syadoyama
DONEモクチェズかつ、ある構成員のやべえやつの話MCアフターに寄せて、あるいは天使墜落「名乗らなくていい」
ニコルズ様はそう仰られた。母国で犯罪を繰り返し二十でヴィンウェイに逃げ込んだ私のことを、紫水晶の如き瞳で一瞥して。ビスクドールのように表情を変えず、金糸の髪のみを僅かに揺らし。
「名前を覚えられたければ――相応の働きを」
玉座めいた椅子に抱きしめられ座る、彼はまだ十五歳だった。
産まれながらにして知的犯罪の天才。美貌、頭脳、人心掌握、神があらゆる才能を与えた暗黒の奇跡。ニコルズ様は噂されるそれらの「伝説」を上回る、生きた芸術作品だった。彼の采配で全てが変わる。あらゆる暗殺者を近づけなかったフリオ・ファミリーのドンをたった一人の田舎者で殺し、表の新聞社と繋がったゲオルギウス派を情報戦で乗っ取り、金の亡者である豹牙組を経済戦で下す。
3240ニコルズ様はそう仰られた。母国で犯罪を繰り返し二十でヴィンウェイに逃げ込んだ私のことを、紫水晶の如き瞳で一瞥して。ビスクドールのように表情を変えず、金糸の髪のみを僅かに揺らし。
「名前を覚えられたければ――相応の働きを」
玉座めいた椅子に抱きしめられ座る、彼はまだ十五歳だった。
産まれながらにして知的犯罪の天才。美貌、頭脳、人心掌握、神があらゆる才能を与えた暗黒の奇跡。ニコルズ様は噂されるそれらの「伝説」を上回る、生きた芸術作品だった。彼の采配で全てが変わる。あらゆる暗殺者を近づけなかったフリオ・ファミリーのドンをたった一人の田舎者で殺し、表の新聞社と繋がったゲオルギウス派を情報戦で乗っ取り、金の亡者である豹牙組を経済戦で下す。
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DOODLE四人ぐらしの時のモクチェズです。アロちゃんかわいそうに……モチぐらしのアロエッティ オレがドギーの家の中で、一番不満を持っているのが風呂だ。クソ詐欺師の金でリフォームされているのはまだ我慢できるが、この十二月の四人生活では詐欺師のダシが出た風呂に入ることになる。詐欺師は湯を抜いて掃除してから出るが、浴室はフローラルな忌々しいフレグランスに満ちていて、イライラどころじゃない。よって、オレは詐欺師の後におっさんかドギーが入ったのを見計らって入ることにしている。
だから今日もオレは、おっさんが風呂から出た音を聞いて脱衣所の戸を開けた。これが一番安全な方法だった。おっさんをすれ違いざまにどついてからかうか、と思いながら。寝巻きに着替えたおっさんが背を丸めている。オレは声をかける前に、異変に気がついた。
1805だから今日もオレは、おっさんが風呂から出た音を聞いて脱衣所の戸を開けた。これが一番安全な方法だった。おっさんをすれ違いざまにどついてからかうか、と思いながら。寝巻きに着替えたおっさんが背を丸めている。オレは声をかける前に、異変に気がついた。
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DOODLE2/14スペシャルデーのモクチェズスペシャルデー「今夜の酒量は控えめに……ね?」
そう言いながらチェズレイが俺の手に手を重ねる。しなやかで長い指が、俺の指に絡まった。
「今夜は何か特別かい?」
俺はとぼけながら指を絡め返す。風味を楽しむだけの酒で湿らせた唇で、チェズレイは笑った。
「ご存知でしょう? もう……楽しみにしているのですから」
控えめな笑みは、俺の目に意味深に映る。もちろん、楽しみにしていたのは事実だ。
本日は二月十四日……どこの国の伝説かは知らないが、恋人たちがチョコレートを贈る日だということを、俺は知っている。そしてチェズレイの祖国ヴィンウェイは、チョコレートでも有名だと言うことを。なんでも歴史ある、王宮お抱えのチョコやさんがあるとかで。ホットチョコレートを飲む文化もあるらしい。
1637そう言いながらチェズレイが俺の手に手を重ねる。しなやかで長い指が、俺の指に絡まった。
「今夜は何か特別かい?」
俺はとぼけながら指を絡め返す。風味を楽しむだけの酒で湿らせた唇で、チェズレイは笑った。
「ご存知でしょう? もう……楽しみにしているのですから」
控えめな笑みは、俺の目に意味深に映る。もちろん、楽しみにしていたのは事実だ。
本日は二月十四日……どこの国の伝説かは知らないが、恋人たちがチョコレートを贈る日だということを、俺は知っている。そしてチェズレイの祖国ヴィンウェイは、チョコレートでも有名だと言うことを。なんでも歴史ある、王宮お抱えのチョコやさんがあるとかで。ホットチョコレートを飲む文化もあるらしい。
ori1106bmb
DONEワンライ(ちょこ/ひげ) テーブルの上には酒瓶とぐい呑み二つ、それから各々が好むつまみ。
今宵も空にはいい月が浮かんでいる。相棒との同道を始めてすっかり習慣になった、晩酌の時間だ。
この日のためにとっておいた上質などぶろくは、まったりとした飲み口に反していささか度数が高い。あまり酒に強くない相棒の頬は、ほんのりと赤らみ始めていた。
「お前さん、そろそろやめといた方がいいんじゃない?」
「別に潰れたところで何も問題ないでしょう。敵のアジトは壊滅し、この国の闇組織は全て制圧……明日は一日中ホテルの部屋で寝ていても、誰も責める人間はいないのですよ」
今やDISCARDを凌ぐ巨大組織のボスである男は、酒に酔わされとろりと潤んだ目線を寄越してくる。
1436今宵も空にはいい月が浮かんでいる。相棒との同道を始めてすっかり習慣になった、晩酌の時間だ。
この日のためにとっておいた上質などぶろくは、まったりとした飲み口に反していささか度数が高い。あまり酒に強くない相棒の頬は、ほんのりと赤らみ始めていた。
「お前さん、そろそろやめといた方がいいんじゃない?」
「別に潰れたところで何も問題ないでしょう。敵のアジトは壊滅し、この国の闇組織は全て制圧……明日は一日中ホテルの部屋で寝ていても、誰も責める人間はいないのですよ」
今やDISCARDを凌ぐ巨大組織のボスである男は、酒に酔わされとろりと潤んだ目線を寄越してくる。
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DONEワンライ(拷問/化粧) ――この傷跡について、ですか?
――……口さえ自由なら、吐くとでも?
――何故、この期に及んでそんな話を? 他に暴くべき仮面の詐欺師の腹積もり、いくらでもあるのではないですか?
――……今にもこちらを甚振りそうな顔だ。まァ、いいでしょう。
――これは、私にとっての濁りの象徴。仇への執着を忘れないために咲かせた、忌まわしい傷……でした。
――かつて、濁りは風味だと言った人がいた。この傷に私の人生が刻まれている、とも。だからこうして化粧を施し、美しく咲かせ続けている。
――……フフ。今は、すっかり化けの皮が剥がれていますがね。
――下衆と分かち合った肩の傷が消えようとしている今、この傷ももう消してしまってもいいのかもしれません。素顔を見た途端、相棒が恐ろしい顔に豹変してしまいましたので。
1277――……口さえ自由なら、吐くとでも?
――何故、この期に及んでそんな話を? 他に暴くべき仮面の詐欺師の腹積もり、いくらでもあるのではないですか?
――……今にもこちらを甚振りそうな顔だ。まァ、いいでしょう。
――これは、私にとっての濁りの象徴。仇への執着を忘れないために咲かせた、忌まわしい傷……でした。
――かつて、濁りは風味だと言った人がいた。この傷に私の人生が刻まれている、とも。だからこうして化粧を施し、美しく咲かせ続けている。
――……フフ。今は、すっかり化けの皮が剥がれていますがね。
――下衆と分かち合った肩の傷が消えようとしている今、この傷ももう消してしまってもいいのかもしれません。素顔を見た途端、相棒が恐ろしい顔に豹変してしまいましたので。
ムー(金魚の人)
DONEモクチェズワンライ240204「化粧」で参加です。チェの左目傷跡を隠す完璧な化粧術を見破るモさんのワザ……ドレッサーの鏡越しにモクマと目が合う。今日だけで何度目になるだろうか。チェズレイは嘆息した。
ベッドの縁に腰掛けて足を投げ出している男は、チェズレイの身支度が終わるのを黙って待っている。
他にやることもあるだろうに、モクマはチェズレイの顔面の変化に興味津々のようだ。
数種類のパウダーやジェルを塗り重ねる度にチェズレイの左目に咲いていた醜い徒花は消えていく。元の皮膚と境目が混じり合って肉眼では見分けがつかないところまで完璧にメイクし、チェズレイは振り向いた。
琥珀色の熱い視線へ絡みつく。
チェズレイの顔を眺め、モクマの眦が柔らかく下がった。
「や〜、何度見ても素敵だ。キズがあるなんてここからじゃちっとも分からんよ」
926ベッドの縁に腰掛けて足を投げ出している男は、チェズレイの身支度が終わるのを黙って待っている。
他にやることもあるだろうに、モクマはチェズレイの顔面の変化に興味津々のようだ。
数種類のパウダーやジェルを塗り重ねる度にチェズレイの左目に咲いていた醜い徒花は消えていく。元の皮膚と境目が混じり合って肉眼では見分けがつかないところまで完璧にメイクし、チェズレイは振り向いた。
琥珀色の熱い視線へ絡みつく。
チェズレイの顔を眺め、モクマの眦が柔らかく下がった。
「や〜、何度見ても素敵だ。キズがあるなんてここからじゃちっとも分からんよ」
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DONEワンライ(ロボット/カード)「でっっっか……」
目の前に鎮座する巨大なプレゼントボックスを見上げながら、思わず口に出た。
『あなた宛ての荷物が届きますので、受け取っておいてください』
そう言って、チェズレイは先程ひとりで部屋を出て行った。
一カ月ほど過ごしたエリントンを出発し、到着した先は南国。滞在するホテルの部屋に案内され、長旅を終えて一息ついたところだった。
そこへ登場したのが、この紫のリボンを結ばれた大きな箱だ。よく見れば、リボンの先に宛名がついている。『モクマさんへ』。どうやら自分宛ての荷物で間違いないらしい。
ホテルのスイートは広いが、どうにもこの目立つ箱とふたりきりというのは居心地が悪い。贈り主の相棒は不在だが、とりあえず箱を開けてみることにした。
3010目の前に鎮座する巨大なプレゼントボックスを見上げながら、思わず口に出た。
『あなた宛ての荷物が届きますので、受け取っておいてください』
そう言って、チェズレイは先程ひとりで部屋を出て行った。
一カ月ほど過ごしたエリントンを出発し、到着した先は南国。滞在するホテルの部屋に案内され、長旅を終えて一息ついたところだった。
そこへ登場したのが、この紫のリボンを結ばれた大きな箱だ。よく見れば、リボンの先に宛名がついている。『モクマさんへ』。どうやら自分宛ての荷物で間違いないらしい。
ホテルのスイートは広いが、どうにもこの目立つ箱とふたりきりというのは居心地が悪い。贈り主の相棒は不在だが、とりあえず箱を開けてみることにした。
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DONEワンライ(ふうふ/言語)「……ス。ボス。もう朝ですよ」
目を覚ますと、とんでもなく綺麗な顔が僕の顔を覗き込んでいた。
けれど今までの半月ほどで、この光景にも慣れたものだ。「おはよう、チェズレイ」と挨拶して、あくびを噛み殺しながらダイニングへ向かった。廊下まで漂っている、たまらなくいい匂いに惹かれるように。
「おはようさん、ルーク。顔洗っといで。朝ごはんできてるよ」
朝から満面の笑みを浮かべるモクマさんが用意していたのは、つやつやの白米に焼き魚(たぶんアジだ)、味噌汁に焼き海苔。マイカの里でもてなされた時のような、純ミカグラ風メニューだ。
言われるまま顔を洗いに洗面所へ向かうと、先客がいた。
アーロンが歯磨きをしている横から、割り込むようにして洗面台を使う。男二人では狭苦しいことこの上ないが、こういう時間もちょっと楽しかったりする。相棒の方も、邪魔そうにしながら僕を退かす気はないようだ。
3232目を覚ますと、とんでもなく綺麗な顔が僕の顔を覗き込んでいた。
けれど今までの半月ほどで、この光景にも慣れたものだ。「おはよう、チェズレイ」と挨拶して、あくびを噛み殺しながらダイニングへ向かった。廊下まで漂っている、たまらなくいい匂いに惹かれるように。
「おはようさん、ルーク。顔洗っといで。朝ごはんできてるよ」
朝から満面の笑みを浮かべるモクマさんが用意していたのは、つやつやの白米に焼き魚(たぶんアジだ)、味噌汁に焼き海苔。マイカの里でもてなされた時のような、純ミカグラ風メニューだ。
言われるまま顔を洗いに洗面所へ向かうと、先客がいた。
アーロンが歯磨きをしている横から、割り込むようにして洗面台を使う。男二人では狭苦しいことこの上ないが、こういう時間もちょっと楽しかったりする。相棒の方も、邪魔そうにしながら僕を退かす気はないようだ。
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DONEワンライ(ゴール/駄菓子) 病院の中庭から個室病棟へと、叱られない程度の急ぎ足で歩く。
昼過ぎに行く、と予め告げていた時間はとうに過ぎている。今頃、相棒は舌を……いや、首を長くして待っているはずだった。
昨日は、誕生日の祝いという名目で退行催眠ごっこに付き合わされた。今日はまだ、タブレットにメールは届いていない。眠ってゆっくりと休息してくれていると良いのだが。
主の命を奪った時に、一度は終わったと思った人生。終わりの見えない泥沼から救ってくれた、無二の相手。
その男は先日、危うく故郷で命を落としかけた。ギリギリのところで救出に成功し、今は第三国の病院で大怪我を治療している最中だ。
世界征服という夢に向かって邁進している男がひととき余所見した理由は、抑えきれなかった衝動により反故にしてしまった自分との約束をもう一度結ぶため。
2298昼過ぎに行く、と予め告げていた時間はとうに過ぎている。今頃、相棒は舌を……いや、首を長くして待っているはずだった。
昨日は、誕生日の祝いという名目で退行催眠ごっこに付き合わされた。今日はまだ、タブレットにメールは届いていない。眠ってゆっくりと休息してくれていると良いのだが。
主の命を奪った時に、一度は終わったと思った人生。終わりの見えない泥沼から救ってくれた、無二の相手。
その男は先日、危うく故郷で命を落としかけた。ギリギリのところで救出に成功し、今は第三国の病院で大怪我を治療している最中だ。
世界征服という夢に向かって邁進している男がひととき余所見した理由は、抑えきれなかった衝動により反故にしてしまった自分との約束をもう一度結ぶため。
ムー(金魚の人)
REHABILI新年初書きモクチェズ。マジェ後〜新年までモさんの母がいる南の島へ行ったと信じて。
あの🌴背景はそうだろ、そうだと言ってくれいや答え合わせはいいです嗅がせで十分です。今年もバデミ公式に情緒を乱される〜!
「さて、チェズレイさんや。これから俺たち何処へ行くんだっけ?」
五つ星ホテルで行われた歌姫スイのクリスマスショーを終え、慕わしきヒーローズと別れを済ませたモクマとチェズレイは、エリントンの空港ロビーに立っていた。
モクマは2人分のスーツケースを転がしながら、横に並ぶ美丈夫へ話しかける。
チェズレイは艷やかな髪を後ろへ靡かせ、口を開いた。
「南へ行こうかと」
モクマの視界に長方形の紙片が飛び込んで来た。これから乗る飛行機のチケットだ。
「へえ、暖かくていいね…………ん?」
モクマは目を見開いた。
見慣れてきた『ファーストクラス』表記の上、行き先空港の名に見覚えがあった。
そこは穏やかな南の島にある空港。一年前、モクマはチェズレイとそこで三週間滞在したことがある。長年凝り固まって氷解せずにいたわだかまりを溶かすため、そして、相棒の傷を癒やすために。
3141五つ星ホテルで行われた歌姫スイのクリスマスショーを終え、慕わしきヒーローズと別れを済ませたモクマとチェズレイは、エリントンの空港ロビーに立っていた。
モクマは2人分のスーツケースを転がしながら、横に並ぶ美丈夫へ話しかける。
チェズレイは艷やかな髪を後ろへ靡かせ、口を開いた。
「南へ行こうかと」
モクマの視界に長方形の紙片が飛び込んで来た。これから乗る飛行機のチケットだ。
「へえ、暖かくていいね…………ん?」
モクマは目を見開いた。
見慣れてきた『ファーストクラス』表記の上、行き先空港の名に見覚えがあった。
そこは穏やかな南の島にある空港。一年前、モクマはチェズレイとそこで三週間滞在したことがある。長年凝り固まって氷解せずにいたわだかまりを溶かすため、そして、相棒の傷を癒やすために。
くろせ
DONEラプソディ・イン・マリッジブルー久方ぶりに食の好みが合う友人と食事に出かける機会を得た、となるとついつい箸も進み、ついでに酒も進んでしまうのが人の性。酒に弱いモクマの相棒とは違い酔いはすれどもそれなりに嗜める相手となると、つい酒を注ぐ手も忙しなくなってしまうというものである。
懐かしのミカグラで、舌鼓は今夜も高らか。大衆居酒屋を喜んでくれる相手との気兼ねない酒の席。出会ってからはや数年が経つが、こんな機会は何度あっても良い。
「あまりにもうま~い!」と恵比須顔で頬を落とすルークを肴に飲む酒はモクマにとっていつも格別に旨く感じるのだ。
「モクマさんまれ!僕をティーンのころも扱いしてえ」
「ルークごめんね、おじさん調子乗っちゃった。ほらこれ、お水飲んで」
5752懐かしのミカグラで、舌鼓は今夜も高らか。大衆居酒屋を喜んでくれる相手との気兼ねない酒の席。出会ってからはや数年が経つが、こんな機会は何度あっても良い。
「あまりにもうま~い!」と恵比須顔で頬を落とすルークを肴に飲む酒はモクマにとっていつも格別に旨く感じるのだ。
「モクマさんまれ!僕をティーンのころも扱いしてえ」
「ルークごめんね、おじさん調子乗っちゃった。ほらこれ、お水飲んで」
ムー(金魚の人)
DONEモクチェズワンライ0917「暗躍」で参加です。ルクと通話するモクチェズ。『モクマさん、チェズレイ、こんばんは!あれ、でもそっちは陽が差してるみたいだから、こんにちは、かな?それとも、おはようございます?』
タブレット画面いっぱいに映されたルークの顔が、右に左に揺れ動く。些細なことで頭を悩ませているボスの愛おしい様子に、モクマとチェズレイは頬を緩めた。
「おはようございますこんにちはこんばんは、ボス」
「ははは、攪乱させとる。こんにちは、ルーク。こっちはお昼になったばかりだよ」
モクマがひらひらと手を振る。根城にしているホテルの窓から注ぐ陽射しが、モクマの手を白く照らしていた。
モクマたちがいる国はルークのいるエリントンとは半日の時差がある。ここは昼時だが、エリントンは深夜だ。
1156タブレット画面いっぱいに映されたルークの顔が、右に左に揺れ動く。些細なことで頭を悩ませているボスの愛おしい様子に、モクマとチェズレイは頬を緩めた。
「おはようございますこんにちはこんばんは、ボス」
「ははは、攪乱させとる。こんにちは、ルーク。こっちはお昼になったばかりだよ」
モクマがひらひらと手を振る。根城にしているホテルの窓から注ぐ陽射しが、モクマの手を白く照らしていた。
モクマたちがいる国はルークのいるエリントンとは半日の時差がある。ここは昼時だが、エリントンは深夜だ。
ムー(金魚の人)
DOODLEモクチェズと釣りとラジオの話。モクマは湾岸埠頭の釣り場に腰を下ろした。背中に背負った釣り竿とクーラーボックスもコンクリートの地面に寝かせる。
「そいつはクーラーボックスの上に頼むよ」
モクマは隣に立つ相方へ声をかけた。
日傘の下でツバの大きい帽子を被った美人さんが、卓上ラジオを手に立ち尽くしている。釣り場ではなかなかお目にかかれない光景だ。
遠くで釣り糸を垂らしている男が、こちらをチラチラ伺っている気配がする。男の頭の中では、灰色頭のくたびれおじさんと日傘の長髪美人さんの組み合わせがどんな関係に邪推されていることだろう。
軽薄な視線を感じ取ってるだろうに、当の本人は涼やかな顔をしていた。チェズレイは炎天下でも汗ひとつかかない。ここまで歩いてきてタオルに濃い染みを作っているモクマとは真反対だ。
2511「そいつはクーラーボックスの上に頼むよ」
モクマは隣に立つ相方へ声をかけた。
日傘の下でツバの大きい帽子を被った美人さんが、卓上ラジオを手に立ち尽くしている。釣り場ではなかなかお目にかかれない光景だ。
遠くで釣り糸を垂らしている男が、こちらをチラチラ伺っている気配がする。男の頭の中では、灰色頭のくたびれおじさんと日傘の長髪美人さんの組み合わせがどんな関係に邪推されていることだろう。
軽薄な視線を感じ取ってるだろうに、当の本人は涼やかな顔をしていた。チェズレイは炎天下でも汗ひとつかかない。ここまで歩いてきてタオルに濃い染みを作っているモクマとは真反対だ。
秋良七
DOODLE【モチリク・その1】白衣+スクラブ+聴診器!露出低めのリクエストなのでえっちな絵を描いて良いのかわからず…ちょっぴりえっちなおまけをつけました♪「だって…どんなに露出が低い衣装でも…興奮はするよっ!」とモじさんも申しております。リクエストありがとうございました!!! 3
ムー(金魚の人)
DONEモクチェズワンライ0716「歌」です。ドラマCD EOP後時空。
※ドラマCD EOP後時空
セーフハウスのリビングで、覚えのない書類が置き去りにされているのを見つけてモクマは足を止めた。
相棒の手で今朝磨かれたばかりのガラステーブルは、不思議そうな顔をしているモクマの表情を映しだす。その顔の隣に白い紙が何枚か置かれていた。
楽譜だ。印字された五本の罫線が数段のブロックに分かれ、その上に鉛筆で音符が書かれている。チェズレイの手によるものだろう。
楽譜は3枚あった。
音楽知識に乏しいモクマには、その音符がどんな音を奏でるか想像出来ない。
眺めていると、だんだん、いろんな形のオタマジャクシが五線譜の川を泳いでいる様子に見えてきた。2つの音符の間を走る丸い線が、まるでオタマジャクシが川を跳ねる様子を表しているよう。モクマは自分の想像の朗らかさにくすりと微笑んだ。
2263セーフハウスのリビングで、覚えのない書類が置き去りにされているのを見つけてモクマは足を止めた。
相棒の手で今朝磨かれたばかりのガラステーブルは、不思議そうな顔をしているモクマの表情を映しだす。その顔の隣に白い紙が何枚か置かれていた。
楽譜だ。印字された五本の罫線が数段のブロックに分かれ、その上に鉛筆で音符が書かれている。チェズレイの手によるものだろう。
楽譜は3枚あった。
音楽知識に乏しいモクマには、その音符がどんな音を奏でるか想像出来ない。
眺めていると、だんだん、いろんな形のオタマジャクシが五線譜の川を泳いでいる様子に見えてきた。2つの音符の間を走る丸い線が、まるでオタマジャクシが川を跳ねる様子を表しているよう。モクマは自分の想像の朗らかさにくすりと微笑んだ。
ori1106bmb
DONEワンライ(ずぶぬれ/歌)「奴さんたち驚いとったねえ」
「あれが最適な脱出ルートでしたので」
白々しく嘯くと、相棒は「まあ、一番近道っちゃその通りだけども」と苦笑した。
調子はずれな歌が、狭くて黴臭いバスルームに響く。
対面で機嫌良く歌っている男に、私は胡乱な目を向けた。
今宵の敵アジトへの潜入作戦。目的を首尾よく果たした私たちは、海の中へとランデブーした。
極寒ではないが、それなりに高さのある崖から海へ飛び込んだ侵入者たちに、敵は驚愕していた。「馬鹿な」「探せ」「いや、助かるはずがない」
慌てふためく構成員たちを余所に、我々は予め確保していた脱出ルートからまんまと逃げおおせた。単純に、海を泳いだだけなのだが。
濡れ鼠のまま駆け込む先は、予めチェックインしておいたモーテル。現場から最も近いという理由のみで選んだため、室内は簡素だ。己の衛生基準を少々下回っていたが、贅沢も言っていられない。それに、リハビリの進んだ今の私ならば、多少の濁りは許容範囲だ。
2025「あれが最適な脱出ルートでしたので」
白々しく嘯くと、相棒は「まあ、一番近道っちゃその通りだけども」と苦笑した。
調子はずれな歌が、狭くて黴臭いバスルームに響く。
対面で機嫌良く歌っている男に、私は胡乱な目を向けた。
今宵の敵アジトへの潜入作戦。目的を首尾よく果たした私たちは、海の中へとランデブーした。
極寒ではないが、それなりに高さのある崖から海へ飛び込んだ侵入者たちに、敵は驚愕していた。「馬鹿な」「探せ」「いや、助かるはずがない」
慌てふためく構成員たちを余所に、我々は予め確保していた脱出ルートからまんまと逃げおおせた。単純に、海を泳いだだけなのだが。
濡れ鼠のまま駆け込む先は、予めチェックインしておいたモーテル。現場から最も近いという理由のみで選んだため、室内は簡素だ。己の衛生基準を少々下回っていたが、贅沢も言っていられない。それに、リハビリの進んだ今の私ならば、多少の濁りは許容範囲だ。
ori1106bmb
DONEワンライ(マグカップ) 西の大陸のとある国で、初めて『家』に滞在することになった。
チェズレイと同道を始めてからこれまでは、各地のモーテルやホテルを転々としてきた。次の作戦では、一つの拠点に長く滞在する必要があるという。そのためにチェズレイが用意したのは、聳え立つマンションの一室だった。
リビング、キッチン、バスルーム。この家に一つきりのベッドルームには、清潔なベッドが二台、行儀よく並んでいた。
家具は一通り揃っている。ただ、人が住んでいる気配だけがなかった。開業したばかりのホテルの一室。そんな空気感だ。
言うなれば、まだ血の通っていない家。
今日からここで暮らすのか。
妙に現実味が薄いのは、放浪していた二十年間、『家』と呼べる場所とは、ほとほと縁遠かったせいだろう。
1928チェズレイと同道を始めてからこれまでは、各地のモーテルやホテルを転々としてきた。次の作戦では、一つの拠点に長く滞在する必要があるという。そのためにチェズレイが用意したのは、聳え立つマンションの一室だった。
リビング、キッチン、バスルーム。この家に一つきりのベッドルームには、清潔なベッドが二台、行儀よく並んでいた。
家具は一通り揃っている。ただ、人が住んでいる気配だけがなかった。開業したばかりのホテルの一室。そんな空気感だ。
言うなれば、まだ血の通っていない家。
今日からここで暮らすのか。
妙に現実味が薄いのは、放浪していた二十年間、『家』と呼べる場所とは、ほとほと縁遠かったせいだろう。
ムー(金魚の人)
DONEモクチェズワンライ0709「太陽」で参加です。モさんの熱視線に灼かれるチェの話。
照射される熱に肌を焼かれる。
白光の下に晒された肌が熱を帯び始める。
真っ白な雪原の上に淡いピンク色の華が咲き乱れる。首筋を走り撫でる珠雫の汗は華の露に似ている。
熱せられた空気が肺から押し上げられ、喉を駆け抜け、浅い呼吸となってチェズレイの口から飛び出る。
興奮と高揚が形になった吐息がチェズレイの前髪を揺らした。
目視では決して捉えられない不可視の光が白い肌に惜しげもなく注がれる。
それを防ぐ術はない。
身を覆う布はすべて取り去った。もちろん、己の意思で。
今日、「太陽」に肌を晒すのは2回目だと言ったら、モクマはどんな顔をするだろうか――
茹だった頭で夢想する。
日中、チェズレイはモクマと共にプライベートビーチへ降り立った。
1745白光の下に晒された肌が熱を帯び始める。
真っ白な雪原の上に淡いピンク色の華が咲き乱れる。首筋を走り撫でる珠雫の汗は華の露に似ている。
熱せられた空気が肺から押し上げられ、喉を駆け抜け、浅い呼吸となってチェズレイの口から飛び出る。
興奮と高揚が形になった吐息がチェズレイの前髪を揺らした。
目視では決して捉えられない不可視の光が白い肌に惜しげもなく注がれる。
それを防ぐ術はない。
身を覆う布はすべて取り去った。もちろん、己の意思で。
今日、「太陽」に肌を晒すのは2回目だと言ったら、モクマはどんな顔をするだろうか――
茹だった頭で夢想する。
日中、チェズレイはモクマと共にプライベートビーチへ降り立った。
ori1106bmb
DONEだいずさんとプロット交換していただきました!Bread and Butter 意識が薄らいでいく。
ーード・レ・ミ……
美しい男が奏でる音階が、耳から流れ込み、脳へと塗りたくられる。
私は罪を犯した。これはきっと、その報いなのだ。
-・-
パンが焼ける香ばしい匂いに抗える人間などいるだろうか。それはさすがに言い過ぎだとしても、美味しそうな香りが漂ってきた方向へ引き寄せられてしまうのは、モクマという男の習性のようなものだ。
港町のはずれに店を構える小さなベーカリー。外壁に書かれた店名以外には目立った看板こそ出ていなかったが、焼き立てパンの幸福な匂いが絶大な広告効果を担っていた。
今朝も、最近の日課であるランニング中にふらりと立ち寄る。客の来店を告げるベルに、焼き上がったばかりのパンを並べていた店主が顔を上げ、眦に皺を寄せた。
10456ーード・レ・ミ……
美しい男が奏でる音階が、耳から流れ込み、脳へと塗りたくられる。
私は罪を犯した。これはきっと、その報いなのだ。
-・-
パンが焼ける香ばしい匂いに抗える人間などいるだろうか。それはさすがに言い過ぎだとしても、美味しそうな香りが漂ってきた方向へ引き寄せられてしまうのは、モクマという男の習性のようなものだ。
港町のはずれに店を構える小さなベーカリー。外壁に書かれた店名以外には目立った看板こそ出ていなかったが、焼き立てパンの幸福な匂いが絶大な広告効果を担っていた。
今朝も、最近の日課であるランニング中にふらりと立ち寄る。客の来店を告げるベルに、焼き上がったばかりのパンを並べていた店主が顔を上げ、眦に皺を寄せた。
秋良七
DONE6/25【約束も恋も朽ちえずJB2023】東2フ42a・軽企画発行予定のウエディングマイクロビキニ本、本文+表紙+特典サンプルです。
ふたりともタキシードで挙式した日の夜、モクマだけに見せるためにウエディングマイクロビキニを着るチェズレイ。
ギャグエロ…ではなく、真剣にしんみりと純愛でラブラブな結婚おめでとう本です!
★ノベルティ特典が二種類つきます(会場でも通販でも全冊に付属します) 10
秋良七
DOODLE初期デカモ×初期修正眼鏡(ツンギレヤクザ)!ツンギレヤクザの正式名称は「チェズ修正」なのでもっと初期のデザインがあるはずなのだが…こんな形のモクチェズになる可能性があったのか…怖すぎる…と思いつつツンギレヤクザも性格と言動がおチェズなわけで結局めちゃんこかわいい筈なんですよ!
デカモはツンのこと「子猫ちゃん」とか「お姫様」とか「おでこちゃん」とか呼ぶよね。 2
ムー(金魚の人)
DONEモクチェズワンライ0326「指」で参加です。デキてないふたりが手指を重ね合わせてイチャイチャしてる話。
※両片思いでまだデキてないふたり
「おっ、お前さん、指長いねえ」
隣に座る晩酌相手から脈略なく飛ばされた台詞にチェズレイは瞬きを返した。
白濁を飲み干したばかりのグラスをテーブルに置き、白い手袋に覆われた手を持ち上げる。その影に、チェズレイとは色の異なる手のひらが滑り込んできた。モクマの手だ。
手首を基点に手のひら同士が重ね合わされる。
「ほらあ」
チェズレイの手の向こう側にいるモクマは愉しそうに目を細めた。
手と手を合わせただけというに、一体何が可笑しいのか。
チェズレイは合わせた手へ視線を流す。
チェズレイの方が五指全てモクマよりも長いため、チェズレイ側からはモクマの指の腹は見えない。
「あなたの手は、私ほどの細長さはないが、節のしっかりした逞しい力強い手をしていらっしゃる」
1846「おっ、お前さん、指長いねえ」
隣に座る晩酌相手から脈略なく飛ばされた台詞にチェズレイは瞬きを返した。
白濁を飲み干したばかりのグラスをテーブルに置き、白い手袋に覆われた手を持ち上げる。その影に、チェズレイとは色の異なる手のひらが滑り込んできた。モクマの手だ。
手首を基点に手のひら同士が重ね合わされる。
「ほらあ」
チェズレイの手の向こう側にいるモクマは愉しそうに目を細めた。
手と手を合わせただけというに、一体何が可笑しいのか。
チェズレイは合わせた手へ視線を流す。
チェズレイの方が五指全てモクマよりも長いため、チェズレイ側からはモクマの指の腹は見えない。
「あなたの手は、私ほどの細長さはないが、節のしっかりした逞しい力強い手をしていらっしゃる」
soraphina
DOODLEモクチェズ版ワンドロワンライお題【嫉妬】【電話】お借りしました
電波は方々道はひとつ、夜はこれから 朝からずっとチェズレイは方々へ電話を掛けている。
電話が終わったかと思えばメールをチェックしたり情報収集したりのためにタブレットを注視していて、モクマはその様子を見ながら昼食のリクエストや掃除の有無を問いかけていたがチェズレイは生返事だった。
昼食を出したさいに晩酌の約束を取り付けはしたものの、この時も会話をしたわけではなく電話中のチェズレイへ食器とメモを差し出しただけだった。それでも晩酌のお誘いのメモを確認するとやわらかく微笑んでうなずいてくれたからモクマの心は踊った。
ようやく一段落ついたチェズレイがすでにソファに座って晩酌を始めているモクマの隣に腰を下ろした。
「終わった?人気者だねえ」
「遅くなってすみません、指示が終わらなくて」
1706電話が終わったかと思えばメールをチェックしたり情報収集したりのためにタブレットを注視していて、モクマはその様子を見ながら昼食のリクエストや掃除の有無を問いかけていたがチェズレイは生返事だった。
昼食を出したさいに晩酌の約束を取り付けはしたものの、この時も会話をしたわけではなく電話中のチェズレイへ食器とメモを差し出しただけだった。それでも晩酌のお誘いのメモを確認するとやわらかく微笑んでうなずいてくれたからモクマの心は踊った。
ようやく一段落ついたチェズレイがすでにソファに座って晩酌を始めているモクマの隣に腰を下ろした。
「終わった?人気者だねえ」
「遅くなってすみません、指示が終わらなくて」
ムー(金魚の人)
DONEモクチェズワンライ0219「つまみ食い」で参加です。モさん母から見たモクマとチェズレイの話。
わたしは、目の端で動く気配に意識を操られるようにして手を上げた。
パシン。
乾いた音が狭くも広くもない台所に響く。
「――……!」
わたしは、ハッと息を呑み目を見開いた。
叩かれた相手も私と同じ顔をしていた。血を半分わけた子なので、同じ顔貌をしていて不思議ではないのだけども。
驚いたのは、数十年ぶりに顔を見せた末息子――モクマが、台所のシンクに並ぶ皿に手を付けていたこと。里芋とイカを濃口醤油で煮た煮物をつまみ食いしていたのだ。
モクマは上手に気配を消して台所へ入ってきた。だが、目の端で蠢く気配を感じたわたしは、目視確認する前に菜箸を握った手を伸ばしていた。自分の反射神経にも驚く。
「はは……」
バツが悪い顔でモクマは笑った。落ちくぼんだ目の周りに深いシワが刻まれる。差し込んだ西陽によって、こけた頬の陰が濃く描かれた。
1401パシン。
乾いた音が狭くも広くもない台所に響く。
「――……!」
わたしは、ハッと息を呑み目を見開いた。
叩かれた相手も私と同じ顔をしていた。血を半分わけた子なので、同じ顔貌をしていて不思議ではないのだけども。
驚いたのは、数十年ぶりに顔を見せた末息子――モクマが、台所のシンクに並ぶ皿に手を付けていたこと。里芋とイカを濃口醤油で煮た煮物をつまみ食いしていたのだ。
モクマは上手に気配を消して台所へ入ってきた。だが、目の端で蠢く気配を感じたわたしは、目視確認する前に菜箸を握った手を伸ばしていた。自分の反射神経にも驚く。
「はは……」
バツが悪い顔でモクマは笑った。落ちくぼんだ目の周りに深いシワが刻まれる。差し込んだ西陽によって、こけた頬の陰が濃く描かれた。