SSソムリエ企画第1弾寄稿作品 もう、何年前やったかな。この時期になると、あの子の勘違いを思い出すんだ。あれは紫陽花の光る朝で、二度と戻れない時間で……せやけど夏の足音はすぐそこまで聞こえてきとった。
「この時期、こっちでは愛を伝えるシーズンなのよね?」
なんて、あなたがいうものだから
「……バレンタインデーなら2月だけど?」
ウチはそう聞き返したっけ。目をキラキラとさせながらそういうあんたはめっさ眩しうて、夏の空のようやった。ウチの返事が気に食わへんかったんか、まるで今の空みたいに顔を曇らせたっけ。
「向こうで友達が教えてくれマシタ。古い時代からそう呼ばれているシーズンなのヨ!何だか恥ずかしくてこっちで育ったママには聞けていないのだけど…チェリーになら聞けます!」
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