4:鎖はついに放たれた ヴィータは皆等しく何かに縛られることを選ぶ、家庭や法、社会にコミューン、金、そして女。
その気になればそこから出ていけるはずなのに出ていった先で新たな環境を得て、また自分を繋ぎ止める鎖に自ら首をはめる。
その鎖は自由を奪い去る忌むべきものだというのに、生殺与奪や略奪の自由だけではない、自らの生死さえも他人を考慮せねばならないものになる。煩わしいことこの上ない。
そして、そんなものに縛られている自分自身も煩わしい。ガミジンは背負った荷物の重さにため息を漏らして薄暗い裏通りへと姿を消した。
湿っぽくてカビ臭い空気が満ちたこの通りはヴィータ社会の底辺を表しているように感じられて、一歩踏み込むだけで吐き気が込み上げてきた。雨が降らない夜でもこの通りは誰かの体液や酒で濡れている。顔を背けたくなるような悪臭に包まれながら、ガミジンはすがり付いてきた年寄りを振りほどいて進む。
4652