Sarururu
DONEFF16 ED後。長いこと行方不明になっていたディオンと、その生存を知らなかったテランスの話。
*テランスが二番目の主に仕えています。
*勢い任せの話です。
奪還「グエリゴールはもはや何も言わない。星めぐりは変わった。そして、私もまた」
かつては想像もできなかっただろう。動揺するあまり、得物を持つ彼の手が震えるなどということは。亡霊か何かを見るようなまなざしを彼が私に向けるなどということは。
愉快な心持ちは高揚に繋がっていく。あとは、彼が過たずに私の手を握ってくれることを願うのみ。
だが、こればかりは分からない、と心の片隅で少しだけ思う。私はもう長いこと行方が知れなかった。生存は絶望視され、既に亡き者として扱われてきたのらしい。私自身、今こうして聖槍を握って彼と対峙できようとは思いもしなかった。そう、幽世とも違う無の世界から引き戻されるまでは。
私を呼んだのは――召喚したのは――誰か。誰の祈りによるものか。
3725かつては想像もできなかっただろう。動揺するあまり、得物を持つ彼の手が震えるなどということは。亡霊か何かを見るようなまなざしを彼が私に向けるなどということは。
愉快な心持ちは高揚に繋がっていく。あとは、彼が過たずに私の手を握ってくれることを願うのみ。
だが、こればかりは分からない、と心の片隅で少しだけ思う。私はもう長いこと行方が知れなかった。生存は絶望視され、既に亡き者として扱われてきたのらしい。私自身、今こうして聖槍を握って彼と対峙できようとは思いもしなかった。そう、幽世とも違う無の世界から引き戻されるまでは。
私を呼んだのは――召喚したのは――誰か。誰の祈りによるものか。
Sarururu
DONE7~8歳くらいの頃のテランスとディオンのお話。修道院付属学校の休暇にて。
※エピローグはオリジン後です(オリジン組は全員生還してます)
新しい記念日「明日、帰るのだろう? ご家族によろしく伝えてくれ。きっと、首を長くして待っている」
「うん、この前の手紙で「待ってるよ」って書いてあった。ディオンも……あっ」
幼なじみにして同期生でそして何より大切な親友のディオンが何気ない笑顔と口調で言ったものだから、テランスはその笑顔につられて返事をしてしまった。
失敗した、と思う。失敗とは、ディオンに自分の家族のことを語ったことではない。ディオンに同じような言葉をかけてしまいそうになったことが失敗なのだ。しかも、その失敗を気取られるような声を上げてしまった。
ディオンに帰省を促す手紙は届かなかった。ずっと待っていたのに。
勿論、テランスの失敗は過たずディオンに伝わったようだった。だが、彼はテランスの失言を咎めるでもなく、目を細めて寂しそうに苦笑するだけだった。
3590「うん、この前の手紙で「待ってるよ」って書いてあった。ディオンも……あっ」
幼なじみにして同期生でそして何より大切な親友のディオンが何気ない笑顔と口調で言ったものだから、テランスはその笑顔につられて返事をしてしまった。
失敗した、と思う。失敗とは、ディオンに自分の家族のことを語ったことではない。ディオンに同じような言葉をかけてしまいそうになったことが失敗なのだ。しかも、その失敗を気取られるような声を上げてしまった。
ディオンに帰省を促す手紙は届かなかった。ずっと待っていたのに。
勿論、テランスの失敗は過たずディオンに伝わったようだった。だが、彼はテランスの失言を咎めるでもなく、目を細めて寂しそうに苦笑するだけだった。
malsumi_1416
DONE【とびっきりをあなたに】公現祭とガレット・デ・ロワ、それにかこつけていちゃつくテデちゃんのお話
ヴァリスゼアにはエピファニーはないと思うけど、例えばこんな祝祭があってもいいじゃないかと。
二人とも、相手に幸せになって欲しいのはきっと同じだったと信じて。
1…原作軸のどこか、21〜23歳くらいの二人 遷都前
2…転生記憶有り現パロ、社会人で週末お泊りする感じ
構成成分
宗教・風俗の捏造
とびっきりをあなたに1 <原作軸>
オリフレムの上空、羽ばたく風圧が人々や建屋に干してある洗濯物に障らないよう注意しつつ、海からの風を捉えてゆっくりと低空を飛行する。頬を切りつけるはずの寒気の刃も、顕現してエーテル伝いに鱗を纏ってしまえば左程気になるほどではない。冬の最中だというのに眼下に広がる町並みには色とりどりの飾り紐が渡され、寒さに負けじと咲き誇る花を頭に飾った子供たちがこちらを見上げて指を差していた。
「みて、バハムート!」
「すっげぇ……かっこいい~」
「ディオンさまー!」
『…ありがとう。今日の良き日に幸いあれ』
嬉しそうに追いかけてくる子供たちの上を二、三度旋回して寿ぐと、途端にきゃあ、と喜色を含んだ悲鳴がそこかしこから沸き上がりこちらの心まで軽くなっていく。
13329オリフレムの上空、羽ばたく風圧が人々や建屋に干してある洗濯物に障らないよう注意しつつ、海からの風を捉えてゆっくりと低空を飛行する。頬を切りつけるはずの寒気の刃も、顕現してエーテル伝いに鱗を纏ってしまえば左程気になるほどではない。冬の最中だというのに眼下に広がる町並みには色とりどりの飾り紐が渡され、寒さに負けじと咲き誇る花を頭に飾った子供たちがこちらを見上げて指を差していた。
「みて、バハムート!」
「すっげぇ……かっこいい~」
「ディオンさまー!」
『…ありがとう。今日の良き日に幸いあれ』
嬉しそうに追いかけてくる子供たちの上を二、三度旋回して寿ぐと、途端にきゃあ、と喜色を含んだ悲鳴がそこかしこから沸き上がりこちらの心まで軽くなっていく。
Sarururu
DONEオリジン組全員生還から数年ほど経った頃の冬のお話。ヴァリスゼア歴ではなく、地球の西暦でいうと、2024/12/26深夜のこと。
テランスの実家にて。
焼き林檎「おやすみなさい、良い夢を」
前ほどではないけれど久々に帰ってきた息子にそう声をかけると、彼ははにかんで「母上も」と呟いて私の部屋を出ていった。
珍しく話し込んだ。とはいっても、深刻な話はしていない。懐かしい話と、今の話と、未来の話。辛いことも多かっただろう「少し前の話」はすっ飛ばした息子に内心で溜息をついた。随分心配したのよ、とは言わないし、言えない。これからも、言わずともいいと思っている。なにせ、「今」と「未来」がほとんど惚気話だったのだから。
だから、大丈夫と信じている。
蝋燭の火が少し風に揺れた。硝子窓も木戸も下ろしているし、暖炉の火も落としていないけれど、それでも冷気は入り込む。肩掛けと膝掛けを持ち、私は日記を書きつけるために文机に向かった。
2843前ほどではないけれど久々に帰ってきた息子にそう声をかけると、彼ははにかんで「母上も」と呟いて私の部屋を出ていった。
珍しく話し込んだ。とはいっても、深刻な話はしていない。懐かしい話と、今の話と、未来の話。辛いことも多かっただろう「少し前の話」はすっ飛ばした息子に内心で溜息をついた。随分心配したのよ、とは言わないし、言えない。これからも、言わずともいいと思っている。なにせ、「今」と「未来」がほとんど惚気話だったのだから。
だから、大丈夫と信じている。
蝋燭の火が少し風に揺れた。硝子窓も木戸も下ろしているし、暖炉の火も落としていないけれど、それでも冷気は入り込む。肩掛けと膝掛けを持ち、私は日記を書きつけるために文机に向かった。
malsumi_1416
DONE『あなたこそわたしの』公式よりテランス初紹介を記念して。
現パロ
12/27がテランスの誕生日という世界線
二人の出会いと、思い出話
あなたこそわたしの「うぇ……にいちゃんん…」
クリスマスも過ぎ人もまばらな玩具売り場で、寄る辺ないかすかな泣き声が聞こえた気がしてディオンは足を止めた。
歳末を告げる壮大な喜びの賛歌が流れる店内で、おまけに子供たちの夢が詰まった楽しいばかりの箇所であるのに、不釣り合いなその声は棚の奥を行ったり来たり、うーだとかあーだとか途方に暮れたような響きを帯びてそこにあって、まだたった七つのディオンだろうと子供ながらに持ち合わせた良心に訴えかけてくる。
かき入れ時が終わった平日の昼間、店員もまばらな最中大声で助けを求めるでもなく、押し殺したまだか細い子供の湿り気を帯びたつぶやきがなんとなく気になって、自身も同じく子供であるのを脇に置いてディオンが声の聞こえた方向へ商品棚を分け入ると。
6272クリスマスも過ぎ人もまばらな玩具売り場で、寄る辺ないかすかな泣き声が聞こえた気がしてディオンは足を止めた。
歳末を告げる壮大な喜びの賛歌が流れる店内で、おまけに子供たちの夢が詰まった楽しいばかりの箇所であるのに、不釣り合いなその声は棚の奥を行ったり来たり、うーだとかあーだとか途方に暮れたような響きを帯びてそこにあって、まだたった七つのディオンだろうと子供ながらに持ち合わせた良心に訴えかけてくる。
かき入れ時が終わった平日の昼間、店員もまばらな最中大声で助けを求めるでもなく、押し殺したまだか細い子供の湿り気を帯びたつぶやきがなんとなく気になって、自身も同じく子供であるのを脇に置いてディオンが声の聞こえた方向へ商品棚を分け入ると。
Sarururu
DONE「オリジン落下中」のディオンの話。以前見た夢を形にしてみたのですが、ちょっとかわいくなりました(どちらが?)
2024/12/30:後半を追加掲載しました。こちらはテデな感じです。
迷い子 深く息を吐く。
己の限界を悟り、それを受け容れた。
ここまでだ。そう思った。
心残りはあれど、これでよいと思った。
幕引きを己で――、己の意思で、決められた。
後は。未来は。
己が何処まで贖えたかは分からない。破壊した世界、滅した民、何処まで報いたのだろうか。
それは未だ分からない。だが、己の力のすべてを託したあの兄弟は次の世の光を掴み取るだろう。
信じている。否、己は知っている。
世界にほんとうの光が生み出されることを。
その世界に己は不要なもの。
ようやく、不要なものになれた。
息ができる。ゆらゆらと揺れる眩い光を見上げる。
遠ざかる光を、ただ、見送る。
祈りを込めて。願いを込めて。ひとしずくの寂寥と圧倒的な多幸感に包まれて、落ちてゆく。
10363己の限界を悟り、それを受け容れた。
ここまでだ。そう思った。
心残りはあれど、これでよいと思った。
幕引きを己で――、己の意思で、決められた。
後は。未来は。
己が何処まで贖えたかは分からない。破壊した世界、滅した民、何処まで報いたのだろうか。
それは未だ分からない。だが、己の力のすべてを託したあの兄弟は次の世の光を掴み取るだろう。
信じている。否、己は知っている。
世界にほんとうの光が生み出されることを。
その世界に己は不要なもの。
ようやく、不要なものになれた。
息ができる。ゆらゆらと揺れる眩い光を見上げる。
遠ざかる光を、ただ、見送る。
祈りを込めて。願いを込めて。ひとしずくの寂寥と圧倒的な多幸感に包まれて、落ちてゆく。
malsumi_1416
DONE「冬に備える」ED後生還軸
二人で生きると決めたテデちゃんのささやかな日常と「死者の日」について。
過去作「味を知る話」及び前作「元使用人…」を一部踏襲しています。
構成成分:
石化由来の身体不自由
風俗・習慣の捏造
テが少々不安定
明るい話ではないかも
上記をご了承の上、大丈夫そうな方はどうぞ
冬に備える ガツッ、——トン、ト、ト、ト。
家の裏手に残されている腰かけ代わりの切り株に座り込み、手鉈を振りかぶりながら大きな丸太をひたすらかち割っていく。
半分、もう半分…これはまだ太いからもう一回。
もう全身至る所が石化していたため節々に少しばかり固さが残るが、去年の今頃と比較すると幾分か動きやすくなってきた身体をリハビリがてらこうして動かして、最近では家の運営にかかわる事なら少しづつ携われるようになってきた。
けれど元々細かな作業が得意かと言われればそうでもないので、街道を外れた森に分け入り獣道を進んだ末にたどり着くこの家で出来る仕事……もとい暇潰しと言えば、もっぱら掃除と薪割りと、テランスが町から仕入れてきたり隠れ家の誰がしかがストラスの足にくくりつける手紙に紛れて寄越してくれる、野菜や果樹の種を植えている小さな畑の世話ばかり。
4656家の裏手に残されている腰かけ代わりの切り株に座り込み、手鉈を振りかぶりながら大きな丸太をひたすらかち割っていく。
半分、もう半分…これはまだ太いからもう一回。
もう全身至る所が石化していたため節々に少しばかり固さが残るが、去年の今頃と比較すると幾分か動きやすくなってきた身体をリハビリがてらこうして動かして、最近では家の運営にかかわる事なら少しづつ携われるようになってきた。
けれど元々細かな作業が得意かと言われればそうでもないので、街道を外れた森に分け入り獣道を進んだ末にたどり着くこの家で出来る仕事……もとい暇潰しと言えば、もっぱら掃除と薪割りと、テランスが町から仕入れてきたり隠れ家の誰がしかがストラスの足にくくりつける手紙に紛れて寄越してくれる、野菜や果樹の種を植えている小さな畑の世話ばかり。
mizutarou22
DONE #テラディオの日今日はテラディオの日。現パロです。
今度からは教えてね そのことに気付いた瞬間、身体中から血の気が引いたような感覚が襲った。何度目を擦ってみても、結果は同じ。
いない。いないのだ。
「何故……」
私の大事な、テディベアが。いつも置いてある場所から、いなくなっていた。
◆◇◆◇
「これを……私に?」
「うん!」
それは、まるでテランスに似たブルーグレーの瞳をした可愛いテディベア。そのテディベアを持って、にっこりと微笑み、私へと差し出してくる子供の頃のテランス。
「家の中までは一緒にはいられないから……これを、僕だと思って」
「……!」
私は嬉しかった。心の中に花が咲いたようだった。私はテランスからテディベアを受け取り、ぎゅっと抱きしめる。
家は隣同士で、よくお互いの家に遊びに行ったりしたけれど、さすがに夜までは一緒にはいられない。私が「テランスともっと一緒にいたい」と泣いてしまったことを覚えていてくれていたのだろう。優しいテランスは私のために、テディベアを買ってきてくれたのだ。
1735いない。いないのだ。
「何故……」
私の大事な、テディベアが。いつも置いてある場所から、いなくなっていた。
◆◇◆◇
「これを……私に?」
「うん!」
それは、まるでテランスに似たブルーグレーの瞳をした可愛いテディベア。そのテディベアを持って、にっこりと微笑み、私へと差し出してくる子供の頃のテランス。
「家の中までは一緒にはいられないから……これを、僕だと思って」
「……!」
私は嬉しかった。心の中に花が咲いたようだった。私はテランスからテディベアを受け取り、ぎゅっと抱きしめる。
家は隣同士で、よくお互いの家に遊びに行ったりしたけれど、さすがに夜までは一緒にはいられない。私が「テランスともっと一緒にいたい」と泣いてしまったことを覚えていてくれていたのだろう。優しいテランスは私のために、テディベアを買ってきてくれたのだ。
malsumi_1416
DONE【元使用人の独白、あるいはある男の告解】「テデの日」に寄せて
ある使用人の目線から見た、幼き日のテランス+ディオンの思い出とそれを踏まえた「彼」の告白
テデちゃんがお付き合い始めたあたり
構成成分:
モブの回想
弊テデの幼少期の幻覚
テランスの姓の捏造
テ君の出番は幼少期のみ
モブの語りから入ります
キャプションをご了承の上、お好きな方はどうぞ
元使用人の独白、あるいはある男の告解一
少し、昔話を致しましょうか。
懐かしいカモミーユのお茶は如何?
こちらのお菓子は?
ええ、あなた様とお会いできるからと今朝方から。焼きたてですのよ。
ああでも、これが好きだったのは小さなあの子の方でしたわね。
さて、どこからお聴きになりたいかしら。
……あら、そう。
最初から、と。
では、改めてわたくしとあの方の馴れ初めでもお話ししましょうか。
懐かしいこと……あの時の事は今でも憶えてますわ。
最初の報せが参りましたのは、凍てつく中に春の風が吹き始める頃。
わたくし達一家が所領の倹しい我が家で、未だ残る寒さに暖炉を囲んでいた時のことですの。
風ではなく、人の手が扉を打ち付ける音を聞いた従僕が表を確かめに行って、暫くして血相を変えて走り込んできたものですから。
16006少し、昔話を致しましょうか。
懐かしいカモミーユのお茶は如何?
こちらのお菓子は?
ええ、あなた様とお会いできるからと今朝方から。焼きたてですのよ。
ああでも、これが好きだったのは小さなあの子の方でしたわね。
さて、どこからお聴きになりたいかしら。
……あら、そう。
最初から、と。
では、改めてわたくしとあの方の馴れ初めでもお話ししましょうか。
懐かしいこと……あの時の事は今でも憶えてますわ。
最初の報せが参りましたのは、凍てつく中に春の風が吹き始める頃。
わたくし達一家が所領の倹しい我が家で、未だ残る寒さに暖炉を囲んでいた時のことですの。
風ではなく、人の手が扉を打ち付ける音を聞いた従僕が表を確かめに行って、暫くして血相を変えて走り込んできたものですから。
mizutarou22
DONE顕現が辛くて倒れてしまうテラディオ。ディとテは今回会話していません。それでもテラへ想いを届けようとするディの短いお話。涙を拭いて 痛い。苦しい。痛い。
身体中を槍で刺されたような痛みが走る。私は苦しさのあまり、何度も寝返りを打った。汗がふきだし、それが身体中に巻かれた包帯に染みこんでいく。はぁはぁと何度呼吸をしても肺いっぱいに空気が入っていないような感覚だ。
いつもどおりだった。いつもと変わらず、私は戦の場で顕現し、バハムートとなって空を駆けた。しかし顕現を解いた瞬間、ずきりと身体に衝撃が走り、そのまま倒れ、血を吐いた。
周りにいた私の部下たちの焦る声、重くなる目蓋、そしてそんな私の状態に気づき、向かって走ってくる私の最愛。
「テ、ランス……」
私は喘ぎながら、天幕の外で必死に私の快復を祈っているだろう恋人の姿を思う。
快復を担当する部下たちが私の簡易ベッドの周りで忙しなく動いてくれている。視界が部下たちに微かに遮られているが、私は視線を天幕の外にいるだろう彼へと向ける。
905身体中を槍で刺されたような痛みが走る。私は苦しさのあまり、何度も寝返りを打った。汗がふきだし、それが身体中に巻かれた包帯に染みこんでいく。はぁはぁと何度呼吸をしても肺いっぱいに空気が入っていないような感覚だ。
いつもどおりだった。いつもと変わらず、私は戦の場で顕現し、バハムートとなって空を駆けた。しかし顕現を解いた瞬間、ずきりと身体に衝撃が走り、そのまま倒れ、血を吐いた。
周りにいた私の部下たちの焦る声、重くなる目蓋、そしてそんな私の状態に気づき、向かって走ってくる私の最愛。
「テ、ランス……」
私は喘ぎながら、天幕の外で必死に私の快復を祈っているだろう恋人の姿を思う。
快復を担当する部下たちが私の簡易ベッドの周りで忙しなく動いてくれている。視界が部下たちに微かに遮られているが、私は視線を天幕の外にいるだろう彼へと向ける。
malsumi_1416
DONE『愛しさの欠片を拾う』精神が後退したり戻ったりのディオンとそばで支え続けるテランスのお話
本編生還if
無理な顕現がたたり身体も心も不調を来してしまった殿下の毎日と、どんな主でもそばにいられれば(きっと)それなりに幸せの従者
テランスはささやかな楽しみを見出だすのに長けている気がする
話題提供者様に感謝を込めて
成分表示
幼児後退
石化由来の身体不自由
軽度の性描写有り 8614
Sarururu
DONE「過去を知らぬ者」の続編。ほぼテランス視点です。これもテラディオと言い張らせていただきます…!
続・過去を知らぬ者 ──もう何度目になるのだか。
扉を勢いよく閉め、テランスは盛大に溜息をついた。あの歴史学者見習いが訪なってくるたびに同じようなことを思う。七……八度目だったか、よくは覚えていないが、扉を閉めた拍子に彼が指を骨折したらしいことは知っている。あちらが悪いのだから、と自分は大して気にも留めなかったのだが、とある声は自分を咎めた。
その声は今日はまだ聞こえない。気配もない。
聞きたい、とぼんやり思いながら、テランスは書斎へと向かった。適当に片付けてある書斎の本棚から数冊の冊子を取り出す。内心で暗雲が垂れ込めたが、声が命じるのだから仕方がない。机に置いて、椅子に座る。良質の紙を数枚取り出し、羽根ペンとインクの準備もした。
3480扉を勢いよく閉め、テランスは盛大に溜息をついた。あの歴史学者見習いが訪なってくるたびに同じようなことを思う。七……八度目だったか、よくは覚えていないが、扉を閉めた拍子に彼が指を骨折したらしいことは知っている。あちらが悪いのだから、と自分は大して気にも留めなかったのだが、とある声は自分を咎めた。
その声は今日はまだ聞こえない。気配もない。
聞きたい、とぼんやり思いながら、テランスは書斎へと向かった。適当に片付けてある書斎の本棚から数冊の冊子を取り出す。内心で暗雲が垂れ込めたが、声が命じるのだから仕方がない。机に置いて、椅子に座る。良質の紙を数枚取り出し、羽根ペンとインクの準備もした。
Sarururu
DOODLE過去を知らぬ者による、過去を知る者への探求。ディオン・ルサージュとは何者か。それを知りたくて──。
※テラディオと言い張っておきます…(どちらもほぼ出ません)
過去を知らぬ者「帰ってください」
「……また、それですか」
僕の顔を見るなりそう言った彼に、僕は項垂れてしまった。何度この家に足を運んだのかもう覚えていない。初めてここを訪れたときは、彼は僕の話を終わりに差し掛かるところまで聞いてくれた。二度目は、半分。三度目からは嫌悪感を露にし始めた。露骨に顔をしかめ、扉を閉めようとした彼の行動に、少しだけでもと戸口に手を差し込んだ。……確かそれは六度目のことで、薬指を骨折してしまった。そのときの彼は自らの行ないに驚きはしたが、反省はしていないようだった。悪いとも思っていなかったように思えた。
折れた指が治ってこの家を意気揚々と訪れた僕は、若干マゾヒズムじみているのかもしれない。そうして七度目に会った彼は呆れた顔で僕をしばらく見下ろした。そうして、いつものように扉を閉めた。ひゅうう、と風が吹き抜ける音がした。
1549「……また、それですか」
僕の顔を見るなりそう言った彼に、僕は項垂れてしまった。何度この家に足を運んだのかもう覚えていない。初めてここを訪れたときは、彼は僕の話を終わりに差し掛かるところまで聞いてくれた。二度目は、半分。三度目からは嫌悪感を露にし始めた。露骨に顔をしかめ、扉を閉めようとした彼の行動に、少しだけでもと戸口に手を差し込んだ。……確かそれは六度目のことで、薬指を骨折してしまった。そのときの彼は自らの行ないに驚きはしたが、反省はしていないようだった。悪いとも思っていなかったように思えた。
折れた指が治ってこの家を意気揚々と訪れた僕は、若干マゾヒズムじみているのかもしれない。そうして七度目に会った彼は呆れた顔で僕をしばらく見下ろした。そうして、いつものように扉を閉めた。ひゅうう、と風が吹き抜ける音がした。
Sarururu
DONE「後朝の歌」に関するディオンとテランスのお話。本編軸とED後に分かれています。
寒夜『外大陸の果ての国には、別れの後に詩を交わすらしい』
未だ外は闇。鎧戸を閉めたにも関わらず、嵌められた玻璃窓は霜がついていた。クリスタルと暖炉で部屋はそれでもほのかに暖かいとはいえたが、その暖かさは「私」が望むものではなかった。
厚手の夜着を私に着込ませて、最後に胸元の紐を結んでしまったテランスに、私はそんなことを言った。
『詩を? 別れ……の後に、ですか?』
言葉遣いも従者のそれに戻してしまった彼に、私は頷く。不審そうな表情が可愛らしくて、手に触れた。
『朝を共に迎えられぬ恋人同士が、そのときの感情なり想いなりを詩にして届けるのだとか。風流といえば、風流だな』
恩師との雑談の折だったろうか、「愛」について語らう機会があった。テランスの激白を聞いた後のことで、己の感情を持て余していた頃だったと思う。相談相手となるような人物は他に思い描けなかったから、私は恩師に彼への感情をひとしきり語った。語ってしまった。
1940未だ外は闇。鎧戸を閉めたにも関わらず、嵌められた玻璃窓は霜がついていた。クリスタルと暖炉で部屋はそれでもほのかに暖かいとはいえたが、その暖かさは「私」が望むものではなかった。
厚手の夜着を私に着込ませて、最後に胸元の紐を結んでしまったテランスに、私はそんなことを言った。
『詩を? 別れ……の後に、ですか?』
言葉遣いも従者のそれに戻してしまった彼に、私は頷く。不審そうな表情が可愛らしくて、手に触れた。
『朝を共に迎えられぬ恋人同士が、そのときの感情なり想いなりを詩にして届けるのだとか。風流といえば、風流だな』
恩師との雑談の折だったろうか、「愛」について語らう機会があった。テランスの激白を聞いた後のことで、己の感情を持て余していた頃だったと思う。相談相手となるような人物は他に思い描けなかったから、私は恩師に彼への感情をひとしきり語った。語ってしまった。
ぐりまる/丸
DOODLEテラディオ リレー小説第2段先行ぐりまる、後攻アヤTORO(@ayatoro2go_2sei )さん
改行2回で交代してます〜
ゴール・リベンジを誓う
構ってほしいの雑務に飽きて、気紛れにそいつの脇腹を突いて背中をなぞった。微動だにせず隣に佇む従者に、彼はむう、と口をへの字に曲げた。
「つまらん」
背凭れに体重を預けて従者を見上げる。視線だけをこちらにやった従者は、当然です、と嘆息した。
「少しはつきあえ」
そう拗ねてみたものの、それくらいで折れるようなやつではない。なにせ、私の自慢の従者だ。簡単に落とせるはずがないのだ。だからこそ落とし甲斐があると言うもの。見ておれテランス……私の魅力で必ずやお前をその気にさせてみせる!と手を握りしめ、改めて自慢の従者の背中をなぞった。
そっと産まれたての竜に触れるように優しく、ゆっくりと指先を当てる。つう、と背の溝を滑り降りて、ベルトを爪で掻き、裾を引く。
1463「つまらん」
背凭れに体重を預けて従者を見上げる。視線だけをこちらにやった従者は、当然です、と嘆息した。
「少しはつきあえ」
そう拗ねてみたものの、それくらいで折れるようなやつではない。なにせ、私の自慢の従者だ。簡単に落とせるはずがないのだ。だからこそ落とし甲斐があると言うもの。見ておれテランス……私の魅力で必ずやお前をその気にさせてみせる!と手を握りしめ、改めて自慢の従者の背中をなぞった。
そっと産まれたての竜に触れるように優しく、ゆっくりと指先を当てる。つう、と背の溝を滑り降りて、ベルトを爪で掻き、裾を引く。
mizutarou22
DONE丸さんの『テデ文の冒頭書いて置いといたらこのツイを見た誰かが続き書いてくれるシリーズ』に参加しました!冒頭『873年〜つい驚いてしまった』までが丸さんの文章です。ゴールは『テラ渾身の愛してる』でした!元ツイhttps://x.com/QED0099/status/1833126567289233909?t=OmbDE4OEqF2HEmmajisbuQ&s=19愛しているからそばにいて 873年、我が団員の一人が遂に婚姻を結んだらしい。紛争の最中、何か彼を駆り立てる物があったのか、令嬢に求婚をしたと。報告にきた部下の脂下がる顔に、つい驚いてしまった。
しかしその部下の嬉しそうな表情を見て、私の心は温かくなった。部下の様子から察するに、そのご令嬢とは昔から仲が良いのだろう。きっとこの部下はこの先素晴らしい家庭を築いていける。どんな戦がこの先に待ち受けようとも、必ず令嬢のもとへ帰っていくだろう。
私は部下に祝いの言葉を告げ、今度団員達で祝いの席を設けようと提案した。部下は破顔して提案を受け入れてくれたが、その瞳には涙が浮かんでいた。私はその涙の意味を知っていて、あえて言葉にしなかった。
1014しかしその部下の嬉しそうな表情を見て、私の心は温かくなった。部下の様子から察するに、そのご令嬢とは昔から仲が良いのだろう。きっとこの部下はこの先素晴らしい家庭を築いていける。どんな戦がこの先に待ち受けようとも、必ず令嬢のもとへ帰っていくだろう。
私は部下に祝いの言葉を告げ、今度団員達で祝いの席を設けようと提案した。部下は破顔して提案を受け入れてくれたが、その瞳には涙が浮かんでいた。私はその涙の意味を知っていて、あえて言葉にしなかった。
Sarururu
DONEテラディオについて丸さんから冒頭およびゴールのお題をいただきまして、書かせていただきました!ポイピク掲載にあたり、少し修正しています。タイトル英語はGoogle翻訳さんに依頼しました。
お題くださった丸さんありがとうございましたー!
I forgive you who can't forgive yourself 彼の機嫌が急降下したのは何が切欠だったのか、どれだけ頭を捻ってもわからなかった。朝は普通だった。彼に予定を伝えて、隊の編成をし、安全を確保しながら駐屯地へ。昼食を共にして、各々団員への指導を行った。それが今、どうしてこんなことに──?
我も我もと打ち合いに食い下がる者は今日は珍しくおらず、ディオンは若干の拍子抜けの気分で駐屯地内の自室へ戻ろうとした。悲しいかな、書類仕事を持ってきたので、それを片付けるつもりだった。その前に、とテランスが担当している練兵場へ向かう。彼をピックアップするついでに、指導の様子を盗み見するのも良いと思った。
普段、己には見せないテランスの表情を見るのがディオンは好きだった。それに、勉強にもなる。
1655我も我もと打ち合いに食い下がる者は今日は珍しくおらず、ディオンは若干の拍子抜けの気分で駐屯地内の自室へ戻ろうとした。悲しいかな、書類仕事を持ってきたので、それを片付けるつもりだった。その前に、とテランスが担当している練兵場へ向かう。彼をピックアップするついでに、指導の様子を盗み見するのも良いと思った。
普段、己には見せないテランスの表情を見るのがディオンは好きだった。それに、勉強にもなる。
mizutarou22
DONE現パロ、転生パロのテラディオの短いお話です。ディオンが『♡』で喋ります。あとキャラが崩壊しています。苦手な方はご注意ください。大好き♡「好き♡ テランス♡ だ~いすき♡」
「……」
ディオンはそれはもうべたべたと僕にくっつき、離れない。冷蔵庫に飲み物を取りに行くときだったり、キッチンで料理をするときも、ディオンは今日一日中僕をぎゅっと抱きしめて『好き好き♡』と言ってくる。
そんなディオンについ僕は『可愛いなぁ』と思ってしまうと同時に、どうしても戸惑いが心を支配する。
「……ディオン……性格……変わった」
昔……『前世』のディオンはこんな風に僕に愛を囁かなかった。以前は瞳でお互いを見つめ合えば言葉はいらなかった。言葉で伝えるときには『愛している』だとか『そなたと共に生きていきたい』だとか、もっと紳士的だった。
しかし『今世』では語尾には『♡』が付いているなぁとわかるし、目をとろんと蕩けさせて、その奥にはハートが浮かんでいる。性格が変わったとしか思えない。
1242「……」
ディオンはそれはもうべたべたと僕にくっつき、離れない。冷蔵庫に飲み物を取りに行くときだったり、キッチンで料理をするときも、ディオンは今日一日中僕をぎゅっと抱きしめて『好き好き♡』と言ってくる。
そんなディオンについ僕は『可愛いなぁ』と思ってしまうと同時に、どうしても戸惑いが心を支配する。
「……ディオン……性格……変わった」
昔……『前世』のディオンはこんな風に僕に愛を囁かなかった。以前は瞳でお互いを見つめ合えば言葉はいらなかった。言葉で伝えるときには『愛している』だとか『そなたと共に生きていきたい』だとか、もっと紳士的だった。
しかし『今世』では語尾には『♡』が付いているなぁとわかるし、目をとろんと蕩けさせて、その奥にはハートが浮かんでいる。性格が変わったとしか思えない。
ぐりまる/丸
PASTED後生存、隠れ家で療養中に起こった事件とは──みたいな話続きを書いてるとこなので支部に上げたあらすじのようなモノをこっちにUPしときます
被虐と嗜虐の皇子様どこで選択を間違ってしまったのか。
霞む視界、何の力も残っていない四肢を宙に投げ出し自身に問いかける。20年振りに会ったフェニックスの馬鹿げた妄言を無視した事か。それとも、奴等をみすみす逃し、侵入を許してしまった事か。どちらにせよ、余は負けた。フェニックスと組んだイフリートによって召喚獣を喰われ、翼を捥がれ、地に墜とされてしまったのだ。
父上にも母上にも申し訳が立たない。余が死んでしまったことで、猊下はどうなったのだろうか。バハムート亡き今、皆殺されているだろう。『お前のような玩具が欲しかったのだ』そう言って嘲笑ったオリヴィエ、お前の玩具の役割は果たせそうにない。
やはり鏖にすべきだったのだ。忌々しい。愚かな事をした。余も、奴らも。
6327霞む視界、何の力も残っていない四肢を宙に投げ出し自身に問いかける。20年振りに会ったフェニックスの馬鹿げた妄言を無視した事か。それとも、奴等をみすみす逃し、侵入を許してしまった事か。どちらにせよ、余は負けた。フェニックスと組んだイフリートによって召喚獣を喰われ、翼を捥がれ、地に墜とされてしまったのだ。
父上にも母上にも申し訳が立たない。余が死んでしまったことで、猊下はどうなったのだろうか。バハムート亡き今、皆殺されているだろう。『お前のような玩具が欲しかったのだ』そう言って嘲笑ったオリヴィエ、お前の玩具の役割は果たせそうにない。
やはり鏖にすべきだったのだ。忌々しい。愚かな事をした。余も、奴らも。
mizutarou22
DONE修道院付属学校入学初日の夜のテラディオのお話です。どうか神様 修道院付属学校に入学してはじめての夜、ディオンは寮の六人部屋の寝室で同室の同い年のクラスメイトから質問攻めにあっていた。
「すごいね」
「これなら将来監督生になれるかも」
「さすがバハムートのドミナント、だね」
ディオンはクラスメイトの勢いに押されながらも目を細めていた。クラスメイトの瞳はキラキラと輝いて、ディオンを尊敬の眼差しで見つめる。しかし僕の心はぐちゃぐちゃと黒く濁り、晴れなかった。
入学してすぐ、僕たちは教室で学力テストを受け、外へ出れば運動をして身体能力を見られ……、そこでディオンは皆から注目の的となった。ディオンの活躍を見た先生はディオンのことを「文武両道の天才」と褒めた。ディオンはたしかにすごかった。筆記は満点、体育も完璧に身体を動かしてみせた。先生はこれなら将来戦に行くことになっても活躍できるとおっしゃっていた。
1497「すごいね」
「これなら将来監督生になれるかも」
「さすがバハムートのドミナント、だね」
ディオンはクラスメイトの勢いに押されながらも目を細めていた。クラスメイトの瞳はキラキラと輝いて、ディオンを尊敬の眼差しで見つめる。しかし僕の心はぐちゃぐちゃと黒く濁り、晴れなかった。
入学してすぐ、僕たちは教室で学力テストを受け、外へ出れば運動をして身体能力を見られ……、そこでディオンは皆から注目の的となった。ディオンの活躍を見た先生はディオンのことを「文武両道の天才」と褒めた。ディオンはたしかにすごかった。筆記は満点、体育も完璧に身体を動かしてみせた。先生はこれなら将来戦に行くことになっても活躍できるとおっしゃっていた。
malsumi_1416
MOURNINGテデの夏休み企画に間に合わなかったものです現パロ転生記憶アリ
日本っぽいどこかの国の幼馴染テデちゃん
少し年の差があります
書けたところまで
夏休みの短編(仮)7✕11
年期の入った据え置き型のラジヲをぶらぶら揺らしながら、通いなれた学校までの道を黙々と歩いていく。
まだ低い位置にあるはずの太陽が時折住宅の間から瞳を刺激して、夜間に降った雨のせいか湿ったままの空気が温まりしっとりと肌にまとわりつく。
朝の6時を過ぎたところだというのに、庭木といい街路樹といい至る所からジーウジーウと蝉たちの元気な合唱が降り注いで鼓膜の表面に張り付くようだ。
ずっとこの土地に住んでいるのに、生まれついてこのかた頭の下地にある記憶のせいでどうにもこの〝夏〟だけは未だに違和感が拭えない。
額を触るとすでに汗で湿ってしまっていて、くっついてしまった前髪ごと首のタオルでかきあげていると、後ろから軽やかな足音と聞きなれた高い声が段々と近付いてきた。
3592年期の入った据え置き型のラジヲをぶらぶら揺らしながら、通いなれた学校までの道を黙々と歩いていく。
まだ低い位置にあるはずの太陽が時折住宅の間から瞳を刺激して、夜間に降った雨のせいか湿ったままの空気が温まりしっとりと肌にまとわりつく。
朝の6時を過ぎたところだというのに、庭木といい街路樹といい至る所からジーウジーウと蝉たちの元気な合唱が降り注いで鼓膜の表面に張り付くようだ。
ずっとこの土地に住んでいるのに、生まれついてこのかた頭の下地にある記憶のせいでどうにもこの〝夏〟だけは未だに違和感が拭えない。
額を触るとすでに汗で湿ってしまっていて、くっついてしまった前髪ごと首のタオルでかきあげていると、後ろから軽やかな足音と聞きなれた高い声が段々と近付いてきた。
ぐりまる/丸
DONE8月31日のI love youの日に書いてXと支部にUPしたテラディオ話を、グーグル翻訳とDeepL翻訳というやつにかけては日本語に変換してを繰り返してみたんですが、英語がさっぱりわからないので正しい文になってるか判定が難しく、とりあえずそのままUPします😂変なとこあったら教えてください〜
831の日にConvey your love at the end of summer.
8 letters, 3 words, 1 meaning.
Dion was racking his brains as the last day of August finally arrived. It was that annual day. The day that has meaning to three numbers, regarding the date. He smiled at the "831" written in small letters on the edge of the note, or raised his love with a grand appeal.
103818 letters, 3 words, 1 meaning.
Dion was racking his brains as the last day of August finally arrived. It was that annual day. The day that has meaning to three numbers, regarding the date. He smiled at the "831" written in small letters on the edge of the note, or raised his love with a grand appeal.
Sarururu
DONE8月31日は「I Love Youの日」なのだそうで、テラディオで書いてみました。ED後生存ifから少し時間が経った頃のふたりと隠れ家の皆です。ただ ひとつの ゆいいつの 依頼された魔物退治と、その後に反省会と称して行われた「石の剣」の練兵を終わらせてテランスが隠れ家へ戻ってきたのは、宵も半ばという頃合いだった。当然、舟守のオボルスには「陽が暮れてから舟は出したくねえんだよ」と文句をたっぷりと言われたが、同乗したドリスとコールが宥めてくれたので、テランスは割増料金を払わずに済んだ。
隠れ家には、久々に滞在することになっている。別の場所に住まうようになってしばらく経つが、隠れ家が持ち合わせている空気感は今も慕わしい。ドリスとコールとは別れ、ひとりで昇降機に乗り込んだテランスは「何故だろう」とぼんやりそんなことを思った。
──おそらく、本当に様々なことが此処で起きたから。
4062隠れ家には、久々に滞在することになっている。別の場所に住まうようになってしばらく経つが、隠れ家が持ち合わせている空気感は今も慕わしい。ドリスとコールとは別れ、ひとりで昇降機に乗り込んだテランスは「何故だろう」とぼんやりそんなことを思った。
──おそらく、本当に様々なことが此処で起きたから。
Sarururu
DOODLE「カード」を選べと言われるディオンのお話。テランスの影はどこにもないですが、一応テラディオ前提。8月末までに続きを書…く予定。雑貨まつり その日、恩師・ハルポクラテスから借りていた書物を返そうと隠れ家を訪ったディオンは、大広間に入るなり、その異様な賑わいに面食らった。
普段は主に通路代わりに使われている場である。突発的に宴になってラウンジだけでは用が足りなくなった場合には急遽使われることもあるが、それとはまた別の類の熱気がこの場にはあった。
「これ、いいなあ」
「かーわーいーいー! 私、これにする!」
「決めきれない……。あれも、これも素敵すぎる……」
「え、全部? どれだけ買い込むつもり?」
「だって、この日のためにやりくりしたのよ!」
「私も。お給金くれるってシアワセをありがとう、シド……」
「そして、トキメキの場を作ってくれてありがとう、カローン……」
2403普段は主に通路代わりに使われている場である。突発的に宴になってラウンジだけでは用が足りなくなった場合には急遽使われることもあるが、それとはまた別の類の熱気がこの場にはあった。
「これ、いいなあ」
「かーわーいーいー! 私、これにする!」
「決めきれない……。あれも、これも素敵すぎる……」
「え、全部? どれだけ買い込むつもり?」
「だって、この日のためにやりくりしたのよ!」
「私も。お給金くれるってシアワセをありがとう、シド……」
「そして、トキメキの場を作ってくれてありがとう、カローン……」
mizutarou22
DONEジャンプするテランスが見たかっただけのテラディオの短いお話です。あなたの飛ぶ姿「追い詰めたぜ……可愛いお嬢さん?」
ぐへへ……と嗤う汚らしい山賊たちに周りを取り囲まれる。後ろは崖になっており、下は川が激しく流れている。落ちたらひとたまりもないだろう。しかし私はただ静かに、山賊たちを見つめていた。
「おとなしく降参すれば命だけは助けてやる……ただし、その場合、お前は俺たちの『玩具』になってもらうからな」
山賊の目は私を上から下までいやらしく、舐める様に見て、舌なめずりをする。もう勝ったと思い込んでいるのだろう。
「ふふ……」
私は山賊たちのその様子に我慢できず、口の端を上げた。だって、これは笑うしかないだろう?
「テランス」
私が小さく呟くと、上から、風を切る音が耳に届いた。
「……? ぐ、がぁ……っ」
1094ぐへへ……と嗤う汚らしい山賊たちに周りを取り囲まれる。後ろは崖になっており、下は川が激しく流れている。落ちたらひとたまりもないだろう。しかし私はただ静かに、山賊たちを見つめていた。
「おとなしく降参すれば命だけは助けてやる……ただし、その場合、お前は俺たちの『玩具』になってもらうからな」
山賊の目は私を上から下までいやらしく、舐める様に見て、舌なめずりをする。もう勝ったと思い込んでいるのだろう。
「ふふ……」
私は山賊たちのその様子に我慢できず、口の端を上げた。だって、これは笑うしかないだろう?
「テランス」
私が小さく呟くと、上から、風を切る音が耳に届いた。
「……? ぐ、がぁ……っ」
mizutarou22
DONEバニーの日は過ぎましたが書きたくて……めちゃくちゃ短いです。可愛いうさぎさん「また何やってるのディオンったら……」
「そんな呆れ顔しても無駄だぞ 本当は悦んでいるくせに……」
そう言ってバニー姿のディオンは臀部をこちらへ向けてふりふりと振ってくる。たしかに可愛いけど……
「本当にディオンって僕が狼になること知っててわざと煽ってくるよね……」
僕はもうすっかり下半身に熱が集まるのを感じて、ディオンをじっと見つめる。
「だって食べられたいのだ……狼のお前に♡」
「もう……ディオン」
ああ……僕はまた我慢できずにディオンを押し倒してしまう。ディオンは嬉しそうに、そしてこれから起こることに期待に目をハートにしている。うさぎは発情期が多いと聞くが、僕たちもうさぎに負けず、いつも求めあっている。僕たちはうさぎと同じ思考を持っているのかもしれない……。
442「そんな呆れ顔しても無駄だぞ 本当は悦んでいるくせに……」
そう言ってバニー姿のディオンは臀部をこちらへ向けてふりふりと振ってくる。たしかに可愛いけど……
「本当にディオンって僕が狼になること知っててわざと煽ってくるよね……」
僕はもうすっかり下半身に熱が集まるのを感じて、ディオンをじっと見つめる。
「だって食べられたいのだ……狼のお前に♡」
「もう……ディオン」
ああ……僕はまた我慢できずにディオンを押し倒してしまう。ディオンは嬉しそうに、そしてこれから起こることに期待に目をハートにしている。うさぎは発情期が多いと聞くが、僕たちもうさぎに負けず、いつも求めあっている。僕たちはうさぎと同じ思考を持っているのかもしれない……。
magarikado4
DOODLEまずは新刊をお手に取っていただきありがとうございました(´༎ຶོρ༎ຶོ`)本当に思った以上で…12月用の予備も残らずご注文いただきびっくりとともに改めて御礼申し上げます。何事もなければお取り替え用の予備も後日少しですが解放します。
mizutarou22
DONE現パロでテラディオとツォンルー話。ディオンとルーファウスが友達同士。主人公はDです。ラブラブだね「それで、そのときの余のテランスといったら……とても美しくてな……」
「私のツォンも負けてはいない。最中のときのツォンはいつもと違って獣になるのでな」
……もう二人とも酔ってるなぁ……。
そう思って僕は以前ご主人様が買ってくれた『人をだめにするクッション』のなかに身体を沈み込ませた。僕は人じゃなくてダークネイションだけど。
今日はご主人様の仕事仲間の『ディオン』という人が我が家に来ている。なんでも会社の社長をしているらしく、同じく会社の社長をしているご主人様と以前仕事を一緒にしたとき、意気投合したらしい。
「余のテランスは子犬のような顔をして……しかし、夜の営みのときは激しく私を暴いていく……それがとても気持ち良くて」
1252「私のツォンも負けてはいない。最中のときのツォンはいつもと違って獣になるのでな」
……もう二人とも酔ってるなぁ……。
そう思って僕は以前ご主人様が買ってくれた『人をだめにするクッション』のなかに身体を沈み込ませた。僕は人じゃなくてダークネイションだけど。
今日はご主人様の仕事仲間の『ディオン』という人が我が家に来ている。なんでも会社の社長をしているらしく、同じく会社の社長をしているご主人様と以前仕事を一緒にしたとき、意気投合したらしい。
「余のテランスは子犬のような顔をして……しかし、夜の営みのときは激しく私を暴いていく……それがとても気持ち良くて」
mizutarou22
DONEウェブボにて頂きましたお題『急な大雨で雨宿りするラブラブなテラディオ』です。学パロ、両片想い、R-17、最後はテランス視点です。この大雨はゲリラ豪雨で、ゲリラ豪雨は夏に多いらしいのでこちらも『テデの夏休み』企画参加の作品にしました。 2763mizutarou22
DONEオリジン後のテラディオ。ベンヌ湖の上で今後について考えるディのお話。夏休み企画に二回目の参加ですが、夏要素が少ないです。いつか行けたら「ディオン様、少し休憩しませんか」
そう言ってテランスは私の瞳を見つめて提案をした。
私たちはオリジンでの闘いの後、ここ『隠れ家』で過ごしている。テランスは私と別れ、キエルを保護した後、なんとかここ、『隠れ家』に辿りつき、私の身体のリハビリの文字通り支えとなってくれていた。私はまだ身体が思うように動かすことが出来ず、日々『隠れ家』の遺跡の中を一周して歩く練習をしている毎日だった。初めは階段を上がる事さえできなかったが、今では『隠れ家』のなかをゆっくりと、しかし確実に歩きまわれるようになった。これは大きな進歩だった。今日も医務室からアトリウムへと進み、そして大広間からデッキの方へ向かおうとしたら、突然昇降機の前でテランスが言葉を発したのだ。
1867そう言ってテランスは私の瞳を見つめて提案をした。
私たちはオリジンでの闘いの後、ここ『隠れ家』で過ごしている。テランスは私と別れ、キエルを保護した後、なんとかここ、『隠れ家』に辿りつき、私の身体のリハビリの文字通り支えとなってくれていた。私はまだ身体が思うように動かすことが出来ず、日々『隠れ家』の遺跡の中を一周して歩く練習をしている毎日だった。初めは階段を上がる事さえできなかったが、今では『隠れ家』のなかをゆっくりと、しかし確実に歩きまわれるようになった。これは大きな進歩だった。今日も医務室からアトリウムへと進み、そして大広間からデッキの方へ向かおうとしたら、突然昇降機の前でテランスが言葉を発したのだ。
ぐりまる/丸
DONEテデ夏!(あいさつ)今日のテラディオはED後、隠れ家で療養中の話です
バニーの日もかねて
テデの夏休み・2日目テデ夏!
テデの夏休み・2日目
こうも暑いと何も手がつけられん。と年に一度は口にするぼやきを故郷から遠く離れた隠れ家に来てまでも零してしまい、環境が変われど暑さは変わらず、寧ろ年々攻撃力を増して暴力的な気温になってきているのがここ数日のディオンの苛立ちの原因である。
全てのクリスタルが破壊され魔法を失った今、人々ができる最善の涼み方は水を浴びて風を起こす他なかった。
「冷風を作り出して外に排出する機構を思いついてはいるんだよ。今は試作の段階。組立中だからしばらくは辛抱してくれよ!」
とは発明家ミドアドル嬢の話である。若き天才の頼もしい言葉に一も二もなく頷いて、しかしそれまではどう耐え抜くか、と悩みかけたところ、ミドアドル嬢は朗らかな笑顔から一転、悪戯を思いついた少年のような笑みを浮かべて、茶目っ気たっぷりに「あたし、良いもの見つけたんだよね」と言い放った。
1878テデの夏休み・2日目
こうも暑いと何も手がつけられん。と年に一度は口にするぼやきを故郷から遠く離れた隠れ家に来てまでも零してしまい、環境が変われど暑さは変わらず、寧ろ年々攻撃力を増して暴力的な気温になってきているのがここ数日のディオンの苛立ちの原因である。
全てのクリスタルが破壊され魔法を失った今、人々ができる最善の涼み方は水を浴びて風を起こす他なかった。
「冷風を作り出して外に排出する機構を思いついてはいるんだよ。今は試作の段階。組立中だからしばらくは辛抱してくれよ!」
とは発明家ミドアドル嬢の話である。若き天才の頼もしい言葉に一も二もなく頷いて、しかしそれまではどう耐え抜くか、と悩みかけたところ、ミドアドル嬢は朗らかな笑顔から一転、悪戯を思いついた少年のような笑みを浮かべて、茶目っ気たっぷりに「あたし、良いもの見つけたんだよね」と言い放った。
ヤマダハジメ。
DONE毎日テラディオ🧸本日のお品書き 8月1日はパイの日!
ってことで、にょたの再放送٩( 'ω' )و
女体ディ様がいますので、お好きな方どうぞ(о´∀`о)
パス:18↑?+2人の年齢 3
ぐりまる/丸
DONEテデ夏!(あいさつ)アヤさん主催の8月テデ夏休み企画への参加作品です〜!
テデの夏休み・1日目6月の時点で既に怪しい動きをしていた気温は7月に入って軽く30度を超え、少しでも涼もうと風を扇いでも生温い空気をかき混ぜて逆に暑さを感じさせるだけで、厳しい太陽の熱に耐えたところでただ気力と体力を無駄に消耗させた。
7月後半に差し掛かれば猛暑と呼ばれる気温に達する日が連日続き、遂に8月に入った本日、ぐったりと自室のテーブルに突っ伏したディオンは、じわじわと肌に滲み出る汗の不快感にうがあ、と何度目かもわからない咆哮を上げた。
「暑い!!」
「わかります。しかしそう何度も吠えないでください」
「口調!!」
「ごめん」
苛立ちに任せて噛みつくディオンに対して、同じく暑さに参りかけていたテランスも彼の火を点けないようにと従順に言葉遣いを戻す。
14347月後半に差し掛かれば猛暑と呼ばれる気温に達する日が連日続き、遂に8月に入った本日、ぐったりと自室のテーブルに突っ伏したディオンは、じわじわと肌に滲み出る汗の不快感にうがあ、と何度目かもわからない咆哮を上げた。
「暑い!!」
「わかります。しかしそう何度も吠えないでください」
「口調!!」
「ごめん」
苛立ちに任せて噛みつくディオンに対して、同じく暑さに参りかけていたテランスも彼の火を点けないようにと従順に言葉遣いを戻す。
Sarururu
DONEテデの夏休み初日です。どこにも行かない行けないと思っているふたりですが、さてどうなるでしょう。
夏休み初日「……はあ?」
早馬で届いた書簡を読んだディオンは、その内容に唖然とした。
意味が分からない。そんなはずはない。間違いなのでは。あるいは、罠か。何か奸計が──そう、あの魔女めが──為されているのではないか。そういった考えがぐるぐると頭を回り、打ち消すために数度書簡を読み返す。だが、書かれてある文字列は最初に読んだものと何一つ変わらなかった。……当たり前といえば、当たり前なのだが。
思わず出してしまった声が珍妙だったのだろう、控えていたテランスが「ディオン様?」と声をかける。
「猊下からは何と?」
「ウォールードとダルメキアからの申し出を受諾したらしい。……酷暑その他諸々の事情により夏季休暇停戦、だそうだ」
1556早馬で届いた書簡を読んだディオンは、その内容に唖然とした。
意味が分からない。そんなはずはない。間違いなのでは。あるいは、罠か。何か奸計が──そう、あの魔女めが──為されているのではないか。そういった考えがぐるぐると頭を回り、打ち消すために数度書簡を読み返す。だが、書かれてある文字列は最初に読んだものと何一つ変わらなかった。……当たり前といえば、当たり前なのだが。
思わず出してしまった声が珍妙だったのだろう、控えていたテランスが「ディオン様?」と声をかける。
「猊下からは何と?」
「ウォールードとダルメキアからの申し出を受諾したらしい。……酷暑その他諸々の事情により夏季休暇停戦、だそうだ」
mizutarou22
DONEテデの夏休み企画に挑戦します!現パロ、転生パロでテラディオがとある神社に行くお話です。書くときにアレンジしてありますが本当にある神社を参考にしております。海風と共に「龍と人間の恋物語?」
「そう。その舞台となった神社がここにあるんだって、行ってみようよディオン」
そう言ってテランスはスマホを私に見せて、その神社のホームページに書かれている詳細を教えてくれた。……ここの神社は電車を使えば一時間くらいで着くな……。
私は腕を上へ上げてうーんと伸びをして、寝ていたベッドから出てテランスを見つめた。
「では……行ってみるか。そこの観光地へ!」
「そうだね。ディオン」
テランスがにこりと微笑んだ。ホテルの窓から入る朝日が、テランスの笑顔を優しく照らしていた。
◆◇◆◇
私とテランスはこの夏、会社の休みをとって海外へ旅行に来ていた。いつも旅行は近場を選んでいたが、今回はもっと違う文化圏の国へ行ってみたいと思い、東の国へ行ってみることにしたのだ。東の国へ到着した途端発した私たちの言葉は「暑い……」だった。私たちの住んでいる国とはまた違う夏の暑さだ。私たちはすぐにこの暑さから避難するように、首都にあるホテルにすぐに向かい、そしてそのまま朝を迎えたというわけだった。旅行の細かいプランは特に決めていない。何故ならここの国に着いた瞬間から、なにもかもが私たちの国と違っていて、見るもの全てが新鮮だったからだ。
4191「そう。その舞台となった神社がここにあるんだって、行ってみようよディオン」
そう言ってテランスはスマホを私に見せて、その神社のホームページに書かれている詳細を教えてくれた。……ここの神社は電車を使えば一時間くらいで着くな……。
私は腕を上へ上げてうーんと伸びをして、寝ていたベッドから出てテランスを見つめた。
「では……行ってみるか。そこの観光地へ!」
「そうだね。ディオン」
テランスがにこりと微笑んだ。ホテルの窓から入る朝日が、テランスの笑顔を優しく照らしていた。
◆◇◆◇
私とテランスはこの夏、会社の休みをとって海外へ旅行に来ていた。いつも旅行は近場を選んでいたが、今回はもっと違う文化圏の国へ行ってみたいと思い、東の国へ行ってみることにしたのだ。東の国へ到着した途端発した私たちの言葉は「暑い……」だった。私たちの住んでいる国とはまた違う夏の暑さだ。私たちはすぐにこの暑さから避難するように、首都にあるホテルにすぐに向かい、そしてそのまま朝を迎えたというわけだった。旅行の細かいプランは特に決めていない。何故ならここの国に着いた瞬間から、なにもかもが私たちの国と違っていて、見るもの全てが新鮮だったからだ。