menhir_k
TRAINING主人公(ク口一卜゛)とラスボス(力゛ブリ工ノレ)の禅問答を書こうとしたのにディがしゃしゃり出てきてラスボスに推し(ク口一卜゛)のダイマを始めてそれどころではなくなった話クロディだよ 紅い空を背にした球形の亡びが、不気味な鳴動を響かせながら明滅を繰り返す。男の形をした兵器は、宇宙を崩壊させる紋章を庇うように立ち塞がっていた。
三十六億年前の亡霊に、クロードの声は届かない。当たり前だ。愛する娘の声すら聞き入れることが出来ないほどに、妄執を宿した兵器は壊れていた。面識などないに等しい、何の思い入れもない第三者の声が届く筈もない。
それでも、声を上げられずにはいられなかった。
長く赤い前髪の間から覗く、まるで温度を感じさせない無機質な翠の双眸が、煩わしげに細められる。兵器の放った紋章術で激しく震える床が、距離を縮めようとしたクロードの行く手を阻んだ。すぐに剣を構えて跳躍したものの、動きを読まれていたのか切っ先が届く前に逃げられる。その上、兵器が指揮者のように腕を振り上げただけで、着地したクロードを衝撃波が襲った。
4371三十六億年前の亡霊に、クロードの声は届かない。当たり前だ。愛する娘の声すら聞き入れることが出来ないほどに、妄執を宿した兵器は壊れていた。面識などないに等しい、何の思い入れもない第三者の声が届く筈もない。
それでも、声を上げられずにはいられなかった。
長く赤い前髪の間から覗く、まるで温度を感じさせない無機質な翠の双眸が、煩わしげに細められる。兵器の放った紋章術で激しく震える床が、距離を縮めようとしたクロードの行く手を阻んだ。すぐに剣を構えて跳躍したものの、動きを読まれていたのか切っ先が届く前に逃げられる。その上、兵器が指揮者のように腕を振り上げただけで、着地したクロードを衝撃波が襲った。
menhir_k
TRAININGクロディ詐欺が過ぎる…レナ編だとエル大陸漂着時独りなんだよねクロード 頬に触れる濡れた感触が覚醒を促した。目を開けようとするが、酷く痛んでままならない。目だけではない。全身を痛みと倦怠感とが支配している。
沈みそうになる意識を叱咤して目蓋を押し上げると、傾いた視界に彩度の低い暗い世界が飛び込んできた。
砂地に手を突いて、軋む身体を起こす。髪に、目尻に、衣服に纏わりついた細かなつぶてが、ぱらぱらと零れ落ちて行った。
辺りを見渡す。クロードが倒れていたのは浜辺だった。視覚が認識した途端、鼓膜が徐々に周囲の音を拾い始める。荒れ狂う黒い夜の海鳴りは、獣の咆哮にも似ていた。
少しずつ、クロードは自分が置かれた状況を理解した。立ち上がり、改めて周囲の気配を探る。何処かに仲間がいる筈だ。
1634沈みそうになる意識を叱咤して目蓋を押し上げると、傾いた視界に彩度の低い暗い世界が飛び込んできた。
砂地に手を突いて、軋む身体を起こす。髪に、目尻に、衣服に纏わりついた細かなつぶてが、ぱらぱらと零れ落ちて行った。
辺りを見渡す。クロードが倒れていたのは浜辺だった。視覚が認識した途端、鼓膜が徐々に周囲の音を拾い始める。荒れ狂う黒い夜の海鳴りは、獣の咆哮にも似ていた。
少しずつ、クロードは自分が置かれた状況を理解した。立ち上がり、改めて周囲の気配を探る。何処かに仲間がいる筈だ。
menhir_k
TRAININGクロディのプロローグ候補導入 割れたステンドグラスの向こうに、海が見えた。波の音は少し遠い。暁光を受けて輪郭を金色に滲ませる雲を背に、鳥が弧を描くように飛んでいく。石煉瓦の壁は崩れかけていて、断崖の海風を受けてそよぐ低木の青い小花が見えた。木製の床も所々剥れて、浅くはない窪みに矢車菊に似た野花が咲いている。
忘れられ、打ち捨てられた廃屋に人の気配はない。風化して時と共に崩れ落ちるのを待つだけの建物は、外に出ることも容易い。崩れた石壁を乗り越えて小花の揺れる崖に近付くと、今も尚、災厄の爪痕の生々しく残る港町を眼下に見留める。
誰もいない。当たり前だ。多くの人々が突如として降り掛かった災禍を前に、なす術もなく命を落とした。生き残った僅かな住人も今はこの町を離れている。寂寞とした白い砂浜に残る跡は。寄せては返す波の模様だけだ。静寂は、初めてこの大陸に流れ着いたときの不安を思い出させた。
1097忘れられ、打ち捨てられた廃屋に人の気配はない。風化して時と共に崩れ落ちるのを待つだけの建物は、外に出ることも容易い。崩れた石壁を乗り越えて小花の揺れる崖に近付くと、今も尚、災厄の爪痕の生々しく残る港町を眼下に見留める。
誰もいない。当たり前だ。多くの人々が突如として降り掛かった災禍を前に、なす術もなく命を落とした。生き残った僅かな住人も今はこの町を離れている。寂寞とした白い砂浜に残る跡は。寄せては返す波の模様だけだ。静寂は、初めてこの大陸に流れ着いたときの不安を思い出させた。
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DONEパネルトラップ内訳1枚目:パネルトラップ1(ガブルシ)
2枚目:パネルトラップ2&7①(サディルシ)
3枚目:パネルトラップ2&7②(サディルシ)
4枚目:パネルトラップ4&8①(クロディ)
5枚目:パネルトラップ4&8②(クロディ)
6枚目:パネルトラップ4&8③(クロディ)
7枚目:パネルトラップ5&8(アシュクロアシュ) 7
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TRAINING紋章兵器研究所跡〜ミーネ洞窟辺りのクロディ4クロディ追加5 店の外に出ると、斜陽が突き刺さり眩しさに目を細めた。日も傾きかけているというのに、職人の町に立ち並ぶ尖塔のように空に突き出た煙突からは、相変わらず煙が立ち昇っている。
黒煙と西日を受けて輪郭を金色に滲ませる雲のコントラストを見上げるクロードの後ろで鐘の音と共に扉が閉まった。視線を地上に引き戻すと、路地裏にディアスが佇んでいた。会計をしている間に店の外へ出て行ってしまったので、置いて行かれたと思っていたが違ったらしい。
ディアス。名前を呼ぶと赤い双眸がクロードを見上げる。店の出入り口は路地裏より少し高い位置にあって、普段見上げている長身の男のつむじが見える。慣れない位置関係は、クロードを不思議な気分にさせた。
4522黒煙と西日を受けて輪郭を金色に滲ませる雲のコントラストを見上げるクロードの後ろで鐘の音と共に扉が閉まった。視線を地上に引き戻すと、路地裏にディアスが佇んでいた。会計をしている間に店の外へ出て行ってしまったので、置いて行かれたと思っていたが違ったらしい。
ディアス。名前を呼ぶと赤い双眸がクロードを見上げる。店の出入り口は路地裏より少し高い位置にあって、普段見上げている長身の男のつむじが見える。慣れない位置関係は、クロードを不思議な気分にさせた。
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TRAINING紋章兵器研究所跡〜ミーネ洞窟辺りのクロディ3クロディ追加4 運ばれてきたタルトにフォークを突き立てる。堅い。キャラメルコーティングされたナッツに阻まれて、なかなかタルトを割り崩せない。垂直に、力任せにフォークを仕込むと、勢い余って皿に突き当たり硬質な音が響いた。
無様に散ったナッツとタルトの欠片を掻き集めて口に含む。咀嚼すると、ほろ苦いキャラメルと、アーモンドやクルミ、ピスタチオにヘーゼルナッツといった芳ばしい木の実の香りが鼻腔にまで広がった。
横にいる男も少し食べるだろうか。目配せしたものの、ディアスは一心不乱にブルーベリィパフェの山を崩していてクロードの視線には気が付かない。やめよう。邪魔をしては悪い。それに、彼にかかると一口では済まない気がする。
3139無様に散ったナッツとタルトの欠片を掻き集めて口に含む。咀嚼すると、ほろ苦いキャラメルと、アーモンドやクルミ、ピスタチオにヘーゼルナッツといった芳ばしい木の実の香りが鼻腔にまで広がった。
横にいる男も少し食べるだろうか。目配せしたものの、ディアスは一心不乱にブルーベリィパフェの山を崩していてクロードの視線には気が付かない。やめよう。邪魔をしては悪い。それに、彼にかかると一口では済まない気がする。
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TRAINING紋章兵器研究所跡〜ミーネ洞窟辺りのクロディ2クロディ追加3 少し重たく癖のある扉を押し開けると、来訪者を報せる軽やかな鐘の音色がクロードの鼓膜を揺らす。アームロックで評判のカフェは、以前訪れたときと同様に賑わっていた。落ち着いた暖色を基調とした店内には、何処か懐かしさを感じさせるオルゴールの音色が響いている。
いらっしゃいませ、と声をかけてきた女性店員に二名で利用することを告げると、奥の窓際の席に案内された。途中、クロードの後ろをついてくる大男に店内の視線が集まっているのを感じたが、努めて気にしないことにした。店員の方は流石に慣れているのか、テーブルの上に手書きのメニューとお冷を並べると何事もなかったかのように去って行く。当事者であるディアスは、さっさと窓側の椅子に腰かけると素知らぬ顔でメニューに目を通し始めた。ディアスもディアスで慣れているのだろうな、とクロードは思いながら彼の隣の椅子に腰掛ける。
2640いらっしゃいませ、と声をかけてきた女性店員に二名で利用することを告げると、奥の窓際の席に案内された。途中、クロードの後ろをついてくる大男に店内の視線が集まっているのを感じたが、努めて気にしないことにした。店員の方は流石に慣れているのか、テーブルの上に手書きのメニューとお冷を並べると何事もなかったかのように去って行く。当事者であるディアスは、さっさと窓側の椅子に腰かけると素知らぬ顔でメニューに目を通し始めた。ディアスもディアスで慣れているのだろうな、とクロードは思いながら彼の隣の椅子に腰掛ける。
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TRAINING紋章兵器研究所跡〜ミーネ洞窟辺りのクロディクロディ追加2 エナジーフィールドに包まれたよそよそしい青空に、煙が立ち昇っているのが見えた。煙は武具工房の屋根から伸びている。眼前に立ち並ぶ職人の町並みは雑然としていて、町中に立ち込めるオイルや金属の溶け出したときに生じる独特のにおいは、エクスペルのサルバをクロードに思い出させた。
まばらに行き交う人を目で追いながら時間を潰していると、目的の長身が武具工房から出て来るところを見留めた。ディアスだ。駆け寄ると、彼もクロードに気が付いて足を止めた。
「どうした。ミーネ洞窟へ向かうのは明日だろう」
「そうだよ。だからちょっと、ディアスをデートに誘おうかと思って」
ディアスが踵を返すと、冷たい冬の海のように褪めた蒼色の長い髪が外套と共に翻る。それから、彼はクロードに背を向けて歩き出した。
2100まばらに行き交う人を目で追いながら時間を潰していると、目的の長身が武具工房から出て来るところを見留めた。ディアスだ。駆け寄ると、彼もクロードに気が付いて足を止めた。
「どうした。ミーネ洞窟へ向かうのは明日だろう」
「そうだよ。だからちょっと、ディアスをデートに誘おうかと思って」
ディアスが踵を返すと、冷たい冬の海のように褪めた蒼色の長い髪が外套と共に翻る。それから、彼はクロードに背を向けて歩き出した。
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TRAININGフィーナル敗走夜〜紋章兵器研究所跡の間の補完話クロディ追加 市庁舎と呼ばれるセントラルシティの中央に位置する城のような建物を出ると、強い日差しがディアスの目を焼いた。装飾や凹凸が少なく、狭い敷地に縦に長く聳え立つ建造物が目立つ異世界の街並みに目が慣れない。縦長の家屋の隙間を縫うような強い風が、ディアスの髪を掻き混ぜて吹き抜けていった。
滑らかに舗装された階段を下りて町の入り口を目指す。途中でレナと鉢合わせた。丁度、道具屋から出て来るところだった。
「ディアス」
気が付いたレナが手を振る。彼女の後ろの噴水から飛び散る水滴がさんざめく煌めいていた。
「道具を調達したのか」
「うん。昨日、沢山使ったでしょ」
レナの持つ荷物に手を伸ばす。彼女は意図を酌むと手にした荷物をディアスにすぐに手渡した。
2342滑らかに舗装された階段を下りて町の入り口を目指す。途中でレナと鉢合わせた。丁度、道具屋から出て来るところだった。
「ディアス」
気が付いたレナが手を振る。彼女の後ろの噴水から飛び散る水滴がさんざめく煌めいていた。
「道具を調達したのか」
「うん。昨日、沢山使ったでしょ」
レナの持つ荷物に手を伸ばす。彼女は意図を酌むと手にした荷物をディアスにすぐに手渡した。
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TRAINING往生際の悪いディアスのはなし着地点決めてないので尻切れトンボ過ぎたら不採用?にするかも
R6.11.27 ちょっと舞台を変えて試行錯誤中
クロディのエピローグにしたい 眼下には遠浅の海が広がっていた。頭上に拡がる空は、まだ少し夜の名残を感じる。波打つ海面は、水平線を舐める陽光を照り返して、魚の鱗のように煌めいて見えた。朝の清々しく張り詰めた玲瓏な空気を切るように旋回する猛禽が、ディアスの頭上高く、薄っすらと白い雲のたなびく空を泳いでいった。
潮騒と、時折響く甲高い鳥の鳴き声に耳を傾けながら、倒壊した家屋や生活用品の転がる不安定な足場を漫ろ歩く。
長いこと人の手が入ることを忘れた――そう形容するには、かつて港町だったこの廃墟が惨劇に襲われてからまだ日は浅い。魔物の群れの襲撃を受け、水没した町から水が引いたのは最近のことだ。だが、逃げ延びた住人が帰還するより早く廃墟には魔物が棲み付き、とても人が住める場所ではなくなっていた。何より、水の浸食によって悼んだ家屋や地盤は倒壊の恐れもある。復興の目処はたたず、辛うじて生き延びたエルリアの住人が元の生活を取り戻す日は遠い。
9954潮騒と、時折響く甲高い鳥の鳴き声に耳を傾けながら、倒壊した家屋や生活用品の転がる不安定な足場を漫ろ歩く。
長いこと人の手が入ることを忘れた――そう形容するには、かつて港町だったこの廃墟が惨劇に襲われてからまだ日は浅い。魔物の群れの襲撃を受け、水没した町から水が引いたのは最近のことだ。だが、逃げ延びた住人が帰還するより早く廃墟には魔物が棲み付き、とても人が住める場所ではなくなっていた。何より、水の浸食によって悼んだ家屋や地盤は倒壊の恐れもある。復興の目処はたたず、辛うじて生き延びたエルリアの住人が元の生活を取り戻す日は遠い。
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TRAINING前から3番目のクロディ(開き直り)多分ほんとに最後の追加分 光の勇者が現れた。久しぶりにクロス大陸の首都を訪れると、そんな噂を耳にした。
噂の出所は首都クロスから程近い鉱山の町だった。すぐに、鉱山の町サルバに住む馴染みの顔が浮かぶ。町長の息子だ。幼馴染みと言っても差し支えないのかも知れない。勇者などと称される人物が現れたということは、それなりの荒事が起きたということだ。もう随分と会っていない彼の安否が少し気になったが、訪ねる気にはなれなかった。
そう時を置かず、また勇者の話を耳にした。同郷の少女の口から、再会したその日の夜に聞かされた。彼女——レナの話によると、共に旅をしている青年が噂の勇者らしい。
昼間、レナと共に訪ねて来た顔ぶれを思い出そうと記憶の底を攫う。紋章術師の女は覚えている。外見も言動も派手な女だった。だが、青年の方は印象に残っていない。髪はブロンドか栗毛色だった気がするが、瞳の色に至っては全く記憶にない。レナはレナでその青年に対して酷く腹を立てているようで、先ほどから彼の話で持ち切りだ。お陰で噂の勇者が本当にただの青年であるという知りたくもないことも知れた。
3954噂の出所は首都クロスから程近い鉱山の町だった。すぐに、鉱山の町サルバに住む馴染みの顔が浮かぶ。町長の息子だ。幼馴染みと言っても差し支えないのかも知れない。勇者などと称される人物が現れたということは、それなりの荒事が起きたということだ。もう随分と会っていない彼の安否が少し気になったが、訪ねる気にはなれなかった。
そう時を置かず、また勇者の話を耳にした。同郷の少女の口から、再会したその日の夜に聞かされた。彼女——レナの話によると、共に旅をしている青年が噂の勇者らしい。
昼間、レナと共に訪ねて来た顔ぶれを思い出そうと記憶の底を攫う。紋章術師の女は覚えている。外見も言動も派手な女だった。だが、青年の方は印象に残っていない。髪はブロンドか栗毛色だった気がするが、瞳の色に至っては全く記憶にない。レナはレナでその青年に対して酷く腹を立てているようで、先ほどから彼の話で持ち切りだ。お陰で噂の勇者が本当にただの青年であるという知りたくもないことも知れた。
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TRAININGこれはクロディ何話目だっ!?!!もうBBAにはわかんねぇ!!!!!!ギヴァウェイのクロディ 窓の外は雪が降っていた。共用スペースに置かれたベンチに腰掛けて、ディアスは一面の銀世界を眺め遣る。
エクスペルに居た頃は、あまり雪を目にする機会はなかった。故郷は長閑で暖かく、空から降る白いものと言えば専ら花ばかりだった。
人気のない廊下は寒々しく冷え切っている。文明の発達した星の学び舎は、エクスペル最高峰と名高いリンガの大学よりも遥かに大きく立派だ。辺境の星の辺境の村に生まれ落ち、教会の日曜学校で必要最低限の読み書きと計算を手習い程度に受けただけの自分には、全くもって不釣り合いな場所だ。
エル大陸に渉る途中ではぐれたフェルプールの少年の存在を思い出す。天才だの神童だのと周囲からの嫉妬と羨望の入り混じった称賛を受けたあの子供であれば、或いは自分などよりもっと、有意義にこの状況を受け容れて立ち回れたのではないか、とディアスは思った。
4643エクスペルに居た頃は、あまり雪を目にする機会はなかった。故郷は長閑で暖かく、空から降る白いものと言えば専ら花ばかりだった。
人気のない廊下は寒々しく冷え切っている。文明の発達した星の学び舎は、エクスペル最高峰と名高いリンガの大学よりも遥かに大きく立派だ。辺境の星の辺境の村に生まれ落ち、教会の日曜学校で必要最低限の読み書きと計算を手習い程度に受けただけの自分には、全くもって不釣り合いな場所だ。
エル大陸に渉る途中ではぐれたフェルプールの少年の存在を思い出す。天才だの神童だのと周囲からの嫉妬と羨望の入り混じった称賛を受けたあの子供であれば、或いは自分などよりもっと、有意義にこの状況を受け容れて立ち回れたのではないか、とディアスは思った。
menhir_k
TRAININGここに来てまさかのクロディ1話目を書いている(無計画)まさかのクロディ1話目 山を切り崩して築かれた鉱山の町に吹き込んだ風が砂埃を舞い上げた。反射的に目を閉じたが、僅かに砂の粒が入った視界が涙で滲む。ごろごろといつまで経っても違和感の拭えない眼球を持て余しながら、クロードはせめて人々の往来の邪魔にならないように道の端に避けた。
岩肌に背中を預けて仰ぎ見る岸壁に囲まれた空は狭い。赤茶けた岩とのコントラストで青さが際立つ。上空でも強い風が吹いているらしい。蠢く雲は何かの生き物のように忙しなく蠢いている。
前線基地への襲撃が途切れた合間を縫って、クロード達はクロス大陸に戻って来ていた。ディアスと行動を共にするようになってすぐのことだ。提案したのはレナだった。一度ディアスと共に故郷へ帰りたい、と彼女がクロードに耳打ちをして、急ぎアーリアへと向かった。
3260岩肌に背中を預けて仰ぎ見る岸壁に囲まれた空は狭い。赤茶けた岩とのコントラストで青さが際立つ。上空でも強い風が吹いているらしい。蠢く雲は何かの生き物のように忙しなく蠢いている。
前線基地への襲撃が途切れた合間を縫って、クロード達はクロス大陸に戻って来ていた。ディアスと行動を共にするようになってすぐのことだ。提案したのはレナだった。一度ディアスと共に故郷へ帰りたい、と彼女がクロードに耳打ちをして、急ぎアーリアへと向かった。
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TRAININGラクアのあとにファンシティPAネタを拾わないとならない気がしたので突貫クロディ5話目だと思う 小刻みに震える手を見下ろしていた。世界の全ての音は遠く、自身の発する荒い息遣いだけが鼓膜を震わせていた。
クロードはディアスに勝った。
宇宙の命運を賭けた最後の戦いに挑む前に、クロードはディアスに手合わせを頼んだ。誰一人として欠けず戦い抜く為に、皆を守り抜ける実力が今の自分に備わっているのか、それを確かめたかった。
片膝を突いたディアスは薄く微笑みながら、強くなったと言ってクロードを見上げた。鮮やかで穏やかな赤い眼差しだった。
どれくらいその場で立ち尽くしていたのかは分からない。徐々にクロードの耳は周囲の喧騒を拾い始め、そこが闘技場の片隅であることを思い出す。クロードの脇を駆けて行った子供が、父親を呼ぶ声がする。頭上の吹き抜けから覗く空は雲一つない。何処からか飛ばされて来たらしい赤い風船がいやに目を引いた。
2175クロードはディアスに勝った。
宇宙の命運を賭けた最後の戦いに挑む前に、クロードはディアスに手合わせを頼んだ。誰一人として欠けず戦い抜く為に、皆を守り抜ける実力が今の自分に備わっているのか、それを確かめたかった。
片膝を突いたディアスは薄く微笑みながら、強くなったと言ってクロードを見上げた。鮮やかで穏やかな赤い眼差しだった。
どれくらいその場で立ち尽くしていたのかは分からない。徐々にクロードの耳は周囲の喧騒を拾い始め、そこが闘技場の片隅であることを思い出す。クロードの脇を駆けて行った子供が、父親を呼ぶ声がする。頭上の吹き抜けから覗く空は雲一つない。何処からか飛ばされて来たらしい赤い風船がいやに目を引いた。
menhir_k
TRAININGほんとにこの話で最後だぞの気持ちクロディ6話目⑤ 甘い匂いが意識を浮上させた。花とは違う。香ばしいバターと小麦の焼ける匂いだ。目蓋の裏側に陽射しを感じる。雲雀の囀りに似た、鳥の声が鼓膜を揺らす。朝だ。
クロードは重たい目蓋を押し上げた。
雨は止んでいた。窓枠から滴り落ちる水滴が朝の光を宿して真珠のように煌めいて、高い空にはきつく弧を描く極彩色のスペクトルが走っている。反射虹だ。
その光景に、聖書の逸話が脳裏を掠める。
「約束の虹」
小さな灯火を頼りに、嵐の海をさ迷った果ての約束が口の端を滑った。
「何だ、それは」
頭上から降って来た声に、驚いたクロードは跳ね上がる。あまりに慌てて飛び起きたので、机の角に頭をぶつけた。涙で視界を滲ませながら頭を抱える。それから、クロードはそこが床の上であることを知った。
2327クロードは重たい目蓋を押し上げた。
雨は止んでいた。窓枠から滴り落ちる水滴が朝の光を宿して真珠のように煌めいて、高い空にはきつく弧を描く極彩色のスペクトルが走っている。反射虹だ。
その光景に、聖書の逸話が脳裏を掠める。
「約束の虹」
小さな灯火を頼りに、嵐の海をさ迷った果ての約束が口の端を滑った。
「何だ、それは」
頭上から降って来た声に、驚いたクロードは跳ね上がる。あまりに慌てて飛び起きたので、机の角に頭をぶつけた。涙で視界を滲ませながら頭を抱える。それから、クロードはそこが床の上であることを知った。
menhir_k
TRAINING突撃嫁さんの実家を出力したかったんだけど、何か思ってたのと違う…クロディ最終話③ 水音で目が覚めた。屋根を水滴が跳ねる音だ。傾いた視界に映る窓を、雨垂れが伝って流れ落ちていく。豪雨と言うには控えめで、小雨と言うには存在を主張する、中途半端な雨足だ。
空はまだ薄暗く、雨のせいで時間の感覚がない。深夜ではないが、夜明けにはまだ少し早いくらいだろうと当たりを付けて、上体を起こす。身体が軋む。頬にも、ささくれだった堅い木目の跡が付いている。
久しぶりの我が家とはいえ床で眠るものではないな、とディアスは手近な壁にもたれ掛かりながら思った。
レナの家で夕食を取り、思い出話に適当な相槌を打っていたのは数時間前のことだ。久しぶりの団欒は懐かしさと共に言い知れない喪失感をディアスにもたらした。だが、レナが嬉しそうに思い出話をするので悪い気はしなかった。それに、クロードもレナやその母親の話に楽しそうに聞いているように見える。出会った頃の彼なら疎外感を感じて拗ね出しそうな話題も、興味深げに耳を傾けていた。まるでこの一家の一員だ。ぼろぼろと崩れるブラウニーを頬張りながらディアスは思った。
6265空はまだ薄暗く、雨のせいで時間の感覚がない。深夜ではないが、夜明けにはまだ少し早いくらいだろうと当たりを付けて、上体を起こす。身体が軋む。頬にも、ささくれだった堅い木目の跡が付いている。
久しぶりの我が家とはいえ床で眠るものではないな、とディアスは手近な壁にもたれ掛かりながら思った。
レナの家で夕食を取り、思い出話に適当な相槌を打っていたのは数時間前のことだ。久しぶりの団欒は懐かしさと共に言い知れない喪失感をディアスにもたらした。だが、レナが嬉しそうに思い出話をするので悪い気はしなかった。それに、クロードもレナやその母親の話に楽しそうに聞いているように見える。出会った頃の彼なら疎外感を感じて拗ね出しそうな話題も、興味深げに耳を傾けていた。まるでこの一家の一員だ。ぼろぼろと崩れるブラウニーを頬張りながらディアスは思った。
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TRAINING三分割どころか四分割になるかもしんねぇクロディ最終話② 傾きかけた陽射しが、鳥の囀りも虫の鳴き声も聞こえない深い森に降り注いでいる。木立の奥にはまた別の木が幾重にも連なり、森の終わりが見えない。何処からともなく漂ってくる花の香りは、レナの家の窓から見た白い花に似ていた。
道すがら屈んでは名前も知らない花を手折る。村長に渡された教会の花と束ねると、少しずつ素朴な花束が出来上がっていった。死者を慰めるという名目で花の命を摘み取っては、死を重ねて束ねるという行為はクロードを少しだけ不思議な気持ちにさせた。
斜陽の森を更に深く進んでいく。西日に輪郭を滲ませた木々は、神々しく光り輝いて見えた。足元の緑の絨毯には白い花びらが疎らに積もっている。近くの高木を仰ぐと、レナの家の近くで見た白い房状の花が咲いているのが見えた。風が吹くと花がぱらぱらとこぼれ落ちてくる。まるで雪のようだ、とクロードは思った。
5404道すがら屈んでは名前も知らない花を手折る。村長に渡された教会の花と束ねると、少しずつ素朴な花束が出来上がっていった。死者を慰めるという名目で花の命を摘み取っては、死を重ねて束ねるという行為はクロードを少しだけ不思議な気持ちにさせた。
斜陽の森を更に深く進んでいく。西日に輪郭を滲ませた木々は、神々しく光り輝いて見えた。足元の緑の絨毯には白い花びらが疎らに積もっている。近くの高木を仰ぐと、レナの家の近くで見た白い房状の花が咲いているのが見えた。風が吹くと花がぱらぱらとこぼれ落ちてくる。まるで雪のようだ、とクロードは思った。
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REHABILIクロディ推敲クロードとレナだけロゴス(仮)① 深い森の陰の落ちる小道の脇に、見知った顔を見留めてクロードは足を止めた。風が吹くと、揺られた梢からこぼれ落ちる陽光が青い髪の上でさんざめく踊る。向こうもクロードに気が付いたのか、澄んだ高いみ空色の双眸と視線がかち合った。
「クロード」
「やぁ、レナ」
緑の絨毯を踏みしめながら近付くと、少女が柔らかく微笑む。
「どうしたの、こんなすみっこで」
声をかけて、クロードはレナの隣に並んだ。取り立てて目を引くようなものはない。長閑な村の日常が、目の前に広がっている。誘拐騒ぎが遠い昔の出来事のようだった。
あそこ。小首を傾げながらレナがクロードに目配せをする。疎らに行き交う村人の合間に、ひっそりと佇む頭一つ分以上抜きん出た長身を見付けてクロードは得心がいった。
2342「クロード」
「やぁ、レナ」
緑の絨毯を踏みしめながら近付くと、少女が柔らかく微笑む。
「どうしたの、こんなすみっこで」
声をかけて、クロードはレナの隣に並んだ。取り立てて目を引くようなものはない。長閑な村の日常が、目の前に広がっている。誘拐騒ぎが遠い昔の出来事のようだった。
あそこ。小首を傾げながらレナがクロードに目配せをする。疎らに行き交う村人の合間に、ひっそりと佇む頭一つ分以上抜きん出た長身を見付けてクロードは得心がいった。
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TRAINING多分最終話クロディ、諦めて3分割にしようと思いました何か良い感じのタイトル考えなきゃな 鳥の囀りが聞こえる。窓ガラスに映り込んだ影に誘われるように、クロードは外へと目を向けた。針槐に似た木の枝に、尾の長い鳥が二羽止まっている。木には白い房状の花がたわわに咲き、その甘い芳香が家の中にまで漂っていた。
頬杖をついて欠伸を噛み殺す。平和だ。
窓から、規則正しい音の聞こえてくる調理場へと視線を戻す。夕飯の支度をする母と娘が、仲の良い様子で肩を並べている。玉ねぎでも炒めているのか、花の香りに芳ばしいバターの香りが溶けて、クロードの鼻腔を突いた。
軽く椅子を引いて立ち上がる。いくらもてなされる側とはいえ、ただ座っているだけというのも居心地が悪い。何か手伝えることはないかと調理場へ向かうと、切り分けた鶏肉を串に刺している最中の少女がクロードに気が付いた。
3515頬杖をついて欠伸を噛み殺す。平和だ。
窓から、規則正しい音の聞こえてくる調理場へと視線を戻す。夕飯の支度をする母と娘が、仲の良い様子で肩を並べている。玉ねぎでも炒めているのか、花の香りに芳ばしいバターの香りが溶けて、クロードの鼻腔を突いた。
軽く椅子を引いて立ち上がる。いくらもてなされる側とはいえ、ただ座っているだけというのも居心地が悪い。何か手伝えることはないかと調理場へ向かうと、切り分けた鶏肉を串に刺している最中の少女がクロードに気が付いた。
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TRAININGクロディにはなったけどクロードとディアスに怒られそうクロディ 凪いだ海が眼下に横たわっていた。澄み渡る夜の空気の中、控えめな波の音だけがディアスの鼓膜を揺らす。空に浮かぶ一際大きな星が、夜の海に降り注いで揺らめいていた。
視線を落とした先の、崖下に広がる浜辺によく知る少女の背中を見留める。それから、その隣にいる先客の存在に気付き、ディアスは階段に向かいかけていた足を止めた。
決戦を明日に控えて眠れない夜を過ごしているのではないか、と思われた血の繋がらない妹は、既に兄の手を離れ心細い夜を共に乗り越える相手を見付けていた。ディアスが故郷を離れ、マーズ村で彼女と再会するまでに二年の月日が経っていた。人が変わるには充分な時間だ。だから大切な幼馴染みの——レナの隣に誰かがいる事実に、一抹の寂しさのようなものを覚えこそすれ、得心がいかないことは何もなかった。ただ一つ引っかかるところがあるとすれば、彼女の隣に並び立つ人影がディアスの思い描いていた遠い星の青年ではなかったことだけだ。
4803視線を落とした先の、崖下に広がる浜辺によく知る少女の背中を見留める。それから、その隣にいる先客の存在に気付き、ディアスは階段に向かいかけていた足を止めた。
決戦を明日に控えて眠れない夜を過ごしているのではないか、と思われた血の繋がらない妹は、既に兄の手を離れ心細い夜を共に乗り越える相手を見付けていた。ディアスが故郷を離れ、マーズ村で彼女と再会するまでに二年の月日が経っていた。人が変わるには充分な時間だ。だから大切な幼馴染みの——レナの隣に誰かがいる事実に、一抹の寂しさのようなものを覚えこそすれ、得心がいかないことは何もなかった。ただ一つ引っかかるところがあるとすれば、彼女の隣に並び立つ人影がディアスの思い描いていた遠い星の青年ではなかったことだけだ。
menhir_k
TRAININGクロディめっちゃ途中なクロディちゃん 空気のにおいがやわらかい。豊かな草木と土の気配がする。時折、大きな鳥の影が頭上を横切っていった。七億年前から時を止めた廃墟の、今にも崩れ落ちそうな屋根の隙間から太陽に似た恒星の光が差し込んでいる。
七億年——途方もなく遠い昨日、この隔離区画で大きな事故が起きた。荒い映像記録の中で、事故のあらましを語る研究所の責任者である女性の面差しは、クロードの大切な少女と共通する点が多くあった。彼女の傍らには、泣きじゃくる小さな女の子がいた。レナと呼ばれていた。何度も、何度も、惜しむように、愛しむように、女性はレナ、と女の子の名前を呼んだ。母子の最期の逢瀬を、クロードは固唾を飲んで見詰めた。目が離せなかった。すぐ隣で同じように映像を観ている少女を気に掛ける余裕もなく、食い入るように見届けた。だから、反応が遅れた。
2980七億年——途方もなく遠い昨日、この隔離区画で大きな事故が起きた。荒い映像記録の中で、事故のあらましを語る研究所の責任者である女性の面差しは、クロードの大切な少女と共通する点が多くあった。彼女の傍らには、泣きじゃくる小さな女の子がいた。レナと呼ばれていた。何度も、何度も、惜しむように、愛しむように、女性はレナ、と女の子の名前を呼んだ。母子の最期の逢瀬を、クロードは固唾を飲んで見詰めた。目が離せなかった。すぐ隣で同じように映像を観ている少女を気に掛ける余裕もなく、食い入るように見届けた。だから、反応が遅れた。
menhir_k
TRAININGクロディに辿り着いたクロディだドン 静かな夜だった。窓の外に眠りの気配はない。陽が落ちてから時が経っているのに、異星の夜はクロスでもラクールでも目にしたことのないような光が洪水となって溢れている。それなのに、それら全ての喧騒は遠く、ディアスが佇む宿の廊下にまでは届かない。透明度の高い硝子戸の向こう側で、寡黙にさんざめく煌めいている。無音の世界でただ、視界だけが奇妙にざわついていた。
「ディアス?」
沈黙を破り、名前を呼ばれた。気配に気付いていたので、特に驚くこともなくディアスは肩越しに声の主を見遣った。夜の深い海の色をした髪を肩口で揺らしながら、幼馴染みの少女が近付いてくる。
「眠れないの?」
少女の確信めいた問いに、ディアスは小さく首を傾けた。
4409「ディアス?」
沈黙を破り、名前を呼ばれた。気配に気付いていたので、特に驚くこともなくディアスは肩越しに声の主を見遣った。夜の深い海の色をした髪を肩口で揺らしながら、幼馴染みの少女が近付いてくる。
「眠れないの?」
少女の確信めいた問いに、ディアスは小さく首を傾けた。