭一つ分以上抜きん出た長身を見付けてクロードは得心がいった。
1003「クロード」
「やぁ、レナ」
緑の絨毯を踏みしめながら近付くと、少女が柔らかく微笑む。
「どうしたの、こんなすみっこで」
声をかけて、クロードはレナの隣に並んだ。取り立てて目を引くようなものはない。長閑な村の日常が、目の前に広がっている。誘拐騒ぎが遠い昔の出来事のようだった。
あそこ。小首を傾げながらレナがクロードに目配せをする。疎らに行き交う村人の合間に、ひっそりと佇む頭一つ分以上抜きん出た長身を見付けてクロードは得心がいった。
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TRAINING多分最終話クロディ、諦めて3分割にしようと思いました何か良い感じのタイトル考えなきゃな 鳥の囀りが聞こえる。窓ガラスに映り込んだ影に誘われるように、クロードは外へと目を向けた。針槐に似た木の枝に、尾の長い鳥が二羽止まっている。木には白い房状の花がたわわに咲き、その甘い芳香が家の中にまで漂っていた。
頬杖をついて欠伸を噛み殺す。平和だ。
窓から、規則正しい音の聞こえてくる調理場へと視線を戻す。夕飯の支度をする母と娘が、仲の良い様子で肩を並べている。玉ねぎでも炒めているのか、花の香りに芳ばしいバターの香りが溶けて、クロードの鼻腔を突いた。
軽く椅子を引いて立ち上がる。いくらもてなされる側とはいえ、ただ座っているだけというのも居心地が悪い。何か手伝えることはないかと調理場へ向かうと、切り分けた鶏肉を串に刺している最中の少女がクロードに気が付いた。
3515頬杖をついて欠伸を噛み殺す。平和だ。
窓から、規則正しい音の聞こえてくる調理場へと視線を戻す。夕飯の支度をする母と娘が、仲の良い様子で肩を並べている。玉ねぎでも炒めているのか、花の香りに芳ばしいバターの香りが溶けて、クロードの鼻腔を突いた。
軽く椅子を引いて立ち上がる。いくらもてなされる側とはいえ、ただ座っているだけというのも居心地が悪い。何か手伝えることはないかと調理場へ向かうと、切り分けた鶏肉を串に刺している最中の少女がクロードに気が付いた。
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TRAININGクロディにはなったけどクロードとディアスに怒られそうクロディ 凪いだ海が眼下に横たわっていた。澄み渡る夜の空気の中、控えめな波の音だけがディアスの鼓膜を揺らす。空に浮かぶ一際大きな星が、夜の海に降り注いで揺らめいていた。
視線を落とした先の、崖下に広がる浜辺によく知る少女の背中を見留める。それから、その隣にいる先客の存在に気付き、ディアスは階段に向かいかけていた足を止めた。
決戦を明日に控えて眠れない夜を過ごしているのではないか、と思われた血の繋がらない妹は、既に兄の手を離れ心細い夜を共に乗り越える相手を見付けていた。ディアスが故郷を離れ、マーズ村で彼女と再会するまでに二年の月日が経っていた。人が変わるには充分な時間だ。だから大切な幼馴染みの——レナの隣に誰かがいる事実に、一抹の寂しさのようなものを覚えこそすれ、得心がいかないことは何もなかった。ただ一つ引っかかるところがあるとすれば、彼女の隣に並び立つ人影がディアスの思い描いていた遠い星の青年ではなかったことだけだ。
4803視線を落とした先の、崖下に広がる浜辺によく知る少女の背中を見留める。それから、その隣にいる先客の存在に気付き、ディアスは階段に向かいかけていた足を止めた。
決戦を明日に控えて眠れない夜を過ごしているのではないか、と思われた血の繋がらない妹は、既に兄の手を離れ心細い夜を共に乗り越える相手を見付けていた。ディアスが故郷を離れ、マーズ村で彼女と再会するまでに二年の月日が経っていた。人が変わるには充分な時間だ。だから大切な幼馴染みの——レナの隣に誰かがいる事実に、一抹の寂しさのようなものを覚えこそすれ、得心がいかないことは何もなかった。ただ一つ引っかかるところがあるとすれば、彼女の隣に並び立つ人影がディアスの思い描いていた遠い星の青年ではなかったことだけだ。
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TRAININGクロディめっちゃ途中なクロディちゃん 空気のにおいがやわらかい。豊かな草木と土の気配がする。時折、大きな鳥の影が頭上を横切っていった。七億年前から時を止めた廃墟の、今にも崩れ落ちそうな屋根の隙間から太陽に似た恒星の光が差し込んでいる。
七億年——途方もなく遠い昨日、この隔離区画で大きな事故が起きた。荒い映像記録の中で、事故のあらましを語る研究所の責任者である女性の面差しは、クロードの大切な少女と共通する点が多くあった。彼女の傍らには、泣きじゃくる小さな女の子がいた。レナと呼ばれていた。何度も、何度も、惜しむように、愛しむように、女性はレナ、と女の子の名前を呼んだ。母子の最期の逢瀬を、クロードは固唾を飲んで見詰めた。目が離せなかった。すぐ隣で同じように映像を観ている少女を気に掛ける余裕もなく、食い入るように見届けた。だから、反応が遅れた。
2980七億年——途方もなく遠い昨日、この隔離区画で大きな事故が起きた。荒い映像記録の中で、事故のあらましを語る研究所の責任者である女性の面差しは、クロードの大切な少女と共通する点が多くあった。彼女の傍らには、泣きじゃくる小さな女の子がいた。レナと呼ばれていた。何度も、何度も、惜しむように、愛しむように、女性はレナ、と女の子の名前を呼んだ。母子の最期の逢瀬を、クロードは固唾を飲んで見詰めた。目が離せなかった。すぐ隣で同じように映像を観ている少女を気に掛ける余裕もなく、食い入るように見届けた。だから、反応が遅れた。
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TRAININGクロディに辿り着いたクロディだドン 静かな夜だった。窓の外に眠りの気配はない。陽が落ちてから時が経っているのに、異星の夜はクロスでもラクールでも目にしたことのないような光が洪水となって溢れている。それなのに、それら全ての喧騒は遠く、ディアスが佇む宿の廊下にまでは届かない。透明度の高い硝子戸の向こう側で、寡黙にさんざめく煌めいている。無音の世界でただ、視界だけが奇妙にざわついていた。
「ディアス?」
沈黙を破り、名前を呼ばれた。気配に気付いていたので、特に驚くこともなくディアスは肩越しに声の主を見遣った。夜の深い海の色をした髪を肩口で揺らしながら、幼馴染みの少女が近付いてくる。
「眠れないの?」
少女の確信めいた問いに、ディアスは小さく首を傾けた。
4409「ディアス?」
沈黙を破り、名前を呼ばれた。気配に気付いていたので、特に驚くこともなくディアスは肩越しに声の主を見遣った。夜の深い海の色をした髪を肩口で揺らしながら、幼馴染みの少女が近付いてくる。
「眠れないの?」
少女の確信めいた問いに、ディアスは小さく首を傾けた。