大晦日はきみと!「っん、ぁふ、…ぁ」
「…ンむ、」
どさ、インスタント麺の入ったレジ袋が重力に従って落ちる。買い出しから戻ると、床で睦み合うバカどもと目が合った。家を空けたほんの十数分の間におきた出来事。コートをハンガーにかけることで一度対象から視線を逸らし、現実逃避をはかる。しかし、ぬちぬちとした水音がいやでも耳につく。大きなため息をデカデカと吐き散らかすも、絡む舌が離れることはない。
「きっっっしょ」
「ぁに? 急に。烏もいつもしてんじゃん」
「拗ねてるんだろ、除け者にしてごめんね烏くん」
「呆れてんねんアホ。しっかし、年の瀬やっちゅーのに煩悩まみれやのぉ自分らは」
十二月の半ばに大晦日の予定を尋ねれば、わからないと雑な返答を寄越された。わからないってなんやねん、飯何がいい?に対してなんでもいいって返すタイプかお前ら。よくよく聞くと、家にいるのかも定かではないらしい。年越しそばは要らないと満場一致で決まり、各々が勝手に新年を迎えるはずだった。当然、烏は一人分の用意で新年にのぞむ。
1897