拾陸 国木田に呼び出された太宰は、常と変わらずに会議室へ向かった。
それを見送る面々もまた叱られでもするのかと、やや呆れを含みつつ見送る。
「それにしてもわざわざ会議室を抑えるなんて。なにか人前では言えないようなお話なのかな?」
隣を歩く国木田に茶化すように告げると、神経質に眼鏡の弦を抑えて国木田は答えた。
「そうだな」
真面目な口調で返されて、太宰は一瞬で作っていたゆるい空気をしまう。それを横目で確認した国木田は、会議室の扉の前で一度足を止めた。
「中で、乱歩さんがお待ちだ」
「そうきたか」
引きつった笑みでそう返すと、改めて笑みを作って太宰は部屋に入った。
「花袋さんかあ。そりゃバレるはずだ」
「バレることがわかってて何を言ってるんだ」
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