父性の根源 パパはあんまり笑わなくて、ぶっきらぼうなひと、だったんだけど。
パパが高いところからおっこちて頭を打って、わたしはしばらく長野のみちお姉ちゃんの家にいた。
みちお姉ちゃんのお家はおばあちゃんやお姉ちゃんのママがお洋服とかお人形を作ってくれて楽しかった。
わたしのママがパパと迎えに来たのはいっかげつ? くらいしてからだった。
パパがわたしを見て目を丸くして、それからすごく優しい顔で笑ってちょっとびっくりした。他のおうちのパパみたいで。
しゃがんでわたしに目を合わせる。ふにゃっと笑って、かわいいなあと言うのでますます変だ。そんなこと言われたことない。
「こんにちは、サシャちゃん。あ、いや……すまないね。僕は君のお父さんなんだよね」
1993