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    POIPOI 30

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    DONE※ほんのり未来軸
    ※起伏のないほのぼのストーリー

    伏から別れ切り出されて一度別れた五伏が一年後に再結成しかけてるお話。
    akiyuki様が描かれた漫画の世界線をイメージしたトリビュート的な作品です。
    (https://twitter.com/ak1yuk1/status/1411631616271650817)

    改めまして、akiyukiさん、お誕生日おめでとうございます!
    飛ばない風船 僕にとって恵は風船みたいな存在だった。
     僕が空気を吹き込んで、ふわふわと浮き始めたそれの紐を指先に、手首にと巻きつける。
     そうして空に飛んでいこうとするそれを地上へと繋ぎ止めながら、僕は悠々自適にこの世界を歩き回るのだ。
     その紐がどれだけ長くなろうとも、木に引っ掛かろうとも構わない。
     ただ、僕がこの紐の先を手放しさえしなければいいのだと。
     そんなことを考えながら、僕はこうしてずっと、空の青に映える緑色を真っ直ぐ見上げ続けていたのだった。



    「あっ」

     少女の声が耳に届くと同時に、彼の体はぴょん、と地面から浮かび上がっていた。小さな手を離れ飛んでいってしまいそうなそれから伸びる紐を難なく掴むと、そのまま少女の元へと歩み寄っていく。そうして目の前にしゃがみ込み、紐の先を少女の手首へとちょうちょ結びにした。
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    DONE※現代パロ
    ※俳優(28)×舞台の臨時アルバイトスタッフ(15)
    ※前座が長いです

    またもや九年間の存在しない現代パロなので、苦手な方はご注意ください。
    恵視点でほぼほぼ前座ですのでそっと読み流していただけるとありがたいです。
    書くのはめちゃくちゃ楽しかったです!
     一目惚れというものを信じるだろうか。
     テレビで見た俳優とか道端ですれ違った人など、対象は誰だっていい。条件は一つ。『その人の人となりを知らない状態で、一瞬で恋愛感情を持つこと』。その条件を第一前提とした場合に、果たしてこの質問に『信じる』と答えられる人がこの世に何人いるだろうか。答えられるなんて、よほど惚れっぽいか、運命的な繋がりを心から信じているかのどちらかだだろう。
     もちろん俺は一目惚れなど信じていない。そもそも元から恋愛ごとに興味がないということも大きいが、どちらにせよ、たった一目、その人から得るたった一つの情報だけで恋愛感情を抱くなんて、あまりにも馬鹿げた話だ。

     まぁ、特別容姿が優れているわけでもない、普通の学生生活を送っている俺にとっては全くもって関係のない話だ。だからこんな言葉について、今まで考えたことすらなかったというのに。
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    DONE※現パロ
    ※ジャズフェスで演奏する恵に一目惚れした五がピアノを始める話
    ※さしすバンドでステージ出演したら観客席に恵の姿を見つけて運命感じる五

    akiyuki様の元ネタ(https://twitter.com/ak1yuk1/status/1404486850329206784)の一部を抜粋し勢いのまま書き上げたものになります、許可くださりありがとうございます!
    行動派悟、大好物です。
    ジャズパロ 木漏れ日が心地よい、初夏の季節だった。
     公園のような広場に作られた小さなステージで、制服を着た三人の学生たちが音楽を奏でる。さすがに中学生ではないだろうから、きっと当時の俺と同じ、高校生であったはずだ。そこそこ集まった人だかりから上がる手拍子に合わせて紡がれる、小気味良いアップテンポな曲。その中、俺の視線は引き寄せられるように、ただ一箇所から動かすことができないでいた。
     エレクトーンの上を滑っていく細長い指先。伏し目がちな瞳。染めたこともないであろう真っ黒い髪は、着ている制服と相まって、まるでモノクロフィルムのように視界へと映り込む。
     あぁ、でも、わずかに覗き見える瞳の色は、どこか薄いような、黒とはまた違う色をしているようであった。睫毛が影になって見えないその色だけが、モノクロの中でやけに鮮やかに映るようで。
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    DONE午後24時の待ちあわせ webアンソロ
    お題:待ちあわせ

    前中後編の三部構成です。
    三編とも短いお話なので、お暇つぶしにまったりと読んでいただけますと幸いです。

    中編:https://poipiku.com/2336241/4593197.html
    待ちあわせ - 前編 五条先生と出会って、初めてもらったものは携帯電話だった。

    『僕ってあちこち飛び回ることが多いからさ、予め日時合わせて稽古とか難しいんだよね。君んち、家電もないでしょ? 僕が予定空いたタイミングでそこにメール送るから、鳴ったらちゃんと確認してね。あ、充電切らすなよ? 充電の仕方わかる?』

     言われるがままに押しつけられたそれは、クラスメイトが持っているものと同じ、いわゆる『キッズケータイ』というものであった。シンプルな真っ白色の本体はパカ、と縦向きに開くことができて、液晶画面と数字のついたボタンがそれぞれ配置されている。
     本体に見覚えがあるとはいえ、使い方はからっきしだった俺に、結局五条先生は家まで上がり込みそれらの使い方をいちから教えてくれた。と言っても、自分が普段使っているものと色々仕様も違ったのだろう。『なんだこれ』『え、ネット繋がんないんだけど』『まぁいっか』と、それぞれ適当にいじくり回して必要なところだけ覚えることとなった。(余談だが、キッズケータイに防犯ブザー機能があることを知った先生が面白半分で鳴らしてしまったせいで、その日は隣から思い切り苦情を吐かれることとなった)
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    DONE五伏版ワンドロワンライ 第48回「嫉妬」

    ※パラレル設定
    ※支部投稿作品『絡繰街の人とヒト』の設定にて続編
    ※人間五条×アンドロイド恵

    1.5hほどかかっております、すみません…。
    多分これ単独でも読めますが、大元読んだ方がわかりやすいです、よかったらぜひ…!
    支部作品はこちらより→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15079987
    登場人物

    先生(28) ……天才科学者。アンドロイドである恵を開発し、また絡繰街の運用を機械メインにした立役者。おおよそ百年前に他界した(とされている)。
    恵(?)  ……先生によって作り出されたアンドロイドのプロトタイプ。他のアンドロイドとは違い、自身の意思を持つ。絡繰街の中に立つ時計塔の中で暮らしている。動力源はゼンマイ。見た目年齢は15歳。
    五条悟(18)……絡繰街で生まれ育った機械のメンテナンス技師。実は先生が『若返りの薬』を使って新生児まで若返り、そのまま成長した同一人物。先生であった頃の記憶はない。一人称は俺。恵が好き。



     カチカチと、歯車が噛み合い回る音が響き渡る。幼い頃、五条はあまりその音が得意ではなかった。機械特有の、正確で無機質な音。それを聞き続けていると、何故だか何かに追われるような気持ちになったのである。
     そんな音が平気になったのは、はたしていつからだっただろうか。そんなことは考えるまでもなく分かりきったことではあるが、改めてその時のことを思い出したくて、五条はひとり思い出に耽った。あの時計塔の中で、まるで人形のように座り込んでいた姿を。背中に空いた穴 4917

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    お題:「俺(僕)の男に手を出すな」とモブに宣言する五伏

    ※34×21
    ※事変はなかったことに
    ※全体的にいかがわしいけどなんちゃってです

    リクエストくださりありがとうございます!すごく恥ずかしいので羞恥に耐えられなくなったらフォロワ限にします!はっずい!!
     密閉された薄暗い空間。そこまで狭くないはずのフロアは、だが一箇所に人が収集しているせいでどこか圧迫感のようなものを与えてくる。その人だかりを横目にしながら、伏黒は一人、カウンターの中でシェイカーを振っていた。シャカシャカと小気味良い音を立てながら流暢な動きで行われるその動作は、薄暗い中だからこそなのか、ひどく艶美な所作に見えてくる。それは伏黒の目の前に座る男にとっても同じで、彼はテーブルに肩肘をつきながら、伏黒がカクテルを作る様をじぃ、と見つめ続けていた。
     高さの低いロックグラスの中へと注がれた中身は、何も色のついていない、無色透明な液体であった。シェイカーの中に加えていた氷をひとつ、ふたつとグラスの中に入れていくと、カラリ、とひどく涼しげな音が辺りに響き渡る。そうして最後、バー・スプーンでひと回しさせたそれを細い指先が持ち上げ、テーブルの上へコトリ、と音を立てて置かれた。

    「お待たせいたしました。カミカゼでございます」
    「あぁ、ありがとう」

     男はそのグラスを早々と受け取り、にっこりと口元に笑みを浮かべる。そうして伏黒から視線を一切外すことなく中身を一口流し込むと「とても美味 6092

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    お題:ワンライ『夢』のつづき

    ※芸能パロ
    ※俳優五×俳優伏

    前回のつづきなため、前回分を読んでからお読みいただかないと分からない点が多いかと思います。
    リクエストくださりありがとうございます!

    前回のお話:https://twitter.com/ytd524/status/1370746035081936897
     溢れんばかりの拍手と指笛の音、ブラボーの声。緞帳が上がった瞬間、それらが一気に押し寄せてくる感覚は、舞台役者にしか味わうことのできない熱気と興奮であろう。
     この道をメインに進むと決めたのは自分勝手な理由によるものであったが、今ではもう、この感覚を知らなかった頃の俺には戻れないだろうと思う。それほどまでに、この時、この瞬間の圧力のようなものは、自分にとって非常に心地良く、快感であった。
     そして今日、無事楽日を迎えたこの舞台は、自身の役者人生の中にまた新たな『人生』を刻んでいく。
     全身を投じて、なりきって生きてきた、全ての役の『人生』。
     それらが積み重なり、これからの俳優・伏黒恵の人生が紡がれていくのだ。



    「お疲れ様でしたぁ!」

     舞台袖にはけてから楽屋に至るまで、テンションが上がっているのは何も役者だけではない。舞台演出家、舞台監督、照明、音響、衣装に広報。その他、舞台に携わったたくさんの人々が今日という日を無事に終えられたことに歓喜の声を上げる。今回の舞台演出を務めたベテランはひどく気難しい人だったのだが、その人までもが笑顔で主演俳優の背中をパンッと叩いているのだから 4295

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    DONE五伏版ワンドロワンライ 第47回「落ちる」

    ※現在軸(事変前)
    ※付き合ってない
    ※五→伏

    これが恋だと自覚する五のお話。
    少し糖度高めかもしれませんので、やんわりと読んでいただけたら嬉しいです!
     からから、ころん。コロン、カラン。

     上から放ったビー玉が、透明なレールの上を小気味良い音を立てながら滑り落ちていく。そうして最後、カコン、と音を立てて受け皿に落とされたビー玉を拾い、再びレールの上から放ってやった。

    「ぼっちゃまは本当に、その玩具がお好きですねぇ」

     そう言って笑ったのは乳母だっただろうか。そうして初めて、俺はこの玩具が『好き』なのだということに気がついた。
     何も考えていなかった。ただ上から放ったビー玉が、コロコロと流れ、滑って、そして下まで落ちてくる。その流れをただもう一度見たくて、見たくて。

     あぁ、そうか。『好き』だから、何度もやってしまうのか。

     初めて自分の行動に意味が持たされたようで、なんだか不思議な気分だった。それでも俺はビー玉を拾うことをやめなかった。受け皿に落ちてきたそれをまた摘み上げて、レールの上にコトンと落とす。

     からから、ころん。コロン、カラン。

     透明なレールの上を転がるビー玉の色は、果たして何色だっただろうか。
     キラキラと輝くその光景の中、ただそれだけが今でも思い出せないでいた。




    「はーい、お疲れ〜! 無事全部 3807

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    お題:闇オク五伏

    ※モブ視点
    ※ほとんどモブ
    ※だいたいモブ
    ※前座が長いです

    絶対お求めだったのこれじゃないだろうと思いつつも、私の頭じゃこれが限界でした…
    リクエストありがとうございます!どうか少しでも楽しんでいただけますよう…!
     オークションというものを知っているだろうか。
     売り手によって出された品物に対し、買い手が希望の金額をつけ、最も高額を提示した者にその品物を売買するという競売方法だ。近年ではインターネットオークションなどの一般化にあたり、個人間でオークションでの売買を行う人も少なくないだろう。
     ちなみに個人間ではない、企業などが関わってくるオークションの場合、この敷居は一気に高いものへと変わる。大々的なオークションの中で最もイメージしやすいのは絵画のオークションであろう。一つの会場に集められた参加者が、出展された絵画を実際に見てそれぞれ金額を競っていくのだ。
     壇上にはハンマーを持った外郎の男性。指を上げて金額を提示する参加者。これ以上の競り上がりがないと判断したタイミングでカンカンと打ち鳴らされる木音。ハンマープライス。もう大体想像はついただろう。
     つまりまぁ、そういった大々的なオークション会場で動く金額はインターネットオークションなど非ではない、云百万・云千万の世界ということだ。
     そんな会場の入り口に、今私はいる。

    「チケットを拝見します」

     髪を綺麗にオールバックにしたスーツ姿の男性 5304

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    DONEリクエスト
    お題:喧嘩する五伏

    ※未来軸の話を含みます
    ※事変はなかったことに
    ※のばら視点
    ※伏・釘の飲酒シーンがあります

    リクエストありがとうございました!つらつらと書いてしまってすみません…
    「そういえば、アンタたちって喧嘩したことあんの?」

     なんてことはない雑談の延長であった。入学前からの知り合いであるらしい伏黒と五条に、ふと思いついたその話題を投げてみたところ、何故かひどく怪訝そうな表情を返され(五条は目隠しがあるから分からないけど)、思わず首を傾げてしまう。そうして眉間に寄ったシワをそのままに、はぁ、とため息を吐いた伏黒は「ねぇよ」とだけ口にした。そんな返しに真っ先に反応したのは虎杖だ。

    「え? ないの? 結構昔からの知り合いなんだろ? それなのに?」
    「いや、なんで驚くんだよ。てか、この人相手に喧嘩も何もねぇだろ」
    「わぁ、言うねぇ恵。ねぇ、もしかしてそれって貶してる?」
    「別にそんなつもりはないです。てか先生だって、十三も年下の相手と喧嘩することなんてないでしょうよ」
    「あっはは、確かに」

     伏黒の言葉を受けてカラリと笑うと、五条は持っていたフォークで目の前のステーキへと食らいつく。その後、慣れた様子で伏黒の皿からも一切れ取っていったかと思うと、その一切れ分を補うように伏黒もまた五条の皿からステーキを摘んだ。

    「え、なに今の」
    「あ?」
    「なんで無言でス 4355

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    お題:〇〇(コミックス未収録ネタを含むため、本文末尾にて紹介)

    ※少しだけ未来のお話
    ※事変のことは考えないでください
    ※オリキャラ視点
    ※コミックス未収録ネタを含みます

    リクエストありがとうございました!楽しかったです!
     むせ返るほどの、土の匂いだった。
     会合があるからとお父さんたちに連れてこられた本家の御屋敷。でも私はまだそんな話し合いに参加できる年齢じゃないから、用意してもらった離れの御座敷に寝転がって、お父さんたちの用事が済むのをぼーっと待っていた。
     そうしたらふと、外から土の匂いが漂ってきて、私は思わず障子を開けて庭を見たのだ。からり、と音を立てて開け放たれたその先で、明るい日差しが差し込む中で、涼しい空気がすぅ、と私の隣を通り過ぎていく。
     明るい空から、さぁ、と静かな音とともに、細い糸みたいな雨が降り注いでいた。

    (お天気雨だ)

     そうか、地面が濡れたから土の匂いも強くなったんだ。理由がわかって嬉しくなるとともに、私の体は無意識に縁側の外へと滑り落ちていた。しっとりと濡れた移動用の草履に足を通して、そのまま草の上を駆けていく。大人用のサイズだからちょっとだけパカパカとうるさいけれど、それでも濡れた土の上を歩く感触は、なんだかとても心地が良かった。
     庭をまっすぐ抜けて、本邸へ続く石橋を渡って。途中で少しだけ横道にそれて、また少しだけまっすぐ。その頃にはもう雨も上がっていて、私は雨上 3833

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    DONE五伏版ワンドロワンライ 第46回「デート」

    ※現在軸(事変前)
    ※既に付き合ってる二人
    ※初デートで夢の国(冒険の海の方)に行く話

    本当はソ○リンに乗せたかったのですが、グランドデビュー2019年だったことを思い出して泣く泣く諦めました。ソ○リンに乗って目丸くして感動しきりな恵は私の頭の中で可愛がります。
     世間一般で言う『恋人』とは一体何をするものなのだろうか。
     そんな街頭インタビューでもしようものなら、道ゆく人々は間違いなくこう答えるだろう。

    『二人きりでデートをするとか』

     デート。そう、俗に言う恋人関係である二人が出かける行為。デートだ。恋人だけに許された名称だ。
     逆に恋人以外とデートをしようものなら、それはすべからく浮気扱いとなる。それほどデートとは重きを置かれるものなのである。
     デート。恋人同士の二人だけが行うことのできる行為。だがそれは、あくまで一般的な恋人同士に限定された話である。

     とどのつまりは、僕と恵の間でそれは適応されないというわけで。

    「ねぇ恵、デートしたい?」
    「? いえ、別に」
    「だよねぇ」
    「どうしたんですか突然。え、したいんですか」
    「いや? 別に」
    「でしょうね」

     ソファにだらしなく座り込みながら会話を続けていると、僕の恋人であるところの恵はひどく怪訝そうな顔つきでこちらを見ながらコーヒーをすすり始める。なかなかな表情だ、少なくともこれは好意を持つ相手に向ける表情ではないのではなかろうか。擬音で表すなら『げぇ』という表情である。

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    DONE貴方とカメラで想い出を。

    ※伏入学後・虎入学前
    ※初任給でカメラを買った伏の話

    フォロー様のお誕生日記念に書いた、五伏の短編小話です。
    こっちに上げるの忘れてたことに気がついたので、今更ですがぽいぽい!
    「カメラを買いました」
    「……んんん?」
    「いや、アンタが聞いてきたんでしょうが。なんでそんな面白い顔すんですか」
    「だって恵とカメラって組み合わせがあまりにも噛み合わなくて……え、高校デビュー? あっ、高専デビュー?」
    「違います。てか相当失礼だな」
    「えー、でもそうじゃん。らしくないって自分でも思ってるでしょ」
    「……まぁ、はい」

     そう言いながらカメラを持つ恵に、僕はやっぱり疑問符を浮かべてしまう。だってカメラ。このご時世、スマートフォンのカメラ機能も発達してる中でわざわざカメラを買うなんて、余程こだわりのある奴か、何か『撮りたい物』のある奴以外いないだろう。加えて恵が今持っているカメラはデジカメじゃなく、いわゆる『一眼レフ』というタイプのものだ。カメラ本体とレンズが分かれてて、用途に合わせて望遠レンズとか接写用のマクロレンズとかに付け替えれるタイプ。まぁつまり、ゴツくてお高いタイプのもの。
     そんな本格的なカメラを、大して写真に興味のない恵が買ったと言うのだ。しかも呪術師としての初任給を、ほかでもない『それ』に当てたと言うのだ。そんなの疑問に思って然るべきだろう、面白い顔と言 2560

    ytd524

    DONEくっつきくっついて、くっつきそうな話。

    ※酔っ払い五とお迎え伏
    ※酔っ払いのテンションは上がって下がってまた上がってます

    「くっつく話」「くっつきそうな話」「くっついた話」
    どれを書こうか悩んでアンケート取ったら同数一位になってしまったため全てミックスしました。
    いつも以上の雰囲気小話ですので、何も考えずにお読みください。
    「磁石ってあるじゃない」
    「ありますね」
    「あれってさぁ、S極同士N極同士は反発するけどさぁ、S極とN極ならくっつくじゃない」
    「そうですね」
    「僕はさぁ、S極なのよ。悟だから」
    「はぁ」
    「んでもって、恵はN極なの。恵のMに、ほら、Nの形が入ってるから」
    「はぁ」
    「つまりさぁ、僕と恵はさぁ、S極とN極なわけよ。どうなると思う?」
    「さぁ」
    「んふふ〜……くっつく」

     ガバァ、と音が鳴りそうな勢いで五条先生は俺の背中に覆いかぶさると、ひどく満足そうな笑い声を上げて全体重を乗せてきた。いや待ってくれ、重い。全体重はやめろ、マジで重い。

    「はぁ〜〜、これで僕たちはずっとくっついたまんま! 離れられないよ〜!」
    「あの、これシラフじゃないですよね?」
    「安心しな。間違いなく酔っ払いだ」
    「ありがとうございます、安心しました」

     そう言いながら向かいに座る家入さんは、テーブルの上に置かれた塩辛を箸でつまむ。
     アルコールの匂いに満ちた、大人の通う店だ。そこに何故未成年の俺がいるのかはお察しの通りである。誤ってコークハイを一気飲みしてしまったらしいこのご機嫌な下戸は、酔っ払っていると 2592

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    DONE五伏版ワンドロワンライ延長戦
    第12回お題「ゲーム」

    ※20歳×7歳でスマ○ラやる話(出会って一年少しぐらい経ってるイメージ)
    ※2hくらいかかってますすみません

    ブラウン管テレビを両手で手持ちしてる先生が書きたくて過去お題お借りしました。
    ワンライにもなってない状態ですみません…!
     五条さんはいつだって、唐突に物事を始める。

     学校帰りに待ち伏せされたかと思ったら『今から任務行くよ!』と連れ去られたり。
     突然家まで押し掛けられたかと思ったら『チョー美味しいって有名なピザ食べ行こ!』と連れ去られたり。
     京都から東京まで真っ直ぐ帰るかと思ったら『あ、辻利行きたくなった。宇治行こ!』と連れ去られたり。

     だからまぁつまり、その人が毎度繰り出してくる突拍子のない行動にはだいぶ耐性がついていたと思うのだが、さすがにこれは予想していなかった。
     両手で分厚いテレビを抱えながら家まで乗り込んでくる、この行動までは。

    「恵! ゲームしよ!」
    「帰ってください」
    「却下! お邪魔しまーす!」
    「あっ、おい!」

     閉めようとしたドアは随分と長い御御足によってこじ開けられ、大変器用に体を家の中まで滑り込ませてきた。両手が塞がった状態でよくそんな身のこなしができるなと思う。しかもただ塞がっているだけじゃない。テレビだ。この人は今、なんかでっかいテレビを抱えている状態なのだ。家にある壊れかけの電子レンジの一回り、いや二回りくらいでっかいそれは、きっと俺に手渡された瞬間落ちてし 4844

    ytd524

    DONE五伏版ワンドロワンライ 第45回「撫でる」

    ※現在軸(事変前)
    ※疲れた先生が伏の部屋に突撃する話
    ※大好き扱いをさせたかったお話
    「めぇ〜〜〜ぐちゃぁ〜〜〜ん」
    「うわ」

     ノックもなしに開けられたドアの向こう、真っ直ぐにこちらへと向かってくる大男の姿を認め、俺の口からは自然と低い声がこぼれ出た。また面倒な精神状態でやってきた黒づくめの保護者は、止まることなく俺のベッドまで駆け寄ってくると、そのままベシャリと腰を落とすと上半身を全てこちらへと投げ出してくる。勢いが凄まじい。思い切り頭をぶつけられた太腿に鈍い痛みが走った。

    「いっ、てぇんですけど!」
    「はぁ〜〜……恵の部屋だ……」
    「聞けよ」

     こちらの言葉など聞く様子のない大型犬は、布団越しに俺の太腿の上に頭を乗せると、グリグリと額を擦り付けながら位置を調整し始めた。あぁ、失敗した。こんなことなら、横着してベッドの上で本なんか読むんじゃなかった。普通に椅子に座ってればこいつをベッドに放置したまま飲み物でもなんでも買いに行けたっていうのに。
     吐いたため息は存外深く漏れ出るもので、俺は早々に読書を諦めると、せめて被害が及ばないようにと文庫本を窓側の枕元へと避難させた。そして未だに頭の位置を調整し続けるその毛玉を両手で掴み、動きを静止させる。
     俺の意図が 2755

    ytd524

    DONE五伏版ワンドロワンライ 第44回「成長」

    ※33歳×20歳
    ※事変はなかった世界
    ※なんちゃってムーディ(全年齢)
    ※伏の喫煙描写があります(常習ではないです)
    初めてそれを口にした時、口いっぱいに広がる煙に思わず咳き込んでしまったことを覚えている。
     階段の隅にある狭い喫煙所、勧めてきた相手はカラカラと笑って俺の背中をドンドンと叩き『吸い込むなよ!』と声を上げた。
     舌の上に広がる苦味も、喉の奥に引っかかりそうな煙も、どれも違和感が強すぎて、これは俺には一生縁がないものだなと、まだ火のついていたそれをそいつに押し付けた。

    『これで伏黒も大人だな』

     うるせぇ、こんなもん吸わなくったって大人は大人だろうが。そう思いながら咳き込み続ける俺後ろで、相変わらずその男は笑い声をあげ続けている。
     十二月二十二日。仲間内の中で最も遅くに迎えることとなった、二十歳の誕生日当日であった。



     ふと、窓の外の景色が見たくなって、俺は温まった布団の下から体を這いずり出した。暖房の効いた部屋であってもさすがに寒さを覚え、床に放られたクシャクシャのシャツを肩に羽織る。そうして壁際に備え付けられているデスクの前に座り、真っ暗な窓の外へと視線を向けた。
     部屋が明るいせいで反射してしまい、顔を近づけなければ外の光景を伺うことはできない。加えてビジネスホテルからの 3542

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    DONE五伏版ワンドロワンライ 第43回「純愛」

    ※現在軸(28×15)
    ※付き合ってない二人
    ※伏視点
    「ねぇ、恵って僕のこと好きなの?」
    「は?」

     それは何の前触れもない、突然の問いかけであった。いつものようにつけてもらっていた稽古の合間、派手に転ばされた俺が立ち上がるまでの隙間時間にかけられる助言の数々がひと段落し、さぁ稽古の再開だと意気込んだタイミング。なんともないようにかけられたその一言に、俺の喉からは無意識に非常に低い疑問の声が吐き出された。

    「いやだから、恵って僕のこと好きなの?」
    「二回言わないでも聞こえてますよ。聞こえた上で『は?』って返してんですけど」
    「いやいや。質問してるのこっちだし」
    「質問の意図も何も分かりません」

     構えた体勢のまま脱力してしまいそうになり、慌てて上体をまっすぐに起こす。そうしてその場に立ったまま前を見据えると、しゃがんだままの五条先生を自然と見下ろす立ち位置へと変わった。
     あまりにも突然であった。それが何を意味するのかも、何を思っての問いかけなのかも分からない。ただ、無表情を装った顔を通り越した首後ろ、そこにつぅと汗が一筋垂れていくのを感じた。疲労からではない心臓の鼓動が、耳のすぐ近くで鳴り響く。
     ひた隠しにしてきた感情であった。 3746

    ytd524

    DOODLEポイピク投稿テスト用。
    以前ワンライ用に書いたけど全く五伏要素なくなってしまったやつ。
    支部のまとめログにも収録してます。

    お題:ヒール
    内容:五と伏姉弟でショッピングモールに靴買いに行く話。しんみりしてる内容。
    その扉を開けるのは随分と久しぶりのことであった。俺自身はそこをほとんど使わなかったし、今日だって、寮に移るための準備という名目がなければ開けることはなかっただろう。だからだろうか、なぜかそこを開けることに、ほんの少しだけ躊躇してしまっていた。
     別に緊張をしているわけでもないはずだ。ただ、そこに入っているものを見たら、俺はきっと動揺してしまうだろうと分かっていた。とはいえ、これから三年かそれ以上か、この家を空けることになるのだ。一度だけ深呼吸をして、俺は一気に、力任せにその扉を開ける。そして扉は、俺の躊躇なんてなかったかのようにあっさりと開かれた。
     下の方に取っ手がついた、縦開きの戸棚。その中に仕舞われているもの──津美紀の靴を眺め、俺は少しの間、息を止めた。

     将来呪術師として任務に携わることを担保とした、高専からの資金援助。
     それは決して金銭に余裕のある暮らしを送れる保証があった、というわけではない。もちろん、津美紀の母親が残した資金だけで暮らしていたかもしれない生活と比べれば天と地ほどの差があるだろう。とはいえ、子供二人、アルバイトもできない中で生活していくだけの最低限の金 3581