Please, put a spell on me.「そういえば結局、駿君の言ったとおりになっちゃったわねえ」
僕のインド行きが目前に迫ったある夜、実家で食卓を囲んでいた時のことだった。母が口にした唐突な言葉に、その場の全員がぱっと注意を向ける。もちろん、僕も例に漏れず。
「……母さんそれ、なんの話? 言ったとおり、って」
んー、と間延びした声を上げる母は、記憶を辿りつつゆっくりと語り出す。
「昔、ふたりして近所で迷子になったことあったでしょ。小学校一年二年の頃だったかな。そのとき駿君が言ってたこと、なんか突然思い出しちゃって」
懐かしむように目を細めた母に、「あーそれ、覚えてる覚えてる!」と素早い反応を見せたのは、隣に住む山田家のおばさんだった。
「そーそー、あの時はほんっと心配したんだから。そこの公園行ってくるーって出掛けたはずが、五時過ぎてもなかなか帰ってこなくてね」
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